星のひとかけ

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愛蘭の宝石 :J.M.シング『アラン島』

2006-02-19 | 文学にまつわるあれこれ(妖精の島)
 

   来る日も来る日も霧がたれこめて一週間になる。僕は、流刑になって
  寂しさをかみしめているかのような、不思議な感覚をあじわっている。
      ・・・
   雨は降りつづいている。だが、今晩は食堂兼居間(キッチン)に若者が
  大勢集まってきて、漁網のつくろい作業がおこなわれ、密造麦焼酎(ポチ
  ーン)も一瓶、隠し場所から持ち出されてきた。・・・こいつは、霧に閉
  ざされ、忘れ去られた世界に住む住民たちを正気のまま保つために、運命
  が確保してくれた飲料であるように思われる。

                (J.M.シング『アラン島』栩木 伸明 訳

     ***

去年、読みたいと書いた『アラン島』第一部からの抜粋。
このアラン島は、グラズゴーの西にある大きなアラン島(Arran)ではなくて、アイルランドのダブリンの正反対の西の果て、ゴールウェイ湾から切り離された辺りにある小さな3つの島、ここがアラン諸島(Aran Islands)。

この本を読みながら、シングの若き日の先輩、イェイツ先生の声も入ってる「W.B.イェイツを唄う」を聴いていました。イェイツ先生からシングを教えてもらったから。。

百年前、シングが滞在した家は、今は展示館になっているのだそう。。
シングがこの島を訪れたのは、夏の間だけで、島の厳しい暮らしを本当に知った、とは言えないのだけれど、〈本土〉から来た自分たちとは違う階級の〈文士さん〉(当時27才くらい)は、なんだか島人たちから愛されたみたいです、、そんな様子が本から伝わる。

先の引用のつづき、、

    ***

   ようやく雨が上がり、太陽が輝いている。その明るい暖かさは島全体を
  宝石の輝きできらめかせ、海と空を輝かしい青い光でいっぱいにした。
   僕は岩のうえに寝ころんでやろうと思ってやってきた。ここからは北の
  大島(アランモア)の黒い断崖が正面に見え、右手にはあまりに青すぎて
  まっすぐ見ると目に痛いゴールウェイ湾が広がり、左手には大西洋が横た
  わり、くるぶしの直下には切り立った崖が落ち、見上げれば、カモメが大
  きな群れをなしておたがいに追いかけあっている。たくさんの翼が真っ白
  な巻き雲のようだ。

    ***

・・愛蘭土の西の涯て、、、
行けないかもしれないけど、、、行ってみたいなあ、、、。

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