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死因不明社会 Ai(エーアイ)が拓く新しい医療

2010年06月15日 16時02分11秒 | 医療 (医療小説含)
 
海堂 尊氏の著書。
海堂氏は厚生労働省官僚、白鳥圭輔を登場させた医療小説を4点ほど発表なさつて
ゐますが、その小説の中で医療現場の直面する問題点を挙げてをられます。
 
本書は、フィクションの中に存在する白鳥氏と新聞記者の別宮葉子氏を登場させ、
厚労省官僚に独占インタビューの形を用いながら、現在の日本の医療現場が抱えてゐる
「死因究明」の問題に焦点をあてて論じてゐるものです。
 
本書の刊行は2007年11月なので、少し動きがあるやうですが・・・
 
まづ、現状とそれに伴ふ問題点:
1.日本では、死亡者の死亡原因を特定するための解剖が2%しか行なはれてをらづ、
死亡診断書の死因には、「心不全」と記載されることが一般的であり実質「死因不明」と書いてゐることに等しい。
2.死因究明センターがあるが、全国に5都市のみであり地域格差が非常に大きい。
3.死因究明センターの充実は東京都であるが、厚生労働省官僚のお膝元であり厚労省官僚は東京都のデータを見るので、このデータのまま地方へ適用されるととんでもないことになるのに、気付いてない。
4.死因究明のための解剖を行なふ解剖医(病理医)が不足してゐるが、厚労省は対処をしてこなかつた。
5.解剖は時間もかかるが、金がかかることが厚労省がほつたらかしにした理由である。(医療費を削減する政策に追従してゐると言ふのがその理由)
6.解剖が必要か否か判断するための、「事前死体検案」に「死体画像病理診断」(エーアイ)を導入するやうに提案を進めてきたが、厚労省および厚労省寄り側の医師は予算をつけることに反対。
7.エーアイが解剖に替わるものとして、解剖が無くなる危惧を理由としてゐるが、エーアイの導入は解剖に替わるものではなく、解剖と並行して死因究明していくためのものである。その理論を全然わからないらしい。
 
エーアイ、死体画像病理診断とは死体をCTやMRIにかけてスキヤンし、死因を特定するための処置である。
従つて遺体を傷つけることもなく、5分程度で死因究明が可能になる。死因がほぼ特定できた遺体は遺族の了承後解剖し更なる詳細な死因究明を行なふ。エーアイで「原因となる身体の部分」がわかつてゐるので、無駄な時間や処理を解剖でしなくて済む。
この主張が、いつまで経つてもわからないらしい。 (今、どのくらい進歩したのかしらないが)
 
きのふ、年金の問題の本を読みました。
そして、厚労省官僚の「国民から給金をもらつてゐるけど、国民のことなどだうでもいひ、自分たちの天下り先が見つかつて、そこで大金を貰えればいひ」の精神を堪能ゐたしましたが、この本でも同ぢ精神構造を発見ゐたしました。
 
そして、また出てきたのが「厚労省広報機関」と化したマスゴミです。
マスゴミは、記者クラブで役所内に貼りついてゐるやうですが(しかもその記者クラブ運営は役所負担=税金のやうですが)、一体何をしてゐるのでせう?
今のままなら、マスゴミは一社が役所の「官報」でもネットに載せてくれればそれで十分です。
 
マスゴミ、厚労省との話し合いに参加してゐる医師らも、実際の医療現場を知らないんだな・・・と読みながら思ひました。
知らないだけでなく、聞く耳も持たないと言ふかプライドが高すぎて現場の言ふことなんか聞いてらんねえよと思つてゐるのか知らないが、本を一度読んだ素人のあたくしでさえ、エーアイの現場導入は効率的でいいよなあと思ふのですが、なぜ反対するのか理解できません。
 
しかし、ある共通点を発見しました。
マスゴミ、厚労省、実際の医療現場にゐない医師は、「国益」ではなくて「私益」を重視してゐる人たちばかりでは?
なので、「国益」のことを考えて行動する人たちがうるさくてせうがない!といふ感ぢがゐたします。
 
厚労省つて、日本に必要なのですかね?
年金は民間に競合でやらせたはうが国民のためだな~ときのふ思つたし、
けふはこの本で厚労省を解体して、医療現場重視、国益重視にした医療専門機関を創つて税金の医療費引き当て、現場への医療費配分を行なつたはうが、余程日本のためになるな~なんて思ひました。これは、海堂氏が「イノセントゲリラの祝祭」で登場人物の医師に「医療庁を創設する」と言はせてゐたことに由来するのですが、賛成です。
 
厚労省のサイトで「死体画像病理診断」を検索したところ、一件の文書がありました。この文書だけでも海堂氏が本書で主張されてゐるエーアイの効果がわかります。
厚労省自体で、エーアイに関する動きをしてゐるのかこの文書からは定かではありません。


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