報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「行方不明のリサを追え!」

2023-11-24 15:55:40 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月2日16時30分 天候:曇 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所]

 さすがに真冬ということもあり、事務所に帰り着く頃には外も暗くなってきていた。

 高橋「先生。あちこちにパトカーがいますよ?」
 愛原「警察もリサの捜索で動いてるんだろう。BSAAばかりに任せておけないってことさ」
 高橋「なるほど……」

 タクシーが事務所前に到着し、私は善場主任から渡されたタクシーチケットで料金を払った。
 そして、ガラス戸の正面入口から中に入る。
 2階の事務所へは階段で上がった。

 パール「先生、お帰りなさい」
 愛原「ああ。リサは帰ってきてないよな?」
 パール「まだです。連絡もありません」
 愛原「そうか。善場主任から、それでもこの建物のどこかにいるかもしれないから、捜してくれとのことだ」
 パール「この建物に?」
 愛原「一応、念の為な。お前達の部屋も見せてもらうぞ?」
 高橋「じゃあ、今見に行きましょう」
 愛原「それと、この建物の近所を捜索してくれとのことだ」
 パール「もう暗くなるのにですか?」
 愛原「確かに、警察とかも回ってるみたいだけど、関係者の俺達も捜せってことなんだろう。じゃあ高橋、頼む」
 高橋「はい」

 私は高橋と共に、階段で3階に向かった。
 3階と4階は私達の居住区になっている。
 3階は居住区としての玄関、ダイニングキッチンとリビング、トイレとバスルームがある。
 リビングとエレベーターの間の和室は、高橋とパールの部屋にしてある。
 8畳間の畳の上には暖色のカーペットが敷かれており、その上にテーブルとカウチソファが置かれている。
 カウチソファはベッドとしては使用せず、寝具はシングルサイズのエアーベッドを2つ膨らませ、並べて寝るそうだ。
 どちらも、元々は前の事務所にあったもの。
 カウチソファは2つあり、1つはリビングで使用している。
 そのリビングは来客があった時の客用寝室としても使えるようにしているわけだ。
 その為、リビングと高橋達の部屋は繋がってはいるものの、引き戸を閉め切り、リビング側にはテレビ、高橋達の部屋側にはチェストや本棚などを置いて完全閉鎖としている。
 高橋達の部屋には、それと別に収納もある。
 和室である為、襖の装飾を施した観音扉があり、それを開くと、中がクローゼットになっている。
 その中も見せてもらったが、リサが隠れているということはなかった。

 愛原「うん、ここには何も無さそうだ」
 高橋「当然ですよ」

 他にもリビング側の収納やダイニングの床下収納も確認したが、リサが隠れているということは無い。
 3階は特に何も無かった。
 続いて、4階である。
 4階は私の部屋とリサの部屋、そしてトイレと洗面所、それから納戸がある。
 本来、納戸とトイレと洗面所は6畳分くらいの洋室があったらしいが、私達がここに越してきた頃には改築され、トイレや洗面所が増築され、残ったスペースが納戸に用途変更されている。
 不動産屋の話によれば、残った部分はシャワー室にしたかったらしいのだが、節水タイプのトイレや洗面所を増設するまでならまだしも、大容量の水を使うシャワー室を増設しようとすると、もっと沢山の予算が掛かることが分かり、施工主は断念して納戸にしたのだとか。
 予算的な都合で断念したものであり、けして工事が不可能というわけではない。
 もしも私に予算に余裕があり、必要があるのなら、その施工主の意思を私が継いでもいいかなと思った。
 というのは、その納戸は現在のところ、殆ど使用していないからだ。
 他にも収納スペースは色々あるし、1階ガレージのエレベーターの横には倉庫もあって、そこが物置として使用できるからである。
 リサの部屋を見た。
 何故だろう?
 BOWながら、リサの部屋は女の子の部屋然としている。
 パールも成人女性ではあるが、高橋好みのボーイッシュな見た目であり、ファッションや趣味も、どちらかというと男性が好むものをしている為、そういった感じはしない。
 それに対し、リサの部屋は本当に女の子の部屋といった感じだった。
 だから、そこに入るのに緊張した。
 リサ曰く、それでも他の『魔王軍』メンバーと比べれば、女の子の部屋という雰囲気は薄い方だとのこと。
 昔、私が子供の頃、従姉の家に遊びに行った時、部屋に入れてもらったことがある。
 当然そこには女の子の部屋といった感じだった。
 リサの部屋も似たような雰囲気だったので、尚更緊張したのもかもしれない。
 だが高橋は、私の緊張が別の理由によるものだと思ったらしい。

 高橋「確かに化け物の部屋に入るのは緊張しますね。いいっスか?そこにクランクハンドルが飾ってあります」
 愛原「あ、あれだけだと、女の子の部屋という感じは薄れるな」

 どうしてクランクハンドルが飾られているのかというと、オリジナル版リサ・トレヴァーが、自分の寝泊まりする小屋にそれを飾っていたことを知ったリサが真似しているだけである。

 高橋「オリジナルのリサ・トレヴァーの小屋に踏み込んだ特殊部隊員が、クランクを取った瞬間、後ろからそいつに襲われたそうっスね?」
 愛原「そういう話だな」
 高橋「俺が部屋の出入口を見張ってるんで、先生、そいつを取ってみてください」
 愛原「なるほど。フラグ立て作戦か。了解」

 私はチェストの上に飾られたクランクに近づいた。
 その後ろに写真立てが飾られていて、人間だった頃のリサ・トレヴァーと化け物となってしまったリサ・トレヴァーの写真があった。
 彼女が体内で生成したGウィルスを継ぐ者として、何か畏敬の念のようなものがこっちのリサにはあるのだろう。
 人間だった頃のリサ・トレヴァーは、黒いウェーブの掛かった長い髪が特徴の美少女そのものである。
 さすがに彼女は、こっちのリサとは似ても似つかなかった。
 さすがに向こうはアメリカ人だということだ。
 私はクランクハンドルを手に取ってみた。
 そして、バッと後ろを振り向く。

 愛原「どうだ、高橋?」
 高橋「ダメっスね。全然、気配すらしません」
 愛原「マジか……」

 因みにクランクハンドルはこっちで手に入れたものであり、実際にリサ・トレヴァーの小屋にあったものではない。
 クロゼットを開けたが、そこにリサが隠れていることはなかった。
 それにしてもこの部屋、芳香剤の匂いに混じって、リサの体臭もする。
 あとは私の部屋、そしてトイレや納戸を探してみたが、やはりリサが隠れているということは無かった。
 4階のバルコニー、そして4階の上の屋上。
 そんな所に隠れられるわけがない。

 愛原「ダメだな」
 高橋「っすよねぇ……」
 愛原「とにかく、善場主任の命令だ。今度は近所を捜してみるさ」
 高橋「そうしましょう」

 私達は今一度事務所に戻ると、パールにそれを伝え、防寒着を羽織って外へと向かった。

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