渡辺 保氏の著書。
渡辺氏は1936年東京都生まれ、慶應義塾大学経済学部卒業後、東宝演劇部企画室を経て演劇評論家に。
「女形の運命」で芸術選奨文部大臣新人賞受賞、「忠臣蔵 もう一つの歴史感覚」で平林たい子文学賞、
また同書と「俳優の運命」で河竹賞、「娘道成寺」で読売文学賞、「四代目市川團十郎」で芸術選奨文部大臣賞
等々著書で数々の受賞をされてゐる。
2000年に紫綬褒章を、2009年には旭日小綬章を受章されてゐる。
本書は、数ある歌舞伎の演目から、おなぢ場面でも役者によつて「型」が違ふことが述べられてをり、
歌舞伎好きには興味深い内容となつてゐる。
ごひいきの役者がゐると、その役者中心に観てしまひおなじ演目でも役者が違ふと衣装や、「型」が
違ふとは知らず、本書で初めて知った。
また、上方歌舞伎と江戸歌舞伎の違ひにも書かれてゐるので、東西で同演目を演じても舞台装置から
美術から違ふといふこともわかつて、面白かつた。
いつも海老蔵丈(市川宗家)を見てばかりなのだが、本書のやうに比較を読むとたとえば勧進帳で
幸四郎の弁慶を観劇して團十郎、海老蔵との違ひをみたくなる。
本書は20の演目の型について述べられてゐる。いくつかは観劇した演目もあつたので、違ふ役者の
「型」を読むと新鮮だつた。
本書の姉妹編「歌舞伎 型の魅力」をこれから読まふと思ふ