報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

私の執筆活動について。

2014-02-06 21:08:39 | 日記
 寺院関係者からも、私の趣味の1つである小説書きについて、よく聞かれることがある。
『ネタはどうやって出してますか?』
 とか、
『発表しないんですか』
 とかだ。
 ネタ出しについては、特に何もしていない。恐らく画家や作曲家と同じで、閃きから世界を広げて行くという手法があるが、これとて限界がある。
 さっき羽田空港が舞台の作品を出したが、無論これはしっかり私が取材していただけのこと。ちょうど節分大会のイベントやっててくれて良かったぜ。
 これはと思ったら、すぐネタ帳に書き留めるのもデフォだな。そこから穴を広げて行くのがまた楽しいんだ。そう、穴を広げて行くのが、ね……。
 で、発表はしないな。“ユタと愉快な仲間たち”は日蓮正宗、顕正会、創価学会からも許可取らないといけないだろうし。で、許可出るわけないしw
 “ボーカロイドマスター”と“アンドロイドマスター”は、商業化する場合、クリプトン・フューチャーメディア様に許可を取らなくてはならない。商業目的ではない同人系であれば、まだ無許可でいいので、私もここで好き勝手に書かせて頂くことができるのだ。
 なので、ハードル高いので……ね。
 “ユタと愉快な仲間たち”の前身“顕正会版人間革命”なんか、顕正会を持ち上げていて、宗門と学会こき下ろし作品だから永久にお蔵入りとなるであろう。その一部をここで紹介したことがあったが(ユタがブチキレて、威吹を殴り付けたエピソード)、紹介できない部分の方が多いので悪しからず。
 で、ユタが宗門に御受誡したら、今度は顕正会批判と学会批判のシーンもあるので、やっぱりムリと。疲れる宗教だぜ。

 破折に疲れたら、無宗教の“アンドロイドマスター”を書く。不信謗法?何それ、美味しいの?
 実は続編については、私の願望が籠った妄想であることが多い。“ボカロマスター”を書いていた頃から、
「オレも、何でも言うこと聞いてくれるメイドロボが欲しいなー」
 とか、
「エミリー、誰かリアルで作ってくんねーかなぁ?」
 とか思っていて、妄想していたものを物語化したのが続編の“アンドロイドマスター”だったりする。
 なので、舞台が実家の仙台市内であるが、ほとんど取材無しで妄想で書いているので、本当に楽だ。ボカロの設定は公式設定に基本準拠しているし(レンの首が外れる設定は、こちらのオリジナル)。

 “ユタと愉快な仲間たち”、ヘタすりゃ宗門から執筆禁止処分とか来るかなぁ……???
 まあ、クビ通知が来るまでガン無視するけどw
 一応、規定は守っているつもりなんだけどね。御開扉や勤行など、儀式のシーンは書かないとか。解釈の難しい問題には触れないとかさ。
 ユタ達が折伏してるシーンが無いのは、作者が折伏してないからというのも秘密にしといてくれ。
 藤谷が日曜日なのにお寺から出て、ウインズに行ってる件もスルーでw
 “ユタと愉快な仲間たち”のタイトルの意味、【お察しください】なんですよ。
 因みに前にも述べたと思うけど、劇団四季の演劇にも似たようなタイトルがあるけど、全く関係ありませんので。
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“ユタと愉快な仲間たち”、前回の続き

2014-02-06 18:07:12 | 日記
[2月3日 13:10.羽田空港第1旅客ターミナル 稲生ユウタ]

(そういえば今日は節分か。節分会、行けなかったな……)
 何故かふとそんなことを考えるユタだった。
 カンジはだいぶ前から止まっていると思われる、黒塗りのベンツの所へ向かったようだ。型落ちの中古車である藤谷の車より高級そうだ。
 そこへ、ユタに電話が掛かってきた。その藤谷からだった。
「はい、もしもし?」
{「あ、稲生君か。今、電話大丈夫?」}
「はい」
{「今月の支部登山のことなんだけど……」}
「あ、はい」
 ユタが電話に気を取られていた間、カンジは何をしたのだろう。
「……じゃあ、そういうことで。……はい」
 電話を切って再びカンジの向かった方を見ると、何と助手席から降りて来た大柄の者とトラブルになっていた。

[2月3日 13:15.同場所一般車乗降場 ユタ&カンジ]

「何か文句あんのか、コラァッ!!」
 カンジよりもずっと大柄の黒いスーツにサングラスを掛けた男が、カンジの胸倉を掴んでいた。
「カンジ君、何やって……」
「何やってんだ、お前ら!」
 別の方向から来た別の誰かが、ユタと似たセリフを言った。それは……。
「あっ!?」
「んっ?」
「!?」
 私服姿の蓬莱山鬼之助だった。
「あ?稲生ユウタ?」
「何でキノがここに?」
「そりゃこっちのセリフだ!」
「鬼之助様、お知り合いで?」
 運転席から降りて来た男もまた助手席の男と似た姿形をしていた。
「腐れ縁ってヤツか?」
「とにかく、やめましょうよ。警察来ちゃいますよ」
 ユタがなだめに入る。
「そうだ。ここで揉め事をしたら、後で大変だぜ」
「はあ……」
 黒スーツの男は、カンジを放した。
「一体、どうしたんだ?」
 ユタはカンジに聞いた。
「いえ、鬼の匂いがしたものですから、鉢合わせになってはマズイと思い、ちょっと話をしに来たんですが、けんもほろろでして……」
「オレ達が先に来たんだ!キツネなんて関係無ェ!」
 助手席の男が言い放った。
「まあ、確かに……」
 ユタは頷いた。確かにこの車、ユタ達がバスで到着する前からいたように気がする。
「あ、思い出した。鬼門の2人じゃない!?」
 ユタは大柄の黒服の男達を指さした。
「ああっ!稲生ユウタって……あの!?」
「何だ、お前ら?」
「いやあ、長野エムウェーブではお世話になったねぇ。なに?今度はさいたまスーパーアリーナに来るって?僕んちの近くだけど?」
 ユタはニヤッと笑った。
「あ、いえ……その……あの……!」
「めめめ、滅相も無い!」
「稲生さん?」
 カンジは口をあんぐり……。
(この鬼達が怯えるとは……絶対にただの人間ではない。先生から免許皆伝を頂く前に、絶対秘密を掴まなくては……!)
「まあいいや。カンジ君」
「は、ハイ!」
「今から待ち合わせ場所の変更ってできる?」
「あ、ハイ。できますできます」
「いいよ、キノ。僕達が場所を移すよ」
「当然だ。だが、第2ターミナルはやめといた方がいいぞ」
「何で?」
「凍り付いても知らんぞ」
「ああ」
 カンジは納得した様子だった。
「な、なに?なになに?」
 ユタだけが分からない。
「稲生さんは美しい女はお好きですか?」
「は?」
「しかし、あいにくとオレはそれを止めなくてはならない。先生の御意向に背きます」
「一体、何なんだ?」
「フフ……。オレはエレン一筋……」
「鬼之助様、鼻血出てます」

[同日 13:30.羽田空港国際線ターミナル ユタ&カンジ]

 ターミナル間無料バスで移動する2人。
〔「羽田空港国際線ターミナルです」〕
「まさか、キノ達と会うとはなぁ……」
「今日は節分でしたね」
 バスを降りながら、そんなこと話した。場所が場所だけに、外国人が多い。
「あ、そうか。え?」
 ターミナルの中に入る。
「第2ターミナルのことですが、連合会の関係者が来るということでしょう」
「法華講連合会?」
「違います。雪女郎連合会です。要は、雪女の共同団体ですよ。彼女らはそれまで単独行動が基本でしたが、性格の悪いヤツが人間を無闇に襲うので、それを防ぐ為に団体を作ったのが1991年です」
「つい最近じゃん!てか、学会破門と同じ年!?」
「とにかく、ここは何の気配も無いので大丈夫でしょう」
「ふええ……」
「1990年代は人間界でも随分と怪奇ブームだったようですが、オレ達の動きと何か関係がありましたかね」
 カンジは少し口元を歪めた。

 しばらく待っていると、黒塗りの高級車がやってきた。外車ではなかったが。
「威吹!」
「ユタ……」
 まるでパトカーで連行されてきた容疑者のようだ。
 リア・シートのど真ん中に威吹がいて、その両隣を随行者が両腕を抱えるという形だ。
 こちらは黒スーツではなく、黒を基調とした羽織袴である。威吹はいつもの着物だったが。
「いやあ、良かった良かった!」
「では、こちらが書類諸々だ。ちゃんと目を通しておくように」
「承知」
 ユタが威吹と感動の再会をしている間、カンジが淡々と随行者達と話を交わしていた。
「旧仮名遣いは、“獲物”殿は読みにくいと思うが?」
「これは威吹邪甲に読ませるものだ」
「あと、この旧漢字もだ。“獲物”殿と情報共有する部分も、こういうのは……」
「それならお前が直せばいい」
「フン……」
 カンジは肩を竦めた。
(まあ、これも弟子として先生への……)

[同日同場所 14:00. 稲生ユウタ、威吹邪甲、威波莞爾]

「今度の大宮行き、大人3枚ください」
「はい。今度の大宮行きは14時50分発で、2番乗り場からです」
 ユタはバスのチケットカウンターで帰りのバスのチケットを購入し、
「先生。荷物の詰め替え、終わりました」
「ご苦労」
 カンジが何故か空のキャリーバッグを持って来ていたのだが、その理由が分かった。
 威吹が釈放されるに当たり、それまで使用していた荷物が大きくなっていたので、それを詰める為だった。
「まだ時間もあるから、少し遅いけど昼食にしよう」
「うん」
「ハイ」
 その時だった。
「あっ、いたいた!」
「ん?」
 そこへ着物に袴、裃まで着けた白髪頭の男性がやってきた。
「ダメだよ、ここでサボっちゃ!」
「は?」
「もうすぐ始まるから、早く来て!」
 威吹、引っ張られて行く。
「え……あ、ちょっと……」
「おい!先生をどこに連れて行く気だ!?」

[同日 羽田空港国際線ターミナル4階 ユタ、威吹、カンジ]

〔「皆さん、本日はお集まり頂いて、真にありがとうございまーす!これより毎年恒例、羽田空港国際線ターミナル、節分の豆まき大会を始めたいと思いまーす!」〕
「ああっ、先生が……!」
 ステージの上には威吹と同じ白い着物に紺色の袴をはいた関係者達がいた。恐らく、威吹は似た格好をしていたので間違われたのだろう。
「威吹、裃も似合うなぁ……」
 ユタが感心していると、
「感心してる場合ですか!このままでは先生が……!」
「まあ、いいんじゃないかい。カンジ君も豆食べようよ」
「オレ達はいいですが、先生が……」
「ん?豆蒔いている人は食べれないかな?威吹を差し置いて、豆食うわけにいかないか……」
「いえ、というか……。先生の御年齢ですと、400個以上は食べることになりますので、苦行モード全開かと
妖怪の場合、実年齢で食べる必要無いんじゃない?

「鬼はー外!福はー内!」
 早速豆まきが始まる。日本の文化の披露ということで、外国人旅行客がカメラのシャッターを一斉に切った。
「日蓮正宗の豆まきとちょっと違うなぁ……」
 ユタは首を傾げた。

(あー、かったりー。早いとこ終わらせて、ユタと飯食おう。……ん?)
 豆を蒔いていた威吹は、階下から上がってくる、ある者を見つけた。

 それはキノと鬼門の左と右の3人。
「わざわざここまで来られるとは……」
「ふっ。エレンに羽田空港限定スイーツ・ショコラを頼まれてたのをすっかり忘れててよ。危なかったぜ」
 キノは冷や汗を拭って言った。
「おや?何の騒ぎかな?」
「タイミングが悪いですな。ちょうど我々を追い払う儀式をここでもやってるようですね」
「全く。今日という日は鬼族の肩身が狭いぜ。羽田空港なら、節分なんてクソつまんねーイベントは関係無ェと思ってたのによ」
「鬼はー外!鬼は外!鬼は外!」
 威吹が楽しそうな顔をして、キノ達に豆をぶつけてきた。
「て、てめっ!ケンカ売ってんのか、コラ!!」
 キノは思わず、鬼の正体をさらけ出してしまった。
「キノ様!逆に正体に明かしてはなりません!」
「みんなー、先生に続け!鬼がそこにいるぞ!」
 普段はクーリッシュでポーカーフェイスのカンジも参加者全員引き連れてやってきた。
「ハイ、ソーリー。コレハ何ノイベントデスカ?」
 呆れて傍観していたユタが、今やってきた外国人旅行客に聞かれた。
「狐が鬼を退治するの図」
「What’s!?」

[2月4日 08:00.日蓮正宗・正証寺 ユタ&藤谷春人]

『空港騒然!』『本当に鬼がやってきた!』『節分大会、大盛り上がり!』
「うーむ……。すっかり新聞沙汰になっちゃったな……」
 朝の勤行が終わった後のひと時。ユタは一般紙を広げていた。
「何だ、稲生君?リアル“ウォーリーをさがせ”かい?」
 藤谷がやってきた。
「さて、班長、問題です」
「ん?」
「この写真の中に、妖怪は何人いるでしょうか?」
「はあ!?」
 豆まき大会の会場全景を写した写真を指さしたユタ。
「威吹君とカンジ君がこれだな。おっ、鬼の姿に戻ったキノ君……よく鬼役引き受けたなぁ……」
「本人は嫌がってましたけどね」
「え?」
「よく見たら、ここに雪女がいる。(雪女郎)連合会の人かな?」
「なに?」
「気が付かなかったなぁ……」
 更にユタは別の人物を指さした。
「ここに少し首の長い女性がいるでしょう?“ろくろ首”……かなぁ?」
「なににに!?」
 その時だった。
「くぉらぁっ!ユタぁ!てめっ、この野郎!!」
「あ、客だ」
 怒筋を何本を立てているキノだったが、藤谷はいたって冷静に対応する。
「へい、らっしゃい。正証寺パーラー藤谷へようこそ。何お作りしましょうか?」
「梅こぶ茶1つと抹茶ヨーカン頼む」
「へい、毎度」
「……って、違う!寺で勝手に商売すんじゃねぇ!」
「あっ、いけね」
「……それも違う!ユタ、よくも昨日はナメたマネしてくれたな!ああっ!?」
「僕は何もしてないよ〜」
「黙れ!そこを止めるのが“獲物”の仕事だろ!」
「だって威吹とカンジ君、楽しそうだったし。おかげでイベント大盛り上がりで、実行委員会の人達から感謝されたし」
「うるせぇっ!威吹とカンジが留守だったら、てめーが責任取りやがれ!」
「威吹君達、いないの?」
「ちょっと、色々と残務処理があって……」
「うぉりゃーっ!!」
 キノは大きく拳を振り上げたが、
「ぶっ!」
 キノの顔に正座椅子が直撃。
「朝からうるさい!」
「あっ、栗原さん」
「稲生さんに八つ当たりする前に、もう1回空港行ってこい!」
「何かあったの?」
 藤谷がユタに耳打ちする。
「キノが買ってきた限定スイーツ、全く別物だったんだってさ」
「えー?」
「カンベンしてくれよー!どれも同じじゃん!」
「全然違う!このクソバカぁ!!」
「キノくーん?ブクロからのリムジンバス、紹介しようかー?」
「うるせっ、この!」

 その様子を遠くから見守る講頭と住職。
「あのー、ご住職様、そろそろ注意された方が……」
「なーに。元気があっていいではないですか。若いっていいですな」
「はあ……」
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“ユタと愉快な仲間たち”、ボツネタ

2014-02-06 15:09:18 | 日記
[2月3日JR大宮駅西口そごう前 11:45.稲生ユウタ&威波カンジ]

 オレンジと白に塗られたリムジンバスが、ゆっくりと2人の待つバス停に近寄ってきた。
 大きなエアー音がしてドアが開いたが、すぐには乗車できず、降りて来た運転手が荷物室のハッチを開けて、乗客の荷物を積み込むところから始まった。
 平日昼間のバスは空いていて、ユタとカンジはわざわざ隣り合わせに乗らなくても良いくらいだった。
〔「11時50分発、羽田空港行きです。発車まで少々お待ちください」〕
 何故そこにユタとカンジが乗っているのか。羽田空港に何があるのか。威吹はどこに行ったのか。
 いつも固い表情、いわゆるポーカーフェイスのカンジは、その表情を保ちつつも内面は穏やかではないのか、額の汗をハンカチで拭っていた。

[1月25日 妖狐の里 稲生ユウタ]

「威吹邪甲を100年投獄の刑に処す!“獲物”は没収または強制解約のこと!」

 そもそもが滅茶苦茶だった。
 ユタはカンジを促して、妖狐の里に連れて行かせた。最初は物凄く固辞していたカンジだったが、ユタの強い思いに負けてしまった形だ。
 こちとら魔界に行ったことがある。そして、ヴァンパイアが出自の女性が魔王を務めているのも知っているし、人間の男性が首相を務めているのも知っていると話した。
 その時の通行証はまだ持っていて、それを見せると、さすがのカンジも信じざるを得なかった。
 そして妖狐の里に着くと既に威吹に対する裁判が始まっているようで、傍聴を希望したが、当然断れた。
 カンジの後押しもあったが、暖簾に腕押しとはよく言ったものだ。しかし、ここでもユタのS級霊力と魔王城への通行証が役に立ち、ユタは裁判を傍聴することができたのである。
 詳しい経緯は端折るが、魔王城への通行証は、それほどまでに効果の強いものらしい。
 アルカディア高速電鉄の乗車券も取っておけば良かったかなと思うユタだったが、それは関係無いようだ。

「異議あり!!」
 ユタは傍聴席から大きな声で大きく右手を挙げて立ち上がった。まるで、“逆転裁判”のようだった。
「稲生さん、異議申し立ては認められて……」
「うるさい!」
 横にいる第2形態に戻っていたカンジに止められたが、ユタはそれを振り払い、法廷内に飛び込んだ。法廷内といっても江戸時代の奉行所みたいな所で、威吹は白洲の上に敷かれたゴザの上で正座していると思ってもらえれば良い。
「……!!」
 そこからはユタもよくは覚えていないが、第2形態のカンジを振り払い、更に止めに入った妖狐達をも薙ぎ払い、威吹の元に辿り着いた時には、“奉行所”は焼け落ちていたそうだ。

[2月3日 12:00.東京空港交通エアポート・リムジン車内 稲生ユウタ&威波莞爾]

 バスは新都心西入口から、首都高速さいたま新都心線に入った。ここから渋滞など無ければ、羽田空港までずっと首都高を走り続けることとなる。
「カンジ君」
「は、ハイ!何でしょうか?」
 ユタは通路を挟んで隣の席に座るカンジに話し掛けた。カンジは何か考え事をしていたのか、ビクッとなって反応した。
 今のカンジは第0形態、つまり完全に人間を姿をした形を取っている。
 普段から人間の姿でいるのは、人間界においては明治以降になってからの習慣とのことだ。
 だから江戸時代以前の威吹は、普段から第1形態でいる場合が多い。
 明治維新は人間だけでなく、妖怪達の習慣をも変えたようである。
「ダイヤでは羽田空港第1ターミナルに着くのは13時20分らしいけど、本当にそこでいいの?」
「あ、ハイ。そうです、ハイ。そこで、少しお待ち頂けば、里の者が先生をお連れしますので……」
「飛行機に乗ってくるなんて……」
「いえ、飛行機に乗ってくるわけではありません。ある方法で、来るのです。最寄りのランドマークが、たまたま羽田空港なだけで……」
「その辺はユニークだな」
「ハイ。稲生さんは他の宗教の存在を認めない宗派の信仰者ということで……」
「ん?」
「オレ達が出入りに使用している鳥居は、恐らく御法度かと……」
(羽田空港……鳥居……)
 そこで導き出された答えは、
「カンジ君、羽田空港の大鳥居って今、羽田空港の敷地外にやっと移転したってのは知ってるよね?」
「ハイ。最寄り駅は京急線の穴守稲荷駅か大鳥居駅で良かったかと」
「何でそこにしないの?」
「それはオレにも分かりません。里からの通達でして。しかし稲生さん、どうかこの辺は妥協してください。外部から来た人間が、裁定をほぼ完全に覆してしまったなんて、前代未聞どころの騒ぎでは無いんですから」
「分かったよ」
「稲生さんは、本当にただの人間ですか?」
「そ、そうだよ。そりゃまあ、仏法はやってるけど……」
「いや、それは些末なことで、もっと稲生さんには他の……」

[同日13:00.羽田空港第1ターミナル ユタ&カンジ]

「色んなスポットを通るんだねぇ……」
 バスはそんなに渋滞にハマることはなく、だいぶ早めに到着した。渋滞にハマることを想定していてのダイヤであるようだ。
「では、ここでしばらくお待ちください」
「分かったよ」
 ターミナルの中に入る。
「もし何でしたら、昼食でも……」
「いいよ。威吹と再会してから」
「あ、ハイ……」
「穴守稲荷はどっちの方?」
「えー、あっちですね」
「そうか」
「……鳥居を壊されては困るんです」
「そう?」
「だから稲生さん、稲生さんの宗派の布教が進むのは構いませんが、鳥居は残しておいてください」
「それは僕に言われても……困るけど。大丈夫じゃない?」
「と、言いますと?」
「いや、うちの布教で神社潰したこと無いから、多分。創価学会の折伏大行進の時はどうだったか知らないけど。まだ生まれてないし」
「はあ……」
「僕が顕正会に入信した時からそんな話は聞かないから大丈夫なんじゃない?」
「それならいいのですが……。寒いので、中に入って待ってましょう」
「威吹達は、どうやって来るんだい?まさか大鳥居から歩いて?」
「いえ、恐らく車を使うと思います」
「車……!?」
「ああいうのですよ」
 カンジが指さすと、ちょうと黒塗りのハイヤーが通過していったところだった。無論その車は関係ない。
「ふーん……」
「……!」
 その時、カンジは何かを感じ取った。
「稲生さんは中でお待ちください」
「何だよ?」
 一般車乗降場に向かうカンジ。威吹が着いたのだろうか?
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“アンドロイドマスター”より、「ボカロの日常」

2014-02-06 02:25:16 | 日記
 ある日の財団仙台事務所。
「おはようさん」
「あ、おはようございます」
「まだまだ寒いね~」
「ええ」
 敷島が出勤してきた。
「年度末で忙しいけど、頑張るか」
 コートを脱いだ後、自分の席に座った。

 朝の出だしは、だいたい順調。10時くらいになって、
「おはようございます」
 初代ボーカロイド、MEIKOが訪ねて来た。
 ナンバリングされる前の製造だが、財団側では便宜上、0号機としている。
「おう、おはよう。今日は整備か」
「そう」
「何だかんだ言ってアリスのヤツ、腕はいいからな」
「エミリーの整備やってるから、ここで待ってろって言われた」
「ああ、そうかい」
 MEIKOは空いている椅子に座った。
「どうだい?新しい所属先は?」
「地元の芸能事務所だからね、でもまあ上手くやらせてもらってるわ。ああ、そうそう。今度、東京で映画出演することになったから」
「お、凄いじゃないか。なるほど。その為の整備か」
「そういうこと」
「あ、ところで、この前の訓練のことなんだけど……」
 敷島が何か思い出して言った。
「なに?」
「エミリーとケンカしたって言ってけど、何かあったのか?」
「あー……まあ、大したことじゃないんだけどね」
「ん?ガチでエミリーとケンカできるの、お前だけだなー」
 敷島が笑うとMEIKOは、
「ルカだってそれなりの力があるし、七海だってレーザービームが……あれ?」
「どうした?」
「七海って、まだレーザーガン搭載してるの?」
「搭載したの、ウィリーとの決戦前だろ?あの時、平賀先生、随分と渋ってたもんな。『メイドロボットに武力を持たせるなんて、とんでもない』って」
「でも、何とか搭載した」
「『南里所長の弔い合戦の為です』と、何とか説得したよ」
「シンディに攻撃されたんだよね?確か、平賀博士は刺されて意識不明の重体……だったから、取り外ししてないかもだよ?」
「全治3ヶ月だったからなぁ……。よく後遺症も無かったよ……あ」
「ん?」
「俺はその時ウィリーの所にいたから見てはいないんだけど、七海がシンディに壊され掛けたんだって?」
「あたしは見てないんだけどね、実際に見てたのはKAITOかな」
「KAITOか」
「人間だったら即死するくらいのダメージだったって」
「らしいな。で、それで、ボディ交換したんだ、あいつ」
「あー!」
「だから、今の七海は搭載していないってことになるな」
「そのレーザーガンは、どうしたの?」
「あれ?そういえば、どうしたんだろう?」
 敷島はPCのキーボードを叩いた。
「おいおい、紛失かよ」
「マジで?」
「『盗難の恐れあり』って、何やってんだよ、財団総務部ぅ?……って、ここだけどさ」
「プロデューサーのせい?」
「いや、俺がここに来る前の話だから……」
 と、そこへ、
「参事、本部から電話です」
 部下が声を掛けて来た。
「ああ。……もしもし。お電話代わりました。敷島です。……あ、はい。どうも、お疲れさまです。……」
 敷島が電話対応している間、
「MEIKO。お前の・番だ」
 エミリーがやってきた。
「あーい」
 MEIKOが椅子から立ち上がると、無表情だったエミリーが眉を潜めて、耳打ちしてきた。
「今度・キールに・ちょっかい出したら・容赦しない」
「いや、あれはファンとしてサインと握手を求められたから、そうしたまでで……」
 すると、更に表情を険しくした。これだけで多くのメイドロボ、セキュリティロボをフリーズさせるくらいの睨みである。
 エミリーはMEIKOの胸倉を掴んだ。
「ハグを・しただろ?ハグを」
「いやいや、あれもファンサービスの一環で……」
「ちょっと。いつまでケンカしてるの」
 そこへ、電動ドライバーを手にしたアリスが呆れ顔でやってきた。
「次はMEIKOの番よ。早く来なさい」
「はーい」
 エミリーは渋々と手を放した。
「老いらくの恋って大変ね」
「MEIKOもそういうこと言わないの」
 アリスとMEIKOは、事務室を出て行った。
「……え?本人ですか?あ、ちょっと今、手が離せないようで……」
「?」
 敷島が電話片手に、事務室のドアの方を見た。
 それまで険しい表情だったエミリーが、無表情に戻る。
「アリスは今日、(財団)所属機の整備だけで1日潰れている状態でして……。ええ。まあ、とにかく、後で本人に伝えておきますので。……そうですね。そこは本人の意見・希望も聞いて、ですね。……はい。また、後ほど御連絡という形でよろしいでしょうか?……あ、はい。分かりました。よろしくお願いします。失礼します」
 敷島は電話を切った。
「ドクター・アリスは・午後・KAITOと・鏡音レンの・整備が・入っておられます」
「ああ。ま、昼休みの時にでも伝えておくさ」
 敷島は右手を軽く挙げて言った。

 で、研究室では……。
「昔、ドクター南里の所のメイドロボットからガメてきたレーザービームガンがあるんだけど、付ける?」
 したり顔で聞いてきたアリスだった。
「いえ、結構です。(アンタが犯人かい!)」
コメント (1)
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