仙台から東京・新宿に向かう高速バスの中でのこと……。
週末のせいなのか、4列シートの車内は9割近くが埋まっていた。エミリーの隣には誰も座らなかったが。
因みに今、高速バスのほとんどには補助席は無い。
「グレイハウンドと違って、そんなに貧困層はいないのね」
アリスは周囲を見回して言った。
「学生の利用が多いのかしら?」
「まあ、そうだろうね」
学生は貧困層に入らないらしい。
「グレイハウンドは黒人やヒスパニックが多いね」
「そうなんだ」
「ドライバーには白人とかもいるけど……」
そこがアメリカ国内の格差なのだろう。やはり、富裕層は白人が多いようだ。
「ウィキペディア日本語版の“スクールカースト”の内容が、表向きの内情嘘っぱちっていうのは本当かい?」
「ええ」
アリスは頷いた。
「アメリカの暗部の1つかもね」
とも。
「本当の“スクールカースト”の上に立てるのは、白人の富裕層だけ。どんなに頭が悪くても、不細工でもそれだけで頂点に立てるのが実情よ」
「やっぱりなぁ……」
逆を言えばそれ以外の人種は、ただそれだけで他に何を持とうが頂点に立てないのが実情か。
だから、アリスも頂点に立った1人であった。別に、表向き、必要条件とされているチアリーダーの所属でもないのにだ。
バスが第2の休憩地に立ち寄る。
〔「那須高原サービスエリアです。こちらで15分の休憩を取ります。……お時間までに、バスに戻るようお願い致します」〕
「降りてみるか」
バスを降りる。
近くには別の会社のバスも止まっていた。貸切観光バスではなく、いわゆるツアーバスである。
今は法律が変わって、ツアーバスも高速路線バスに統合されたが、それによって必要経費が捻出できない、採算性が確保できないバス会社は撤退していった。
そのバスの中にアリス同様、白人乗客がいた。
アリスと歳は同じぐらいだろうが、そちらは男性。しかも、バックパックにカナダの国旗が縫い付けてあった。
向こうはもう発車の時間なのか、白人男性が乗ると発車して行った。行き先は東京駅のようである。
「そう言えばさ、バックパッカーの中で、カナダ人だけ自分とこの国旗を縫い付けるって聞いたことがある。何でだろう?」
「アタシもよくは知らない」
アリスは肩を竦めた。両手で大げさにやっても似合う所は、さすがアメリカ白人といったところか。
「でも学生の時、キャンパスでぼんやり聞いたんだけど、どうもアメリカ人に間違われたくないかららしいよ?」
「ええっ?何で?アメリカとカナダって仲悪かったっけ?」
するとアリスは皮肉を込めるように言った。
「ほら、バックパッカーって、世界の色んな所を旅行するじゃない?中には治安のあんまり良くない所に行ったりすることもあるそうね」
「それで?」
「で、中にはアメリカが嫌いな国に行くこともあるのよ」
「ああ、なるほど。確かに俺達から見りゃ、白人ってだけじゃ、どこの国だか分からんなぁ……」
反米国家に行った時、当のアメリカ人と間違われると不都合なわけか。
「湾岸戦争とかイラン・イラク戦争が始まった時、その辺を旅行していたアメリカ人は慌てて自分の荷物にカナダの国旗を縫い付けたんだってよ?」
「それ、アメリカン・ジョークか何かだろ?」
バスに戻ると、今度は隣に貸切観光バスが止まった。
シタ朝鮮韓国製ヒュンダイのバスだった。
「韓国人や中国人は海外旅行中に不都合があると、日本人のフリをするらしい」
「それはジャパニーズ・ジョーク?そんなもん税関職員が見たら、一発で分かるってよ?」
〔「お待たせ致しました。まもなく発車致します」〕
再びバスは、東北自動車道を南下する。
週末のせいなのか、4列シートの車内は9割近くが埋まっていた。エミリーの隣には誰も座らなかったが。
因みに今、高速バスのほとんどには補助席は無い。
「グレイハウンドと違って、そんなに貧困層はいないのね」
アリスは周囲を見回して言った。
「学生の利用が多いのかしら?」
「まあ、そうだろうね」
学生は貧困層に入らないらしい。
「グレイハウンドは黒人やヒスパニックが多いね」
「そうなんだ」
「ドライバーには白人とかもいるけど……」
そこがアメリカ国内の格差なのだろう。やはり、富裕層は白人が多いようだ。
「ウィキペディア日本語版の“スクールカースト”の内容が、表向きの内情嘘っぱちっていうのは本当かい?」
「ええ」
アリスは頷いた。
「アメリカの暗部の1つかもね」
とも。
「本当の“スクールカースト”の上に立てるのは、白人の富裕層だけ。どんなに頭が悪くても、不細工でもそれだけで頂点に立てるのが実情よ」
「やっぱりなぁ……」
逆を言えばそれ以外の人種は、ただそれだけで他に何を持とうが頂点に立てないのが実情か。
だから、アリスも頂点に立った1人であった。別に、表向き、必要条件とされているチアリーダーの所属でもないのにだ。
バスが第2の休憩地に立ち寄る。
〔「那須高原サービスエリアです。こちらで15分の休憩を取ります。……お時間までに、バスに戻るようお願い致します」〕
「降りてみるか」
バスを降りる。
近くには別の会社のバスも止まっていた。貸切観光バスではなく、いわゆるツアーバスである。
今は法律が変わって、ツアーバスも高速路線バスに統合されたが、それによって必要経費が捻出できない、採算性が確保できないバス会社は撤退していった。
そのバスの中にアリス同様、白人乗客がいた。
アリスと歳は同じぐらいだろうが、そちらは男性。しかも、バックパックにカナダの国旗が縫い付けてあった。
向こうはもう発車の時間なのか、白人男性が乗ると発車して行った。行き先は東京駅のようである。
「そう言えばさ、バックパッカーの中で、カナダ人だけ自分とこの国旗を縫い付けるって聞いたことがある。何でだろう?」
「アタシもよくは知らない」
アリスは肩を竦めた。両手で大げさにやっても似合う所は、さすがアメリカ白人といったところか。
「でも学生の時、キャンパスでぼんやり聞いたんだけど、どうもアメリカ人に間違われたくないかららしいよ?」
「ええっ?何で?アメリカとカナダって仲悪かったっけ?」
するとアリスは皮肉を込めるように言った。
「ほら、バックパッカーって、世界の色んな所を旅行するじゃない?中には治安のあんまり良くない所に行ったりすることもあるそうね」
「それで?」
「で、中にはアメリカが嫌いな国に行くこともあるのよ」
「ああ、なるほど。確かに俺達から見りゃ、白人ってだけじゃ、どこの国だか分からんなぁ……」
反米国家に行った時、当のアメリカ人と間違われると不都合なわけか。
「湾岸戦争とかイラン・イラク戦争が始まった時、その辺を旅行していたアメリカ人は慌てて自分の荷物にカナダの国旗を縫い付けたんだってよ?」
「それ、アメリカン・ジョークか何かだろ?」
バスに戻ると、今度は隣に貸切観光バスが止まった。
「韓国人や中国人は海外旅行中に不都合があると、日本人のフリをするらしい」
「それはジャパニーズ・ジョーク?そんなもん税関職員が見たら、一発で分かるってよ?」
〔「お待たせ致しました。まもなく発車致します」〕
再びバスは、東北自動車道を南下する。