池上 彰氏の半生記とも言へる本。
池上氏は「こどもニュース」「学べるニュース」でお馴染みの方である。池上氏は昭和25年長野県松本市生まれ。慶応義塾大学経済学部を卒業後NHKに記者として入局。東京報道局社会部、その後ドキュメンタリー番組制作にも携る。89年ニュースキヤスターとなり2005年3月に退職し独立された。
一冊の本から新聞記者に憧れ、マスコミ受験を決めるところから始まり、NHK入局後の地方局勤務、東京に戻つての各部署の勤務、警視庁担当、災害担当とこれまでの池上氏のNHKでのお仕事と取組のやうすが興味深い。
同時に、「わかり易いニュースと解説」の土台となるご経験、ご経験を通じて「伝える」ことを考えてきた池上氏の人柄がわかる。 通読して、「だからあんなにわかりやすく伝えることが出来るのだな」と納得した。
第十章「ジャーナリズムについて考えてみよう」は、マスゴミと呼ばれる現在のメディアの在り方などがまとめられてゐる。NHKに在職してゐた当時に起きた2005年1月の朝日新聞による「NHKの番組をめぐり、NHKの幹部が自民党の有力政治家二人に呼ばれ、放送中止などの圧力を受けた。その後、番組はNHK幹部によって改変された」といふ報道に関する記述もある。ここでの池上氏の記述は興味深い。
「それは、この問題をめぐって開かれたNHKの記者会見で記者会見当時のNHKの幹部が、放送予定の番組内容を政治家に説明するのは『通常業務』と述べた点だ。 これにはぼくは、大きなショックを受けた。NHKは視聴者が払う受信料で成り立っており、税金が使われているわけではない。だから国営放送ではなく、『公共放送』と呼ばれている。しかし、その一方で、国民の代表のチェックを受けるという意味から、その予算については、国会の承認が必要とされている。そこで、予算案を国会で認めてもらうため、予算案や今後の事業計画を国会議員に説明する、ということが行なわれる。このとき、特定の番組について国会議員に説明することが『通常業務』だという発言が飛び出したのである」(P301)
初めて、NHKの受信料と国会での予算案承認の意味を知りました。池上氏はこの幹部の発言の背景を説明しつつ「こんな発言が出てしまうことをぼくは残念に思う」と述べられてゐますが、同感です。
P302 に池上氏のこの件に関する記述があるが、同感である。
今後、記者に戻ることを宣言されたが、リポートを楽しみにしてゐます。