下の図表が昨日と今日(4月8日)の朝日朝刊に二回掲載されていた。この中で「燃料棒の損傷率」が記されており、7日の記事では次のように説明されている。
すでに損傷率の定義がどこかに出ているのかも知れないが、私は見ていないので勝手に想像してみる。これも想像であるが炉心には約300本の燃料棒が入っているとする。単純な場合として被覆菅の一部でも破れた燃料棒を損傷とみなすと、損傷率70%ということは、壊れた燃料棒が210本で残りの90本は健全ということになる。しかし現実問題として被覆菅が同じような壊れ方をするとは考えにくい。それを示唆するような記事がThe New York Times(NYT)に出ている。
米国原子力規制委員会(NRC)が傷ついた原子炉の炉心の一部が十中八九鋼鉄製圧力容器から洩れて格納容器の底に溜まったと言いながら、委員会は原子炉圧力容器が壊れたとは信じていないし、炉心のすべてが圧力容器に残っていると信じるとも述べるなど、どうも歯切れがよくない。いずれにせよ炉心の溶融が言及されたのは2号機のことで、原子炉建屋での水素爆発は避けられたものの爆発音がするなど、原子炉自体の損傷の程度が当初の予想を上回って大きいことが指摘されている。これは今日東京電力が公表した3月14日に2号機においてのみ燃料棒が全露出(1号機、3号機では一部露出)したとの事実と矛盾しない。またこれもNYTの記事に依拠するが、何時間も炉心に水が無く、また冷やすための注水も行わなかった事実は、「シミュレーション」を行うための初期条件を簡単にして、炉心温度が何度まで上昇していくかの予測が容易になる。それぞれ異なる「シミュレーション」ソフトを初期条件を使ってであるが、摂氏で2,250度とか2,700度という最高到達温度が得られている。金属の融点は鉄が1,539度、ウランが1,132度、ジルコニウムが2,127度であるから、これらを溶融するには十分な温度である。2号機がかなり激しく損傷を受けていることがこれからも分かるが、それにしては30%の損傷率とされた燃料棒の壊れ方が、単に被覆菅が損傷しただけとは考えにくく、燃料棒そのものの溶融を視野に入れざるを得なくなる。確かに《溶融など燃料の状態までを示すものではない》と言われればそれまでであるが、「被覆の剥がれ」と「溶融」を区別出来ない損傷率の数値だけが一人歩きすることが、かえって「溶融」の危険性を覆い隠すことにもなりかねない。
燃料棒の損傷率一つで、あくまでも素人談義であるが、ここまで考えさせられた。専門家の説明が欲しいものである。
東京電力が3月14~15日時点ででした分析では、1号機の炉内の燃料棒の損傷率は70%に上った。2号機は30%、3号機は25%だった。これは格納容器内で測定した放射線から割り出した計算値で、被覆菅が壊れた割合をある程度推測できるが、溶融など燃料の状態までを示すものではない。
すでに損傷率の定義がどこかに出ているのかも知れないが、私は見ていないので勝手に想像してみる。これも想像であるが炉心には約300本の燃料棒が入っているとする。単純な場合として被覆菅の一部でも破れた燃料棒を損傷とみなすと、損傷率70%ということは、壊れた燃料棒が210本で残りの90本は健全ということになる。しかし現実問題として被覆菅が同じような壊れ方をするとは考えにくい。それを示唆するような記事がThe New York Times(NYT)に出ている。
Core of Stricken Reactor Probably Leaked, U.S. Says
The United States Nuclear Regulatory Commission said Wednesday that some of the core of a stricken Japanese reactor had probably leaked from its steel pressure vessel into the bottom of the containment structure, implying that the damage was even worse than previously thought.(中略)
The Nuclear Regulatory Commission’s statement regarded unit No. 2, and the agency underscored that its interpretation was speculative and based on high radiation readings that Tokyo Electric had found in the lower part of unit No. 2’s primary containment structure, called the drywell. The statement said that the commission “does not believe that the reactor vessel has given way, and we do believe practically all of the core remains in the vessel.”
The United States Nuclear Regulatory Commission said Wednesday that some of the core of a stricken Japanese reactor had probably leaked from its steel pressure vessel into the bottom of the containment structure, implying that the damage was even worse than previously thought.(中略)
The Nuclear Regulatory Commission’s statement regarded unit No. 2, and the agency underscored that its interpretation was speculative and based on high radiation readings that Tokyo Electric had found in the lower part of unit No. 2’s primary containment structure, called the drywell. The statement said that the commission “does not believe that the reactor vessel has given way, and we do believe practically all of the core remains in the vessel.”
(April 6, 2011)
米国原子力規制委員会(NRC)が傷ついた原子炉の炉心の一部が十中八九鋼鉄製圧力容器から洩れて格納容器の底に溜まったと言いながら、委員会は原子炉圧力容器が壊れたとは信じていないし、炉心のすべてが圧力容器に残っていると信じるとも述べるなど、どうも歯切れがよくない。いずれにせよ炉心の溶融が言及されたのは2号機のことで、原子炉建屋での水素爆発は避けられたものの爆発音がするなど、原子炉自体の損傷の程度が当初の予想を上回って大きいことが指摘されている。これは今日東京電力が公表した3月14日に2号機においてのみ燃料棒が全露出(1号機、3号機では一部露出)したとの事実と矛盾しない。またこれもNYTの記事に依拠するが、何時間も炉心に水が無く、また冷やすための注水も行わなかった事実は、「シミュレーション」を行うための初期条件を簡単にして、炉心温度が何度まで上昇していくかの予測が容易になる。それぞれ異なる「シミュレーション」ソフトを初期条件を使ってであるが、摂氏で2,250度とか2,700度という最高到達温度が得られている。金属の融点は鉄が1,539度、ウランが1,132度、ジルコニウムが2,127度であるから、これらを溶融するには十分な温度である。2号機がかなり激しく損傷を受けていることがこれからも分かるが、それにしては30%の損傷率とされた燃料棒の壊れ方が、単に被覆菅が損傷しただけとは考えにくく、燃料棒そのものの溶融を視野に入れざるを得なくなる。確かに《溶融など燃料の状態までを示すものではない》と言われればそれまでであるが、「被覆の剥がれ」と「溶融」を区別出来ない損傷率の数値だけが一人歩きすることが、かえって「溶融」の危険性を覆い隠すことにもなりかねない。
燃料棒の損傷率一つで、あくまでも素人談義であるが、ここまで考えさせられた。専門家の説明が欲しいものである。