読書おぶろぐ

読んだ本の感想を書いてます

警視庁情報官

2010年08月31日 22時03分33秒 | ミステリー・推理
濱 嘉之氏の作品。
濱氏は、中央大学法学部をご卒業後警備考案警察を経て内閣官房に勤務、また
衆議院議員政策担当秘書のご経歴をお持ちです。
 
本書は階級「警視」の警視庁情報官、黒田純一を主人公とした小説ですが、濱氏のご経験が
反映された(と思はれる)内容となつてをり、大変面白く読み応えがあります。
 
一見、別世界のやうに見える警察。(世間では一般的に「警察」と言ふけれど、官庁としては
「警察庁」「警視庁」と分かれてをり、その階級と職名もそれぞれ異なります。
この階級と職名は目次の次ペイジに一覧表となつてをり、一口に「警部補」と言つても
「4級職」「5級職」と分かれ職名も「本部主任、署係長」「本部主任、署上席係長」と違ふのだと
わかります。(複雑)
 
主人公、黒田純一はかなりのキレ者である・・・ しかし、組織より「情報マン」といふ職人タイプとして描かれる。
この黒田を取り巻く人間関係が非常~に面白ひ。
 
上司である警視庁の人々、国家公務員一種の人々(他官庁)、黒田の学生時代の繋がりから卒業後別の職(俗に言ふ民間企業)に就いてゐる人たち、マスコミ、そして「協力者」たち・・・・
 
警視庁(警察)と言ふのは、こんなに関わりすごいんだ~
逆に言へば、官公庁はすべてがかのやうに繋がつてゐると言ふことで。。。。
 
面白ひ反面、かのやうな世界に繋がりを自ら求めてゐる人たちの「うさん臭さ」も予想できました。
 
「国民の生活が第一」としてゐるが、「実は自分の箪笥預金が第一」とか国民の前に「中韓」がつくとかまあ、現実の世界でも色々キナ臭いことが起きてをり、「かういふ裏がアルワケね」と今の時世にぴつたりでした。
 
笑つたのは、黒田氏が新部署を創設するにあたり「優秀な人材」を集める場面が出てくるのだが。
「条件」に「身長178センチ以上」と「容姿」を考慮に入れてゐるといふ記述が出てくる。
 
「容姿」・・・・・・
さうよね~、容姿は大事ですね~
今回の代表選の一方を見ると(どちらとは言ひませんが)、
 
「容姿が大事」
 
頷きますわ
 
それはともかく
面白ひので、続編の「公安特命捜査」これも続けて読む。
楽しみ~  

天下りの研究 その実態とメカニズムの解明

2010年08月30日 17時12分45秒 | 政治関連・評論・歴史・外交
 
中野 雅至氏の著書。
中野氏は現在兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科准教授であられます。
同志社大学文学部英文学科をご卒業後、ミシガン大学にて公共政策を修了
(公共政策修士)、新潟大学大学院現代社会文化研究科(博士後期課程)修了(経済学博士)
され、大和郡山市役所勤務ののち、旧労働省に入省されます。(国家公務員一種試験行政職)
 
厚生省生活衛生局指導課課長補佐(法令担当)、新潟県総合政策部情報政策課長、厚生労働省大臣官房国際課課長補佐を経て、公募により現職となられ2008年からは国家公務員制度改革推進本部顧問会議ワーキンググループ委員を務められてをります。
 
ジャーナリストといふより、学者さん?なのかわかりませんがこの著書は「学者の研究成果」のやうな集大成で、一読の価値があります。
驚いたのはP122-224に発表されてゐる、「各省事務次官および局長の再就職一覧」。
実名とともに、再就職先が示されてをりますがその他にも「再就職先一覧」として年度ごとに
非営利法人と営利法人別に企業・団体の名称が記載されてゐます。
 
民主党は「天下り根絶」を掲げて事業仕分け云々で「なんで天下りがこんなにゐるんですか!」などわめいてをられましたが、「天下りの実態とメカニズム」を勉強なさつてからあのやうな行動を取られてゐたのでせうか?
 
素人集団が丸出しとなつた、民主党のことですから不勉強は十分予想できますが、「根絶」と掲げるからには、天下りの実態と要因をよく勉強・研究しだうしたら根絶(回避)できるのかの手段をまづ自分たちで研究成果を作成してから「天下り根絶と事業仕分け」に着手すべきです。
 
「この事業がムダだから廃止」などといふ、素人考への単純思考ではとても「天下り先」の回避はできづ、はやぶさのやうに「必要な経費」がムダに削られるといふことはいくらでも起こるでありませう。
 
「天下り」と公務員が散散攻撃・批判されるのは、税金をムダにしてゐる雇用形態があるからであらう。
では民間に「天下り」はないか?
否である。本書では国家公務員に限つて記述されてゐるが民間企業でも「本社」から「グループ子会社」への「天下り」は起きてゐる。
なぜこれが批判されないかといふと、給金の出所が税金はないから、といふ理由ではないかと思ふが税金のムダにはならなくとも「消費者への負担」が発生してゐることは否めない。企業が政府から補助金を受けてゐれば、遠回りの税金のムダになつてゐる可能性は大いにある。
 
「天下り」により勤務をしてゐても、企業や団体の役にたち社会のためになつてゐれば批判される必要はない。
 
なので
一緒くたに「天下り」として批判するよりは、そのポジションが社会の役に立つてゐるのかいないのか、これを検証する視点が必要であらう。
 
本書を読んだあたくしの結論です。 

取調室 静かなる死闘

2010年08月25日 21時42分29秒 | ミステリー・推理
笹沢 佐保氏の作品。
 
先日、笹沢氏の作品を初めて読み感想を投稿ゐたしました。
笹沢氏は推理物、時代物と幅広い作品がおありのやうですが、最初に推理物を読み
面白かつたので、今回は「取調室」を借りてきました。
 
今回も推理物(題名から明らか)。
これも面白かつた・・・・
 
佐賀市内のホテルで、学生テニス選手権の優勝者、小田垣 悦也が殺されて発見される。
死体が発見される数時間前にチエツクアウトした父、小田垣 光秀に疑惑が集まり、光秀は
北海道で逮捕される。
しかし、光秀には「鉄壁のアリバイ」があつた・・・・
 
「鉄壁のアリバイ」に、「落としの神様」の異名をとる水木警部補が挑む!
 
水木警部補と小田垣のやりとりがメインとなる・・・ それが、この題名「取調室」
 
時代物はあまり好きぢやないけど、木枯らし紋次郎
読んでみやうかな? 

報道被害

2010年08月25日 13時13分22秒 | 社会・報道・警察・教育
梓澤和幸氏の著書。
梓澤氏は1971年弁護士登録をされたあと、現在弁護士としてランビツク(報道被害救済
弁護士ネツトワーク)会員、日弁連人権と報道調査研究委員会委員長、共同通信社
「報道と読者委員会」委員、山梨学院大学法科大学院教授としてご活躍されてをります。
 
本書は文字通り「報道被害」について書かれたものです。
報道被害の実例をいくつか上げ、「犯人扱い」された人たちが交友関係から仕事といふ
社会とのつながりをいかに立たれて行くかを記述し、報道被害に対するメディアとの交渉や
報道被害を防ぐ手段の考察といふ構成になつてをります。
 
報道被害の実例の中には、事件の犯人扱いされた例だけでなく小説のモデルとして無断使用され、プライバシーを「暴露」された例も取り上げられてゐます。
 
実例の部分を読みましたが、まあ、酷いものです。
しみぢみ思つた、「マスゴミはやはりゴミだ」
 
マスゴミが報道被害を起こして、未だに同様の取材体制・問題を起こしてゐる原因は、
「自覚が無い」ことだと思ひました。
過去に同ぢやり方で間違いを起こしてゐるのであるから、警察の発表が正しいのか検証を独
すべきなのだが、検証することもなく捜査対象の当人、近所の人、親族へ突撃し犯人でなかつた場合の言ひワケは「警察の発表が間違つてゐた」と責任逃れをします。
 
てか
散散今まで冤罪事件やら自白の強要やらが問題となつてゐるのであるから、マスゴミは「権力の監視」といふ義務を果たすべく「警察の発表の検証」も行なふべきです。
 
本書の中には、警察の発表に疑問を持ち、独自の取材を行い「これは冤罪では?」と疑問を持ち反論記事を載せてゐたメディアもあることが紹介されてゐます。
しかし、大部分(とくに3大新聞やテレビ局)は警察の犬のやうに、「投げられた球」に向かつて突進し責任逃れどころか、次は冤罪を起こした捜査などを非難し始めます。
 
その前に!!
冤罪が明るみになつてゐる今、「だうして自分たちは警察の発表の裏づけを取らなかつたのか」の検証をするマスゴミは1社もありません。(あるのかも知れませんが、大新聞やテレビ局の報道で見たことがありません)
 
これをしないから、まづ「犯人視」されたひとが社会的に大幅な損害を被ることとなる。(自殺された人もゐます)
 
てか
読みながら思つたのは、「他人に対する配慮が無い」
犯人視した当人、家族、親族、近所、学校や職場などに押しかけていくが、それをすることで対象となつた人にどれだけの負担をかけるのか、人間としての配慮が全く無く「報道の自由」だの「報道の使命」だのを振りかざして人に迷惑をかけてゐることに気付かない。
 
小説のモデルに無断使用した作者も同様です。この作者は自分のプライバシーやプライベートを売りにした作品が多く、自分の裸体なども表紙に使ふやうな人だからプライバシーやプライベートに関する認識はかなり低いのであらう。
しかし、自分は低くて裸体やら生活を曝しだすことに抵抗が無くても、他人はだうか。
他人のプライバシーやプライベートを曝け出すことが、どれだけ当人に不快感を与えるのかを考える配慮が無い。
 
まづ、人間としての配慮を学べと言ひたい。
 
梓澤氏は第六章に「市民のための報道へ」として報道被害が続く原因や、被害救済体制、捜査情報の構造の変更などを提案されてをり、かなり重要な要件だと思ひます。
しかし、根本的な部分は「人としての配慮」
これが欠けてゐる人間には、いくら「構造」が出来てゐても取材相手を不快にすることは間違いない。

お嬢さん

2010年08月23日 19時58分10秒 | 小説
三島 由紀夫氏の作品。
 
三島氏の作品には二通りある。
「純文学」とされる作品と、「漫画」的要素の強い作品である。
「お嬢さん」は後者のはうだなあと思ひながら読んでゐたが、果たして「若い女性」といふ
昭和35年講談社から出版されてゐた女性雑誌に連載されてゐたものであつた。
 
全般的に見て、「時代の違い」が面白ひ。
主人公、かすみの父は企業の取締役なのだがかすみの家に週末ともなると遊びに来る
会社の若い男性社員が3名ほど出てくる。年始の挨拶も、取締役の自宅に行く。
 
現在、22歳から30歳の男性社員で上司の家に自ら進んで週末に遊びに行つたり、年末年始の挨拶に行く人(もしくは行かふと思ふ)人はどのくらいゐるのだらうか?
 
昭和35年といふ、時代の一面を見た。
 
そして、かなり面白ひのが、主人公かすみの男性に対する考えである・・・・・・
かういふ人は、現在もゐるのかもしれないが。
 
三島作品が好きなあたくしとしては、この作品は「駄作」の感を逃れない。