読書おぶろぐ

読んだ本の感想を書いてます

外交敗戦 130億ドルは砂に消えた

2010年02月28日 13時49分21秒 | 政治関連・評論・歴史・外交

手嶋龍一氏の著書。

本書は、「1991年日本の敗北」を改題、内容を一新し、湾岸戦争勃発に際して日本政府が巨額な資金援助を提供するも、戦争終結後の「感謝を申し上げる」のリストに日本の国名が入つてゐなかつたことの舞台裏といひますか、湾岸戦争に関する「政治の舞台裏」を克明に記述されてをります。

P422 - P436の「取材・参考文献ノート」では手嶋氏の人脈と言ひますか、経歴の凄さ(厚さ)が感ぢられます。
いろいろなジヤアナリストの方がいらつしやいますが、本書は手嶋氏にしか書けなかつたのではないか、さう思はれます。

それにしても、佐藤氏の著書でも感ぢましたが・・・・
外務省だけでなく、「民間外交官」としていかに民間企業の方々の活動が重要であるかがよくわかりました。
また、「湾岸戦争」といふ戦争により駐在してゐた民間企業の日本の方々の「人質」としてのご経験の大変さ、最終的には国のためになる活動をされてゐるこの方々に対する日本政府の対応のいい加減さがよくわかりました。

日本政府は、日本国民の税金で生活する資格は無いですね。
断言します。恩給も貰ふ資格はありません。

様々な失態を犯した厚生労働省だけでなく、大蔵省・外務省も国益に反する基幹だと思ひます。

ハイチ地震の時の「自衛隊救護活動」派遣の決定も大変遅かつたですが、そのトロさはこの著書の自衛隊の後方支援活動に関する記述で「カラクリ」がよくわかりました。
全く、あきれ返る様相です。
なぜ、「人道支援」に関して憲法解釈を的確に判断して「軍事行為」にならない「自衛隊の援護活動=人的支援」をさつさと決められないのでせうか?
イライラゐたしました。
そして、とどのつまりは民間の船舶会社に「戦地への物資輸送」を要請してゐる体たらくです。

まあ、船舶会社ぢやなくても「なんで民間が戦地に物資を輸送するんだよ?」と呆れます。
そこで登場するのは、またもや馬鹿なマスゴミです。
「船社が非協力」つて、当たり前です。

危険地域に、身を守る装備の無い民間の船舶が赴くのが間違つてゐるのです。
危険地域への物資輸送など、防衛機能を搭載した船舶・飛行機を使用するに決まつてゐます。
さつさと自衛隊の「輸送機関」を「人的支援」に活動できるやうにすればよいのです。

湾岸戦争では日本国は増税してまで、「財源支援」を行なつたのに、馬鹿な大蔵省と外務省の責任で、日本国民の貢献がきちんと認識されませんでした。
当時のベーカー国務長官の人柄ではなく、さういふ人柄を考慮した外交をしなかつた(できなかつた)外務省と大蔵省の間抜けさの責任です。

日本を動かす基幹に居ながら、日本国のためにならないやうな「見得の張り合い」に終始するやうな役所は、その思考を直ちに改めて的確な処置をできるやうに勉強してください。
東大卒の方が大半のやうですから、「何が的確」なのかあたくしが言はなくてもお分かりのはづです。

国益に反する基幹は、その中身を直ちに入れ替えてゐただきますやう、心より御願ひ申し上げます。

霧の旗

2010年02月28日 13時06分02秒 | ミステリー・推理


松本 清張氏の作品。

海老様が鍵となる「大塚欽三」を演じられるので、放映前に読みました。
松本清張は、中高生の時に殆ど読破したと記憶してをります。
あたくしの父が、松本清張といふか推理小説が好きで、本棚には松本清張ほぼ全巻と他の
推理小説が並んでをりましたので、順々に読みました。

今回、「霧の旗」と「目の壁」を読みました。
面白ひですね・・・・、執筆の時代が昭和30年代だから、電話が自宅についてゐる家が限られたりしてゐるのだが、さのやうな時代背景も新鮮といふか、明治時代に執筆された夏目漱石の作品を読んだときに感ぢられる「郷愁」のやうな気持ちが出てきます。

かうして、時は流れていくのですね・・・・・ 今の世も、50年後には「古典」となつてゐるのでせう。

で、「霧の旗」の本題。

主人公、柳田桐子は無実の兄の弁護を引き受けてもらはうと九州から上京し、大塚欽三弁護士に会いに行く。
大塚欽三は、「一流」の弁護士として世間に名をとどろかせてゐた。「自白」をしてしまつた兄の無実を明らかにしたいため、桐子は大塚弁護士に弁護を依頼するが断られる。
兄は獄中で死亡し、桐子は九州から東京へ出てくる。

桐子が東京へ出てきた目的は何か

それが、次々に描かれていく・・・・

個人的な感想:
この桐子ッて人、少し異常すぎないか? と思ふが・・
実際、この人の立場になつたらだうなるかわからない。

しかし
ここまでする桐子もすごい・・・・ 

ドラマでは少し後半の筋書きを変更してゐるさうですが、海老様が大塚欽三をだう演じて
いくか、非常に楽しみです。


国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて

2010年02月27日 20時54分56秒 | 政治関連・評論・歴史・外交

佐藤 優(まさる)氏の著書。
「著書」といふか、佐藤氏の「半自伝」のやうな内容かなと思ひます。

佐藤氏は同志社大学大学院神学研究科修了の後、外務省に入省され在英日本大使館・ロシア連邦日本国大使館などを経て平成7年から外務本省国際情報局分析第一課に勤務。 
2002年5月、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕、2005年執行猶予付有罪判決を受け平成19年11月時上告中とのことです。

佐藤氏の名前だけでは「ピン」と来なくても、著者紹介のお写真で「あ、観たことある」といふ方は結構ゐるのではないでせうか?
鈴木宗男氏の逮捕の時期に先に逮捕された方で、ニュースでも何度も報道されました。

この時の「佐藤氏と外務省・検察庁・鈴木氏・自民党」の関係を描いたのが本書となります。
当時の外務大臣は田中 真紀子氏。
田中氏は「近所のおばさんコメント」としては面白かつたけど、「政治家」のコメントではなかつたですね、と思ひます、思つてゐました。 なんで小泉氏があの人を決めたのか知りませんが、後々「スカートの裾を踏んでゐる人」として批判されてしまひました。

田中氏の「世の中には家族、使用人と敵しかいない」の発言(P67)は驚きました・・・・
友人がゐないのか?! 
とっさの感想

ゐないのだらうなあ・・・・ ゐれば、「家族」の次に「使用人」とは来ないよな・・・ ま、「使用人」が持てる身分ぢやないけどな

で、この原点で「世の中」との関わりをもたれても政治になんか向いてつこありません。

「お父ちゃん(角栄)は偉い。だから日露関係でも田中・ブレジネフ会議が原点。自分のお父ちゃんを裏切つた経世会(橋本派)は許せないという、ふたつの想いで動いている」 (P67) の証言にも唖然。
子供の喧嘩の思考の持ち主が、なんだか知らんが「外交」といふ「うんと大人の思考」が要求される仕事の長なんか出来るわけありません。向いてる向いてない以前の問題だ。

呆れましたね・・・  こんな人が、「国会」に出てたのか。汚沢といひ、石川といひ、鳩山といひ、最悪だなと発想が、現在の国会にも及んでしまひました・・・・

で、
この田中氏と鈴木氏の「対戦」が勃発(?)し・・・・
鈴木氏についてゐると思はれた著者がした体験が、本書につづられてゐる。

検察庁のことの進め方も書いてある
検察庁からしたら、佐藤氏の記述には言い分があるのだらうが 「こんなことよりも、もつと大事なことがあるんぢやないのか?」と思はづにいられなかつた。

「外交」

佐藤氏のこの著書を読むまでは、イメージがつかめなかつたが・・・・

外務省だけで出来ることではないのだな
商社やメエカアの営業など、海外に拠点を置いていく 「民間外交員」 の役割がこんなに影響してゐるのかと目の覚める思ひ。

それから
北方領土について、どのやうな問題や狙いや駆け引きの手が「愛国」の精神のもと動いてゐるのかもわかつた。
北方領土については、知らないことも多々あるので別途いろいろな本を読んでいかふかなと思ふ。

しかし
それにしても、「ソ連」の終戦間際の行動は見苦しいですねえ。 これもある種の「嘘つき民族」です。
「嘘つき民族」つて、全部あの大陸に固まつてゐますね。


話が戻るが・・・・

あの当時、田中真紀子氏の発言に逐一飛びつき面白おかしく報道してゐたのは、やはりマスゴミだつた。
また、田中おばさん節がウケるのが「政治としてよいわけではない」のにそれを「良い」やうに報道したのもマスゴミであつた。

田中真紀子氏は、「プロ(政治)」としては最低だつたが、井戸端会議の「どぎつい発言」おばさんとしては一級だつた。そこを、マスゴミが自分らのレベルに合わせて報道したやうに思ふ。
すつかり、悪者になつたのは鈴木宗男氏であつた。。。。。

いろいろな裏の見えた一冊であつた。 

偽装請負 格差社会の労働現場

2010年02月16日 22時03分30秒 | 社会・報道・警察・教育

朝日新聞特別報道チームの取材による、ルポです。
朝日新聞では2006年夏より告発報道を展開し(表紙裏扉より)、この本はそのまとめと
思はれます。

まづ
「偽装請負」とは何なのか?
「請負」といふからには、商品の製造に関するやりとりであらう、偽装つてことは造つてもない製品を造つたことにでもしてたのかなあなんて、漠然と想像して手に取りました。

しかし、「長期不況で一気に拡がった「偽装請負」という雇用形態」(表紙裏扉より)の文字に、「え」と思ひました。

「雇用形態に『請負』なんてあるの??」と思ひました。 「派遣なら分かるが、請負つて何?」とあたくしと同じ疑問を抱かれる方に・・・
プロローグより(P26-P27)より引用してご説明を・・・・・

まづ、請負の場合:
発注者(メエカア)と請負業者で請負契約を締結
労働者への仕事の指示は請負業者からなされ、労働者の雇用は請負業者が行なふ。
発注者から請負業者への支払いは、製品の出来高に応じて支払われる。支払い・契約は
「製品」といふ物品を基準とし「労働者人数」「労働時間」など労働者に関わることはない。(依頼された仕事を完成させ、その結果を引き渡して報酬を得る)

派遣の場合:
派遣先(メエカア)と派遣会社(派遣元)が労働者派遣契約を締結
派遣会社が自己の雇用する労働者を他人(派遣先メエカア等)の指揮命令の下に派遣し
派遣先のために労働に従事させること。

偽装請負の典型例:
請負業者と発注者が請負契約締結
請負業者と労働者が雇用契約締結
発注者(メエカア)側の正社員が請負労働者に直接指揮命令して働かせ、実態は労働者派遣
になつてゐる。

これで一体、企業(メエカア等)が何を得をするのかといふと・・・
「必要がなくなればいつでも請負契約終了」として労働者を解雇できる。
派遣と違つて一定期間を過ぎたら直接雇用の申し込みをする義務が無い。
雇用保険・社会保険や健康診断などの責務を負わない。

・・・・・・ すごいですねえ・・・ これ、明らかな違法行為なのです。監督は労働基準監督省でなく、ハローワーク(公共職業安定所)ださうですが、ハローワークでは「雇用対策」のはうに追はれて実質「野放し(?)」になつてゐるやうです。

工場労働者の派遣契約打ち切りが大きく社会問題になりましたが、その中にこの「偽装請負」もあつたのではないかと思ひます。
本書は2006年より新聞連載され、2007年4月に刊行されたやうですのでその後の世の動きについての記述はありませんが、事態は全然変はつてないのですね。

本書で名指しで取り上げられてゐる企業が2社ありますが、その企業はどちらも過去に「偽装請負」で指導を受けてゐたのださうです。
しかし、現状も「偽装請負」は続いてゐるやうす・・・・ しかも、企業側は「請負とは知らなかつた」「請負では無い」と否定してあらゆる手段を尽くしてゐるやうです。

この2社だけではなく、日本中いや世界中の「大企業」といふ工場を持つてゐる企業は同じやうなことをしてゐるのだらうなあと思ひます。
さう考えると、「こんな会社の製品買ひたくないなあ」と思ふけど、買へる会社、あるのだらうか?

問題は偽装請負をしてゐる企業(メエカア等)だけでなく、「人を派遣」する側の「請負業者」にもあります。
驚く無かれ、「違法派遣」で摘発された会社が絡んでをりました。

メエカアが、「偽装請負」による労働力の調達を始めたのは、景気が後退し人件費の安い海外へと工場を移設すると産業の空洞化が起きてしまふ、それを防ぐため日本国内で製造を続けるには人件費削減といふ壁があり、コストを落とすためにこの方法を採用したやうですが・・・・

理論は理解できるが、もう少し「まとも」な対応が出来なかつたのであらうか?
プロローグで、自殺した若者の勤務状態が出てくるが「人間に対する扱い」とは思へない。
社員にしたら、「労働衛生安全法」とか労働関係の法律に違反することばかりであり、「自社の大事な製品を造つてくれてゐる労働者に対して、何も気遣いがないのか?」とびつくりゐたしました。
こんなところで、「正規雇用」「非正規雇用」と差別をするのは絶対におかしい。

もう一つ疑問に思つたのは、働いてゐる側の労働者なのだが。
「非正規雇用」のすることではない、かなり重要なレベルの仕事をやらされてゐる。この人たちが抜けると一時的であれ、メエカアは痛手を被るであらう。この労働内容もはつきり言へば違法であらう。
で、この非正規雇用者たちは「この仕事が好きでやりがいを感じてゐる。」として正社員雇用を望むのであるが

「なぜ非正規雇用者がそこまでしなければならないのか?」 これも理解できなかつたなあ
まあ、「仕事内容が好きだ」と言へばそこまでだが、報酬と労働条件を考へてみれば何年も留まるのが不思議といふか・・・・

といふか、「何のために正規雇用が居るのか?」と思つた。正規雇用者にさせられない労働内容や労働条件ならば、非正規雇用者にもさせてはいけないのでは?? ひたすら疑問。

自分も派遣で5年くらい働いてゐたことがある。
そのときは、好きなことをして「仕事はお金を得る手段」と割り切れる恵まれた環境だつたから「雇用契約で縛られる社員より辞めたいときに辞められる派遣がいい」と思ひ、割り切つてやつてゐた。

なので、「非正規雇用」にこんな重要な仕事をさせる会社も信じられないし、低賃金重労働で黙つて何年もやつてゐる非正規雇用者も理解が出来ない。しかも、家庭を持つてゐて専業主婦に子供2人を背負つてゐるとは! 

人にはいろいろな考えがあるが、だうしても理解できない

現在民主党が、「事務職も含めて派遣雇用されてゐる人たちを全員正社員に」とやつてゐるやうであるが。

理論はわかるが、それもだうかと・・・・ 
まづ、派遣会社が無くなるといふか、潰れるといふか、打撃を受けるのは間違いない。

新たな失業

正社員雇用で負担が増える企業で、利益が得られない企業は・・・・
消滅?
解雇?

新たな失業

クライ方向ばかり書いてしまつたが、民主党は全体のつながりを見て「全員正社員」と言つてゐるのであらうか?

話がそれたが
「偽装請負」に出てきた会社の労働者に対してしてゐることは、法律以前に人道的に許されないと思ふ。

日本最初の盲導犬

2010年02月16日 14時34分02秒 | 社会・報道・警察・教育
葉上 太郎氏の著書。
葉上氏は全国紙記者を経て2000年からフリーとなり現在、地方自治ジャーナリスト
としてご活躍されてをります。

現在では、通常の存在となつてゐる盲導犬。
だのやうに日本でこの育成と導入が始まつたのかは、語られてゐないのでは?

この本で初めて知つたが、「戦争で失明された傷病兵さんたちの目の代わり」として
独逸から1939年に4頭来たのが最初だつたのださうです。

1939年当時、日本は中国で「事変」と呼ばれる戦争を行なつてをり爆撃・地雷等々で
失明して日本に帰国される方々がゐました。

日本で盲導犬育成のきつかけとなつたのは、盲導犬をつれて世界一周旅行をしてゐた
アメリカの大学生が横浜に寄港したのがきつかけださうです。

この盲導犬の働きを見て、日本でも導入をと考え尽力をつくした方、盲導犬の訓練に携つた
方々、盲導犬との生活等々が記述されてゐます。

当時の時代から、敗戦の色が濃くなつてきた日本のやうすを語つた資料が少なく、
取材された葉上氏はご苦労をされたやうです。現在も調査を続けてゐらつしやるとのこと。

しかし
戦争に関する本を読むたびに思ふのは、「戦争を決めた」人たちは戦地に行かづ怪我もせづ
食料に困ることもなく過ごしてきたらしいのに、「行け」と決められて行かされた人たちが
常々苦労を強いられてゐた・・・・ といふ矛盾である。

この盲導犬と一緒に生きた人たちも、盲導犬も、大きな犠牲者なのだなと思つた。