読書おぶろぐ

読んだ本の感想を書いてます

ドーン (DAWN)

2010年03月29日 15時04分38秒 | 小説

平野 啓一郎氏の作品。

平野氏の前作「決壊(上下)」も考へさせられましたが、今回の作品も同様に考へさせられたのと同時に、感心ゐたしました。

感心の理由は平野氏の観点と言ひますか、国内・国外の世の中の動きに対する感性と言ひますか。
「凄いな~、鋭い!」と同時に「この人相当頭いいよな」といふ感想と言ひますか・・・・・・

物語は近未来の2033年。
有人火星探査を任務に負ふ宇宙飛行士の一人として、佐野 明日人は2年半地球を離れ
6人のクルーと火星探査船 ドーン(DAWN)に乗り込む。

2033年といふ世界は、町のいたるところに設置された防犯カメラの映像から「顔検索」が出来誰がどこで何をしてゐたかを簡単に判明できる世界となつてゐた。
対して、本来の自分の顔だけでなく、「顔を変える」「いくつかの顔を持てる」時代にもなつてゐた。

進化してゐる「情報社会」が描かれ、進化した情報社会から発展していく「道具」とそれを使用していく人類が描かれる。
実際に起きるであらう内容が記述されてをり、大変興味深い。

火星探査の宇宙飛行士、明日人だけでなく他のクルーが登場するが、アメリカ国籍の人物らである。
探査船の船内で起きてゐる事、これが人種差別の問題の論争も引き起こす。
この事件はアメリカ大統領選にも影響していくさまが描かれ、日本といふより一人の日本人宇宙飛行士とその妻を通してアメリカ内部のやうすが描かれていく・・・・感じだ。

このほかにも、様々な「物語」がちりばめられ「人間の心情」といふものを前作の「決壊」とは別の視点で描き出した傑作だと思ふ。

検察VS小沢一郎 政治と金の30年戦争

2010年03月25日 20時20分55秒 | 政治関連・評論・歴史・外交
産経新聞司法クラブの著書。

産経新聞といへば~、
極論の反朝日のやうな存在であらうが。

朝日新聞、毎日新聞(勿論TBSやてれび朝日)よりは好きなりゐべです。
一番好きなのは、どこつてありませんが、テレビ東京(日本経済新聞)の「冷めたところ」が好きです。



本書は2009年3月、汚沢一郎資金管理団体「陸山会」事務所に東京地検特捜部が家宅捜索に
入り汚沢の第一秘書である大久保隆規ら二人の逮捕と西松建設の前社長国沢幹雄の再逮捕
から始まる。

結論から申し上げますと

汚沢一郎は、ほんたうに「汚沢」と書かれるのがぴつたりの嘘つき民族ですね。
自ら「政治資金規正法」なるものを推進してをきながら、金丸信・田中角栄の金権政治に深く関わり、しかもその両人の「散り際」には知らん顔を決め込むといふ、すさまぢい「恩知らず」の性格です。

ゆえに、自身が散散関はつてきた政治資金に関してもいきなり「他人事」のやうに「規正法」などつくり「わたしは潔白です」といふ顔をして世間に出てこられるのでせう。

しかし、
今までの民主党での「ご活躍」でその嘘もすでにバレバレ・・・・・・
嘘つき民族の血は争えないなとしみじみ思ひます。

汚沢さん、
人生最後には「正直」になつて母のお墓のある土地にお帰りくださいまし。

医療崩壊の真犯人

2010年03月24日 15時03分27秒 | 医療 (医療小説含)

村上 正泰氏の著書。
村上氏は東京大学経済学部を卒業後、大蔵省(現・財務省)に入省。
在ニューヨーク総領事館副領事、財務省国際局調査課課長補佐、内閣官房地域再生推進室
参事官補佐、厚生労働省保険局総務課課長補佐などを経て、2006年7月に退官。
厚生労働省出向中に医療制度改革に携り、医療費適正化計画の枠組み作りを担当されました。


本書 「医療崩壊の真犯人」は誰といふ話なのだが。
本書は、ニュースで報道された医療事故だけでなく医療費、健康保険と介護保険の保険料
も含んだ「医療の財政問題」を記述してゐると言へやう。

本書では次のやうな例が記述されてゐる。
1.救急医療患者の受け入れ病院が見つからない → 原因は医師・看護師不足およびそれらが引き起こすベット不足

2.現場の実態をきちんと把握せづ、「基本方針」を示した医療制度改革→現場を見てゐないため机上の空論となり、医師らに負担増 → 勤務医が退職して減る → 1に繋がる

3.現場の医師配置事情を理解せずに新医師臨床研修制度導入により、設備と症例の多い
大病院へ医師が集中 → 地域医療の医師不足

4.公的医療保険制度の財政難→医療制度崩壊の危機→患者負担増

と、いふ具合なのだが~
はつきり言つて読んでゐてイライラゐたしました。

何冊か、医師が記述された厚生労働省の現場無視制度を読みましたが、厚生労働省も罪だが
一番の罪は「政府与党」ですね・・・・
「構造改革」と恰好いい言葉を並べたときのK政権がしたことは、「改革」ではなくて「財政抑制の改悪」だつたのではないでせうか?

そして頭にくるのは、またもや、「報道」をきちんとしてゐないマスコミです。
マスコミは、井戸端会議調の「街の声」や「街の声をもとにした『識者の論調』」は放送するけれども、大事な「事実」報道をきちんとしてゐない。
いつもいつも、扇情的にばかなキャッチフレーズを作り、その言葉を繰り返し報道する。
流行語大賞など自画自賛のやうなものだ。

話がずれましたが、
医療制度崩壊の原因は、あたくしの勝手な意見では 「現場無視の官公庁、政府与党」にあると思ひます。

本書の最終章で「鳩山政権の今後の課題(P200-203)」が記述されてをりますが、
あたくしの私見では、民主党こそ最悪と思ひます。

今までの派遣契約解除の人たちへの対策や就職できない人たちへの対策を聞いてゐると
「++費を支給します」と「支給」の連呼はするものの、その財源がどこからだう調達するのか一切説明してゐない。
国会で説明を聞いてゐる野党自民党も質問をしない。
労働なき富を得られる、H氏の私財で「救済財団」でも建立してくださるのでせうか?

民主党にこのままやらせてゐると、今の手当てと高校無償化すら財源問題があるのに
「赤字国家」となることは明白。

連立政権の雇用対策問題の対処を聞いてゐると、「現実無視」の絵空事を通り越して
夢見心地の寝言を聞いてゐるやうな気がゐたします。雇用と少子化対策だけでもこんなに
酷いのに、医療年金がまあだうなるか。

やはり、国民一人一人がきちんと政治のあり方を見て「選挙」で投票する相手を見極めることでせう。
最終責任は、「国民」にあるのだ。

DNA鑑定 暗殺、冤罪、浮気も暴くミクロの名探偵

2010年03月23日 21時11分02秒 | 科学・化学・理系

櫻井 俊彦氏の著書。
櫻井氏は警察レベルの科学鑑定を行なう国内有数の民間鑑定機関「法科学鑑定研究所」に
所属、「DNA型 鑑定」「指紋鑑定」「筆跡鑑定」など多岐にわたる科学分析を担当されてをります。

人体は約60兆個の小さな細胞から構成されており、その細胞一つひとつに細胞核が存在する。
細胞核の中には染色体と呼ばれる構造物があり、さらには染色体はDNAと核タンパク質で
形成されてゐる。DNAはこの染色体から核タンパク質を除去することによつて抽出できる
(本文P12より)。

よくおにゅーすで聞く、「DNA型鑑定」とはこの物資といふか細胞核の型の鑑定だつたのですね。
初めて「概要」といふか「定義」をきちんと知りました。

で、このDNA型なのだが。
犯罪の犯人特定にはもちろん、血縁関係の特定にも用いられてゐる。
が、万能なのかは最近「過去のDNA型鑑定が誤つてゐた」ことによる冤罪があつた。
これについてはP44からP60まで記述の第3章「再鑑定は万能か」に詳細が記述されてをり
興味深く拝読ゐたしました。

ここでもやはり、疑問なのにはマスコミの報道調「当時の鑑定はいいかげんなもので最新の
方法で行なわれた再鑑定の結果こそ信頼すべきものだ」(P54)は著者の指摘どおりだと
思ふ。
だうしてマスコミはいつもいつも、過去に自分らが報道してきた内容や姿勢を完全に無視して(忘却して?)、目の前の「新」出来事を鬼の首でも獲つたかのやうに報道するのであらう?
P58-P60 「経験値の重さ」は考へさせられた。

第7章では、DNA型鑑定の進化のやうすが記述されてゐるのだが・・・
科学も進みすぎると怖いなあ~と感ぢた。

第8章「DNA研究が描く驚異の未来」では、ここまでする必要があるのか?と思ふ。
自分には関係のない世界であらうが、世の「家柄」の人たちにとつてみれば「大事なこと」
なのかもしれない。 

ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか

2010年03月23日 15時52分55秒 | 社会・報道・警察・教育

本書の主要部分は平成20年2月下旬から3月末にかけて、朝日新聞朝刊3面に「内部告発」と題して連載された記事をもとにしてゐる。
著者は奥山 俊宏氏(89年東京大学工学部卒、同年朝日新聞記者、2006年より特別報道チーム)、村山 治氏(73年早稲田大学政経学部卒、毎日新聞記者。91年朝日新聞記者、現在編集委員)、横山 蔵利氏(89年早稲田大学卒、同年朝日新聞記者、現在釧路支局長)の3名の方々です。

本書は三菱自動車の欠陥車隠し、ミートホープ、白い恋人、船場吉兆とニュースで報じられた事件、社内の告発文書で自ら公表した会社(ニチアス、帝人グループ、ベネッセ)に関する記述、地方公共団体のコンプライアンスの取組、警察官、検察官といふ公務員の内部の問題、裁判となつた千代田生命およびトナミ運輸の問題、金沢大学付属病院と様々な事例が記述されてをります。

共通するのは、「会社」といふか「組織、その構成員」の嘘
嘘に耐えられない、「まともな人」が告発する
嘘を当然のことと思ふ人種、平気で嘘を吐く人種、これらが嘘の上塗りを重ね告発した「まともな」人を「不当」とする行動を起こすといふ、「狂気の沙汰」の次第がわかります。

三菱自動車の元社長らは執行猶予付有罪を不服として上告してをりましたが、「恥」といふことを知らない人種なのでせう。
呆れるといふか、「かういふ人がゐるんだな」と感心の部類に入ります。

警察官、検察官の裏金捻出に関する章は、呆れるとといふかひたすら感心します。
難しい試験を合格してゐる方々だけあつて、「裏金作成」の手口もぬかりがないやうに色々
気を配つてゐる・・・・
しかし、こんなことに気を配るのなら汚沢を逮捕できるやうな裏づけ捜査に気を配つてゐただけませんか?
(事件は大阪高等検察庁なので、汚沢の東京地検とは管轄が違ふが、世間の発想としては「検察庁」といふことで一緒の組織となる)

しかも、内部告発した同僚検事を逆に有罪とするやうなくだらない罪状で起訴するていたらく・・・
税金使つて何やつてんだ 

P270-272 に記載された富山地裁が認めた会社の「不法行為と債務不履行」に関する判決の主旨は組織で働くすべての人への基準となるであらう。

とくに、不法行為に関する
「従業員の配置、移動、担当職務の決定および人事考課・査定、昇進・降格等は使用者が企業全体の立場で事業の効率的遂行や労働の能力・意欲を高めて組織の活性化を図るなどの観点から人事権の行使として行なうものである。このような人事権の性質上、その行使は相当程度使用者の裁量的判断に委ねられる。
しかし、このような裁量権もその合理的な目的の範囲内で法令や公序良俗に反しない限度で行使されるべきでありこれらの範囲を逸脱する場合は違法であるとの評価を免れない」 (P270抜粋)

債務不履行に関する
「従業員は雇用契約の締結・維持において、人事権が構成に行使されることを期待し、使用者もそのことを当然の前提として雇用契約を締結・維持してきたものと解される。そうすると、使用者は信義則上、このような雇用契約の付随的義務として、その契約の本来の趣旨に則して合理的な裁量の範囲内で人事権を行使すべき議を負っているというべきであり、その裁量を逸脱した場合はこのような義務に違反したものとして債務不履行責任を負うと解すべきである」 (P271抜粋)

記述2点は、「権力」を盾に違法なことをしでかす企業への戒めとなつたのではないかと思はれる。