[1月26日09:30.イリノイ州シカゴ オヘア国際空港 レイチェル&コードネーム“ショーン”]
イスラム武装過激派のテロの後ということもあって、CTAトレイン(シカゴ・L)の駅は警察官が巡回するなど、物々しい雰囲気になっていた。
通勤客でごった返す中、2人は空港に到着する。
日本の地方ローカル線よりも更に激しく揺れる電車に揺られたせいか、電車を降りてからも、何だか体が揺れている感じだ。
オヘア空港はアメリカでも……世界でも有数の巨大な空港であるが故、結構迷いやすい。
もしレイチェルが一緒でなかったら、ショーンは間違いなく迷っていたことだろう。
航空券とパスポート片手に、手荷物検査場へ向かう。
運行状況をタイムテーブルで確認したが、10時45分発のANA便は予定通り、フライトするようである。
金属探知機を通過するのに緊張するが、ここはすんなりと通過。
出発ロビーで搭乗を待つものの、待ち時間は結構長い。
「レイチェルは日本で、何をするつもりなの?」
「何って……あなたの送り届けよ。帰国するまでが任務なんだからね」
「その後は?」
「日本で待ち受けている、向こう側のエージェントに例の物を渡して報告。これは私の仕事だから」
「その後はまたアメリカに戻る?」
「んー、多分ね。結局私も組織の命令で動くものだから、別の国に別の任務で行くかもしれないし……。まあ、とにかく東京に着いたら、ショーンは報酬もらって、任務は終わりってわけ」
「そうか……」
「寂しがることはないわ。もしかしたら、また組織から声が掛かって、その時また会えるかもしれないし、あるいはまた別の新しい出会いがあるかもしれないわ。とにかく、日本に着くまでは一緒なんだから、それまでは……ね」
[同日10:50.ANA011便機内 プレミアム・エコノミー レイチェル&“ショーン”]
突然の機材変更のアナウンスが流れ、ようやくショーン達が乗り込んだ時には、予定時刻を過ぎてしまっていた。
だがどうやら機材変更は、ラッキーだったかもしれない。
何故なら、ショーン達の席には個別のモニタが付いていたからだ。
「よし。これで、映画が観れる」
と、ショーンはガッツポーズ。
プレミアム・エコノミーは、さすがプレミアムなだけあって、シートは普通のエコノミーよりは広い。
シートピッチに関しては、JR在来線特急の普通席くらいではないだろうか。
「ショーン、荷物を乗せるよ」
預けた荷物以外に、持ち込んだ荷物をハットラックに乗せるレイチェル。
結構重たいバッグなのだが、彼女はヒョイと持ち上げ、軽々と荷物をハットラックに乗せてしまった。
「レイチェル、結構力あるんだねぇ……」
「そう?」
ショーン達の座席は進行方向左側の2人席。
「いよいよ、アメリカともお別れか……」
窓側に座ったショーンは、名残惜しそうに窓の外を見る。
が、あいにくと飛行機の真ん中辺りに位置する席ということもあってか、ちょうど翼の上付近だった。
しばらくして、飛行機が動き出す。
ヘッドホンからは、ボーカロイドの歌が流れてきた。
「本当にボーカロイド達は、どんどん新しい歌をリリースしていくなぁ……」
ショーンが感心したかのように呟くと、
「そりゃ、ボーカロイドは歌うのが使命だからね」
と、レイチェルが答えた。
いい所で歌が途切れ、代わりに機内安全ビデオが流れる。
「ちぇっ……」
「まあ、使命を果たせないロボットは、ただのガラクタなわけよ。ボーカロイドで言えば、『歌えないボーカロイド』はただのガラクタってところかしら?」
「それは手厳しいな」
ショーンは苦笑いした。
飛行機は約20分遅れで離陸した。
飛行機に乗り慣れていないショーンは、離陸時の重圧感が1番手に汗握るところだった。
[同日12:00.同機内 レイチェル&“ショーン”]
離陸して水平飛行になってから、シートベルト着用サインが消えた。
時折、まるで電車がポイントを通過するような揺れがあるだけで、それ以外は特に大きな揺れは無い。
飲み物が配られると、レイチェルは例によって、水しか頼まなかった。
で、昼時になると機内食が配られる。
ビジネスクラス以上は一品一品配られるタイプだが、プレミアム・エコノミー以下は弁当のように一気に配膳される。
「へぇ!まさか、飛行機でソバが出るとはね!」
「さすがは日本の航空会社ね。……で、アタシは食べられないから、ショーン、アタシの分まで食べて」
「はは……そんなに食べれないよー」
と言いつつ、レイチルの分、半分は食べたショーンだった。
食べた後は、再び映画を観始める。
映画観賞だけで日本へ行けるかと思ったショーンだったが、さすがに翌日の15時着(予定)では、観尽くしてしまう恐れがあった。
ましてや離陸に時間が掛かったのだから、着陸も少し遅れるかもしれない。
レイチェルは怪しまれないよう、時折はトイレに立った。
しかし、そこで用を足すわけではない。
化粧直しはするが、そこで組織との連絡もできないため(機内での無線使用は禁止)、ただ本当に時間調整をするだけであった。
夕食も終わって、今度はゲームでもやって時間を潰す。
「おっ?」
しばらくすると毛布が配られ、消灯の時間が迫っていることを実感する。
「どれ、歯ぁ磨いて寝るか」
「うん」
レイチェルはショーンが席を立ったのを見計らうと、すぐに充電コードを繋いだ。
それは毛布で上手いこと隠す。
ショーンが戻って来た時には、機内は減光されていたので、バレることもないだろうと……。
[1月27日15:30.千葉県成田市 成田空港第1ターミナル “ショーン”]
確かに飛行機は30分遅れとはいえど、無事に着陸した。
レイチェルから労いの言葉と、ここから先の移動手段は電車ではなく、急遽、組織の用意した車に変更になったことが伝えられた。
その後のことは覚えていない。
どの位の時間、どこで、何をしていたのか……。
イスラム武装過激派のテロの後ということもあって、CTAトレイン(シカゴ・L)の駅は警察官が巡回するなど、物々しい雰囲気になっていた。
通勤客でごった返す中、2人は空港に到着する。
日本の地方ローカル線よりも更に激しく揺れる電車に揺られたせいか、電車を降りてからも、何だか体が揺れている感じだ。
オヘア空港はアメリカでも……世界でも有数の巨大な空港であるが故、結構迷いやすい。
もしレイチェルが一緒でなかったら、ショーンは間違いなく迷っていたことだろう。
航空券とパスポート片手に、手荷物検査場へ向かう。
運行状況をタイムテーブルで確認したが、10時45分発のANA便は予定通り、フライトするようである。
金属探知機を通過するのに緊張するが、ここはすんなりと通過。
出発ロビーで搭乗を待つものの、待ち時間は結構長い。
「レイチェルは日本で、何をするつもりなの?」
「何って……あなたの送り届けよ。帰国するまでが任務なんだからね」
「その後は?」
「日本で待ち受けている、向こう側のエージェントに例の物を渡して報告。これは私の仕事だから」
「その後はまたアメリカに戻る?」
「んー、多分ね。結局私も組織の命令で動くものだから、別の国に別の任務で行くかもしれないし……。まあ、とにかく東京に着いたら、ショーンは報酬もらって、任務は終わりってわけ」
「そうか……」
「寂しがることはないわ。もしかしたら、また組織から声が掛かって、その時また会えるかもしれないし、あるいはまた別の新しい出会いがあるかもしれないわ。とにかく、日本に着くまでは一緒なんだから、それまでは……ね」
[同日10:50.ANA011便機内 プレミアム・エコノミー レイチェル&“ショーン”]
突然の機材変更のアナウンスが流れ、ようやくショーン達が乗り込んだ時には、予定時刻を過ぎてしまっていた。
だがどうやら機材変更は、ラッキーだったかもしれない。
何故なら、ショーン達の席には個別のモニタが付いていたからだ。
「よし。これで、映画が観れる」
と、ショーンはガッツポーズ。
プレミアム・エコノミーは、さすがプレミアムなだけあって、シートは普通のエコノミーよりは広い。
シートピッチに関しては、JR在来線特急の普通席くらいではないだろうか。
「ショーン、荷物を乗せるよ」
預けた荷物以外に、持ち込んだ荷物をハットラックに乗せるレイチェル。
結構重たいバッグなのだが、彼女はヒョイと持ち上げ、軽々と荷物をハットラックに乗せてしまった。
「レイチェル、結構力あるんだねぇ……」
「そう?」
ショーン達の座席は進行方向左側の2人席。
「いよいよ、アメリカともお別れか……」
窓側に座ったショーンは、名残惜しそうに窓の外を見る。
が、あいにくと飛行機の真ん中辺りに位置する席ということもあってか、ちょうど翼の上付近だった。
しばらくして、飛行機が動き出す。
ヘッドホンからは、ボーカロイドの歌が流れてきた。
「本当にボーカロイド達は、どんどん新しい歌をリリースしていくなぁ……」
ショーンが感心したかのように呟くと、
「そりゃ、ボーカロイドは歌うのが使命だからね」
と、レイチェルが答えた。
いい所で歌が途切れ、代わりに機内安全ビデオが流れる。
「ちぇっ……」
「まあ、使命を果たせないロボットは、ただのガラクタなわけよ。ボーカロイドで言えば、『歌えないボーカロイド』はただのガラクタってところかしら?」
「それは手厳しいな」
ショーンは苦笑いした。
飛行機は約20分遅れで離陸した。
飛行機に乗り慣れていないショーンは、離陸時の重圧感が1番手に汗握るところだった。
[同日12:00.同機内 レイチェル&“ショーン”]
離陸して水平飛行になってから、シートベルト着用サインが消えた。
時折、まるで電車がポイントを通過するような揺れがあるだけで、それ以外は特に大きな揺れは無い。
飲み物が配られると、レイチェルは例によって、水しか頼まなかった。
で、昼時になると機内食が配られる。
ビジネスクラス以上は一品一品配られるタイプだが、プレミアム・エコノミー以下は弁当のように一気に配膳される。
「へぇ!まさか、飛行機でソバが出るとはね!」
「さすがは日本の航空会社ね。……で、アタシは食べられないから、ショーン、アタシの分まで食べて」
「はは……そんなに食べれないよー」
と言いつつ、レイチルの分、半分は食べたショーンだった。
食べた後は、再び映画を観始める。
映画観賞だけで日本へ行けるかと思ったショーンだったが、さすがに翌日の15時着(予定)では、観尽くしてしまう恐れがあった。
ましてや離陸に時間が掛かったのだから、着陸も少し遅れるかもしれない。
レイチェルは怪しまれないよう、時折はトイレに立った。
しかし、そこで用を足すわけではない。
化粧直しはするが、そこで組織との連絡もできないため(機内での無線使用は禁止)、ただ本当に時間調整をするだけであった。
夕食も終わって、今度はゲームでもやって時間を潰す。
「おっ?」
しばらくすると毛布が配られ、消灯の時間が迫っていることを実感する。
「どれ、歯ぁ磨いて寝るか」
「うん」
レイチェルはショーンが席を立ったのを見計らうと、すぐに充電コードを繋いだ。
それは毛布で上手いこと隠す。
ショーンが戻って来た時には、機内は減光されていたので、バレることもないだろうと……。
[1月27日15:30.千葉県成田市 成田空港第1ターミナル “ショーン”]
確かに飛行機は30分遅れとはいえど、無事に着陸した。
レイチェルから労いの言葉と、ここから先の移動手段は電車ではなく、急遽、組織の用意した車に変更になったことが伝えられた。
その後のことは覚えていない。
どの位の時間、どこで、何をしていたのか……。
罪障消滅:苦労した先に幸せが待っている。
仏罰:骨折り損のくたびれ儲け。
やっぱ国内が一番だ。