日々是好日

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日本の近代化は『世襲議員』の廃止から

2005-08-21 17:23:57 | 社会・政治
9月11日に予定されている総選挙は現在の選挙制度に一石を投じるものとして私は注目している。それは『郵政民営化』反対派の前議員の選挙区に賛成候補者を口約通り律儀に立てた自民党本部の手法が、従来の『地元代表』型議員を駆逐する意味を持っているからである。

代表的な例が広島第六区で亀井静香前議員に挑む『ホリエモン』こと堀江貴文氏の場合である。形式的には『ホリエモン』氏は無所属であるが私は実質的な自民党候補と見ている。その『ホリエモン』氏を迎え撃つ亀井静香前議員の『ぼやき節』がますます冴えわたってきたが、あまりにも情念的な発言しかマスメディアからは伝わってこないので論評を控える。とどのつまり亀井静香氏の頼みの綱は人情厚い地元支持者の票で、「地元の人は有難い」と云った類の発言だけが目立つ。そこに地縁・血縁皆無の『ホリエモン』氏が乗り込む。従来の自民党型選挙のまさにアンチテーゼである。

国政の担い手である国会議員は『地元代表』であってはならない。国政は地元の利害を争う場ではないからである。しかし亀井静香氏が頼りとするのは地元支持者、ひたすらその『義理人情』に縋っている。国政に『義理人情』は百害あって一利無し、その点小泉首相の『非情』が遙かに理にかなっている。今回の総選挙は『義理人情』対『非情』の対決とも云える。もちろん私は『非情』を支持する。

『地方選挙区廃止』が近い将来への私の主張であるが、小泉さんをもってしてもこの変革は至難の技のように思う。そこで次善の策として、『地元代表』的性格が最も濃厚な『世襲議員』をまず廃止を訴えたい。

封建時代でもあるまいにこの近代日本の政治の担い手として『世襲議員』が存在すること自体、およそ時代離れしている。その『世襲議員』に『後援会』が不即不離の関係にあることが日本の政治を不透明なものにしていると思うからである。

先日のブログで自民党の橋本龍太郎元首相の後援会が橋本氏の後継として、次男で三菱総合研究所社員の岳氏の擁立を全会一致で決めたとのニュースを引用した。必ずと言っていいほど後援会が後継者を推挙するパターンとなっている。

小渕恵三元首相の場合も小渕氏の急逝を承けて次女の小渕優子氏が後援会から推されて立候補して2000年6月の総選挙で典型的な『世襲議員』となった。小渕優子氏の場合は新聞紙上で後援会との関わりが以下のように報じられていた。

《代議士だった父や兄の死去、引退で跡をつぎ、今年(2000年)6月の総選挙で初当選した「世襲議員」たち。(12月)4日付で公開された資産報告書などから、議席ばかりでなく資産や政治資金も継承している様子が浮かび上がった。政界の世襲が批判されながらも、地盤、看板とともに「カバン」を受け継いだ議員たちの懐具合は華やかだ。

5月に死去した小渕恵三前首相の次女、小渕優子氏(26)は預貯金が約1200万円。事務所の説明では、昨年まで3年間勤めていたTBSでの給与をためたものがほとんどだという。同社の株式も1000株所有する。

前首相の東京・王子の私邸などの相続手続きはまだ済んでいないが、政治資金の引き継ぎはすでに始めている。事務所によると、前首相の政治資金管理団体には残務整理を終えたとき、預貯金など1億円以上が残されていた。全額が最終的に、新たに設立された優子氏の団体に寄付されるという。政治団体間の寄付なので課税はされない。いわば相続税のかからない「相続」だ。》(朝日新聞より)

後援会が前議員の後継者を総選挙の立候補者として推し後継者が出馬する、というのがパターンとなっている。後援会に祭り上げられた候補者、この両者間にどのような腐れ縁が新たに生じるか容易に想像がつくというものである。ここに国政を蝕む『利権構造』が生まれてくる素地がある。

後援会がこのような『資産家』であることを私は知らなかった。実は上の記事に引き続いて梶山静六元議員の後援会にも2億3000万円の預貯金が、竹下登元議員の後援会には6億3000万円の資産があったなどとと報じられているのである。後援会は政治資金規正法の対象で収支報告書の提出が義務付けられているから、どのように資産が作られたのかある程度調べはつくと思うが、それよりなによりこのような資産を持った政治団体が『生命維持』の本能に駆られるのは当然で、その維持のために世襲後継者を選ぶとさえ云えそうである。資産と効率的な集票マシンである後援会は莫大な財産的価値があるにも拘わらず、それを相続税も払わずに引き継ぐ『世襲議員』は『門地』に胡座をかく不当利益を得たのであって、社会的に不公正である。

私は『世襲議員』と後援会の不即不離の関係を完全に絶つことを焦眉の急と考える。

ここでお断りしないといけないが、私は『世襲議員』の立候補の自由を制限するような発想は採らない。子供は国会議員やその縁者を親として選んで生まれたのではない。自分に責任のないことで基本的人権の制約を受けることがあってはならない。それと同時に国会議員やその縁者を親として生まれたことを他の立候補者に対して不公正な利点として用いることがあってもならない。

では『世襲議員』と後援会の不即不離の関係を絶つにはどうすればよいか
先日のブログでの提言をあらためて記す。

①後援会を一代限りとする。未処理の資産があればすべて国に納める。
②引退・死去した議員の血縁者(その範囲は適切に定めるとして)は同じ選挙区はもちろん同じブロックからの立候補を認めてはならない。

民主党がかって国会議員の世襲禁止を提案しかけたがその後どうなったのであろう。お得意マニフェストに掲げられない事情でも生じたのだろうか。この点でも不言実行の片鱗を覗かせた小泉自民党がより進んでいるように見える。

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4 コメント

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郵政民営化について (空色)
2005-08-21 20:05:39
失礼します。郵政民営化賛成派blog集つくりました。こちらを掲載させていただいていいでしょうか?

http://blog.livedoor.jp/great_white_shark/

です。ご検討お願いいたします。
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Unknown (杣山人)
2005-08-25 12:47:43
大変興味深く読ませて頂きました。



ただし、結論部分の「後援会を一代限りとする。未処理の資産があればすべて国に納める。」ですが、後援会とは、あくまで議員の後援者の団体であり、議員個人のものではない以上、その解散を強制するのは「結社の自由」に反することになるのではないでしょうか。



また「引退・死去した議員の血縁者は同じ選挙区はもちろん同じブロックからの立候補を認めてはならない。」は、場合によっては、自分の生まれ育った場所から立候補できないことにもなり、結局、貴氏の云われる「自分に責任のないことで基本的人権の制約を受けることがあってはならない。」に反してしまうのではないしょうか。

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Unknown (ひでりん)
2005-08-31 07:16:30
トラックバックさせていただきました。

解決策は若干異なりますが、問題意識は近いように感じます。

私自身は小選挙区制とその帰結としての二大政党制を望ましい

ものと考えているので、とりあえずは制度の趣旨が活かされる

方向で改善策を考え、Blogに書いていきたいと思ってます。
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知りませんでした・・・ (鈴音)
2007-07-15 16:08:26
なんとなく多いんだなーとは聞いたことがありましたが,これほどまでに多いとは考えていませんでした。
世襲議員ばかりでは,新しい意見などが出にくいのでは・・・?
世襲議員が多い理由は,後援会が最も大きいのでしょうか?
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