日々是好日

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『パロマ器事故』のどこにメーカー責任があるのか?

2006-07-23 16:21:44 | 社会・政治
パロマ器事故、改造「単純作業で可能」 安全装置働かず (朝日新聞) - goo ニュース

これはパロマ工業のガス瞬間湯沸かし器による一酸化炭素ガス中毒死事故が最初に報じられた頃のニュースである。その事故は次のように説明されている。

《経済産業省やパロマによると、事故は(1)排気ファンがきちんと動かず(2)その場合に作動するはずの安全装置も働かなかった。このため、湯沸かし器から一酸化炭素が室内に充満して起きたとされる。》

そしてその原因は次のように報道されている。

《パロマが原因として強調するのは安全装置が作動しなかった点だ。同社は15日、以前から把握している事故は6件ではなく7件だったと説明を変えたが、いずれも不正改造が施され、安全装置が機能を失っていたとしている。》

パロマ工業は製品自体の問題ではなくて、『不正改造』こそが事故原因であると強調した。ではなぜこの『不正改造』がなされたのかについて、《パロマは14日の記者会見で、「耐用年数を超えた機器を延命するためではないか」と指摘した》とのことであった。

しかし朝日新聞は《改造による危険は極めて大きい。何のために危険を冒したのかは、まだはっきりしない。》とも報じている。

その後、マスメディアは『不正改造』まずありき、を大きく伝えたが、何のための『不正改造』であるのか、それが私にはひとつピンとこなかった。誰がどのような利益をうるのだろうか、とも勘ぐってみた。

そのうちに『不正改造』というのは安全装置の働きを抑えるもので、ではなぜ安全装置の働きを抑えないといけないのか、そのような改造が行われた理由が次第に分かってきた。

パロマ製湯沸かし器の安全装置は、排気ファンなどの異常を感知した際に本体への電流を止めて作動しないようにする役割を持つ、とのことである。その結果、上の新聞記事からは明らかではないが、ガスの供給が遮断されるのだろう。

○「安全装置が利き過ぎてすぐお湯が出なくなる」→ だから『不正改造』して安全装置をバイパスする。
○「パロマの(事故機の一つの)PH-101Fなどはクレームが多かった。修理にはコントロールボックスの交換が必要だったが、パロマの製造が間に合わず改造で急場をしのいでいた」→ 『不正改造』して安全装置をバイパス。
○「パロマ工業(名古屋市)製の瞬間湯沸かし器による死亡事故が相次いだ問題で、複数の修理業者が、警視庁捜査1課の調べに、安全装置と連動する「コントロールボックス」(制御装置)の構造上の問題点を指摘する証言」
○「コントロールボックス内の基板異常で、湯沸かし器が正常に作動しなくなっていたのを、端子を針金でつなぐなどしてガスが止まらないよう改造されていた」
○「コントロールボックス内のはんだ割れが多い」「耐用年数が短い」

そして『不正改造』の発端を示唆するもととして、7月20日付の読売新聞に次のような報道がある。

《パロマ工業製の瞬間湯沸かし器で一酸化炭素(CO)中毒による死亡事故が相次いだ問題で、販売会社のパロマが1980年代、修理を手掛ける「パロマサービスショップ」に、安全装置に連動する「コントロールボックス」(制御装置)を通さずに配線する不正改造を促す文書を配布していたことが20日、警視庁捜査1課の調べでわかった。》

これで浮かび上がった事故につながる出来事の連鎖は次のように考えられる。

『基盤異常、もしくは経年変化による安全装置の不具合』 → 『安全装置をパロマが十分に確保していなかった、もしくは費用節約?』 → 『応急処置?としての不正改造』 → 『換気が不十分』 → 『安全装置が働かずに事故』

このように整理すると、『不正改造』を引き起こしたそもそもの原因は、安全装置の基盤異常ということになりそうだが、それがメーカーの責任かとはまだ即断できない。もしその基盤異常というのが『はんだ割れ』のことを指すのであれば、経年変化の疑いもありうる。メーカーの責任を取り上げる前に『基盤異常』の詳細が明らかにされなければならない。

ところで上にまとめた出来事の連鎖は、実は新聞などに報道されたことを寄せ集めて、あたかも因果関係があるかのように並べたに過ぎない。ある特定の事故についての因果関係ではない。

これまでメーカー側の対応に問題がありそうなのが、上記の7月20日付の読売新聞が報道したことである。しかし、一方、すでに7月16日付の朝日新聞が《(パロマは)88年には「事故が発生すれば責任を問われる」として、不正改造の禁止を全国の営業所に通達した。》との記事を載せている。時系列的には読売新聞の報じる出来事のあとのことと見るのが素直であろう。従って『不正改造』がどのような状況下でなされたのか、こごのケースで明らかにされないことには、『不正改造』へのメーカーの関与を結論することはできない。

現時点でもしメーカーの製造責任を問うとすれば、『不正改造』を許すような製品を作ったことが悪い、ということになるのだろうか。しかし事柄はそれほど単純なものではない。事故死に至るまでの過程がすべての事故に共通ではないからだ。確かに事故に対するメーカーの責任はそれなりに追及しないといけないが、一方、自分が事故の犠牲者にならないために、自分で注意しなければならないことがあるように思うのである。

つづく