夏川 草介氏の作品。
夏川氏は大阪府生まれ、信州大学医学部卒。 長野県の病院にて地域医療に従事。
本作品にて第10回小学館文庫小説賞を受賞、映画化。
医療小説といふか、医師である栗原 一止を主人公とした、医療と医療を通しての人の生き方を描いてゐる作品。
栗原 一止といふ、夏目漱石 「草枕」を愛読書とする主人公の語り口と視点が面白い。
映画は観てゐないが、この栗原 一止の語り口を翔さんがやるのは似合つてゐるなあとイメイジしながら読んだ。
きつと、夏川氏が日々体験されてゐる地域医療を描いてゐるんだらうと思ひつつ読み、厚生労働省といふ机上の空論ばかりで
現場無視の政策が現場にどんな被害をもたらしてゐるのか、色々な性格・考えの医師がゐるといふこと、医療を離れた場での
何人かの登場人物との関り・・・・とこの作品が描いてゐることは幅広い。
しかも楽に読めるのもいい。
医療に関する本は今までにもいくつか読んで、問題が多く医師にかなりの負担をかけてゐることは感じてゐた。
病気にならないことが一番いいんだらうけど、病気になつてしまつて医療の手を借りなければならない時に
きちんと受け入れる体制ができてゐない現状を感じる。
また、「病気予防」として検診だなんだとあるが、そこに群がる利権目当ての存在も多く「人」の姿よりも金等々
が浮かびあがる世界と感じてもゐる。
官僚とか政治屋は、コネでいい病院だ医師だ紹介してもらへるのだらうが
これを是正する気はないのだらうか? 今の総理は難病を抱えてゐるが、この小説に出てくる「安曇さん」のやうな立場とは
違つてゐるので
結局わからないのだらうか?
いい小説だが、現状を考えるとむなしさを感じる・・・・
安曇さんの最期の場面に対し、栗原医師のとつた行動に対して反対する人もゐるのだらうが。
自分は賛成だし、自分があのやうな状況になつたらおなぢやうにしてほしい。
「生きてゐる」 といふことがだういふことなのか、も併せて考える作品。 これから 2 を読む。