家の近くの大学で松村由利子さんの講演を聞きました。
松村さんは毎日新聞の記者として20年間勤務した後、2006年にフリーに。2009年『与謝野晶子』で第5回平塚らいてう賞受賞。他に2010年『31文字のなかの科学』、2016年『少年少女のための文学全集があったころ』『短歌を詠む科学者たち』等の著書があり、歌集『耳ふたひら』の著書がある歌人でもあります。
<松村由利子さん>
講演後に会場で彼女の著書が何種類か売られていたので、平塚らいてう賞受賞の『与謝野晶子』を購入、読んでみました。
著者がサインをして下さいました。
目次を見ていくと「女性保護論争の勝者は誰か」という項目に多くのページを割いているのも、この著者らしい気がします。というのはこの日の講演も対等な男女関係を希求した与謝野晶子と日本国憲法に男女平等の理念を盛り込んだベアテ・シロタ・ゴートン、この二人が描いた未来は今日どれくらい実現したか、というものだったからです。
以前、与謝野晶子のご長男の与謝野光さんの書かれた本に、<母は百人一首の中では順徳院の「百敷や 古き軒端の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり」が一番好きだと言っていた。好きな花はオシロイバナ。文学の次に数学が好きだった>とあるのを読んでちょっと意外な気がしたのを、松村由利子さんの『与謝野晶子』を読みながら思い出しました。
与謝野晶子といえば、歌集『みだれ髪』のイメージから情熱の歌人といわれ、奔放なイメージが強いですが、生涯に11人の子供を育て、短歌だけではなく、『源氏物語』をはじめとする古典の現代語訳、社会評論、童話、童謡など様々な分野で多くの仕事を成し遂げた人でもありました。
この本はそんな晶子の膨大な仕事の全貌に迫ったもので、短歌関係以外に多くのページが割かれていますので、一般的な晶子研究書と一味ちがったものになっています。
晶子は先端科学への関心が高く、合理的にものを考える人だったそうで、「北京を名古屋、サントぺテルブルグを京都ぐらいに思う時が早く来なければ、日本の発展はおぼつかない」といい、「外国語は小学1年生から必ず教えるのがよろしい」と主張したそうです。大正から昭和初期の頃の話ですから、何とスケールの大きな人だったかと思いますね。
晶子が出版した歌集は合著を含め24冊、評論やエッセーをまとめた本は15冊、童話は100編。詩や童謡は600編、他にも小説や歌論集、また源氏物語をはじめとする古典の現代語訳にも取り組みました。お手伝いがいたとはいえ11人の子供を育てながら、これだけの業績をあげたのですから、与謝野晶子は日本一のワーキングマザーかもしれませんネ。
著者は、働く母親としての悩みもかかえつつ、歌人、評論家、童話作家として走り続けた晶子の姿は、私達に大きな勇気を与えてくれると、結んでいます。
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