読書おぶろぐ

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ネットで暴走する医師たち(医療崩壊)の深部で何が起きているか

2010年01月25日 12時28分49秒 | 医療 (医療小説含)

鳥集(とりだまり)徹氏の著書。
鳥集氏は、同志社大学文学部社会学科新聞学専攻卒業され2004年からジヤアナリストとして
活動を開始され医療分野を中心に週刊誌・月刊誌等に執筆されてをります。

本書は「医療事故」として報道された事例に対して、「医師専用掲示板・ブログ」に書き込まれた医師たちの「コメント」「ブログ」について記述したものである。

まづ、そのサイトの特徴であるが:(P16)
1.医師専用掲示板サイトには、掲示板に投稿された書き込み(記事)が「不適切」か「推薦」かを1回だけ閲覧者が投票できるボタンがある。
2.「不適切」のボタンが一定数以上押された記事や書き込みは自動的に削除される。
といふ仕組みがある。

そして、ここに投稿される記事が「遺族に対する誹謗・中傷」と思はれるものが多く、さうした記事に対して「推薦」ボタンを押してゐる閲覧者のはうが「不適切」ボタンを押してゐる閲覧者よりも多く、「医師」としての職業についてゐる人たちの「認識」があまりに一般人とかけはなれてゐるのではないかと問題提起している。(実際、この掲示板に書き込んだ内容が「侮辱罪」にあたり、遺族に謝罪した事例もある)

勿論、医師全員が 「遺族に対する誹謗・中傷を行つている」とは考えてゐないし、きちんとその旨も記述されてゐる。
が、この掲示板には下記のやうな記事が記載されてゐた事実があり、その内容といふよりも「だうして投稿されたやうな内容が出回つたのか?」のはうが、個人的に気になつた。 

1.医療事故の際の内部情報の流出(P33-P47 )
2.1.にて投稿された内部情報とともに記述された「医療事故現場の様子」には事実でないことも記述されてゐた(P33-P47 )
3.2.の事実とは異なる「現場の様子」により、新聞報道と現実が違ひすぎるといふ認識の下、マスコミ批判となる

「医師専用掲示板」は、ある医療事故が起きると1.-3.の流れにより「マスコミ批判」に留まらづ、遺族批判、記事に対して異論を唱えた医師への批判と拡がつて行く。 本書は、3つの実際に起きた医療事故で同様の事が起きた「医師専用掲示板」から見られる、「医師のモラル(と思ふ)」について言及してゐる・・・・と思はれる。

なぜ、『「医師専用掲示板」から見られる、「医師のモラル(と思ふ)」について言及してゐる・・・・と思はれる。』と記述したかと言ふと、本書の狙いといふか主張がイマイチ分からないからだ。

著者は、「書き込みした医師たちの主張の中にもわからなくはない」と記載してゐるが、本書は全体として掲示板を通じて起きた医師の行動に批判的なものであり(と私は思ふ)、ネットで「すべきではない」と思はれる医師の行動がどんなものなのかの記述を続けてゐる・・・・

P203 以降の「第5章 ネット医師たちはなぜ暴走するのか」に、ネットに誹謗中傷を書き込み、それが医師専用掲示板を離れて一般人の目に触れるときに、医療の信頼が崩壊すると理解できる内容が著述されてゐる。
そして、それを避けるには患者と医師のコミュニケーシヨンが必要であり、コミュニケーション不全症候群(P220)をもつ医師が問題と考えてゐると思はれる。
 
著者は患者ときちんとコミュニケーションが取れる医師は「インフォームドコンセントやセカンド・オピニオンなどを活用して十分に納得してから治療を受けてほしい」と言いきる(P224)し、さうした医師はネット上の誹謗中傷記事を快く思つてゐない・・・と言ひたいのであらう。

ここから先は自分個人の意見であるが、医師が100%患者を治せるといふことはないと思ふ。
別に医師を否定してゐるわけではない。患者の運もあるであらう。
医師が説明してもその説明をきちんと聞いてゐない患者もゐるだらう。
さういふ患者に限つて「医師だからなんとか出来る=治せる」と信じてゐるふうもある。
かういふ患者が、医師をイライラさせ果ては「ネット医師」にさせてゐる可能性もゼロではないと思ふ。

それから、医療現場の問題。医師に精神的ゆとりのある勤務形態が組まれてゐる仕組みになつてゐるのか?
随分前に読んだ医療関係の本では、厚生労働省が「医師が余る」として人数を減らす政策を取つた結果医師不足のきつかけを作つたと書いてあつた。
他にも、厚生労働省による政策で現場の医師に負担が発生し続けてゐる例が記述されてゐる本も読んだ。

この2点を考えると、医師は
1.自分勝手(といふ表現が相応しいかしらんが)な患者に振り回されてイライラする
2.1.に加えて気分転換を適宜はかり、精神的にゆとりのある診察時間を持てないやうな環境に居る→イライラする
といふことになつてゐるのではないかと予測する。

さう考えると
医師の元々の性格はさておいて、ほんたうに悪いのは誰なのかなあと・・・・・・思ひます。


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