報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「愛原の家族からの情報」

2022-09-24 12:49:47 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月16日14:09.天候:晴 東京都千代田区神田岩本町 都営地下鉄岩本町駅→都営新宿線1350T電車最後尾車内]

〔まもなく4番線に、各駅停車、本八幡行きが、10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 中央線を神田駅で降りた私達は、神田駅周辺のラーメン屋で昼食を取った。
 リサのヤツ、丼からはみ出るほどの大きなチャーシューが目立つチャーシュー麺を注文しやがったが、おかげで少しは機嫌が直ったようだ。
 上野姉妹とはそこで別れ、彼女達は地下鉄銀座線の神田駅、私達は都営新宿線の岩本町駅に向かった。

 愛原:「とにかく、上野姉妹の母親のことは、デイライトさんに任せる。俺達は、もうノータッチ。これでいいな?」
 高橋:「納得はできませんが、先生の御命令は絶対ですから」
 リサ:「先生の命令は絶対……」

 10両編成の都営車両がやってくる。
 地下鉄の電車が巻き上げる風で、リサの脱色された髪が靡いた。

〔4番線の電車は、各駅停車、本八幡行きです。いわもとちょう~、岩本町~〕

 1番後ろの電車に乗り込む。
 都営新宿線はワンマン運転されておらず、乗務員室には車掌がいた。

〔4番線、ドアが閉まります〕

 短い発車メロディが鳴った後で、電車のドアとホームドアが閉まる。
 ホームドアが無かった頃は、ホームの後ろの方で電車を待っていると、電車入線時の強風がモロに当たって凄かったものだ。
 発車合図のブザーが聞こえてくると、ブレーキのエアーが抜ける音がして、電車が走り出す。

〔次は馬喰横山、馬喰横山。都営浅草線、JR総武快速線はお乗り換えです。お出口は、左側です〕

 愛原:「ん?」

 その時、私のスマホにLINEの着信があった。
 善場主任からかと思い、急いでスマホを取り出す。

 愛原:「ありゃ?」

 ところが、違った。
 実家の母親からだった。
 どうやら今度の夏、いつ帰省するかを知りたいらしい。
 それと……。

 母親:「公一伯父さんが、学に何か話があるみたいだから、顔を出して来たら?」

 とのことだ。
 日本アンブレラに、それが悪用されることを知りながら自作の薬品を譲り渡した廉で警察に逮捕され、検察庁に送検されたものの、そこでは起訴猶予処分となり、釈放されている。
 日本アンブレラが悪用することを知りながら譲り渡したことは、伯父さんは否定していたし、確たる証拠を掴めなかったというのが大きい。
 また、年齢的なものもある。

 愛原:(伯父さんは今、どこに住んでるの?)

 と、私は母親に質問した。
 小牛田の家は爆破して全壊した為、もうそこに住むことはできない。
 かといって、実家に引き取ったわけではないようだ。
 すると、母親は……。

 母親:「伯母さんの所」

 と、答えた。

 愛原:「え……?」

 私は首を傾げた。
 公一伯父さんは、だいぶ昔に伯母さんと離婚している。
 その伯母さんも実家に帰ってしまっているが、そこに転がり込んだということなのだろうか?
 だとしたら……。

 愛原:「長旅になりそうだ」
 高橋:「え?何スか?」
 愛原:「いや、何でもない」

[7月19日11:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 3連休明けの最初の平日、善場主任が私の事務所を訪ねて来た。
 上野利恵に関することで、現況と今後のことについての注意事項を申し伝えに来たようだ。
 まあ、予想通りだった。
 栃木の宗教法人天長会が身元引受人となっていて、今はそこでおとなしくしていること、今後はリサの気持ちもあるが、デイライトの監視下に置かれるので、手出しは無用ということだった。

 愛原:「もちろんです。リサにも、それは伝えてあります」
 善場:「御理解が早く、助かります」
 愛原:「それと、こちらからも気になることがあるのですが……」
 善場:「何でしょう?」
 愛原:「私の伯父……愛原公一のことなんですが……」
 善場:「検察で起訴猶予になりましたね。さすがに、ムリがありましたか……」
 愛原:「伯父さんの農薬が、直接バイオテロに繋がったわけじゃないですからね」

 農薬というか、化学肥料か。
 どんな枯れた苗でも、それを使えば立ちどころに元気になるという……。
 日本アンブレラはそれを高額で買い取り、自分とこの薬品と掛け合わせて、とんでもない薬を造ろうとした。
 恐らく、日本で言えばうちのリサ、外国で言えばエブリンを造れるものだったのだろう。
 手始めに、東京中央学園上野高校で自殺し、その後、“トイレの花子さん”として化けて出た女子生徒を、遺骨の状態から蘇生させるという暴挙に出た。
 白井伝三郎は、その蘇生した女子生徒の肉体を乗っ取り、どこかで生きているのだという。
 アンブレラの最終目的は、不老不死と死んだ人間の蘇生。

 善場:「その、愛原公一氏がどうかしましたか?」
 愛原:「私に話したいことがあるそうです。何でも、その話は日本アンブレラにもしなかった話だそうで……」
 善場:「宮城の住居跡の地下からは、BSAAが資料や薬剤などを押収していきました。それの事でしょうか?」
 愛原:「……かもしれません」
 善場:「あの中にも、日本アンブレラが明らかに悪用目的で公一氏に近づき、公一氏もそれを知りつつ、自作の化学肥料を譲り渡した証拠がありました。それで裁判に持って行けると思ったのですが、残念でした」

 警察は逮捕できても、伯父さんの薬品が直接バイオテロに使われたという証拠が無い以上、それ以上の罪には問えないというわけだ。
 結局分かったのは、伯父さんの薬がバイオテロに使われたのではなく、白井伝三郎の復活というか、まあ、逃亡に使われたというか……それくらいしか影響が無かったことだ。
 だからまあ、犯人の逃走を手助けした罪……になるのかどうかは不明だが、やっぱりそんな不確かな状態では、検察も裁判で有罪に持ち込める自信は無かったようだ。
 それで、起訴猶予と。

 愛原:「まあ、伯父さんも歳ですからねぇ……」

 とある上級国民のように、車で直接轢き殺しているのなら、是非とも刑務所へといったところだが、伯父さんの場合、違うからなぁ……。
 伯父さんの薬品が直接バイオテロに使われたわけでも、バイオテロの材料に使われたわけでもない。
 白井伝三郎の野望の肥やしになっただけ。
 そしてその本人は、自分自身の欲望に忠実であるが、それが直接殺戮に繋がっているわけではないと。
 これで伯父さんが知らなければ、伯父さん自身も研究成果を騙し取られて悪用された被害者ってことにできたのだが、知っていて渡したという証拠を掴まれてしまったからなぁ……。
 例え起訴猶予となっても前歴は付くし、逮捕歴も残るから、そういった社会的制裁でイーブンといったところだろうか。

 愛原:「リサの夏休みの時期、斉藤絵恋さんも上京してきますし、ちょうど帰省旅行がてら、伯父さんに会いに行って話を聞こうと思うんです」
 善場:「そんなに大勢で行って、大丈夫なのですか?」
 愛原:「大丈夫です。伯父さんが転がり込んでいる伯母さんの実家とは、民宿のことですから」
 善場:「それは何ともまあ、都合の良い……」

 雲羽:「それが、“ノベラーエクスプレス関東”ですw」
 多摩:「普段の生活が、そんなに都合が良くないからって、オマエ……」

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