日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

隠していることを隠す東京電力 vs. 隠すことを隠さない中国高速鉄道 そして児玉龍彦氏

2011-08-06 16:51:27 | Weblog
牛肉から国の暫定基準値を超える放射性セシウムが検出されたことが切っ掛けとなり、政府は福島、宮城、岩手、栃木の四県からの肉牛出荷停止処分を行った。福島第一原発事故で放出された放射性セシウムに汚染された稲わらを与えられた肉牛が内部汚染されたと考えられるが、その範囲の広がりは福島原発からの20キロとか30キロとかの範囲を遙かに上回るもので、それだけでも私は瞠目した。ところが現実には汚染稲わらの流通範囲がこの程度では納まらなかったのである。それは福島原発事故の損害賠償交渉の指針を定める原子力損害賠償紛争審査会が、昨8月5日に汚染された稲わらが流通した可能性がある17道県を牛肉の賠償対象にしたことから明らかになった。その17道県とは北海道、青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、新潟、岐阜、静岡、三重、島根である。直接間接を問わず、ここまでの放出放射線量の影響の広がりを予測した人が一人でも居ただろうか。

自ら収穫した稲わらを肉牛に与える飼育農家にしても、また稲わらを飼料として出荷する栽培農家にしても、今年も例年と同じく飼育に農作業に勤しんでいたことであろう。それが原発事故のせいである日突如目に見えることもなければ音もなく集積されていた稲わらに放射能が降りかかってきたのである。汚染を避けるために稲わらを屋内に移しておくべきだったとかしたり顔の意見もあったが、こんなものは後知恵のさいたるもの、農家にとってはまったく自分のあずかり知らぬところで、天地開闢以来の大災難に見舞われたのである。犯人は安全対策を怠った東京電力で、私は法律には疎いがこれは明らかに他人の財物を損ねているからには刑事犯なのではなかろうか。

流通による汚染稲わらの広範囲に亘る分布はともかく、現地における稲わらの汚染状況を政府はどのように把握しているのであろうか。見えてこない。それと同じく牛と同じ生き物である住民の内部汚染状況は、現在どの程度把握されているのであろうか。200万人に及ぶ福島県民について目下検査がなされているようであるが、現地における汚染稲わらの広がりを考えると、福島県民だけの問題で終わるはずがないと思うが、検査範囲を広げる具体策が考慮されているのかどうか、気になるところである。

いずれにせよこうした状況は思いの外放射能汚染が広がっていることを示唆するが、第一原発事故による放出放射線の総量が未だに明瞭に報告されていないのは、かっての衆議院厚生労働委員会での東京大学アイソトープ総合センター長児玉龍彦氏の説明する通りである。報道された中で85万テラベクレルという値が一番大きいようであるが、これはあくまでも地上への放出量で、海などに流出した分を考慮に入れるとこんなレベルではないことは一目瞭然であろう。東京電力・政府がいろいろと試算していることは間違い無いと思う。条件付きながらその試算結果を公表して国民の疑惑に応えるべきだと思うが、それがないと言うことは私に言わせればデータを隠していることになる。さらにその隠していることを国民の目から隠していることは、中国高速鉄道が衆人注視のなかで証拠隠しを大っぴらに、すなわち隠すことなく行ったことにくらべても遙かに陰湿で、データ隠しの闇の深さを物語るものである。「天の岩戸」を押し開いた手力男命(たぢからおのみこと)がこの時代に甦って欲しいものである。

児玉龍彦氏の参考人説明は私も「放射線の健康への影響」児玉龍彦参考人説明の具体的な提言は実現可能なのだろうか で引用したが、次の部分に関して、内容を納得していないままただ引用したというのが事実である。

我々が放射線障害を診る時には、総量をみます
それでは東京電力と政府は一体今回の福島原発の総量がどれくらいであるか
はっきりした報告は全くされておりません

そこで私どもはアイソトープセンターのいろいろな知識を基に計算してみますと
まず、熱量からの計算では広島原爆の29,6個分に相当するものが漏出しております
ウラン換算では20個分の物が漏出していると換算されます

ここで私の常識的な疑問を投げかけてみよう。

まず熱量からの計算では広島原爆の29,6個分に相当するものが漏出しておりますのところである。広島原爆には50キログラムのウラン235が使われ、そのうち核分裂を起こしたのは1キログラム程度と推定されており、ウィキペディアによると

1キログラムのウラン235の核分裂によって0.68グラムの質量欠損が生じ、アインシュタインの特殊相対性理論が示す「質量とエネルギーの等価性 E = mc2 」によってエネルギーに変換される。

爆発で放出されたエネルギーは約63兆ジュール(62.8 TJ [テラジュール]、6.28×1013[J])、TNT火薬換算で1万5千トン(15キロトン)相当に及んだ。エネルギーは爆風(衝撃波・爆音)・熱線・放射線となって放出され、それぞれの割合は50パーセント・35パーセント・15パーセントであった。

エネルギーの単位がジュールであるから、これを熱量と言い換えて良かろう。しかし私の調査が足りないのであろうが、この際に放出された放射線総量を私は知らない。このように広島原爆が発生した熱量は一応推定されているが、一方、福島第一原発事故が発生した熱量を児玉氏はどのように推定したのだろうか。どこかで公表されているのかも知れないが、熱量からの計算の過程を公表することは児玉氏の義務であると思う。それがないことには熱量からの計算では広島原爆の29,6個分に相当するものが漏出しておりますの部分はまったくの無意味である。具体的に広島原爆の29,6個分に相当するものが漏出しておりますの部分すら意味不明理解不可能である。

同じことがウラン換算では20個分の物が漏出していると換算されます
についても言える。

福島第一原発事故が発生した際に、1号機、2号機、3号機が稼働していた。燃料棒に含まれる2酸化ウランの合計は69+94+94=257(t)で、酸素も無視して大雑把にウラン235の濃縮率として3%を用いると、ウラン235の総量は7.7tになる。広島原爆154個分のウラン235に相当する。結局この3基とも燃料棒はメルトダウンしていたとのことであるが、この間に再臨界でも起こりウラン換算で20個分、すなわち1個について1キログラム、総計20キログラムのウラン235が核分裂でも起こしたと児玉氏は主張したいのであろうか。もちろん東京電力・政府も何らかの事実を把握しているはずである。その実態について黙秘を貫いていることは、事実隠しと疑われても仕方があるまい。中国高速鉄道のことをとやかく言えた義理か、と私は思う。それと同時に多くの日本人の良識を信じて、児玉氏にも数字だけをポンと出すような素っ気なさを改めていただけるようにお願いしたいと思う。


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