読書おぶろぐ

読んだ本の感想を書いてます

灰色のダイエットコカコーラ

2009年07月31日 22時05分52秒 | 小説
佐藤 友哉氏の作品。

氏が19歳-21,2歳の頃に書かれた作品のやうで、4作品の続きものから一冊の
本となつてをります。

14歳が起こした神戸の児童殺傷事件を知る19歳の主人公が6歳から21歳までを
描いた作品なのだが。

・・・・・・

若い頃つて、確かにかういふこと考へるな~、考へたな~と思ひつつ読んでをりました。
(「かういふこと」といふのは悪のはうではなくて、「将来いかに」といふはうです)

そうそう、若い頃つて「人生何なのか」とか「人生何かをすべき・・? 唯の人はいやだ」とかな~んか、自分が何でも出来るやうな可能性といふか漠然とした「妄想」を夢見てゐたやうな気がする・・・・・

普通に学校卒業して、普通に就職して、普通に結婚して・・・・ なんて人と同じことをするのは嫌だ・・・と思つてゐたな・・・・ 実際、人と同じことはしてゐないわけだが・・・
かう考へると、自分の人生は「肉のかたまり」ではないのか・・・・? イヤ、肉のかたまりであらう

今までの人生を振り返へつて言へるのは・・・・

自分は幸せ

であらう 

派手な砂漠と地味な宮殿

2009年07月31日 14時42分47秒 | 小説
岩井 志摩子さんの作品。
初めて読みました。

岩井さんは岡山県生まれ、99年「ぼってえ、きょうてえ」で日本ホラー小説大賞を
受賞され、同作を含めた短編集で山本 周五郎賞を受賞されてをります。
2002年には「チャイ・コイ」で婦人公論文芸賞、「自由纞愛」で島清恋愛文学賞を
受賞といふご経歴の持ち主です。

この作品では、同い年で性格や物の考へ方が正反対の女性が2人を中心に彼女らを
取り巻く人たちの姿が描かれます。

日本ホラー小説大賞を受賞されてゐるといふご経歴だつたので、「どんな話だろう?」と思つてゐたのですが、この作品は月刊誌に連載されてあつたさうで読みやすくて面白かつたです。

しかし、登場する女性の一方の「派手な砂漠」と表現されてゐる(であらう)方は
「居るよな、かういふ人・・・・ モデルはあの人か?」と思ひつつ読みました。

今度はホラー大賞の作品を読んでみやうかな?

虚像(メディア)の砦

2009年07月31日 11時35分10秒 | 小説

真山 仁氏の作品。

「テレビの世界」を描いた作品です。
刊行は2005年6月です。比較的最近なので、テレビの現状ともそう齟齬が無く
成る程ねぇ・・・・ と頷く箇所が多かつた。

個人的意見になりますが、最近の番組は詰らないのでほとんどテレビは観ません。
おニュースもキヤスタアとかいふ人のコメントなど不要なので、「何があつたか」だけを淡々と流してくれる夕方をちらと観るくらいです。

おニュースも、一局だけをずつと観るのではなく各局が何をトップにやつてゐるかとかどのニュースを流してゐるかを比較しながら観るやうになりました。

何故さうするやうになつたかと言へば、一言で言へばマスコミは信用してゐないからです。

ぢや テレビ観るなよ
といふ話しですが。

とりあえず、何がどう報道されてゐるのかを観る。

バラエティといふ番組は好きな人が出ないかぎり、ほとんど観ません。
どこかの局の番組が当たると、それを模倣したやうな他局の番組など軽蔑してしまひます。
なので、ほとんど観ません。

そんなあたくしが、本作品を読むと

やはりな・・・・ 

などといふ感想を抱いてしまゐます。

無言の旅人

2009年07月30日 09時38分37秒 | 医療 (医療小説含)
仙川 環氏の作品。

主人公、大木公子は婚約者の三島 耕一と新居を見るために待ち合わせを
してゐた。
中々やつて来ない耕一に何度か連絡を取るも、電話が通じない。
暫くして耕一の携帯から電話が入る。
電話は耕一ではなく、耕一の妹 香織からで耕一が事故に遭い、病院に運ばれたと
いふ内容だつた。

何時間もの手術を終え、医師の診断は「遷延性意識障害」(所謂植物状態)であつた。
そのうち、耕一が「尊厳死」を求める文書を残してゐたことを知り、耕一の「生」を願ふ家族はシヨツクを受ける。

病院に知られてはならない・・・
耕一の意思を尊重すべきだ・・・

様々な思惑の中、家族と公子はある決断を下す。

実は、りゐべも「尊厳死協会」に入つてゐます。
臓器提供意思表示カードも一緒に携行してをり、全臓器を提供することを記載して署名してあります。
だうして登録してゐるかと言ふと「母親」の経験からです。

ずつと難病であつた母親は12年後に死にました。
その間、入退院・手術等々があり、子供のころであつた自分は疲れました。
そして思つたのです。
自分もいつ病気になるかわからない、でもこんなに他人の時間を取ることはしたくない、と。

別に母親を非難してゐるわけではありません。
しかし、母親が入退院や自宅に居ても毎日具合を気遣ふことにいい加減疲れてゐました。
友達がクラスで「あたしのお母さん健康だけが取り得~」と言つたのを聞いて、「健康が当たり前といふことがどれだけ有り難ひことなのかわかつていないんだな」と思ひました。

このときから、病気になつても治療はせずに告知だけをしてもらつて、そして身の回りを自分で処分してさつさと死ぬことに決めました。
さつさと死なせてもらへるかはわかりませんが、病院と自宅の繰り返しとか自分で自分のことが出来なくなつた時点で生きていたく無いと思ひました。

この小説の中の耕一も、自分が一度癌となりその経験から尊厳死を選ぶことを決意します。
しかし、最後の最後で耕一が考へたことは・・・・・

耕一のやうに自分も考へるときがあるのかな?とそれだけが印象に残りました。

あれから

2009年07月29日 11時53分13秒 | 小説

矢口 敦子さんの作品。

矢口さんは病気のため小学5年で通学をやめ、通信教育で大学を卒業されます。
97年「人形になる」で女流新人賞を受賞されたご経歴の持ち主です。

主人公、鈴木 千幸は看護婦をしてゐる。旧姓は遠山。
千幸の病院へ、救急患者が運びこまれてくる。患者の名前は「野中 瑞江」
千幸は「野中」といふ名字にある思い出があった。

ある朝、刑事が二人父を尋ねてくる。しかし父は出掛けに倒れ、救急車で運ばれた
ばかりだつた。
刑事が尋ねてくる理由がわからない。

新聞を見た姉妹の目に飛び込んできたのは
「痴漢をいさめた青年が電車に轢かれ死亡」

父が痴漢と思はれてゐるのか・・・?

警察の話しには納得できない、千幸と妹の夕美。二人は独自に調査を始めるが・・・・

何年、何十年後に真実がわかる場合がある。
加害者や世間はとつくに忘れてゐることがある。
しかし、いつまでも忘れられない側は・・・・・

日々の生活で同じやうな事件のニュースが流れるが、その度にかのやうな思ひをしてゐる人たちがいるのだと思ふ。