星のひとかけ

文学、音楽、アート、、etc.
好きなもののこと すこしずつ…

最初のひとかけら、へ…

2021-10-13 | …まつわる日もいろいろ
 先日読んだ小説のなかの素敵な一文、、 (ほんの短い部分ですので引用おゆるしを…)


  雨の直後の空気。 板チョコの最初のひとかけらと最後のひとかけら、これが一番美味しい。 フリージアの香り。 デヴィッド・ボウイのアルバム『ロウ』。 長い夜を過ごした後のカリーヴルスト… (まだまだ続くのですが以下略)
       (ロミー・ハウスマン著『汚れなき子』より 長田紫乃・訳)





すてきだと思うのは、 自分もおなじように感じるからなのか、、 それとも シリアスな犯罪小説のなかにこんな心地良い文章を紛れ込ませられるセンスを素敵だと思うからなのか、、 (カリーブルストだけは知らなくて検索しました。おいしそうなドイツのお料理でした。ドイツの作家さんなのです)

こんな素敵な文章が書ける作家さんの物語は、 やはり読み終えてよかったと思えるものでした。。 でも今日は本のはなしではなく…

 ***

急に涼しくなりましたね。 ほんとうの秋がやってきたようです。

フリージアの香りは春が似合いますが、 板チョコの最初のひとかけらがとても美味しく感じられるようになりました。 朝の珈琲には ひとかけらのチョコが欠かせません。 熱い珈琲の美味しさも気温がさがるとともに ひときわ深く感じられるようになりました。 

飲み始めはダイニングで。。 そしてカップを持ってPCの前へ移動して、、 ネットラジオを聴きながら(このところはBBC3を) ニュースサイトを開いたり、、 傍らで新聞をひろげてみたり、、 ひと口、 ひと口、、 そうやってしまいには冷めてしまった珈琲の 最後の苦みと酸味をたしかめるようにひと口、、 それが出来れば素敵な一日のはじまり。。


音楽好きのおともだちが、 ようやく音楽サークルの集合練習ができるようになったと嬉しそうでした。 発表会、 演奏会も、 来月に控えているのだとか。

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私も、、

来月は行けることを信じて。。 


来月はコンサート月間に…  なりますように。


やっと  やっと

自分の眼で  自分の耳で


自分の身体で…



 

ヨーナ・リンナの「僕」「俺」「わたし」:ラーシュ・ケプレル著 ヨーナ・リンナ警部シリーズ『つけ狙う者』

2021-10-05 | 文学にまつわるあれこれ(鴉の破れ窓)
10月になりました。  暑いですね…(笑)


ラーシュ・ケプレル著 スウェーデンのクライムミステリ ヨーナ・リンナ警部シリーズの最新作『ウサギ狩り人』が9月末に発売になったというのを 昨日知りました、、嬉し!! 前作から9カ月、、 わりと早い出版で喜んでいます。

と同時に 前作『つけ狙う者』の感想をなんにも書いてなかったことに気づきました。 読んだのは今年の春かな? だいぶ前のことですし、、 内容のことを書いたら何を書いてもネタばれっぽくなってしまうので、 本作のストーリーには関係ないことをちょっとだけ。。

ヨーナ・リンナ警部シリーズについては 前に2回書いています。 過去ログはこちらです>>

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ヨーナ・リンナ シリーズ、 今までに出ている作品は
 『催眠』 『契約』 『交霊』 『砂男』 そして 『つけ狙う者』 と続いたのですが

新作『ウサギ狩り人』の発売に心躍らせていらっしゃる方は とっくに『つけ狙う者』は読了されていると思いますけれど、 もしももしもこれから読もうと思っている方は、 悪いこと言わないです、 数カ月費やしても ぜひぜひ過去の作品から読むのをオススメします。

事件の解決については、 たぶん『つけ狙う者』だけを読んでも理解はできると思うんですが、 主人公ヨーナの過去や、 彼に関係する登場人物の印象など、 過去の作品を読んでいるのといないのとでは面白さや感動が格段に違うと思うのです。。

とくに 『つけ狙う者』を読むうえでは、 第一作の『催眠』は読んでおくと良いです(登場人物がかぶってますし)。 それに、 ヨーナ・リンナの過去については、 第三作の『交霊』で衝撃的な事実が明かされ、 第四作の『砂男』で、 長らくヨーナを苦しめてきた過去との対決が描かれます。 そして『砂男』のラストで、、 (え? え? どうなったの??)と 大きな疑問を残したまま 『つけ狙う者』に至るのです。。





ラーシュ・ケプレル作品のこのシリーズの魅力は 何と言ってもヨーナ・リンナという男の人物像の変遷、 激変をたどった彼の《過去》にあると思います。 第一作ではそれがほとんど明かされず、、 ①のときに私も (ヨーナはクールなの? シャイなの? マッチョなの? 繊細なの? …云々)と書いてますが、 初めの頃のヨーナは、 スポーツ万能、、警察署内のプールで独り泳いだり、 「ね、僕の言ったとおりでしょ」が口癖の、 なんだかいけすかない自信過剰の一匹狼?? みたいな印象で、、

ところが、 あの《白樺の根の冠》にまつわる ヨーナの秘められた《過去》が見えてくる第三作あたりからは ヨーナが背負ったものを思うと、もう胸がつぶれそうなくらいせつなくて、、。

こういう ヨーナの境遇の激変を物語っている象徴的なものとして感じたのが、 ヨーナの《一人称》のことなんです。。 原作のスウェーデン語や、 英語での出版物では、 一人称の区別なんてきっと無いでしょうから、 これは翻訳者さんが書き分けたということなのでしょうけれど、、ヨーナはずっと 《ぼく》って言っていたんですよね。

「ほら 僕の言ったとおりでしょ」 というふうに。

これがひとつヨーナが年齢不詳に感じられる一因でもあったと私は思っていて、、 ヨーナって40代くらいでしょ? 凶悪事件を追う敏腕の警部が 《僕》、、って。

、、 それが、 ヨーナの過去を物語っている部分で(たしか第三作だったと思います)、 若き警官時代のヨーナが、 同僚と仕事帰りに酒を飲み、 自分のことを《オレ》、、って。。 
(ヨーナが俺って言ってるぅ~~!)となんかうるうるしたのを覚えてます。。 ヨーナでも同僚と酒を飲み、 家族の話をして 自分のことを《俺》って。。  みなさんお気づきになったかしら・・・?

でも、、 あの衝撃の事件以来、、 ヨーナはもう二度と自分のことを 《オレ》なんて言わない。。


そして 第五作の『つけ狙う者』では・・・

、、 その部分を読んだ時、 私はすごくすごく淋しい気がしました。。 流れた時間、、 変わってしまったもの、、 戻らないもの、、 そういうものが込められていた気がして。 (それはお読みになって…)


さきほど書いたように、 原作でヨーナの一人称に変化があるのかは私はわからないのですけど、 こんなほんのささいな言葉遣いの変化だけど、 ヨーナ・リンナの人生をあらわすうえではすごく大事な一人称の変化だと思うのです。 翻訳者さんももしそう思われて使い分けされていたとしたらうれしいな。。

そして 最初にヨーナの一人称を 「私」でもなく 「俺」でもなく、 「ぼく」と訳されていたのには、 ヨーナのもつ複雑な謎めいた人物背景をちゃんと物語っていたのかな、、と そんなことも思いました。

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あと、 これは『つけ狙う者』をすでにお読みになったかた向けに、、 私の勝手な想像、、 放言として、、、(一部ネタバレかも…)

ヨーナ・リンナをめぐる残酷な過去は、、 『つけ狙う者』でいちおうの決着を見たようになっているのですが、、 なんだかあれで終わる気がしないんです。。 あんなふうに終わるわけないと思いません?

いずれまたヨーナを苦しめる出来事が…。 まだ翻訳されていないあと2冊のなかに必ずあるような気がする。。
、、 パリにいるはずのあの人のことがとても心配です、、 ヨーナが手出しできない状況のなかで、、。


、、それから、法医学の話題ですけど、、
ひとの身体を生きている間に切断したか、 それとも 死後に切断したか、 区別できるって書いてありましたよね。。 だったら、 生きている時に切断した腕とかを、 そのまましばらく放っておいて そのあとでそこから指だけを切断したとしたらどうなるの?? それもわかるの? どうなんだろう・・・ (ちょっとネタバレ ごめんなさい!)


新作の『ウサギ狩り人』 楽しみです。。 でもまだ今は 手元に控えている本がいっぱいあるので しばらくかかりそう。。 だから新作の紹介文とかレビューとか、 ぜったいに読まないようにしているのです。 どんな事件かな、 どんな人が登場するのかな、、

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このところ 感染者も重症者も減少がつづいていて ほんとうに このまま みんながほっとできる秋、 誰もが楽しめる秋が訪れてくれるといいな。。


心から そう願って。


愉しい秋へ…