昨日(1月24日)の朝日新聞は《「スキャンダル国会」 あす開会》と報じている。政治とカネが焦点だそうである。しかし国政を論じる国会で取り上げる前に、何がどのようにして問題になるのか、問題点をマスメディアにまず整理して欲しいと思う。
あっという間に佐田前行革担当相が辞めてしまったから、一体どの点が悪いから大臣を辞めたのか実は私には分からない。佐田氏には申し訳ないが、よほど不都合があったのだろうという程度の受け取り方である。でも議員には留まっておられる。
佐田氏に続いて、伊吹文部科学相や松岡農林水産相、それに中川昭一自民党政調会長も政治資金をめぐる問題が発覚したそうである。これもどの点がどう悪いのか、マスメディアの報道からははっきりと伝わってこない。せめて大臣辞職した佐田氏の問題との違いぐらいははっきりと説明して欲しいものである。
民主党から参議院副議長に推し出された角田義一氏も、2001年参院選の自分の選挙組織で、献金の不正処理があったなどと、これまたマスメディアが取り上げたが、民主党幹部は問題はない、と云っているらしい。いつもながらのお座なりの発言であろう。
民主党の小沢代表の事務諸費4億1千5百万円に秘書用宿舎の建設費が含まれているとのことであるが、庶民感情としては「ヤメテクレ」と云いたくなる。しかし小沢氏の政治団体が土地を購入しようと建物を建てようと、政治資金規正法が認めている以上、法律的に悪いことをしたわけではないので、これがいけないのなら法律を変えるしかない。どのように変えればいいのか、世論をリードするマスメディアは現れないのだろうか。
ところで国会議員や地方自治体の議員などの政治家は一体何にお金を使っているのだろう。選挙期間は選挙運動に結構費用をかけているだろうが、選挙のない日常のお金の使い道はどうなっているのだろう。私はこれまで議員といわれるような方からハンカチ一枚も貰ったこともないし、お茶の一杯も頂いたことがない。政治資金は私の一切かかわりのないところで、ということはほとんどの国民とかかわりのないところで、使われていることになる。
それが知りたくなって、総務省が公開している政治資金収支報告書を覗いてみた。私の目についたのは青木幹雄後援会が平成18年9月8日に公表した平成17年分である。総務大臣届出分の政治団体で資金管理団体がアイウエオ順に整理されており、「ア」に分類された中で、議員名がたまたま特定できる最初の例であるから取り上げたまでで、他意はない。
平成17年度の収入額が94,750,016円で支出総額が92,345,741円である。
支出項目の一番目は経常経費で、(1)人件費 22,707,000円、(2)光熱水費 2,001,945円、(3)備品・消耗品費 9,342,945円、(4)事務所費 28,036,414円で、総計が62,088,304円になる。
支出項目の二番目は政治活動費で、(1)組織活動費 28,861,380円、(4)調査研究費 1,396,057円、その他の小項目は全て0円で、小計が30,257,437円、従って支出総額が92,345,741円になるのである。
経常経費で最近問題になった事務所費などは内訳が記載されていないが、法律上、これで問題がないようだ。
というのは、政治資金規正法第12条第1項第2号は次のように記されている。
《すべての支出について、その総額及び総務省令で定める項目別の金額並びに人件費、光熱水費その他の総務省令で定める経費以外の経費の支出(1件当たりの金額(数回にわたつてされたときは、その合計金額)が5万円以上のものに限る。)について、その支出を受けた者の氏名及び住所並びに当該支出の目的、金額及び年月日》
おそらく事務所費は人件費、光熱水費などに準じるのであろう。経費の内訳を求められてはいない。
これに反して、政治活動費のうち組織活動費(会合費)では、5万円以上の支出は全て個別に記載する形でその内訳が明らかにされているので、それを見てみよう。
組織活動費(会合費)28,861,380円のうち、タクシー・車代、航空券代、JR券代を合わせて9,969,053円になる。一方、飲食費 8,616,522円(65件)、お品代 2,415,264円(22件)、お花代 967,750円(10件)、交際費 128,310円(1件)、会合費 431,228円(1件)、それ以外に1件5万円以下の支出の合計が6,333,253円となっている。
政治活動費のうち調査研究費 1,396,057円の内訳は分からない。
ここで注目に値するのは、政治活動費という項目で、機関紙誌の発行その他の事業費への支出が0円であるのに反して、飲食費が少なくとも1千万円を下回らないという事実である。お品代にお花代、これは誰かに上げたものである。いずれにせよ3千万近い組織活動費の約三分の二近くが飲み食いと贈り物に使われているのである。
飲食費もどこで費やされたか、料亭などの名前は一応記されている。高級料亭なのだろうか、支出平均は一件あたり10万円を上回る。これを政治活動費とはよく云ったものだ。私の感覚ではこれは供応もしくは遊興費である。
政治活動費の残りの三分の一の約1千万円が交通費である。誰が何のためにどこを往き来したのか分からないが、このIT化の時代に、新しい通信手段を導入することで、このかなりの部分は節約できるの筈で、その用途が極めて不透明である。
たとえばこのような支出がある。航空券代として平成17年12月14日に近畿ツーリストへ895,300円、同日JTB国会内支店に323,800円、計1,219,100円を支払っている。これがどのように政治活動と関係があるのか、私の想像外である。航空券などを金券ショップに持っていけば何時でも換金できるできるご時世に、もしその様な抜け穴が現行の政治資金規正法で見つかるようなら、いくらでも裏金が作られることになりこの法律自体無意味になるが、今はこの問題に深入りしない。
名目だけであるにせよ、調査研究費1,396,057円だけが総額30,257,437円也の政治活動費に値するが、残りの28,861,380円はお金があるから使ったようなものだ、と私は云いたい。政治資金とは一体どうあるべきなのか、根本に遡って国民の間の共通認識に基づき、法律の抜本的改正がなされなければならない。現行の政治資金規正法は、政治家の勝手気ままな乱費にお墨付きを与えるだけのものでしかありえない。このような法律に則って政治資金が正しく使われているとかどうとか、論じること自体無意味である。
とはいえ、素人の私が、それもたった一件の収支報告書を眺めただけでも、このように政治資金の使われ方に疑問を抱くのである。マスメディアがその持てる力を存分に振るって、今問題の個人名の上がっている国会議員について、その収支報告書を、添付されているはずの領収書の写しなどを手がかりに徹底的に調べて、その問題点を簡潔明瞭に国民に伝えるべきではなかろうか。