報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“アンドロイドマスター” 「フィールドテスト導入」

2014-09-16 08:36:58 | アンドロイドマスターシリーズ
[9月15日15:00.㈶日本アンドロイド研究開発財団本部 敷島孝夫、鏡音リン・レン、シンディ、森須]

「はあ!?全部、作戦!?」
 本部に戻ると、そこには何故か仙台支部長の森須がいた。
「ああ。考えてもみてくれ。シンディほどのマルチタイプが、あんな超小型のリモコンなんかで動くと思うかね?」
「んがっ……!?」
 敷島は口をあんぐり開けた。
 シンディは右手を腰に当てながら言った。
「弱い赤外線は飛んでくるからね。まあ、それを合図にして適当に対応したワケよ」
「だが、シンディ。何故アジトまで行かなかった?お前を連れ去った連中は、全く怪しんでいなかったわけだろう?」
 森須が疑問を投げた。
「あいつらはね」
「どういうことだ?」
「作戦は余りにも上手く行き過ぎた。バカな下っ端はそれで騙されたけど、幹部連中は逆に怪しんでいたかもしれない。私がアジトに連れ込まれた時点で、いきなり爆破される恐れがあったからね」
「それで簡単に壊れるお前ではあるまい?」
「私はともかく、財団が更に危険な事態に晒される恐れがあった、という予想は間違いかしら?とにかく、下っ端はアジトの場所を確実に知っていたわけだから、あとは警察が踏み込んでくれるんじゃないの?」
「確かに、作戦が失敗しては元も子も無いが……。今頃、部下達が警察に逮捕されたことを知った幹部達がアジトを放棄してしまったのではないか?」
「それでも何かしら痕跡くらいはあるでしょう。昔の特撮モノじゃ、証拠隠滅の為に悪の組織が古いアジトを爆破処分していたみたいだけど、今はそんな時代でもないでしょう?」
「ふふっ……。お前はエミリーより色々考えて行動してるようだな」
「当然よ」
 その時、抜き足差し足忍び足で部屋を抜け出そうとしている者がいた。
「!」
 シンディが左目から赤いビームを発射し、その者の行く手を阻む。
「でっ!?」
 ズデンと転んだのは敷島。
「どこに行くのかね?」
「あ、あの、これからリン達の雑誌の取材が……」
「えー?リン達、お仕事もう終わりだよね?」
 リンが小首を傾げた。
「こ、こら!そこは話に乗ってくれ!」
「プロデューサー。もう諦めましょうよ」
 レンが溜め息をついた。
「ええっ?」
「敷島君にあっては、シンディのフィールドテストの担当者を命ずる」
「ええーっ!?」
「差し当たり、まずはシンディを仙台に連れて帰る前に都内を歩いてくれ」
「うえー……」
「そんな顔するな。アリス君の依頼で、帰りは新幹線だ。これがそのキップだ」
「お、ということは指定席ですか?」
「逆を言えば、都内での行動はその時間がタイムリミットということだ。それじゃ、よろしく頼むよ」
「あれ?支部長は?」
「私はもう帰る。とんだ休日出勤だったな」
(プロデューサーに土曜も日曜も関係無いんですがね)
 シキシマはその言葉を飲み込んだ。

[同日15:30.都営地下鉄都庁前駅 敷島、鏡音リン・レン、シンディ]

「帰りの新幹線、思いっきり夜かよ」
 最終の“はやぶさ”号だった。
「てか、そもそも自由席の無い電車じゃん」
「あら、いいじゃない。鈍行乗り継いで帰らされるよりは」
 と、シンディ。
「だったら高速バスの方がいいよ!」
「アリスお嬢……じゃなかった。アリス博士の尽力だっていうのなら、ちゃんと感謝しなさい」
「お前が言うかなぁ……?」
「何よ?」

〔まもなく1番線に、六本木、大門方面行きが到着します。(ホーム)ドアから離れて、お待ちください〕

「で、どこまで行くの?」
「東京タワー」
「スカイツリーじゃなく?」
「贅沢言うなや。3連休で、スカイツリーの方はメチャ混みだっつーの」
 そんなことを喋っているうちに、電車がホームに滑り込んでくる。
 6の字運転をする電車の終点の位置関係上、この時点においては最終的な行き先を旅客に案内しない。

〔都庁前、都庁前。飯田橋、両国方面はお乗り換えです〕

「そういえば、こいつもATO運転だったな。例のテロ組織が嫌がる電車じゃないのか」
 敷島はブラインドで閉じられた運転室の方を見て言った。
「そうねぇ……」
「じゃあ、乗らないってことだな、あいつらは」
 短い発車メロディが流れる。

〔1番線から六本木、大門方面行きが発車します。閉まるドアに、ご注意ください〕

 電車は暗闇のトンネルの中を突き進んだ。

〔次は新宿、新宿。都営新宿線、東京メトロ丸ノ内線、京王線、小田急線、JR線はお乗り換えです。お出口は、右側です〕

 電車内の中吊り広告には、リンとレンが写っているものがあった。
「でもどうして東京タワーなの?」
「これ、電波ジャックでもしろって話なのか?」
 敷島はタブレットを見た。
「ミクの時は無かったぞ?」
「そりゃあ初音ミクはボーカロイドだし、テストの場所も仙台でしょう?その違いは大きいよ」
「で、お前は何をするか知ってるのか?」
「“不協和音”を感じ取れってところかな」
「不協和音?」
「スカイツリーが完成して、電波に余裕ができたのが大きいね。まあ、あなたは見てるだけでいいから」
「アンテナ壊すなよ」

[同日16:30.東京タワー特別展望台 敷島、鏡音リン・レン、シンディ]

 シンディはヘッドホン型の両耳に手を当て、目を閉じた。
「! そういえばエミリーも、昔やってたな、ああいうの」
 敷島は大展望台で買った缶コーヒーを口に運びながら、ふと気づいた。
「エミリーが何やってたの?」
 リンが聞いてきた。
「あ、そうか。まだお前達が南里研究所に来る前の話だったか。いや、俺がミクのフィールドテストやってた時なんだけど、泉ヶ岳のスキー場の近くでエミリーも同じことをやっててさ。“不協和音”を探すとか、同じことを言ってたんで、引っ掛かってたんだ。何か、怪電波でも探してるのかね?」
「リンは何も感じないけど……」
「ボーカロイドとは違うからなぁ。マルチタイプならではの機能があるんだろう」
 そんなことを話していると、シンディがやってきた。
「どうだった?てか、“不協和音”って何だ?」
「私やエミリーのような、他の兄弟がいないか捜してたの」
「そうだったのか!」
 マルチタイプは殆どが証拠隠滅の為に廃棄処分されたが、中にはエミリーやシンディのように生き延びた個体もいる。
「反応があったのは、エミリーだけだったね」
 何でこんなことしてるのかというと、マルチタイプの最終生産台数が不明だからである。
 つまり、他にも生き延びている個体がいる可能性があるということである。
 但し、ちゃんと起動していることが条件。
 そうしていないと、ちゃんと起動している個体の“呼び掛け”に応じてくることはない。
「んー、こりゃ本当にお前達だけかもなぁ……」
 敷島は缶コーヒーを飲み干した。
(いい加減、バージョン・シリーズを完全処分しないのも、この辺りが理由かな……)
「まあ、いいや。とにかく、次へ行こう」
「次?」
 敷島達は地上に降りるエレベーターへ向かった。

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3 コメント

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つぶやき (作者)
2014-09-16 13:18:51
宇都宮の手前で新幹線止まったでござる。
返信する
つぶやき 2 (作者)
2014-09-16 13:59:03
“やまびこ”42号は、大宮駅に11分遅れで到着。
宇都宮の手前で車内の照明が消えた時は何事かと思った。
返信する
つぶやき 3 (作者)
2014-09-16 14:02:55
多摩先生と交信中だったが、仙台は大して揺れなかったようだ。
シンディの立ち位置をどうするか、“ユタと愉快な仲間たち”をいつ再開するかだったが、新幹線ストップでうやむやである。
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