福岡市民劇場の10月例会で文学座の「殿様と私」を観ました。
この芝居は明治時代、鹿鳴館華やかなりし頃の話です。
明治維新という大きな時代の変わり目を生きている白河義晃子爵は、急速に西洋化する社会になじめない日々を送っていました。そんなある日、白川家の家令(元家老)源右衛門が白河子爵は因循姑息で華族の資格無しと罵倒され、これを聞いた義晃は時代遅れの討ち入りを決意します。
しかし「そんな事をするのではなく、鹿鳴館で西洋のダンスを見事に披露して、和魂洋才の手本を皆に示した方がいい」という息子の考えを受け入れ、義晃はダンスを習う事になります。そのダンス教師として招かれたのが、アメリカ人のアンナ・カートライト夫人です。
洋風の風俗を内心軽蔑している義晃と源右衛門は、アンナをなかなか受け入れられず、一方、アンナの方も、形式的な義晃と源右衛門の態度に辟易します。この3人を中心に、義晃の息子、娘、源右衛門の妻、アンナのお抱え車夫(通訳も務める)も交えて、異なる文化に接した人の戸惑いが、笑いを交えながら、舞台で演じられていました。
そんな中、アンナは文化的な背景を異にする、これらの日本人の態度に困惑し、又軽蔑しながらも、次第に理解するようになり、親愛の情を抱くようになります。殿様も、それまでかたくなに拒んできた、時代の変化を受け入れようという気持ちに、次第になっていきます。そして息子のドイツ留学を許し、娘のアメリカ行きを許すまでになったのです。
義晃が鹿鳴館でダンスを披露する場面が無いのが少し残念でしたが、多くの日本人が犠牲になった英国船の沈没事故や、鹿鳴館にあこがれる殿様の娘の恋愛事件を絡ませながら、全体が暖かみのある舞台に仕上がっていました。
一つの杯を交わしながら日本酒を互いに飲み干し、言葉は通じなくても温かい目線を交し合う殿様とアンナ先生。そして二人でのダンス。終幕近くのこの場面は、互いをある程度理解しあえた、又受け入れる事が出来た事を象徴する場面で、素敵なシーンでした。
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