読書おぶろぐ

読んだ本の感想を書いてます

おとり捜査官 1 触覚

2010年07月31日 14時47分35秒 | 小説
 
山田 正紀氏の作品。
 
山田氏は「最後の敵」で日本SF大賞、「ミステリ・オペラ」で日本推理作家協会賞と
本格ミステリ大賞を受賞されたミステリ作家であられます。
本作品は99年幻冬舎文庫で出版されたものを改題して朝日文庫から出版されたものです。
この方の作品を初めて読みました。
 
確かに、ストーリーは面白ひ。
面白かつたが、「男性が勝手に持つてゐる女性心理の偏見」のやうなものが記述してあつて
それが個人的に嫌だつた。
 
例へば、下着泥棒にあつてゐる主人公が泥棒にあつたあとにも平気で外に下着を
干し続けてゐる場面・・・・・・ (P88-89)
「今朝もまた下着の数が足りない」
「できるだけ洗濯物は夜のうちに出し、朝一番に取り込むようにしているのに、そのわずか数時間のあいだに下着を盗まれるのが腹だたしい」
 
唖然とゐたしました。
まづ、夜のうちに洗濯物を出すといふのは下着が盗まれてゐるのに考えられません。
下着泥棒にあつてゐる、しかも夜にあつてゐるといふことは変質者が自室のベランダに
夜中に来てゐるといふことです。
泥棒にあつてゐるのに、夜に下着を干し続けるのは警戒してゐないと見做されそのうち部屋に押し入られる危険性もあります。
 
しかもこの部屋が2階。
 
なにこれ?
かなり不快でした。 この作品が電車内の痴漢を扱つてゐるので余計不快。
なんか、男の都合のいひやうに勘違いしてんぢやねえのか?と思つた。
 
ここを読んだときに「気持ち悪いな~、この作者」と読むのを止めやうかと思つたが
最後まで読んでみた。
このシリイズは「女囮捜査官」として5巻くらいあるらしいが、なんだか気持ち悪くて
他の作品は読みたくないな。
「解説」で男性ミステリ作家が絶賛してゐるが、男の神経つてのはこんなもんなんだと思つた。

日米同盟の正体

2010年07月31日 14時28分31秒 | 政治関連・評論・歴史・外交
 
孫崎 享(まごさき うける)氏の著書。
孫崎氏は1966年外務省入省後、英国2回、ソ連2回、米国(ハーバード大国際問題研究所研究員)、イラク、カナダ勤務を経て駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使を歴任され2002年より防衛大学校教授等のご経歴をお持ちです。(2009年3月退官予定)
また、別の著書「日本外交 現場からの証言」(中公新書)にて山本七平賞を受賞されてゐます。
 
「はじめに」で「日米安保条約は実質的に終わっている」として書き始められたこの著書に、あたくしは、全面賛成ゐたします。勿論、新たに勉強になつたことも沢山ありますが、この著書と同意見です。
同意見と言ひますか、「やはり」と言ふ気がしないでもない。 
 
別記事で少し前に書いたが、結局米国は戦争が大好き、自分たちの「力」を見せ付けるのが大好きなのだ。
だから9.11など、テロの標的にされるのだ。
自分らが勝手に戦争をしかけて、人を殺すのは勝手だがそのたびに「大義名分」を作成し
日本国に「同盟」を盾に金をせびるのはやめてください。
 
次の部分は、日本人が正しく日米同盟なるものを理解・認識するのに重要だと思ひます。
「同盟の非対称性」として「日本国内に『米国は日本を守る、しかし日本は米国本土を守らない、これでは不公平だ、これを補うため、日本は他の分野でできるだけ米国に貢献しなければならない』という論がある。一見もっともらしい。この論は勢いを増し、今日日本の安全保障論議の主流を占めている。
しかし、この論は正しくない。
日米安全保障関係の取引は、米国が日本国内に基地を持つ、日本が米国側の陣営につく、日本に攻撃兵器を持たせないこととの引き替えに米国は日本を守る、という取引である。この取引の提唱者は米国である。
米国は現在もこの取引は十分意義があると見ている」 (P122-123、第四章 日本外交の変質) 
 
正しくない論を「堂々」と主張しタレ流してゐる組織があるのではないでせうか?
と言ひますか、この論を考へますと共産党や社民党が単独で「基地撤去」を求めるのは何なの?といふものであります。
共産党や社民党は、日米安全保障関係の取引をきちんと理解したうえで、「基地撤去」を主張してゐるのか?
民主党も同様です。
 
きちんと理解せづに、米国に基地撤去を求めてゐるのならとんでもない笑ひ者であり、相手にされるわけがありません。 
 
アルカイダ等テロ組織とされる構成員がイスラム教であることに関連して、「イスラム教は過激」と言ふ認識をするが、孫崎氏は「コーランの教え」を紹介してゐる。(P189)
「神の道のために敵と戦え。しかし度を越して挑んではならない。神は度を越すものを愛したまわない。(雌牛の項190)
宗教には無理強いがあってはならない。(雌牛の項256)
彼らが戦うことなく退いて和平を申し出てくるなら、神はおまえたちに彼らを制する道を与えたもうことはない。(女人の項90)」
 
・・・・・・ 驚きました。 イスラム教はテロ組織の行ひと逆のことをコーランで唱えてゐたのです。
ううむ
米国お得意の「情報操作」により、イスラム教が過激で悪であるといふイメージを持つてをりました。
 
勝手な推測だが、米国は「イスラムが悪」といふイメージを作り上げることで国際社会を味方につけ新たな暴力行為を正当化してゐるだけでは?と思ふ。
下記のおにゅーすが、そんな「裏づけ」の一つに思へる。
こんな国と、「同盟」国でゐる必要があるのか、真剣に考へるべきであらう。
 
トヨタに有利な情報非公表 運輸省元幹部、米紙に証言
2010.7.31 12:22
このニュースのトピックス:くるま
 
 トヨタ自動車の急加速問題で、米運輸省がドライバーの運転ミスが原因とするトヨタに有利な情報の公開を意図的に避けていたと、米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)が30日、伝えた。同省傘下の道路交通安全局(NHTSA)を7月に退職した元幹部が実名で証言した。
 元幹部は、トヨタ批判を強める米議会などから、トヨタとの関係を邪推されないように、ラフード運輸長官周辺が情報の公表を控えていたと主張している。
 NHTSAが急加速を起こしたとされる車両を調べたところ、すべてのケースでアクセルとブレーキを踏み間違えるといったドライバー側のミスを疑わせる結果が判明。報告をまとめたが現在まで公表されておらず、元幹部が問い合わせたところ、ラフード長官周辺があえて公表を遅らせていたことが分かったという。(共同)

パラドックス13

2010年07月27日 18時10分58秒 | 東野 圭吾
 
東野 圭吾さんの作品。
 
図書館で半年以上待つたかなあ・・・ この後まだ180人位順番待ちをしてゐるやうです。
 
物語は首相官邸にいる首相に、秘書官より「ジャクサが大至急会いたいとのこと」と
知らせがくるところから始まる。宇宙科学研究本部から、日米共同で行なつてゐる研究
で見つかつた「ある事」において両国で国のトツプに報告をするといふのであつた。
 
その「ある事」とは「日本時間で三月十三日午後一時十三分十三秒から十三秒間が
地球にとつて運命の時間」といふものだつた。
その十三秒間に一体何が起きるのか・・・・?
 
物語の大半は、十三秒間に起きた(と思はれる)ことを描く。
 
この中で、2つほど考へた登場人物の台詞があつた。
 
「おまえよりも先に生まれて社会に出た人間たちが、税金を払い、科学や文化の発展に
貢献したから、おまえという人間がここにいるんだ。違うか。」 (P142)
 
「真の老人福祉とは、手すりをつけたりバリアフリーにすることではないとね。足腰の弱った
老人に必要なのは、そんなものではなく、手を貸してくれる人なんだよ。それが家族であれば
理想的だ。近所の人でもいい。ところが国は、家族がばらばらに生きていかざるをえないような国づくりをしてしまった。他人と関わりをもたないほうが得をする世の中にしてしまった。その結果、一人で生きていかねばならない老人が増えたわけだが、その自体を国は文明の利器で対応しようとした。で、老人はそれらに頼り、一人でも生きていけると錯覚する。」(P165)
 
上記の台詞の中には、現在の世の中の「動向」のやうなものが反映されてゐると思ふ。
 
現在景気が悪い、就職難等々報道されるが
終戦直後の世の中のやうすから振り返つてみれば、
何も無い状態から頑張つてくれた現在70歳以上の人たちのおかげで、日本経済は成長したし1ドル360円と固定性だつたのが、為替変動をもたらし、バブルが来たけれどもかなりの贅沢を味はふ世代が出てきて、若者が好きなことを出来る、選択できる時代になつたのではないか・・・と思ふ。
 
しかし、後から生まれてきた世代はそんなことはあまり意識しない。
生まれたときから携帯があるのが普通であれば、携帯がない時代のことなど考えもしないが、携帯が普及する前の世代が「電話を持ち運びできたら便利だな」と考へ、開発を重ねてきたから携帯が普及したのと同様、今の世の中は色々な人が「作つて」くれたものであり、自分はその恩恵を受けてゐるのである・・・・・ とは、普段あまり考へない。
 
なので、P142の台詞は考へさせられた。 
「目上の人を敬ふ」といふ意味が、わかりやすく書いてある。(実際、東野氏も「『目上の人を敬え』と親や教師にいわれてきたから、道徳の一つとして捉えていたにすぎない。」と主人公の気持ちを表現することで、「目上の人を敬う」と言ふ言葉を用いてゐる)
 
P165の台詞は一人の高齢の男性の台詞なのだが、この台詞も現在の「高齢化社会」と題される社会の動きに疑問を呈してゐる、といふか考へさせられた。 
いかにもお便利な世の中になつてゐるやうに見える・・・ 段差が無くなり、階段がエレベーターになり手すりがつき・・・・ だから安心して出かけられる(安心してとまでは言ひすぎかもしれないが)、少なくとも「不便は無い」社会を目指してきた(のであらう)。
 
国や自治体を批判するつもりはないが、「核家族化が進み」と長年繰り返し聞いてきた言葉の陰には、「実際には一人で生きていくには大変なことなのに、周りに手助けする人間がいない世の中になつてゐる。
しかし、誰も真の問題に気付いてゐない」と言ふことなのであらう。
 
なんか、これも考へさせられた。
何故なら、P142の台詞に表されてゐる世の中の人に対する気持ちとP165の台詞に表されてゐる世の中のやうすは繋がつてゐるからである。
つまり、現在老人とされてゐる人たちが作つてきた恩恵を受けてゐるわけだが、若者がその恩返しをするやうな世の中になつてない・・・・・・
 
電車やバスでは、若者が座つて老人が立つてゐるし、若者が席を譲るのはあまり見ない。(譲られてもひねくれて断る人もゐるから、譲る気が無くなつてゐる人もゐるのかもしれないが)
老人が孫を座らせ、老人の子供(孫の親)はそれをそのまま受け入れてゐる場面も見る。あれでは、子供は席を譲ることは考へなくなるであらう。孫の親が、孫に「おじいちやん(おばあちやん)、どうぞつて言ひなさい」と教育しないと、子供は自分が座るのがアタリマエだと思ふだらうし他の老人に対する配慮も育たないであらう。
(余談だが、ヨーロッパを旅行すると老人が当然のやうに席に座るし、若者が座つてゐる席に近づくと若者がすぐに立ち上がる光景を何度か見た)
 
この作品では、この2つの台詞が頭に残つた。
「パラドックス13」の世界では、文明を失つた人間が描かれるのだが色々考へることがあつた・・・
今当たり前と思つてゐることが、当たり前でなくなつたときに人は何を考へるのか・・・?
 
やはり、東野さんの世界は奥が深いなぁ・・・・・・

黙秘 裁判員裁判

2010年07月25日 20時50分37秒 | 司法・法曹
小杉 健治さんの作品。
 
小杉氏は裁判や土地家屋に関する不動産を扱つた作品が多い。法律を専攻したあたくしと
しては、興味深いテエマが取り上げられてゐるので何冊か拝読してゐる。
 
この作品は・・・
最後、感動といふか感涙といふか
あれを「甘い」 「人間そんなに甘くない」等の意見もあるだらうが
こんな人間関係が築けるといひなあとしみぢみ思ふ、人間関係が描かれてゐた。
 
裁判員裁判が開始されて1年以上経つ。
裁判員裁判に関する本には、制度の欠陥が指摘されたり裁判員裁判を扱つた小杉さんの別作品や冤罪の体験本を読んで、裁判員裁判と裁判そのものに関する疑問があつた。
 
この作品は、その「疑問」を描きそして最後に奇跡のやうな人間関係が描かれるといふ
ものである。
 
内堀 優一郎は殺人容疑で逮捕され、裁判員裁判の被告人となる。
彼は結婚真近の一人娘をストーカーを繰り返してゐた男に車で轢き殺される。
しかし、その男は殺人罪ではなく交通事故の過失傷害として処分され、3年で交通刑務所から出てきた。
 
今回殺された被害者はこのストーカーを繰り返してゐた男であり、内堀優一郎は「娘の仇を
取つたのでは」として逮捕されるが、否認を続ける。
優一郎は事件の肝心なことになると、「黙秘」を貫くのであつた。
 
警察と検察官は、優一郎が犯人であると主張する。
しかし、優一郎の弁護を自ら買つてでた鶴見弁護士は「優一郎は無罪であり犯人はほかにゐる」とほのめかすのであつた。
 
優一郎のほかに犯人としての動機がある人物は誰か
物語は裁判の進行であらゆる可能性を示唆していく
 
「疑はしきは被告人の利益に」
裁判の前提であるこの言葉を鶴見弁護士は裁判員らに言ひ、判断を促すのであつた。
 
真犯人は誰なのか
真犯人が被告人とされてゐる人物でなかつた場合、警察と検索は最初から「可能性」から
外してをり、取り逃がしてゐるのである・・・・・
 
築かれてゐた人間関係だけでなく、それをもこの作品は指摘してゐる・・・・

官僚利得 国民には知らされない霞ヶ関の裏帳簿

2010年07月20日 21時33分52秒 | 政治関連・評論・歴史・外交
 
北沢 栄氏の著書。
北沢氏は共同通信ニューヨーク特派員などを経て、現在フリーのジャーナリストであり、
非常勤講師を経て2008年3月まで東北公益文科大学大学院特任教授を務められたほか、
2003年5月より2007年5月までの間、参議院厚生労働委員会や公聴会等で参考人として意見陳述されてをります。
 
本書は、北沢氏の前著「亡国予算 闇に消えた特別会計」の続編の流れを汲んでゐるもので
民主党が政権をとり、事業仕分けに着手した部分よりの著述がなされてをります。
 
本日付おにゅーすで、「規制仕分け」なることをやるとのことですが・・・・・・・・
今までの事業仕分けそのものが、役に立つてゐるのか否か、民主党マニフェストにしたがつてゐるのか否か、きちんと考へてからやつてください。
(本書が、大変な参考になるはづです)
 
「特別会計」 
これが、あるはづなのになんで国債を戦後初の金額の発行をするのでせうか?
「天下り根絶」
格好良く掲げたはいひが、実際「天下りのからくり」をわかつて対処しないと何も意味がありません。
本書を読んで勉強してください。
 
民主党にもうんざりだが
こんなことを延々と続けて、「確立」させてしまつた自民党らはクビ括れ。民主党を責める資格無し!
 
一番悪いのは
官僚だけでなく、「知つててそのまま」「知つてるからそのまま」=自分の利益に結びつくやうな
手段を講じて自分がトクをするやうに仕向けてゐた政治家
そしてその政治家にタカつて、利益を得てゐた有権者(申請者)
だと思ふ。
 
こいつらは、まとめてツケを他の国民に返せ
 
蓮舫行革相、年内にも「規制仕分け」
2010.7.20 13:05
このニュースのトピックス:事業仕分け
 蓮舫行政刷新担当相は20日の記者会見で、「20年以上続いている規制に必然性があるのか。オープンに議論する」と指摘し、経済活性化のためにさまざまな規制措置を見直す「規制仕分け」を従来の事業仕分け同様に公開の場で実施し、適否を判断する方針を明らかにした。
 「規制仕分け」は年内にも実施する予定で、規制の必要性を主張する官僚側と、規制撤廃を求める民間企業などの双方を集めて議論する見込みだ。