読書おぶろぐ

読んだ本の感想を書いてます

友罪

2018年07月07日 20時27分05秒 | 小説

久しぶりの更新・・・

生田斗真さんと瑛太さん主演の映画の原作。

作者は薬丸 岳さん。薬丸さんは2005年少年法をテーマにした「天使のナイフ」
で第51回江戸川乱歩賞を受賞し、デビューした方。
著書に「闇の底」「虚無」「悪党」「刑事のまなざし」「ハードラック」
「死命」「逃走」がある。

原作のモデルは、あの少年Aの事件と容易に連想される。

物語は生田さん演じる益田純一が、ジャーナリストを目指しつつも「ゲス」に
成りきれないも、マスコミの世界を諦めきれずにいるうちに収入がなくなり
住むところを求めて寮付の会社に職を求めていくところで、瑛太さん演じる
鈴木真人に出会うところから始まる。

鈴木は人づきあいを避けるような雰囲気、態度であったが益田が鈴木の身を
案じていると感じた鈴木は少しずつ周囲の人に心を開き始める・・・

凶悪事件の犯人、について世間は冷たく、また少年法という法律に「守られて」
いることについて様々な意見もある。「少年Aは今」のような記事もネットに
多々ある。その中には、当の犯人が反省している様子もないと思われる行動の記述や
犯人の家族についても書いてある。

この作品にも、そのような場面は出てくるのだが

この作品では、犯人であった少年が医療刑務所にて「罪」を理解し、自らの死を願い
つつ、罪を償いながら生きていくことに模索する姿がえがかれている。自分の正体が
バレるとその場所には居られないから、既に刑期を終えていると言っても現在も引き
続き犯罪者のように逃げていくさまが描かれる。

この作品には、鈴木の外に心に傷をもつ、「自分が加害者」という認識から逃れら
れない二人が出てくる。一人は益田であり、もう一人は寮長をしている男である。
「自分が加害者」という認識を持っているためなのか、この二人の鈴木に対する
対応は少し世間の一般的な対応とは違っている。

元犯人が「罪の意識に悩まされている」「二人の攻撃しない人物が登場する」こと
から、読んでいくと現実の「少年A」に対して抱く感情とは別の感情が出てくる。

「反省しているのか」として現在を追いかけ、世間に晒し、当人の人生を邪魔する
ような行為が正当なのかという疑問が出てくる。しかしながら一方で、そんな凶悪
な事をした人間が未だにのうのうと生きているのか、自分の近くに存在していたら
再犯を犯した時に巻き込まれるのではないかという怒りと不安もある。

そして益田はある決意をする・・・・

その決意が明らかになったところで小説は終わる。

この物語に登場する「元少年A」と現実の「元少年A」は随分と違うように思える。
この物語は、正反対に生きている現実の「元少年A」に対する抗議なのか、
嫌みなのか、諭しなのか・・・・ 色々考えた・・・・

一つ思ったことは

「少年A」は犯罪を犯した時から全く変わっていないということ。
犯行声明と、HPに掲載されていた表現は殆ど変っていない・・・

少年法は、やはり廃止すべきだと強く思った・・・


カエルの楽園

2016年06月11日 14時00分31秒 | 小説

百田 尚樹氏の作品。

販売数が多いのに、テレビ番組ではランキング順位は紹介するも内容は紹介せず、とか
全くとりあげないとか、書店によつては置かない置いても目立たないところに置く等の
対応をされてゐる作品。

その理由は読めばわかる・・・・といふところだが、それだけでは感想にならないので
ざッとあらすじから。

自国の国に凶悪な「ダルマガエル」の群れがやつてきてから多くの仲間を殺され
国を追はれる形で逃げ出した2匹のアマガエル。
数々の苦難を乗り越へ、やうやくたどりついた場所はよそ者の自分達に警戒心もなく
親切に接してくれ、食べ物も安全な場所も確保されてゐる「ナパージュ」といふ国だつた。

楽園のやうな場所だが、2匹はこの「ナパージュ」に不思議な「平和を信じる思想」と
「『三戒』といふ決まり事」「アヤマリソング」といふ歌があるのを知る。

外から来たアマガエルの一方はナパージュの思想、決まり事を絶賛するがもふ一方は
違和感を抱く。

やがて、ナパージュの国の近隣にすむ凶悪なウシガエルの群れがナパージュの土地に
近づいてくるのだが・・・・

勘のいい人は「平和を信じる思想」と「『三戒』といふ決まり事」「アヤマリソング」が何を
意味してゐるのかピンとくるところであらう。 現在の日本の状況とマスゴミの主張である。

ナパージュの国の近隣にすむ凶悪なウシガエル、といふのは昔から世界で問題を起こし
自国の国だと嘘と吐くあの国の民族がモデルなのだな、といふのもわかる。

そのほかにも本書には面白い人物が登場する。

「フラワーズ」といふ、「平和を信じる思想」と「『三戒』といふ決まり事」を信じてやまない
若カエルの集団。  これも現在頻繁に登場してゐる現実のグルウプを思ひ起こさせる。
スチームボード、といふナパージュの一角に住む鷲。
某政党の党首を思ひださせるカエルの元老たち。

何もかもがここ最近の日本の政治情勢を思ひ起こさせるもので、しかも驚くのは党首の
発言が、この小説とほとんど一緒のことを言つてゐることである。

この小説が元々党首発言を引用したことも考へられるが、既に発売後に参院選の争点として
経済よりも敵国のためになるかのやうな改憲を持ち出した党の党首の発言は思はづ
噴出した。

「カエルの国の物語」を読んでゐる「第三者」の目線でみると、「平和憲法死守」等朝日新聞を
始めとした主張はとても滑稽であることがよくわかる。

さうかうするうちに、この本の内容が「予言」と思はせるやうな出来事が最近起きた。
【編集日誌】中国軍艦侵入にもだんまり…翁長沖縄県知事、発言なしですか - 産経ニュース http://www.sankei.com/politics/news/160611/plt1606110019-n1.html

この「だんまり」がこの小説に登場してきて散々ナパージュの防衛を無視する役柄の
することとよく似てゐる。

本書を「妄想」と言ふ人もゐるかもしれないが、世界の現実をみれば国を守るといふことは
だういふことなのか、この本を読んで世界が実際何をしてゐるのかを見て考へたはうがいいと
思ふ。

インドネシアの刺青大臣 南シナ海で中国監視船を撃退 駆逐艦で警告発砲も - 産経ニュース http://www.sankei.com/world/news/160602/wor1606020016-n1.html

平和憲法、などといふ妄言の条文が世界の他の国にあるのか。
これまで、共産主義者の手先の日教組の間違つた教育で「世界のどこにもない素晴らしい」もの
と思ひこまされてきたが、実はそれは「世界のどこにもない愚かなもの」である。

敵が攻めてこないのは、実際どこが発砲できる用意があるからなのか。
話し合ひ、を普段から主張してゐる人達がなぜすぐに現場に話し合ひに行つていつも主張して
ゐるとおりに領土を取戻しても来ないし、自国の領海に侵犯したり接近することを止めさせないのか。

この本の結末、かういふ人実際にゐるよね・・・と思つたが現実の日本ではかのやうな人は
ゐなくなつてほしい。

それから、一つ思ふことは。

現実の日本はこの小説よりもずっと恐ろしい事になつてゐるといふ事だ。

ウシガエルがツチガエルになりすまし、ツチガエルのフリをして日本を意のままにしやうとしてゐる。ツチガエルの国がウシガエルに支援をやつて滞在させ仕事まで世話をしてゐる。現実は小説よりもずっと危険だ。


この世にたやすい仕事はない

2016年03月27日 17時50分22秒 | 小説

津村 記久子さんの作品。

この人の小説は淡々と書いてあつて、しかもその描写がなかなか細かくて読んでゐて面白ゐ。
この作品もそのうちの一つ。

5話からなる短編小説。主人公は大学卒業後10数年続けた仕事を「燃え尽き症候群」のやうな形で
辞め職業案内所の担当者から紹介された仕事を始める。

それぞれの仕事が5回でてくるといふ御話しなのだが、それぞれの仕事がまた面白い。

第一話 みはりのしごと
第二話 バスのアナウンスのしごと
第三話 おかきのふくろのしごと
第四話 路地をたずねるしごと
第五話 大きな森の小屋での簡単なしごと

読みながら、それぞれの仕事に対して興味が沸いた。主人公も、最初はその仕事に好感をいだくのだが
続けるうちに、だんだんと仕事の問題点が出てきて悩むやうになる。

・・・ さうなんだよな、最初いいと思つても辛い事が出てくるし、問題点が見えてくるし・・・と思ひつつ
読み進んだ。

仕事の話に集中してゐるのではなく、仕事を通してみえる「世間」「社会」が面白い。そして少しミステリアスな
部分もあつた。

読んで行つて、さうなんだよな~、この題名が言ふとおり「たやすい仕事はない」んだよな~
だから、「働かないで御金が入つてくる方法ないかな~」とかシヨツチュウ考へるんだな


何者

2015年09月12日 19時56分45秒 | 小説

朝井 リョウ氏の作品。

朝井氏は1989年生まれ。岐阜県出身。2009年「桐島、部活やめるってよ」で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。
2013年本作品で直木賞、14年「世界地図の下書き」で坪田譲治文学賞を受賞。 

正直、「桐島・・・」はあまり面白いと思はなかつたので途中で読むのを止めてしまつてゐた。 それから、
次を読まふといふ気持ちがあまりなかつたのだが、本書を図書館で見つけて、「賞」と記してあつて、
みたら直木賞とあつたので、読んでみた。

読後最初の印象・・・ 直木賞ぢゃなくて、 芥川賞ぢやね?

正直、ぞッとする人間の心理が描いてある。 最後の最後にこれでしたか!!といふ、あまりにも

ぞッ

とする展開。

でも人間ッてああいふものなんだらうな・・・・、人の不幸は蜜の味、といふ言葉があるとおり
しあわせな人間を見て面白くないと思ふ人は必ずゐるし、堂々と批判できないから陰で言ふことになるし
(だから、陰口、といふのであらうが)

しかし、SNSといふツウルがある現在、いかにもありがちな内容で人の心理を巧みに描き出した
この作品は

自分で思ひあたることがある人が結構ゐるんぢゃないかな・・・・

登場人物は就職活動中の5人の大学生。
留学経験がある人2名、バンドやつてた人1名、演劇やつてた主人公1名、留学経験がある女生徒の恋人

と、これから就職するにせよなにかやるにせよ、未来が決まつてゐない状態の人達の物語。

就職活動をしていくなか、ある意味「競争」であるので心理的にはお互ひに「一物」ある。
誰が先に内定を得るのか、その得た先はどんな企業なのか、大手なのか否か・・・・等々

そりゃ人間少しでもいいところに行きたいし、人から訊かれた時に堂々と言へるところに行きたい

で、実際さういふところに内定を得る人が出てくる
内定を得るも、大手とは言ひがたいところに決まる人も出てくる
内定を得られない人も出てくる・・・・

こんな、心理戦のやうなお話で、最後の最後にこれですかと言はんばかりの

人間の本質

のやうなものが出てきて・・・・

怖かつた・・・・ 


アクティブメジャーズ

2015年09月01日 21時11分07秒 | 小説

今野 敏氏の作品。

今野氏の警察小説は大変面白いので大好きなのだが

この作品はまた少し違つた、刑事ではなく公安に焦点を充てた少し違ふ雰囲気の小説である。

公安の「ゼロ研修」を受けて帰つてきた主人公倉橋は、上司に呼び出されある公安マンの動向を
探るやうに指示される。

その公安マンは「エース」と呼ばれる一流の公安マンであつた。 なぜ彼が調査対象になるのか?

公安といふ、ある意味特殊な職場を描きつつ、スパイが活躍しはうだいの日本での外国人の
諜報活動、それに利用されるマスゴミを描いていく。

かなり、面白い。実際の公安の人が読んでおなぢ感想を持つのかしらないが。

最終的な感想は

今野氏は人を描くのがうまい

といふこと・・・  続編が読みたい