星のひとかけ

文学、音楽、アート、、etc.
好きなもののこと すこしずつ…

星の文学者 『野尻抱影の本1 星空のロマンス』

2010-06-23 | 文学にまつわるあれこれ(詩人の海)
夏至の夜に明かりを消して過ごす キャンドルナイト、、 今年の夏至(21日)は お仕事で遅くなる日だったこともあって、 忘れて過ごしてしまいました。 そのかわり、、 というわけではないけど、 昨夜は少し早めに電気を消して、 音楽を聴いて過ごしました。

明かりを消しても 都会では真っ暗闇などにはなりません。。 遅くまでいくつも明かりのついたオフィスビルに、、 流れる車列のライト、、 遠くには埠頭をひと晩中照らすオレンジの灯り、、 その向こうのどこかには 船舶の灯りが漂っているのかもしれないし、、 空には流星のような飛行機のランプ、、、

それらはそれらで とても美しいし、 都会の灯りには ひとつひとつに人の息遣いが感じられるようで愛おしくもあります。。。 が、、、 星空は ほんとうに見えないね。

 ***

以前こちらで書いた(>>)、、 星の文学者 野尻抱影という人の本、、 いま読んでいます。 

図書館から借りてきた本を見せて、 家族に 「この人知ってる?」と尋ねてみたら、、 本をぱらぱらとめくった後、 Pluto(冥王星)のことが書かれているページをみつけて 「あぁ、、 冥王星を命名した人!」って思い出したようでした。。 さすが、、 男の人はこういうネタには強い。。。 

冥王星Wiki>> 

野尻さんは、 それまでに発見されている Neptuneが 神話にちなんで海王星と和名がつけられ、 Uranusが 天の神ウラノスにちなんで天王星とつけられたことから、 今度の(1930年=昭和5年 のことだったそうです)プルートも 冥界の王の名であるから、 「幽王星」あるいは「冥王星」という名がいいだろう、と 雑誌に発表して、 その後「冥王星」と呼ばれるようになったのだそうです。 その時の文章も本に載っていました。

昭和の初め、、という時代だからか、 科学の発達、 技術の進歩への夢は 文学者のロマンをいろいろ膨らませてくれた時代だったようで、 物理学者 寺田寅彦さんの随筆にも、 「自然界のさまざまな音を有りのまま再現してくれる音源」などがあったら、 人の心はそれに慰められるだろう、、というような記述があったように思いますが、、

野尻さんの本の中にも このような記述がありました、、

 「近頃ある天文学者は、 ラジオの発達の極致は、 流星の音はもとより、 星々の運行する微妙な音まで地球人の耳に入るようになるかもしれないと、 真面目に説いています。 『JOAK、、 (略) 、、 ただ今聞こえているセロのような音は、 あれは木星でございます。』などとは愉快ではありませんか。」 
      (「星に親しむには」
        『野尻抱影の本1 星空のロマンス』筑摩書房)

、、、素敵。 、、でも、 宇宙に空気はないから、、「音」って きっと聞こえないんだよ、ね???

と思ったら、、 なんと!! (検索してみるもんですね)

なんと! 野尻さんの書かれていた「木星の音」 ちゃんとあるんだ~~~!

ボイジャーが送ってきた木星の「音」(音、っていうか電磁波みたいなもの? を人間の耳に聞こえるように変換したものらしいです) ちゃんとそれが聴けるんですって(>>

うわぁ、、、 びっくり。。。 野尻さんも お空で聴いておられますか?

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野尻さんについては、 松岡正剛さんも 「千夜千冊」の中で紹介していました。 (野尻抱影『日本の星』>>) 松岡さんは 『遊』の編集をしていた頃、 90歳過ぎの野尻翁にお会いになっているそうです。

、、、上記にも、 wiki(>>)にもありますが、 野尻さんの実弟は 作家の 大佛次なのですって。 このことも全く知りませんでした。。 さらに、、 wiki見てたら、 いきなり、 中川勝っちゃんの 名前も、、、。。 血縁ではないけれど、 ご親戚、、なのですね。 

おもわぬ 星のめぐりあわせ、、 なのでした。

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図書館近くのビルには、 笹の葉にいっぱい短冊がつけられて飾られていました。 時節がら、 サッカーを応援する言葉がいっぱい並んでいました。 みんなの願いがとどきますように。。。 そして七夕には、 天空での 年に一度の逢瀬も、 きっと叶いますように。。

  

光線の圧力: 『三四郎』

2010-06-16 | 文学にまつわるあれこれ(漱石と猫の篭)
きのう、 メロトロンさんからコメントをいただいて、、 

宇宙を永遠に旅する「ボイジャー」のことを思い浮かべていた矢先、、 こんなニュースが載ってました。 「宇宙のイカロス 太陽光で輝く姿」、、(asahi.com>>

、、、そうでした、 この「イカロス」は、 宇宙でヨットのように帆をひろげて、 光を受けて進むのでした。。。 風もない宇宙で、、 どうやって? と最初おもったら、、 「光の圧力」を帆に受けるんですって。。。 光に「圧力」って、、あるの?? そんな話題をTVでやっていましたっけね。

「光の圧力」で思い出しました。 夏目漱石の『三四郎』の中で、 三四郎が 野々宮さんの「光線の圧力」の実験を見せてもらうシーン。 確か、 野々宮さんは 東大の物理学の院生で、 研究室でひたすらその光線の粒子を 箱の中で飛ばす実験をしていたのでしたね。 、、この 野々宮さんの実験は、 漱石のお弟子さんで物理学者だった 寺田寅彦さんから聞かせてもらった話を使ったのだということでした。

、、そのあと三四郎は、 今で言う「三四郎池」のほとりに来て、、 野々宮さんの実験は 現実世界に何の関係があるのか全くわからないけれども、、 なんとなく自分も 「いっそのこと気を散らさずに、 生きた世の中と関係のない生涯を送ってみようかしらん」、、などと思うのです。 、、、そんな三四郎がふと眼をあげると、、 池の向こうの丘に、 夕日をうけて 着物に団扇をかざした女のひとが立っている。。。 (その女性が美禰子なんですけど)、、 さっきまで野々宮さんの生き方に感化されそうになっていた三四郎は、 やっぱりすぐに「現実世界」に引き戻されてしまうのです、、、 若いね(笑)

『三四郎』の季節はめぐっていくのですけど、、、 なんだか 三四郎は夏の小説、 という感じがします。 三四郎池の鬱蒼とした緑、、 美禰子が落として行った白い薔薇、、 三四郎と奇妙な出会いをした (でも私がいちばん好きな)広田先生の大好物の 水蜜桃。。。 

、、話 逸れました。

漱石の時代には、 野々宮さんの行なっていた「光線の圧力」の実験は、 いったい現実世界となんの関係があるのか まだまだ わからない時代でしたが、、 100年たって、 光の圧力は 立派に宇宙帆船「イカロス」に現実に利用されることになったのですね。。。 寺田寅彦さんも、 そして漱石も きっと、 興味津々でこの話題を耳にすることでしょうね。

ひさしぶりに 寺田寅彦さんの随筆も、、 読みたくなりました。

、、 そうそう、、こんな本もありましたね、、、
漱石とあたたかな科学―文豪のサイエンス・アイ 』 小山慶太著 (Amazon.com)