[7月30日17:30.天候:晴 静岡県富士宮市(旧・上野村)某所 民宿さのや]
民宿の駐車場に、再び高橋運転のレンタカーが到着する。
そこから降りて来たのは、栗原姉妹。
愛原政子:「はい、いらっしゃいませー。……あ、お帰りなさい」
高橋:「先生の伯母様、追加の2人、到着っス」
栗原蓮華:「お、お世話になりますぅ……」
政子:「学からもう料金は頂戴してますからね、どうぞそこで靴をお脱ぎになって」
この民宿では玄関で靴を脱ぎ、スリッパを履いて上がるシステムになっている。
左足が義足の蓮華さんは、左足のスリッパだけ不要である。
尚、外履きの靴は義足の下に履いているので念の為。
政子:「学から聞いております。あなたがそうなのね。奥にエレベーターがありますから、それで2階へどうぞ」
蓮華:「(階段くらいなら上れるけど、まあ、せっかくだから……)ありがとうございます」
政子:「ちょいと、お客さん」
高橋:「な、何スか?」
政子:「何で学が『先生』なの?」
高橋:「俺は先生の弟子だからです」
政子:「弟子って、あのコ、探偵の仕事よね?」
高橋:「はい!あの御方は、俺を冤罪の泥沼から救ってくれた大恩人なんです!俺も是非あの御方みたいな、超一流の探偵になりたい!そういう思いで、先生に弟子入りしました。だから、『先生』です!」
政子:「そ、そうなの……。あのコがねぇ……」
栗原姉妹はエレベーターで上がって行ったが、高橋は階段で2階に上がった。
高橋:「ただいま帰りましたっス!」
愛原学:「おー、お帰りー。今、リサ達が風呂に入ってるんだ。あいつらが上がったら、俺達も入ろう」
高橋:「えっ?男女混合なんスか!?」
学:「そうなんだよ。まあ、シャワー室は男女別らしいけどね。せっかくだから、温泉に入りたいじゃん?」
高橋:「まあ、そうっスね」
その時、部屋の入口のガラス戸がノックされた。
リサ:「先生、上がったよ」
学:「よーし!」
リサ達は備え付けの浴衣を着ていた。
さすがに、体操服とブルマーは持って来ていないようだ。
リサ:「わたしとアイリの浴衣だけSサイズって、どういうこと?」
高橋:「いや、そういうことだろ」
栗原愛理は中学3年生。
リサは高校2年生だが、体型が【お察しください】。
これも、Gウィルスによる影響なのだという。
ワクチンを投与しても、違う形でウィルスが体内に残ってしまったシェリー・バーキン氏や善場主任も、同年代の女性と比べれば小柄な体型である。
ましてや、ウィルスを造り出す側のBOWとなれば……。
尚、絵恋さんと私はMサイズ。
高橋と蓮華さんはLサイズである。
リサ:「ぶー……」
絵恋:「り、リサさん、部屋に戻りましょ!」
蓮華:「鍵が掛かってるんで、開けて欲しいんだが?」
絵恋:「は、はい!」
リサ:「同室宜しく」
愛理:「ひぅ……!」
リサの不機嫌な顔を見て、蓮華さんの背中に隠れる愛理。
蓮華:「ああ、こちらこそ」
絵恋:「な、何か2人とも怖い……」
学:「俺達も浴衣に着替えて、風呂入りに行こう」
高橋:「そうっスね」
[同日18:30.天候:晴 同民宿1F大広間]
夕食と朝食は大広間で取る。
やろうと思えば、ここを貸し切って宴会もできるようだ。
壁にはテレビが点いていて、そこでNHKが流れていた。
リサ:「おー!肉~!」
今夜はロース豚肉の生姜焼きがメインで、他にも刺身の盛り合わせなどもある。
バイト:「飲み物は何にしますか?」
学:「じゃあ、俺はビールで」
高橋:「お供します!」
リサ:「お供します!」
学&高橋:「コラ!」
伯母さんと伯父さんだけで切り盛りできるかと思っていたのだが、ちゃんとバイトのお兄ちゃんとお姉ちゃんがいるようだ。
お兄ちゃんの場合、高橋みたいな元ヤンて感じだが……。
尚、伯母さんの子供達、つまり私から見れば従兄弟に当たる人達だが、彼らは既に家を出て、静岡市内や名古屋市内で仕事をしている。
今夏のお盆には帰省するらしいが、その時、私達は仙台に向かっていることだろう。
愛原公一:「あいよ。ビール大瓶ぢゃ」
学:「あっ、伯父さん。ありがとう」
高橋:「先生、お注ぎします!」
リサ:「先生、お注ぎします!」
絵恋:「リサさん、お注ぎします!」
学:「待て待て!まずは高橋から!リサは絵恋さんに注がれろ!」
リサ:「……ん!」
リサはほぼ無言で、グラスを差し出した。
絵恋:「はーい!ウーロン茶入りまーす!」
愛原:「伯父さん、後でお話いいかな?」
公一:「うむ。夜はヒマになるから、その時、話ができるじゃろうて……」
[同日20:00.天候:晴 同民宿1F]
政子:「えっ、自転車ですか?」
蓮華:「はい。ここ、レンタサイクルもやってるって聞いたんですけど?」
政子:「ええ、やっていますよ」
蓮華:「明日、大石寺の丑寅勤行に出たいので、自転車をお借りしたいんです」
政子:「それは構いませんけど、自転車大丈夫なんですか?」
蓮華:「はい。自転車に乗れるくらい、訓練しましたので」
政子:「凄いですねぇ……。そういうことなら、構いませんよ。裏口から出入りできるようにしますので、そこに自転車も置いておきます」
蓮華:「ありがとうございます」
そんなやり取りがあってから、栗原姉妹は風呂に入って行った。
公一:「すまんな。21時頃には話ができると思うから、またさっきの大広間まで来てくれ」
学:「分かったよ」
[同日21:00.天候:晴 同民宿1F大広間]
私と高橋は、大広間の一画でテーブルを囲むように座った。
テレビも点いておらず、室内は静かだ。
廊下を仕切る襖は夕食時間は開放されていたが、今は閉め切られている。
学:「伯父さん、リサに関することだよね?」
公一:「うむ……」
公一伯父さんはお茶を啜ってから口を開いた。
公一:「まず……あのリサじゃが、人間に戻す算段は付いたのか?」
学:「いや、まだです。危険な方法で戻すならあるらしいですけど、安全な方法がまだ見つからない。自分としても、デイライトさん側として、この『安全な方法』が見つかるまでは、人間に戻せないと思います」
公一:「危険な方法とは、恐らくGウィルスのワクチンを投与することじゃな。しかし、それはあのコには効かない上に、却って変な副作用・副反応を起こすが恐れがある。ただ単に感染しただけなら、それでもワクチンは有効じゃが、そもそもがGウィルスを生み出したBOWであるのならば、そんなワクチンは使えないということじゃ」
学:「そうなんだよねぇ……」
公一:「じゃが、考えてみたまえ。確かにアメリカのオリジナル版は、偶然の産物であったじゃろう。しかし、こっちの日本版はどうじゃ?その産物が保有していたGウィルスに手を加えて、攫ってきた子供達に投与して実験した代物ではないか」
学:「あ……!」
公一:「『今の』ワクチンは確かに効かんし、却って変な作用が起きる恐れが大なのじゃろうが、ワシは案外『安全な方法』がすぐそこにあるような気がするのじゃ」
学:「伯父さんは科学者として、それは何だと思いますか?」
公一:「科学者といっても、分野が違う。ワシが思うに、あの『特異菌』とやらがカギじゃないかと思っておるのじゃが……」
学:「特異菌ですか」
公一:「……ここまで話せばいいかの?」
学:「えっ、何がです?」
公一:「シッ」
すると、伯父さんはすっと私にメモを渡して来た。
公一:『どこかでスパイがこの話を聞いているかもしれんので、今の話は9割方のウソじゃ。本当の話は……』
学:「伯父さん……!?」
私も高橋も、目を丸くした。
伯父さんの本当の話は、これからだ。
民宿の駐車場に、再び高橋運転のレンタカーが到着する。
そこから降りて来たのは、栗原姉妹。
愛原政子:「はい、いらっしゃいませー。……あ、お帰りなさい」
高橋:「先生の伯母様、追加の2人、到着っス」
栗原蓮華:「お、お世話になりますぅ……」
政子:「学からもう料金は頂戴してますからね、どうぞそこで靴をお脱ぎになって」
この民宿では玄関で靴を脱ぎ、スリッパを履いて上がるシステムになっている。
左足が義足の蓮華さんは、左足のスリッパだけ不要である。
尚、外履きの靴は義足の下に履いているので念の為。
政子:「学から聞いております。あなたがそうなのね。奥にエレベーターがありますから、それで2階へどうぞ」
蓮華:「(階段くらいなら上れるけど、まあ、せっかくだから……)ありがとうございます」
政子:「ちょいと、お客さん」
高橋:「な、何スか?」
政子:「何で学が『先生』なの?」
高橋:「俺は先生の弟子だからです」
政子:「弟子って、あのコ、探偵の仕事よね?」
高橋:「はい!あの御方は、俺を冤罪の泥沼から救ってくれた大恩人なんです!俺も是非あの御方みたいな、超一流の探偵になりたい!そういう思いで、先生に弟子入りしました。だから、『先生』です!」
政子:「そ、そうなの……。あのコがねぇ……」
栗原姉妹はエレベーターで上がって行ったが、高橋は階段で2階に上がった。
高橋:「ただいま帰りましたっス!」
愛原学:「おー、お帰りー。今、リサ達が風呂に入ってるんだ。あいつらが上がったら、俺達も入ろう」
高橋:「えっ?男女混合なんスか!?」
学:「そうなんだよ。まあ、シャワー室は男女別らしいけどね。せっかくだから、温泉に入りたいじゃん?」
高橋:「まあ、そうっスね」
その時、部屋の入口のガラス戸がノックされた。
リサ:「先生、上がったよ」
学:「よーし!」
リサ達は備え付けの浴衣を着ていた。
さすがに、体操服とブルマーは持って来ていないようだ。
リサ:「わたしとアイリの浴衣だけSサイズって、どういうこと?」
高橋:「いや、そういうことだろ」
栗原愛理は中学3年生。
リサは高校2年生だが、体型が【お察しください】。
これも、Gウィルスによる影響なのだという。
ワクチンを投与しても、違う形でウィルスが体内に残ってしまったシェリー・バーキン氏や善場主任も、同年代の女性と比べれば小柄な体型である。
ましてや、ウィルスを造り出す側のBOWとなれば……。
尚、絵恋さんと私はMサイズ。
高橋と蓮華さんはLサイズである。
リサ:「ぶー……」
絵恋:「り、リサさん、部屋に戻りましょ!」
蓮華:「鍵が掛かってるんで、開けて欲しいんだが?」
絵恋:「は、はい!」
リサ:「同室宜しく」
愛理:「ひぅ……!」
リサの不機嫌な顔を見て、蓮華さんの背中に隠れる愛理。
蓮華:「ああ、こちらこそ」
絵恋:「な、何か2人とも怖い……」
学:「俺達も浴衣に着替えて、風呂入りに行こう」
高橋:「そうっスね」
[同日18:30.天候:晴 同民宿1F大広間]
夕食と朝食は大広間で取る。
やろうと思えば、ここを貸し切って宴会もできるようだ。
壁にはテレビが点いていて、そこでNHKが流れていた。
リサ:「おー!肉~!」
今夜はロース豚肉の生姜焼きがメインで、他にも刺身の盛り合わせなどもある。
バイト:「飲み物は何にしますか?」
学:「じゃあ、俺はビールで」
高橋:「お供します!」
リサ:「お供します!」
学&高橋:「コラ!」
伯母さんと伯父さんだけで切り盛りできるかと思っていたのだが、ちゃんとバイトのお兄ちゃんとお姉ちゃんがいるようだ。
お兄ちゃんの場合、高橋みたいな元ヤンて感じだが……。
尚、伯母さんの子供達、つまり私から見れば従兄弟に当たる人達だが、彼らは既に家を出て、静岡市内や名古屋市内で仕事をしている。
今夏のお盆には帰省するらしいが、その時、私達は仙台に向かっていることだろう。
愛原公一:「あいよ。ビール大瓶ぢゃ」
学:「あっ、伯父さん。ありがとう」
高橋:「先生、お注ぎします!」
リサ:「先生、お注ぎします!」
絵恋:「リサさん、お注ぎします!」
学:「待て待て!まずは高橋から!リサは絵恋さんに注がれろ!」
リサ:「……ん!」
リサはほぼ無言で、グラスを差し出した。
絵恋:「はーい!ウーロン茶入りまーす!」
愛原:「伯父さん、後でお話いいかな?」
公一:「うむ。夜はヒマになるから、その時、話ができるじゃろうて……」
[同日20:00.天候:晴 同民宿1F]
政子:「えっ、自転車ですか?」
蓮華:「はい。ここ、レンタサイクルもやってるって聞いたんですけど?」
政子:「ええ、やっていますよ」
蓮華:「明日、大石寺の丑寅勤行に出たいので、自転車をお借りしたいんです」
政子:「それは構いませんけど、自転車大丈夫なんですか?」
蓮華:「はい。自転車に乗れるくらい、訓練しましたので」
政子:「凄いですねぇ……。そういうことなら、構いませんよ。裏口から出入りできるようにしますので、そこに自転車も置いておきます」
蓮華:「ありがとうございます」
そんなやり取りがあってから、栗原姉妹は風呂に入って行った。
公一:「すまんな。21時頃には話ができると思うから、またさっきの大広間まで来てくれ」
学:「分かったよ」
[同日21:00.天候:晴 同民宿1F大広間]
私と高橋は、大広間の一画でテーブルを囲むように座った。
テレビも点いておらず、室内は静かだ。
廊下を仕切る襖は夕食時間は開放されていたが、今は閉め切られている。
学:「伯父さん、リサに関することだよね?」
公一:「うむ……」
公一伯父さんはお茶を啜ってから口を開いた。
公一:「まず……あのリサじゃが、人間に戻す算段は付いたのか?」
学:「いや、まだです。危険な方法で戻すならあるらしいですけど、安全な方法がまだ見つからない。自分としても、デイライトさん側として、この『安全な方法』が見つかるまでは、人間に戻せないと思います」
公一:「危険な方法とは、恐らくGウィルスのワクチンを投与することじゃな。しかし、それはあのコには効かない上に、却って変な副作用・副反応を起こすが恐れがある。ただ単に感染しただけなら、それでもワクチンは有効じゃが、そもそもがGウィルスを生み出したBOWであるのならば、そんなワクチンは使えないということじゃ」
学:「そうなんだよねぇ……」
公一:「じゃが、考えてみたまえ。確かにアメリカのオリジナル版は、偶然の産物であったじゃろう。しかし、こっちの日本版はどうじゃ?その産物が保有していたGウィルスに手を加えて、攫ってきた子供達に投与して実験した代物ではないか」
学:「あ……!」
公一:「『今の』ワクチンは確かに効かんし、却って変な作用が起きる恐れが大なのじゃろうが、ワシは案外『安全な方法』がすぐそこにあるような気がするのじゃ」
学:「伯父さんは科学者として、それは何だと思いますか?」
公一:「科学者といっても、分野が違う。ワシが思うに、あの『特異菌』とやらがカギじゃないかと思っておるのじゃが……」
学:「特異菌ですか」
公一:「……ここまで話せばいいかの?」
学:「えっ、何がです?」
公一:「シッ」
すると、伯父さんはすっと私にメモを渡して来た。
公一:『どこかでスパイがこの話を聞いているかもしれんので、今の話は9割方のウソじゃ。本当の話は……』
学:「伯父さん……!?」
私も高橋も、目を丸くした。
伯父さんの本当の話は、これからだ。
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