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報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「出発の見送り」

2025-03-16 16:38:04 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月17日09時15分 天候:雨 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所2階→事務所1階→愛原家4階]

 朝食を食べ終わり、美樹が使用していたベッドを倉庫にしまう。
 美樹は来客なので手伝わなくて良いと言ったのだが、どうもそこは合宿に慣れた体育会系なのか、手伝おうとした。
 そこで私は、リサの部屋の掃除の手伝いでもヨロシクと言っておいた。
 美樹が使っていた折り畳みベッドは、事務所隣の倉庫にしまっておく。
 布団は後でクリーニング店に持って行くので、外に出しておいた。
 そんな時、事務所の中からインターホンの音が聞こえた。
 これは玄関外のインターホンの音だ。
 誰か、来訪者が来たのだろうか?
 エレベーターの方を見ると、パールが3階から1階にむかって降りて行くのが見えた。
 月曜日とはいえ、今日は祝日だ。
 よほどの事が無い限り、善場係長が来訪してくるとは思えない。
 パールのテラセイブの仲間も、今のところは隠密行動状態だ。
 私のいる間に、堂々と来訪してくることは無いだろう。
 となると……。
 私は倉庫の鍵を閉めて、階段で1階に下りた。

 パール「先生。郵便局の人でした」
 愛原「あ、何だ」
 パール「先生宛てに速達です」

 速達郵便は受領印は要らないが、配達方法は配達先に原則手渡しということになっている。
 そこが不在だった場合は、郵便受け投函となるそうだが。

 愛原「俺宛てに?誰だ?」

 それは白い定形郵便サイズの封筒だった。
 手書きの達筆で書かれている。
 裏を見ると、秋田県北秋田郡……と書かれていた。
 名前は達筆過ぎてよく読めなかったが、名字が『太平山』と書かれているように見えたので、恐らく美樹の実家から送られて来たのだと思われた。

 愛原「美樹はどこだ?」
 パール「リサさんの部屋にいらっしゃるかと思います」
 愛原「そうか」

 私はガレージを通って、エレベーターに向かった。

 パール「先生、お布団は?」
 愛原「倉庫の外に出してあるよ」
 パール「それでは、私は車に積んでおきます。帰りにクリーニング屋さんに立ち寄れるでしょうから」
 愛原「そうか?じゃあ、頼むよ」

 一瞬、美樹の大きなキャリーケースも入るかなと思ったが、今リースしている車は通常のライトバンではなく、トールワゴンタイプのバンなので、最大積載量は前者より大きい。
 それならいけるかなと思った。
 エレベーターに乗り込み、パールは2階、私は4階に向かった。

 愛原「美樹!美樹はいるか!?」
 美樹「へーい!どうしました、愛原先生?」
 愛原「キミの実家から手紙が届いたんだが、俺宛てなんだ。何か心当たりはあるか?」
 美樹「手紙?」
 愛原「これだ!」

 私は封筒を見せた。
 美樹はハッとしたかのように……。

 美樹「これはあたしが両親に頼んでいた情報です。ほら、先生、『誰が鬼の血を提供したか?』っていう、あれです!」
 愛原「ああ!わざわざ手紙に書いて送ってくれたのか!それはありがたい!」

 私は調査には少し時間が掛かり、情報を手に入れるのは、実際に私が美樹の実家を訪れた時だと思っていた。

 美樹「あたしが、『急ぎで!』って言っておきましたんで」
 愛原「それは助かるけど、別に煽るほどの事ではないよ」

 私は封筒を開けた。
 その中には便箋が何枚か入っていて……。

 愛原「達筆過ぎて読めねぇ……」
 美樹「どれどれ?……あー、うちのじっちゃんの字ですね、こりゃ……。すんません。あたしが翻訳しますんで」
 リサ「翻訳w」
 愛原「大丈夫なのか?11時半には出発だぞ?」
 美樹「大丈夫ス。すぐ、終わります。リサ、紙とペン、貸してけれ」
 リサ「オッケー!」

 リサはルーズリーフとボールペンを渡した。

[同日11時30分 天候:雨 同地区内 愛原学探偵事務所1階]

 車のハッチに美樹のキャリーケースを積み込む。
 既に布団が積まれていたが、その間に挟むようにして載せた。
 ガレージのシャッターを閉めなくてはならないので、先に車は出てもらう。
 その後で、私は内側から電動シャッターを閉めた。
 あとは玄関から出て、玄関を施錠して出れば良い。

 愛原「お待たせ!」

 そして私は助手席に飛び乗った。

 パール「それでは出発します」

 パールは降りしきる雨の中、車を走らせた。

 パール「八重洲地下街の駐車場でよろしいでしょうか?」
 愛原「ああ、頼むよ」
 パール「かしこまりました」

 翻訳が終わったのは、結構ギリギリだった。
 なので私は、車の中で翻訳された手紙を読むこととになった。
 運転はパールに任せてある。
 もしかしたら、どこかでテラセイブの仲間が追尾しているのかもしれないが。
 祝日とはいえ、雨ということもあり、道路の交通量は多い。
 私はルーズリーフを読んだ。
 要約すると、美樹の実家は太平山家の分家だという。
 同じ村内には本家もあり、どうやら本家の中に血の提供者がいるとのこと。
 これには翻訳していた美樹も驚いていた。
 美樹には、そんな事は聞かされていなかったからである。
 もちろん、まだ若いから教えられていなかったのかもしれないが。
 村は医者のいない、いわゆる無医村である。
 そんな時、本家の子供で熱病に掛かった者がいたという。
 鬼は大抵の病気に掛かることは無いが、抵抗力の小さい子供や年寄りは別。
 そんな時、アンブレラの関係者がやってきて、治療をする代わりに血を提供せよと言ってきた為、拒否できなかったという事情がある。
 白井伝三郎は医師免許を持っていたし、他にも薬剤師や看護師の資格を持っている者も同行していた為、医療行為は全く違法性のあるものではなかった。
 その子供も成長し、今では本家の長女として、『姫』の称号が与えられているという。

 愛原「その御姫様に心当たりは?」

 美樹は顔を青くして項垂れた。

 美樹「え、えェ。知ってます。よーぐ知っでます」
 リサ「何で顔色悪くなってんの?」
 美樹「鬼のように怖い従姉なんだべ……」
 リサ「いや、鬼でしょ?」
 美樹「メチャクチャ強いっけ!逆らったら殺されっぺし!」
 愛原「本家の長女か。そりゃ強そうだ。まだ、結婚はしていないみたいだな……」
 美樹「『村の男共は弱くて結婚する気になんねぇ』って言ってるんです」
 リサ「鬼達なのに!?」
 愛原「斉藤さんの話では、血を提供した鬼より強い鬼の血を飲めば、『転生の儀』はキャンセルされるということだが……」
 美樹「無理だべしゃー!従姉より強い鬼なんて……」
 リサ「わたしが頑張るしかないか!」

 リサは両手で拳を作った。

 美樹「リサ!?リサも強そうだけど、さすがに従姉は……。従姉は力が強ェだけでなく、妖術も使うんだべしゃ!」
 リサ「血気術みたいなの?それなら、わたしも使える」

 リサは掌からパチッと電撃の火花を散らし、バッグからはタバスコソースを取り出した。

 美樹「いや……そんなんで勝てねぇと思うよ?」
 愛原「何もケンカしに行くわけじゃない。もしかしすると、もっと詳しい情報が聞けるかもしれない。従姉さんの機嫌さえ損ねなければ、戦闘になることはないよ。そうだろ?」
 美樹「それは……そうかもしんねェすが……」

 一族ではよっぽど怖い女の鬼であるようだ。
 話だけで済めば良いのだが……。

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