報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「国家公安委員会」

2016-11-24 12:33:30 | アンドロイドマスターシリーズ
[11月22日11:00.天候:曇 東京都千代田区・警視庁内国家公安委員会]

 委員:「……すると敷島さんとしては、委員会の通告に従うということでよろしいですね?」
 敷島:「はい。シンディについては現在、銃火器を装備しない新しい腕を製作し、それを取り付けることにしました」

 頭の固そうな国家公安委員が、敷島の提出した書類に目を通している。

 委員:「腕は新しく一から作ることとなるので、それまでは時間を頂きたいということですが、具体的にはどれほどの時間をご希望で?」
 敷島:「腕が完成しても、その後の実験データの積み重ねが必要とのことで、年内一杯は頂きたいです」
 委員:「その間、現在使用中の腕については、銃弾は全て抜き取った上で、銃使用を封印する処置をしたということですか」
 敷島:「はい。新しい腕が本格的に使えるようになるまでは、暫定的にそれでお願いしたいのです」
 委員:「本来はそうなるまで、件のロボットは停止状態にするのが無難という意見も委員会内には出ています。それについてはどう思いますか?」
 敷島:「シンディは銃を撃つ能力は持っていますが、それだけの用途で稼働しているわけではありません。今となってはその装備は付帯的なものに成り下がっておりまして、今現在の用途として稼働している間はそれを必要としているわけではありません」
 委員:「つまり、稼働は必要ということですか」
 敷島:「そうです。今は私の秘書という用途で動いていますから」

[同日11:30.天候:曇 東京メトロ有楽町線・桜田門駅]

 敷島:「本来、一般人が国家公安委員会と直接やり取りすることは無いんですがね……。普通は警察機関を通して、下部組織の都道府県公安委員会と接触するくらいですよ。免許の更新なんかいい例でしょう?」

 敷島は電車を待っている間、自分のケータイで平賀と連絡を取っていた。

 平賀:「それだけ敷島さんは、一般人扱いではないということですよ。自分はまだ宮城県公安委員会とのやり取りで済んでいます」
 敷島:「いいですねぇ、先生は楽で。俺だったら仙台在住であったとしても、やっぱり直接警視庁まで来いってことになりそうだ」
 平賀:「敷島さんはもう、そういう人だってことですよ。ただ、自分なんかも、所轄の警察署で済むレベルではなかったんですよ」
 敷島:「と、言いますと?」
 平賀:「自分は宮城県公安委員会との直接やり取りです。ですから、宮城県警本部の建物まで行きましたよ。エミリーを連れてね」
 敷島:「そ、それは大変でしたねぇ……。(でも俺の場合、やっぱり東京都公安委員会も飛び越えて国家公安委員会だもんなぁ……)」

 前期型の時はエミリーよりもシンディの方が目立っていたというのもある。
 東京決戦を引き起こした張本人のドクター・ウィリーに対し、シンディはその側近として立ち回った役として認識されているからである。
 いくら、後期型は安全ですよと言ったところで、なかなか信用してもらえなかったというのが実情だ。

〔まもなく1番線に、新木場行きが10両編成で到着します。乗車位置でお待ちください。ホームドアから手や顔を出したり、もたれかかったりするのは危険ですから、おやめください〕

 敷島:「あっ、すいません。そろそろ電車が来るんで、これで失礼します。……はい。今日の夜には、仙台入りする予定です。……はい、それじゃ」

 敷島は電話を切った。
 直後に強風の轟音を引き連れてホームに滑り込んでくる、有楽町線の最新鋭10000系。

〔桜田門、桜田門。1番線は、新木場行きです〕

 平日昼間の官庁街に位置する駅ということもあって、スーツ姿の乗客達が多く降りて来た。
 敷島達が乗り込むと、すぐに短い発車メロディが流れる。

〔ドアが閉まります。手荷物をお引きください〕

 ドアチャイムが3回鳴るが、これはJRのものと同じ。
 ドアが閉まって、少しブランクがあってから走り出した。

〔次は有楽町、有楽町。乗り換えのご案内です。日比谷線、千代田線、都営三田線、JR線はお乗り換えください〕

 シンディ:「社長、ミクがテレビの撮影終わったってよ」
 敷島:「そうか。それじゃ、昼には事務所で落ち合うことになるな。ミクは売れっ子だから、すぐに仕事が入ってきて、メンテの暇も無いなー」

[同日15:00.天候:曇 敷島エージェンシー・社長室]

 鷲田:「全面的に公安委員会の通告を受け入れたそうじゃないか。『不死身の敷島』『テロリストを泣かせる男』、敷島孝夫にも苦手なものはあったか?ん?」
 敷島:「お上とケンカするつもりは毛頭ありませんよ。今や、ヤクザ屋さんだって、そういう所に気を使う時代ですからね。ましてや、真っ当な商売をしているこちらが、ヤクザ屋でもできることをできないなんて言えませんから」
 鷲田:「そうかね。でも、相当の猶予を請求したそうじゃないか。向こうさんも、相当汗かいただろうな」
 敷島:「本当のことを言ったまでですがね。でも、そこはさすがだと思いますよ。正論を言ったら逆ギレする輩が多い昨今、向こうさんは汗をかくだけで済ませてくれたんですから」
 鷲田:「ということは、そちら側もそれなりの男気を見せないとイカンということだぞ?」
 敷島:「分かってますよ。だからこそ、向こうさんの通告を呑んだわけです。シンディの腕は銃火器を装備していないものと完全に交換するって、ちゃんと吞みましたよ。ただ、新しく造らなきゃいけないんで、完成して完全に使えるようになるまで待ってねって話です。その間は銃を撃たせてくれよとは言ってません。シンディの右腕は銃に変形できないよう、既に封印してあります」
 村中:「それは素晴らしい。ただ、実際またテロリストと対峙した時は大変そうだね?」
 敷島:「新しい腕は、銃に代わるものを用意するつもりですが、今は攻撃力が落ちている段階ですね。仕方が無いので、シンディには別の能力を高めてもらいました」
 鷲田:「何かね、それは?銃に代わるものとは、まず何かね?」
 敷島:「銃刀剣類がまずダメなわけですから、それ以外のものですよ。まだ開発中なので、何とも言えません」
 村中:「まあ、しょうがないね。ここで具体的なこと言ってもらっても、後で変わられたら意味が無いしね。で、彼女の何の能力を高めたのかな?」
 敷島:「近接戦の能力ですね。エミリーは元々高かったですが、シンディ得意の狙撃が使えなくなった以上、エミリーと同じ能力を持ってもらうことにしてもらいました」
 村中:「なるほど。ま、飛び道具を使うわけではないから、公安委さんもそれ以上は言えないってわけか」
 敷島:「そういうことです」
 鷲田:「ま、公安委が良いというのなら良い。明日は南里志郎博士の命日だったか」
 敷島:「はい。私もお世話になった1人なので、法事には行ってきます」
 鷲田:「そうか」

 2人の警視庁幹部が退出する。
 エレベーターホールにて……。

 鷲田:「いいか?ロボットが人間に取って変われると思ったら大間違いだぞ?くれぐれも調子に乗り過ぎるな」
 シンディ:「そんなこと、思ってません」
 村中:「まあまあ。色々とあるけど、頑張って」

 村中は対照的に反対のことを言った。

 敷島:「やれやれ……。やっと帰ったか。ま、銃火器取り外しについても、政治絡みだろう。とにかく、お前は何も気にすることは無いから」
 シンディ:「はい」

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