日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

ノーベル賞が日本から遠ざかっていく?

2011-10-08 11:55:53 | 学問・教育・研究
アップルのスティーブ・ジョブズ氏のカリスマ性についてはともかく、その何が凄かったのかについて朝日デジタルの解説がわかりやすかった。

 「売り方がうまいだけ。日本にない独自の技術なんて何も使っていないのに」

 アップル商品がヒットするたびに、日本メーカーからは、こんな恨み節が今でも聞こえてくる。

 日本勢は、中核部品の開発から完成品の組み立てまで、「自前主義」にこだわった。それが商品の差別化につながると考えたからだ。だが、製品のデジタル化が進み、同じ液晶パネルや半導体を集めて簡単に類似商品が作れる時代になり、価格競争に巻き込まれていった。

 これに対し、アップルは世界中のメーカーから部品や技術をかき集め、商品の組み立てはコストが安い台湾メーカーなどに任せる。代わりに、ジョブズ氏は、商品のデザインやサービスなどの仕組み作りに徹底してこだわり、独自のアップルワールドを作り上げて差別化に成功した。

 ただ、このビジネスモデルの成功には、ジョブズ氏のように、消費者の心をつかむ商品のイメージが明確にあり、それを徹底するリーダーシップが欠かせない。ソニーのウォークマンや家庭用ゲーム機「プレイステーション」の誕生も、創業者の盛田昭夫氏やソニー・コンピュータエンタテインメントの元会長兼CEOの久多良木健氏ら、個性派経営者の存在なしには語れない。


まったくそうだと思う。今や世界最大の企業となったアップルですら、個性豊かな卓越したリーダー無しには、消費者の心を掴むたった一つの製品すら産み出せないのである。リーダーとは孤独なもの、そしてそこにあるのは結局個人の営みなのっである。そのジョブズ氏がスタンフォード大学の卒業式で、Stay hungry, stay foolish.と説いたその精神が今注目されているが、私たちの世代は否応なしに皆がhangryであり、だからこそ大きな夢が沢山あった。夢とは見る人にとってはまさにfoolishなものである。これまでの日本人ノーベル賞受賞者はそのような風土の中から産まれてきた。

今年のノーベル賞は下馬評の高い日本人もいたが、まだ経済学賞がのこっているが、日本人を素通りして行ってしまった。そして唐突にもこのような思いが浮かんできたのである、ノーベル賞が日本から去り始めたのか、と。それは現在のわが国における科学研究のあり方、さらにはその進路、進め方が、研究者個人の自由な発想を伸ばす科学者主導から、科学官僚・政治家・権威主義的科学者主導になってしまっているからである。そのあらわれの一つが、「グローバルCOEプログラム」や「最先端研究助成」などビッグサイエンスプロジェクトなど、「金ばらまき」と言ってしまえばそれまでの、浅薄な目標邁進型の人数さえかき集めれば出来てしまう性質のものである。今年のノーベル化学賞の対象になった「準結晶の発見」が生まれるような環境とはおよそ縁遠い世界である。

これまでも私はやはり目をつけられたか グローバルCOEプログラム「最先端研究助成」よりましな2700億円の使い方があるのでは  追記有り「最先端研究助成」2700億円の使い道に科学者の反応は?グローバルCOEプログラムなんていらないのに・・・などで、わが国におけるこのようなお金の使い方が、創造的科学の発展の弊害になることを主張してきた。このままでは日本からノーベル賞がだんだん遠くなる。ではどうすればよいのか。くどいようであるがグローバルCOEプログラムなんていらないのに・・・から再掲させていただく。

極論すれば国家百年の大計である人材の育成に必要なのは、国立大学にあっては運営費交付金、私立大学にあっては私立大学経常費補助金、それに加うるに科学研究費補助金に尽きる。今わが国に求められるのは贅肉を一切切り削いだ骨太の大学制度を抜本的改革を通じて確立することであろう。

過去ログ
文科省での日本学術振興会と科学技術振興機構の共存が基礎科学の発展を邪魔する