報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「民宿で過ごす」

2022-10-03 11:38:03 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月30日17:30.天候:晴 静岡県富士宮市(旧・上野村)某所 民宿さのや]

 民宿の駐車場に、再び高橋運転のレンタカーが到着する。
 そこから降りて来たのは、栗原姉妹。

 愛原政子:「はい、いらっしゃいませー。……あ、お帰りなさい」
 高橋:「先生の伯母様、追加の2人、到着っス」
 栗原蓮華:「お、お世話になりますぅ……」
 政子:「学からもう料金は頂戴してますからね、どうぞそこで靴をお脱ぎになって」

 この民宿では玄関で靴を脱ぎ、スリッパを履いて上がるシステムになっている。
 左足が義足の蓮華さんは、左足のスリッパだけ不要である。
 尚、外履きの靴は義足の下に履いているので念の為。

 政子:「学から聞いております。あなたがそうなのね。奥にエレベーターがありますから、それで2階へどうぞ」
 蓮華:「(階段くらいなら上れるけど、まあ、せっかくだから……)ありがとうございます」
 政子:「ちょいと、お客さん」
 高橋:「な、何スか?」
 政子:「何で学が『先生』なの?」
 高橋:「俺は先生の弟子だからです」
 政子:「弟子って、あのコ、探偵の仕事よね?」
 高橋:「はい!あの御方は、俺を冤罪の泥沼から救ってくれた大恩人なんです!俺も是非あの御方みたいな、超一流の探偵になりたい!そういう思いで、先生に弟子入りしました。だから、『先生』です!」
 政子:「そ、そうなの……。あのコがねぇ……」

 栗原姉妹はエレベーターで上がって行ったが、高橋は階段で2階に上がった。

 高橋:「ただいま帰りましたっス!」
 愛原学:「おー、お帰りー。今、リサ達が風呂に入ってるんだ。あいつらが上がったら、俺達も入ろう」
 高橋:「えっ?男女混合なんスか!?」
 学:「そうなんだよ。まあ、シャワー室は男女別らしいけどね。せっかくだから、温泉に入りたいじゃん?」
 高橋:「まあ、そうっスね」

 その時、部屋の入口のガラス戸がノックされた。

 リサ:「先生、上がったよ」
 学:「よーし!」

 リサ達は備え付けの浴衣を着ていた。
 さすがに、体操服とブルマーは持って来ていないようだ。

 リサ:「わたしとアイリの浴衣だけSサイズって、どういうこと?」
 高橋:「いや、そういうことだろ」

 栗原愛理は中学3年生。
 リサは高校2年生だが、体型が【お察しください】。
 これも、Gウィルスによる影響なのだという。
 ワクチンを投与しても、違う形でウィルスが体内に残ってしまったシェリー・バーキン氏や善場主任も、同年代の女性と比べれば小柄な体型である。
 ましてや、ウィルスを造り出す側のBOWとなれば……。
 尚、絵恋さんと私はMサイズ。
 高橋と蓮華さんはLサイズである。

 リサ:「ぶー……」
 絵恋:「り、リサさん、部屋に戻りましょ!」
 蓮華:「鍵が掛かってるんで、開けて欲しいんだが?」
 絵恋:「は、はい!」
 リサ:「同室宜しく」
 愛理:「ひぅ……!」

 リサの不機嫌な顔を見て、蓮華さんの背中に隠れる愛理。

 蓮華:「ああ、こちらこそ」
 絵恋:「な、何か2人とも怖い……」
 学:「俺達も浴衣に着替えて、風呂入りに行こう」
 高橋:「そうっスね」

[同日18:30.天候:晴 同民宿1F大広間]

 夕食と朝食は大広間で取る。
 やろうと思えば、ここを貸し切って宴会もできるようだ。
 壁にはテレビが点いていて、そこでNHKが流れていた。

 リサ:「おー!肉~!」

 今夜はロース豚肉の生姜焼きがメインで、他にも刺身の盛り合わせなどもある。

 バイト:「飲み物は何にしますか?」
 学:「じゃあ、俺はビールで」
 高橋:「お供します!」
 リサ:「お供します!」
 学&高橋:「コラ!」

 伯母さんと伯父さんだけで切り盛りできるかと思っていたのだが、ちゃんとバイトのお兄ちゃんとお姉ちゃんがいるようだ。
 お兄ちゃんの場合、高橋みたいな元ヤンて感じだが……。
 尚、伯母さんの子供達、つまり私から見れば従兄弟に当たる人達だが、彼らは既に家を出て、静岡市内や名古屋市内で仕事をしている。
 今夏のお盆には帰省するらしいが、その時、私達は仙台に向かっていることだろう。

 愛原公一:「あいよ。ビール大瓶ぢゃ」
 学:「あっ、伯父さん。ありがとう」
 高橋:「先生、お注ぎします!」
 リサ:「先生、お注ぎします!」
 絵恋:「リサさん、お注ぎします!」
 学:「待て待て!まずは高橋から!リサは絵恋さんに注がれろ!」
 リサ:「……ん!」

 リサはほぼ無言で、グラスを差し出した。

 絵恋:「はーい!ウーロン茶入りまーす!」
 愛原:「伯父さん、後でお話いいかな?」
 公一:「うむ。夜はヒマになるから、その時、話ができるじゃろうて……」

[同日20:00.天候:晴 同民宿1F]

 政子:「えっ、自転車ですか?」
 蓮華:「はい。ここ、レンタサイクルもやってるって聞いたんですけど?」
 政子:「ええ、やっていますよ」
 蓮華:「明日、大石寺の丑寅勤行に出たいので、自転車をお借りしたいんです」
 政子:「それは構いませんけど、自転車大丈夫なんですか?」
 蓮華:「はい。自転車に乗れるくらい、訓練しましたので」
 政子:「凄いですねぇ……。そういうことなら、構いませんよ。裏口から出入りできるようにしますので、そこに自転車も置いておきます」
 蓮華:「ありがとうございます」

 そんなやり取りがあってから、栗原姉妹は風呂に入って行った。

 公一:「すまんな。21時頃には話ができると思うから、またさっきの大広間まで来てくれ」
 学:「分かったよ」

[同日21:00.天候:晴 同民宿1F大広間]

 私と高橋は、大広間の一画でテーブルを囲むように座った。
 テレビも点いておらず、室内は静かだ。
 廊下を仕切る襖は夕食時間は開放されていたが、今は閉め切られている。

 学:「伯父さん、リサに関することだよね?」
 公一:「うむ……」

 公一伯父さんはお茶を啜ってから口を開いた。

 公一:「まず……あのリサじゃが、人間に戻す算段は付いたのか?」
 学:「いや、まだです。危険な方法で戻すならあるらしいですけど、安全な方法がまだ見つからない。自分としても、デイライトさん側として、この『安全な方法』が見つかるまでは、人間に戻せないと思います」
 公一:「危険な方法とは、恐らくGウィルスのワクチンを投与することじゃな。しかし、それはあのコには効かない上に、却って変な副作用・副反応を起こすが恐れがある。ただ単に感染しただけなら、それでもワクチンは有効じゃが、そもそもがGウィルスを生み出したBOWであるのならば、そんなワクチンは使えないということじゃ」
 学:「そうなんだよねぇ……」
 公一:「じゃが、考えてみたまえ。確かにアメリカのオリジナル版は、偶然の産物であったじゃろう。しかし、こっちの日本版はどうじゃ?その産物が保有していたGウィルスに手を加えて、攫ってきた子供達に投与して実験した代物ではないか」
 学:「あ……!」
 公一:「『今の』ワクチンは確かに効かんし、却って変な作用が起きる恐れが大なのじゃろうが、ワシは案外『安全な方法』がすぐそこにあるような気がするのじゃ」
 学:「伯父さんは科学者として、それは何だと思いますか?」
 公一:「科学者といっても、分野が違う。ワシが思うに、あの『特異菌』とやらがカギじゃないかと思っておるのじゃが……」
 学:「特異菌ですか」
 公一:「……ここまで話せばいいかの?」
 学:「えっ、何がです?」
 公一:「シッ」

 すると、伯父さんはすっと私にメモを渡して来た。

 公一:『どこかでスパイがこの話を聞いているかもしれんので、今の話は9割方のウソじゃ。本当の話は……』
 学:「伯父さん……!?」

 私も高橋も、目を丸くした。
 伯父さんの本当の話は、これからだ。

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