福岡市民劇場6月例会で劇団俳優座の「柿の木坂四姉妹」を観劇しました。
<リーフレット>
長崎港を望む坂の中腹に樫の老木があり、両親と子供5人の7人家族がその老木が庭先に見える家に住んでいた。特攻として死んだ兄、そして8月9日に爆死した三女。父母も次々に亡くなり、あの日から長い年月が経ち、今は老三姉妹だけになり、そこに住んでいる。それぞれが心に深い傷を持って…。
この芝居は老三姉妹が生きる「現在」と1944年から1945年を行ったり来たりしながらの展開。8月9日の原爆投下後、一人ひとりの女性たちの人生に、過去の事ではなく、以来ずっと被爆と放射能の影響が覆いかぶさり続ける。
そして後半に向けて、徐々に胸が締め付けられるようなセリフに舞台が包まれていく。 次女ひかるが、今まで隠し続けてきたつらい過去を吐露する場面は、一つのクライマックスで、芝居の主題である「わたし達の毎日には一度だって8月9日が消えたことがなかとよ」 というセリフはあまりにも重い。
長崎のひとつ屋根の下で身を寄せ合って生きる老三姉妹の物語なのに、「樫の木坂四姉妹」となっているのは、爆死した三女がある時は老三姉妹の行動を縛ったり、又ある時は励ましたり慰めたりと、今なお彼女達と共に生きているからと思える。
彼女達の様な体験をしたわけではない、60代半ばの私にとっても、セリフの一つ一つが心にずしりとひびく。長女、しをの穏やかではあるけれども、凛としたたたずまいが印象的。
長女、しを役を演じる予定の俳優座の看板女優、大塚道子さんの急死で、今回は中村たつさんがしをを演じられた。観客の胸に届く、すばらしいしを役だった様に思う。
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