読書おぶろぐ

読んだ本の感想を書いてます

「権力」に操られる検察

2011年02月24日 15時33分40秒 | 司法・法曹

三井 環氏の著書。

三井氏は元大阪高検公安部長である。「元」とつくのは、三井氏が検察内部の裏金つくりの実態を実名告発することを決意するが、2002年4月テレビ朝日の「ザ・スクープ」収録3時間前に口封じのため逮捕され、2008年8月に最高裁で実刑が確定し同年10月に収監、2010年1月に満期出所というご経験をされてゐるからだ。

最近、検察による強引な捜査手法や証拠能力の有無の問題による無罪判決、検事の逮捕等検察の失墜が著しい。

三井氏は本書で「鈴木宗男事件」「日歯蓮事件」「朝鮮総連ビル詐欺事件」「小沢一郎事件」「郵便不正事件」をとりあげ、検察の手法とその問題点とマスゴミの問題点に焦点を充てて論じてゐる。

中々、勉強になつた。特に、検察の手法がだういふものかは三井氏自身が行なつてゐたこともあり、興味深い。

そして、ここでも指摘されてゐる「マスゴミ」

上杉隆氏も著書で指摘してゐるがマスゴミは官公庁の広報である働きをここでもしてゐる。全然権力の監視になつてない。なつてないどころか、権力に加担し騒ぎたてたと思へば、事情が変はればまるで自分たちの言動はなかつたかのやうな正反対の騒ぎを起こす。(あれはもはや「報道」ではなく、「騒ぎ」である。色々な本を読むと必づ、マスゴミの弊害が記述されてをり、最近ではテレビ放送(報道ではない)やネツト記事なども、裏に何があるのかな~と予想しながら読んだり聞いたりする) 

本書では、検察だけの問題ではなくなぜ検察がこのやうになつたのか、の「政治」が絡んだ話も出てくる。

検察も政治家も国民の税金で給金を得てゐるのだから、自己保身とか自己利益などはもつてのほかで、公益を第一に考えて行動すべき立場であるのに全く自分たちの立場を無視してゐる。 

日々の政治だけでも頭に来てゐるのに、こんなに次々税金の無駄を知らされるのであれば、税金を全額返納してほしい。返納に伴い、議員と公務員の給金査定を国民で行なひまぢめに働いてゐる部署(省庁)のみ給金配給としてもらひたい。

三井氏は自民党の検察とのやりとりにうんざりされ、民主党政権に期待をされてゐる記述が見られるが(本書記述の時期は国民の大多数が期待をしてゐた時期であらうから、無理も無い)、今や民主党は自民党以上の恥知らづの嘘つき集団といふことがはつきりした。

全員少しまぢめにやつてもらひたい。この司法独立の原則がいつから崩れてゐたのか知らないが、ここまで来ると政治司法行政すべてが全員一度死んで生まれ変はるしか道が無いやうな気がする・・・・・・ 


それでも私は腐敗と闘う

2011年02月23日 17時24分49秒 | 人物伝、評伝 (自伝含)

イングリット・ベタンクール氏の半生を綴つた本。

ベタンクール氏は巴里とコロンビアで子供時代をすごし、仏蘭西国立政治学院卒業後、結婚し二児の母となる。1990年コロンビアに帰国し、94年コロンビア下院議員に当選。大統領の収賄容疑を厳しく追及し、命を狙はれる。98年、上院にトツプ当選、2002年次期大統領選に立候補し、5月の選挙を目前にした2月末武装ゲリラに誘拐され2008年7月に解放された。

本書はベタンクール氏が下院議員時国会の事務所を訪れた殺し屋に警告を受けたところの回想、そして子供時代からの回想が始まる。

ベタンクール氏は両親の影響も大きいと思ふが、自身も政治活動を始め議員への道へと進む。

すごいなと思ふのは、この人は個人の幸せよりも国や全体の幸せを考えて行動してきたところだ。特に子供が二人ゐるのに、その子供と別れて暮らしてまで政治活動を続けることを決め、行動するところは他の人には中々出来ない。まして、この人は仏蘭西外交官と結婚してをり、コロンビアの国勢に目をつむつてゐれば、何も不自由の無い生活だつたのである。

それを、祖国コロンビアのために個人の生活(幸せ)をなげ打つて政治活動を始め、汚職を摘発し、命を狙はれても止めない。自分の活動のために子供の命も狙はれる、といふ脅迫を受けるが子供を避難させて活動を続ける。

これは、早々簡単に出来ることではない。そして、この人の前夫や友人たちの協力も素晴らしい。止めずに協力するのだ。活動を止めることを勧める人がゐても全くおかしくないが、周りの人たちは協力してきたのである。

周りの人の協力もさることながら、ベタンクール氏当人の行動はチェ・ゲバラを思ひ起こさせた。

ベタンクール氏の活動を通じて、コロンビアの政治・議会・議員等々のやうすが明らかになる。一見、日本は幸せに見えるのだが実は日本もコロンビアと大差が無いと思つた。自民党、民主党の議員の逮捕、「秘書がやつた」の言ひ訳はベタンクール氏の著書にあるコロンビアの政治家たちとほとんど変はりはない。「利権」に関はる繋がりもそつくりだ。日本にはベタンクール氏のやうな人やその人たちに協力する人たちがゐないのかな、と思ふくらいだつた。

解放された後にも著書を発表したやうだが読んでみやうと思ふ。(ママンへの手紙ーーコロンビアのジャングルに囚われて) 


私のマルクス

2011年02月22日 17時29分43秒 | 人物伝、評伝 (自伝含)

佐藤 優氏の著書。 佐藤氏が外務省に入省する前の自身の高校進学から同志社大学神学部へ進学し、授業や当時読んだ本のほか恩師、学友、学生運動、組織について回想の形で語つてゐる。

結論から言ふと、かなり「神学部」のイメエジが変はつた。

学生運動なるものは、東大安田講堂の60年代の安保闘争に関するフイルムがマスゴミにより繰り返し放送され、学生運動=安保、60年代、といふイメエジがあつた。しかし、70年代にも学生運動は続いてをり(きつと今でも、左翼と呼ばれる人たちは続けてゐるのだらう)、実態が垣間見える内容である。

そして、集う組織が支持する思想家といふか**主義の本の名称なども多々出てくる。自分には全然なじみの無い人たちばかりなので、「かういふ人たちがゐるのか」とか「共産党や社会党(社民党)はかういふ集団なのか」等色々勉強になつた。

また、神学部に在籍されてゐただけあつて神学、宗教(基督教)、哲学等の書籍や宗教家など自分の今までの生活には縁遠い内容(学問)の記載もあり、知らないことが多くて「さういふものなのか」と思ひつつ読んだが、神学や宗教を勉強してゐる人にはまた面白い一面が見られるのかもしれない。

 


ブレイズメス1990

2011年02月17日 21時59分48秒 | 医療 (医療小説含)

海堂 尊氏の作品。

海堂氏の作品は、きつと発表順に読んできてゐると思ふ。過去に出てきた登場人物らが出現すると同時に、毎回新たな登場人物が強いインパクトを持つて出てくる。

今回の新たな登場人物は、天城雪彦。モンテカルロの病院で天城しか出来ない心臓外科手術を行なう「スーパー医師」なのだが、天城は自身の手術を受ける条件を患者に課してゐた。

その条件とは・・・・・・

毎回、海堂氏の作品は「厚生労働省に作られ、隠蔽され、放置された」問題を浮き彫りにしてゐるが、この作品もしかり。

余談だが、随分前に読んだこの本を思ひだした (貧乏人は医者にかかるな)

 http://blog.goo.ne.jp/admin/editentry?eid=2d8be9cb219c36330bd91a60674a983f

本作品は2009年から2010年に連載されたものですが、題名が「1990」とあるとおり、舞台はバブルの真っ最中の1990年である。なので、現在と異なる時代背景と天城を取り巻く環境と、医療界の状況とが描かれ、面白い。

つくづく、海堂氏は登場人物の人物像の描き方が上手い(読者を惹きつける人物を描く)と思ふ。


新宿鮫 Ⅸ 狼花

2011年02月15日 19時43分00秒 | 小説

大沢 在昌氏の作品。

シリイズであるこの作品は、今までに数人の人物が前作や前々作と続けて登場し、これもこのシリイズを続けて読む面白さになつてゐた。

今回 (と言つても2006年に単行本刊行だが)

大きな「転換」があり

この作品、次にだうなるのか・・・・と思つた。

世界に鮫島が行くのか? 

そんな展開になりさうであつた・・・・