日々是好日

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中国残留孤児の即刻救済を

2006-12-01 20:24:00 | 社会・政治
残留孤児、国に賠償責任 神戸地裁判決(神戸新聞) - goo ニュース

このニュースをテレビで観たときに目頭が熱くなった。良識が存在していたのである。

私は敗戦後、朝鮮から引き揚げてきたが、未だにもって国から見捨てられたという思いにとらわれている。引き揚げ者がお互いに助け合う自助努力の印象が強かったことが、その思いを余計に深くしているのだろう。しかしそれでも敗戦の年にはなんとか祖国に引き揚げてきた。それに反して中国残留孤児はまさに棄民そのものであった。

敗戦後旧満州で、もろもろの事情で親から離れてしまった幼児が中国人に養育されて、ようやくの思いで祖国に帰ってきた。といっても敗戦後40年ちかくもも経ってからのことであるから、日本語を十分に話せないのは当たり前、自立できる仕事を見付けることも出来ない。否応なしに生活保護を受ける人たちが帰国者の七割におよぶという。それもこれも全て国の責任、その責任の所在を明確にしたのが、神戸地裁判決の良識である。

《国側は、孤児の被害について「国民が等しく受忍しなければならない戦争損害」とし、補償措置の実施などは政府の裁量によると主張していたが、判決は「日中国交正常化後の政府の違法行為による損害であり、戦争損害はない」と退けた。》とのこと、この当たり前の話がようやく司法の判断、すなわち国の一つの意思として出てきたのはよいが、あまりにも時間がかかりすぎた。

歴史認識とか戦後補償との関わりで、ドイツが日本との比較でよく取り上げられるが、これまでマスメディアが全く無視して伝えていないことがある。それは自国民に対する戦後補償のあり方が両国で対照的に異なるという事実である。

ドイツでは1952年に「負担調整法」なるものを制定されたが、これは各種戦争犠牲者に対する救済を定めたものである。戦没者の遺族、戦傷病者、抑留者、引き揚げ者や砲爆撃による戦災者に戦犯も含めて、あらゆる種類の戦争による犠牲者の損害を救済の対象とした。

もちろんこの財源は自国民の負担によるものである。公的団体、宗教団体以外のすべての個人と法人から、動産、不動産を問わず、戦災を受けなかった全財産の50%迄の特別賦課金を課したというのだから、その徹底ぶりには恐れ入る。国民は戦争による被害を公平に分担すべきである、との理念がその基盤にあったのだ。戦争成金に敗戦成金を跋扈させたままのわが国とは大違いである。このドイツの徹底した理念の前に、日本国政府の主張、「国民が等しく受忍しなければならない戦争損害」はまったく色あせてしまう。

北朝鮮拉致被害者よりも遙かに長い期間、中国に残留を余儀なくされ、帰国後も辛酸をなめ続けたこの戦争被害者に、せめて北朝鮮拉致被害者に対する自立支援策と見合う支援を、遅まきながらも軌道に乗せるのは国として当然の義務であろう。この判決を我が政府が真摯に受け入れることを念願する。