日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

畑村洋太郎著「数に強くなる」を読んで

2007-05-09 23:12:18 | 読書

数(かず)の本なのに新書で縦書き、ぱらぱらとページをめくると堅苦しさがない、それに見開きに図か「蛇足」と名付けられた注釈が必ず出てくる。読みやすそうだと買ったらその通り、二日間で読み上げた。

《筆者は、「数に強い人は、物事を数量的によく考えて、覚えておくことができる」と言った。そういうことができるのは、頭の中に物事の「全体」が入っているからである。全体の中での位置付けでその数を把握しているから、頭の中に定着するのである。》が(36ページ)

実はそんなことはどうでもいい。面白い話が頭の中にぴょんぴょん飛び込んでくる。たとえば気色が良い数と気色が悪い数があると著者は言う。気色の良い数に取り上げられたのが24という数である。著者の評言ではまず「氏素性が良い数」で、「社交的」、「変幻自在」、「バリエーションが実に豊」、「なにか良い感じ」に「人格円満な数」なのである。たかが数字二つの組み合わせに過ぎない24がこのように著者に見えるというのがまた不思議なのであるが(何故そのように見えるのかは著書に譲ることにする)、私はそれを素直に受け入れてしまう。24日が私の誕生日だからだ。

《ぜんぶ「一人当たり」にする》のセクションで、『日本国政図会(ずえ)』(国勢社刊)に出てくる経済活動、国土利用など、およそ日本と関わりがある数を一人当たりに計算し直すと、生活実感に訴える数が作られるのである。でも知ったからいいのかどうか、一例を挙げると、日本で一人当たりの宅地面積を計算すると70坪になるそうである。そうすると二人家族のわが家の敷地は倍の140坪あるべきなのに、現実はその半分にも満たない。身をつまされてしまう。それでもいろんな数が面白い。

『目から鱗』の話もある。数をじっくり眺めることから浮かび上がった事実である。

《「日本は狭い」と言う人がいるが、それは大ウソである。地ベタは狭いが、海は広いのである。日本は領海の他に「排他的経済水域」として、地面の10倍(400万平方キロメートル)の海域に対する経済的主権と管轄権を持っている。地面と領海と排他的経済水域とを合わせると、日本は世界第6位の国土面積を持もつ国である。》とのこと。排他的経済水域で争っている韓国、中国に対して、なんだか寛大になれそうな話ではないか。こういう話が蛇足だとはもったいない。

「量的変化が質的変化をもたらす」例の一つとして、著者が岩波書店から出版した『直感でわかる数学』の販売冊数の推移と言うのも面白い。2004年9月8日に一冊1995円で1400冊が出版された。専門書としては妥当な数字である。それがブレイクして2年後に10万冊も売れてしまったのである。売り上げが伸びたきっかけを分析しているのであるが、私は印税がいくら著者に入ったのかが気になったので、具体的な数で表現してみた。人の懐具合を探るのは恥ずかしいことなのだが、何事も数で表現するように、との著者の勧めを実践しただけのことである。。

一冊1995円をキリの良い2000円にする。印税が10%とすると一冊で200円、それが10万冊だから2000万円になる。岩波のことだから発行部数が増えると印税率を上げるとして、たとえば2万冊以上は15%とすると200×20000+300×80000=2800万円となる。羨ましくなった。著者が計算させたいはずである。

アレッと思う話もあった。つい最近のことであるが、どこかのテレビ番組で印度が日本で開いている国際学校の紹介をしていた。算数の授業で2桁同士の計算を生徒がすらすらとやっていくのだが、その計算方法がわれわれの習った方法とは大きく異なるのである。たとえば75×75を計算するのに、先ず一桁目の5×5=25を先ず計算する。次に二桁目の一方に1を加えて、それともう一つの二桁目を掛け合わせる。(7+1)×7=56。25の左横にこの数字を並べて5625とすると、これが答えになるのである。これとおなじ話が「数に強くなる」に出てくるのである。

《蛇足 25の2乗を出すには「1を足して掛ける」というウラ技がある。①:十の位の数を取りだして1を足す。2+1→3。②:①で出した数に十の位のかすを掛ける。3×2→6.③:②で出た数の後ろに「25」と書く。625.答えは625。》(148ページ)

全く同じである。著者が独自にこのウラ技に到達したのか、それともインド人の子供からヒントを得たのか、気になった。

ソロバンの勧めに関連して「カーナビを使うとバカになる」という話もでてくる。私は動物的な勘が鈍るとカーナビを使わないのであるが、著者の主張はわが意を得たものである。それなのに家族の反発に抗しきれずについにカーナビを買ったとか。もっともご自身はお使いにならないようであるが・・・。

とにかく紹介したい話が目白押しである。子供に戻ったかのような気分になること請け合い、楽しかった。

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