報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「夏休みの始まり」

2022-09-24 15:43:12 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月25日06:09.天候:晴 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅→都営新宿線509T電車先頭車内]

〔まもなく1番線に、京王線直通、各駅停車、橋本行きが、10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください。京王線内、区間急行となります〕

 リサ達の夏休みが始まり、私と高橋、リサは菊川駅にいた。
 とはいえ、私達がこれから旅行に出かけるわけではない。
 半分は仕事、もう半分はボランティアのようなものだ。

 高橋:「ふわぁ~あ……。先生、何でこんな朝早いんスか……」
 愛原:「しょうがないだろ。上野姉妹の出発が、この時間帯なんだから……」
 リサ:「あいつら……!」

 10両編成の電車がやってくる。
 京王線直通ながら、やってきたのは都営の車両だった。

〔1番線の電車は、京王線直通、各駅停車、橋本行きです。きくかわ~、菊川~〕

 まだ女性専用車両が実施されていない時間帯だったが、平日の月曜日ということもあり、既にそれなりの乗客が乗っていた。
 乗り込むと、私は吊り革に掴まる。
 長身の高橋は、ドアの上の高い吊り革にも易々と掴まれた。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 電車は駆け込み乗車の対応で、再開閉した後、ようやく発車した。

〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕

 上野姉妹は銀座線で神田駅までやってくる。
 そこで合流し、東京駅まで行って、彼女らが帰省する新幹線に乗る所を見送るまでが仕事。
 何でこんな面倒なことをというのは、母親の上野利恵が仮釈放されたことで、彼女らへのBSAAからの警戒度が高まったからである。
 それまでは研究施設に収容していたことが、却って人質状態にできており、それで上野姉妹をコントロールしていた気になっていたのだろう。
 しかし、デイライトの判断で仮釈放になったことで、BSAAはコントロールの手段を失ったと見たことで、上野姉妹に矛先を向けたということだ。
 リサと違って半分は人間の血が流れており、ちゃんとした戸籍も持っている為に、手荒な監視ができないという制約がある。
 デイライトとしても、ちゃんと委託の探偵業者に監視を委託しているという主張をBSAAにしたいが為に、私達が動員されたわけだ。

 愛原:「上野姉妹が新幹線に乗って出発したら、そこで業務終了だよ」
 高橋:「何か、デイライトとBSAAのマウント取り合戦に巻き込まれたみたいで、嫌な感じっスね」
 愛原:「まあ、そう言うな。これで報酬が貰えるんだから、美味しいもんだ」
 高橋:「はあ……」

[同日06:16.天候:晴 東京都千代田区神田岩本町 都営地下鉄岩本町駅→千代田区鍛冶町 JR神田駅]

〔「まもなく岩本町、岩本町。お出口は、右側です」〕

 電車が岩本町駅の上り本線ホームに滑り込む。
 ダイヤ改正で急行電車の本数が大幅に減らされたことで、この駅の中線ホームは殆ど使用されなくなってしまったという。

〔1番線の電車は、京王線直通、各駅停車、橋本行きです。いわもとちょう~、岩本町~、秋葉原〕

 この駅で電車を降りる。
 オフィス街にも程近く、また、秋葉原駅と神田駅にも徒歩圏内ということもあり、降車客は多かった。
 が、それでも他の都営地下鉄と交差していない為か、急行停車駅ではない。
 リサは私服を着ていた。
 白いTシャツに黒いスカートを穿き、頭にはピンク色のキャップを被っている。
 これで角は隠せそうだが、長耳は隠せないだろう。
 とはいえ、こんな夏場に長袖のパーカーを羽織るのは違和感があるか。
 因みにTシャツのシルクスクリーンは、高橋の趣味。

 愛原:「段々、暑くなってくるねぇ……」
 高橋:「海にでも行きますか?」
 リサ:「おー!海、行きたーい!」
 愛原:「まあ……海には行くだろうな」

 私はニヤッと笑った。

 高橋:「マジっスか!?」
 愛原:「ああ」

 『海水浴』とは、一言も言っていないw

[同日07:00.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅・東北新幹線ホーム]

 神田駅で上野姉妹と合流した。
 そこで私は、上野姉妹に東京駅から那須塩原駅までの新幹線のキップ(自由席)を購入する。
 本来なら帰省は彼女らの意思である為、彼女ら、またはその保護者が出すべきなのだが、ここでも背後関係の軋轢が絡んでしまっている。
 もちろん、この新幹線代は私のポケットマネーではない。
 あくまで費用を立て替えるだけで、後はデイライトさんに領収書を出して請求することになる。
 デイライトとしては、彼女らの交通費の面倒を看ることで、引き続き監視を行っているということにしたいのだ。
 そういうことであるのなら、本来なら、私達がずっと彼女らに付いている必要があるのだろう。
 しかし、さすがにそれは無理がある。
 そうなると、今度はリサの監視ができなくなるし、そもそもリサを上野利恵の住まいへ連れて行ったりしたら……という問題も発生する。
 上野姉妹にはGPSを持たせ、定期的な連絡をさせるということで、折衷案としたとのこと。
 で、東京側では私達が見送ることで、その責任を果たしたことにする、と……。

 神田駅で那須塩原までのキップを購入すると、乗車券は『東京山手線内→那須塩原』という表記がされる。
 これは山手線の全駅、並びに山手線の内側のJR駅なら全てそこで乗り降りが可能というものだ。
 当然、神田駅も含まれる。
 上野姉妹には、まずその乗車券だけ自動改札機に入れてもらう。
 そして、私達は手持ちのICカードで改札口を通過した。
 で、朝ラッシュの始まる直前の山手線に乗り込み、それで東京駅に向かった。
 東京駅からは、新幹線乗り換え口で上野姉妹は乗車券と特急券を。
 私達はICカードと入場券を使う。
 そのからくりを説明すると、所定の字数を大幅に超えてしまうので、今回は省かせて頂く。

〔21番線から、“なすの”251号、那須塩原行きが発車致します。次は、上野に止まります。黄色い線まで、お下がりください〕

 上野姉妹は1号車の自由席に乗り込んだ。
 因みに朝飯の駅弁も、買ってあげた。
 これはまあ、サービスにするか。
 多分、これは請求できないだろう。

 愛原:「よし、じゃあ次に行くぞ」
 高橋:「はいはい」

 ここから先は、完全なるボランティアとなる。
 次の行き先は……次回に続く!

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