日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

親の威厳を保つ秘策

2008-08-09 18:40:45 | Weblog
昨日は思い切って10時前に家を出た。梅田にお出かけである。三宮から阪急電車に乗った。ほどほどの混みようで岡本から乗り込んだ親子ずれ三人が前に立つ。母親に二十歳前後の娘とその妹ある。娘の方が母親より見かけたところ十センチ近くは高い。母親をやや見下ろすように話しかける。可愛らしい容貌なのにそれだけで小憎らしく感じる。娘の方が逞しげでその分、母親が弱々しく見える。でも仲は良さそうだ。私は目を閉じてiPodの音楽に集中した。

♪Là ci darem la mano,
 là mi dirai di si,
Vedi non è lontano:
partiam, ben mio, da qui.


モーツアルトのオペラでドン・ジョバンニ、すなわちドン・ファンが結婚式途中の花嫁ツェリーナを「あちらに行こう」と誘惑にかかる時の歌である。この年のくれ、私がそのドン・ファンになってこの二重唱を歌うことになり、練習を始めたばかりなのである。鼻歌で歌っているのとは違って、相手をその気にさせるように主人公になりきって歌うには完璧に覚えてしまわないといけない。だから何遍も繰り返してこの部分を聴いているのであって、ドン・ファンになるのも大変なのである。誘惑の手を差し伸べかけて思いとどまり、目を開けた。

母娘三人が前の席に並んで座っていた。西宮北口で席が空いたのだろうが様子がなんだか変である。今度はお母さんの方が娘さんより十センチ近く背が高くなって、斜め横を見下ろすように娘さんに話しかけている。凛として母親の威厳がある。娘さんがあどけなく見える。その逆転変貌の理由がすぐに分かった。二人とも姿勢を正して座っているが、母親の方が娘より座高がはるかに高いので背の高さが逆転したのである。世代間の相違なのか父親から良い遺伝子を貰ったのか、娘の体型が母親とは異なり典型的な足長胴短なのである。窮屈そうに足を折り曲げているが、もし膝裏を座席にくっつけて座ると、つま先は車幅の中心線を確実に超えるだろう。

NHKのドラマ「篤姫」で、将軍家定がペルリーを謁見する時に台を積み重ねてその上に座っていた。直立しているペルリーよりも目線を上にもって来ることで威厳を保つ工夫であったが、まさにそれである。母親であれ父親であれ子供に訓戒を垂れる時はなにか工夫して、子供を見下ろす座を作るべきなのである。効き目疑いなしと思うがいかがであろう。

電車はまもなく梅田に到着した。


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