星のひとかけ

文学、音楽、アート、、etc.
好きなもののこと すこしずつ…

you are my sunshine...

2005-10-29 | 映画にまつわるあれこれ
先日、気味の悪いポスターを
お見せしてしまったので
お詫びのしるしに、
とっても素敵な映画を。。

ジム・キャリーがじつは好き、、というのは
前に書きました。
その頃、この映画観に行ってきたんだわ。

花吹雪が舞う季節だったけれど、写真にもあるように、そういえばこの映画の季節は冬でした。はなびらのような雪が舞っていましたっけ、、。
、、、いま公開中(?)の、記憶が消えていく、、という、胸がつぶれてしまいそうに悲しい(と思う)べつの映画よりも、、私は、胸がつぶれそうに恋しくてたまらなくなるこちらの映画の方が見たい、見たい、何度でも。

「エターナルサンシャイン」、、このタイトルを見ると、
なんだか昔教わった歌を思い出してしまいます。

入院・手術で、入学式をふくめ、1ヶ月半ほど学校へ行けなかった私は、もう青葉の頃に初めて中学生になりました。初めての英語の授業、、、。転校生みたいに立って自己紹介を(いちおう英語でマイネームイズ、、って)言えたら、その先生はめちゃめちゃ褒めてくれて、、、。毎回、その先生は、この歌(you are my sunshine)を授業の最初に教えてくれたのでした。まだ意味わからなくてもいいから、一緒に歌おう!って。曲はもともと知ってたから、すぐ覚えちゃって、、、その先生も大好きになった。

空がグレーの日でも、、、幸せにしてくれる、私の太陽。
Please don't take my sunshine away...


「割り切る」ことと「切り捨てる」こと。

2005-10-27 | …まつわる日もいろいろ
たまに覗きに行く或る人のDiary、、
その中のひと言に、、ズキッ、、、と来て、そのまま数秒、パソの前で止まっていた。

   「割り切ること」が出来ないから、「切り捨てる」

そうですね、、、私もそういう人間です。
そうしてきた人間です。そして、そうしてきた同じ種類の人も、とっても近くによく知っています。
「アイツはこの道しかないだろう」と周囲のすべての人が思っていたはずの道に進まなかった人間が、ここにも、そして、そこにも。。割り切ってここまで来れた訳ではなく、「切り捨てた」のですよね。

閉ざした扉を背にして来た人に、「あの大切なものは何処へ置いてきたの?」と問い掛けても、、、「棄てた」と、笑っているだけ。。でもそれは、、「忘れた」、、、では、無いのですよね。

 ***

ヒトゲノム地図が完成したそうです。
「25万個で個人差判別」って新聞文字が「個人差別」に見えてしまいました。たかが、塩基配列ごときに人間の一生が左右されてたまるものかと思うし、たかが塩基配列ひとつくらい、さっさと治せないものか、と思ったりもするけれど、それが出来ない。まだ、出来ない。まだ、、、っていうか、じゃあ出来たらしていいのか。どうなんでしょうね。
「私」というアイデンティティである「遺伝子」そのものに、「私」が煩悶するという不条理。生涯背負う十字架?・・・でもそれは、「割り切る」しかない。
自分で自分を「切り捨てる」わけにはいかないから。

 ***

、、、自分は棄てない。
でも、自分から「切り捨てた」ものは、、もどってこないものかな、、、? そう、、、? そうかな?

いつか、自分が先へ先へ、ずっと先へ歩いて行かれたときに、
それが出来た人だけに
答えは解るんだと思う。。

ごめんなさい、天邪鬼で

2005-10-25 | 映画にまつわるあれこれ
いきなり不気味な写真でゴメンなさい。

2年も前から待ち望んでいた映画「青い棘」が
ようやく公開になるらしく、
昨日の夕刊に1面広告が載っていた。

・・・が、
何なのぉ、、あの紹介文は、、、。

主役のダニエル・ブリュール君が
  《「グッバイ、レーニン」「ラヴェンダーの咲く庭で」》
という紹介なのはわかります。。。が、、何? アウグスト君の方ときたら、
  《ヘルムート・バーガーの再来!》、、しかもエクスクラメーションマーク付き。

アウグストだって主演作あります!
(このブログの検索で、アウグスト・ディールを拾って頂けば過去の日記ご覧になれます~) 
最初にこの新聞紙面をみつけた主は、「ものすごい情報操作だ、、」と言ってげらげら笑っているし、、、。な、なによ、アウグストといえば、「タトゥー」という名作があるじゃないかぁ。「9日目」だっていい演技してたじゃないかぁ。。。と怒っていたら、ページの隅のすみっこに、ちっちゃくちっちゃく出ているのを見つけて、また、げらげら笑っている。。 ほんとにちっちゃくて虫眼鏡でしか見えない位に書いてあるんだぞぉ。(、、まあね、、TATTOOって書いたらお客さん引くかもしれないけど、、、)

ふたりとも胸はだけた写真で、、、。
というわけで、アウグスト・ディール君はしっかり〈見えすいた意味での〉耽美派にされてしまいましたとさ(ほんとうに美しいからしょうがないんだけどね)。。ちょっとイジけたので、アウグストの美しい写真はやめて、「TATTOO」のポスター写真にしてあげます(デカダンス、耽美、といえば、こちらはその究極ともいえるわけで、、)。私はこちらのアウグストもしっかり好きです。

でも「青い棘」は観に行こうと思う、、、サントラ盤、、売ってないかなあ、とっても聴きたいんだ。。

「幸福って素晴らしいな。」 : 『ハインリヒ・ベル短篇集』

2005-10-03 | 文学にまつわるあれこれ(ほんの話)
下の文章を書いていた時、また、、爆弾テロが起きていたなんて、、、

10月3日は、東西ドイツの統一記念日だそうです。
全世界の祝福と、たくさんの愛と、忘れられない犠牲と、未来への希望のなかでひとつになった国だけど、、今また、たくさんの不満が生まれて、「ベルリンの壁」があった方が良かった、、、と感じる人まで(それも相当に)いるらしい。。

歪められた懐かしさに憧れるより、、、これから創り出されるものに憧れようよ。

・・・ドイツの話ではなく・・・
前線に立ったこともなく、肉親を引き裂かれたこともない人が、戦った男達に憧れるような、、、そんな恥かしい指導者は要らない。プロジェクトXの心理操作で戦争を語られたらたまらない。

 ***

 真っ暗な空に二発の銃声が響き、そのこだまが千倍にもなって彼の上にふりかかって来た。それは針のように彼の胸をちくちくと刺した。あのいまいましいルクセンブルク兵になんか捕まるもんか。撃たれるもんか。彼がいま腹這いになって載っている石炭は、固くてとがっていた。無煙炭だった。これなら1ツェントナー80マルクで、最高80マルクで売れる。ちびたちにチョコレートを買ってやろうかな。いや、それには足りないだろう。チョコレートは40マルク、45マルクくらいまでする。そんなに沢山ちょろまかすことなんてできやしない。

   ・・・・・

 注射はよかった。チクッとしたけど、そのあと突然幸福がやって来たんだ。あの青白い顔の看護婦さんが、注射器の中に幸福を仕込んでおいたんだな。だって、この耳ではっきり聞いたんだもの、注射器の中に幸福を入れ過ぎた、量が多過ぎたって言っていたのを。ぼくはばかなんかじゃないんだぞ。グリーニィって、イが二つはいるんだぞ……いや、そう、死んじゃった……いや、行方不明なんだ。幸福って素晴らしいな。いつかちびたちに注射器にはいった幸福を買ってやりたいな。何でも買えるんだから……パンだって……山ほどのパンだって……

   ・・・・・

 「ほくは洗礼を受けてないんだ。」
 尼僧はびくっとして目を上げた。洗面台のところへ走っていき、目は心配そうに少年を見守り続けていた。グラスは見つからず、駆け戻って、熱のある額を撫でた。それから小さな白いデスクに近寄って、試験管を一つ手に取った。試験管にさあ早く水を入れて! ああ、こんな試験管にはなんて少ししか水がはいらないんだろう……
 「幸福を」と、少年が囁いた、「幸福を注射器に一杯入れてよ。そこにあるの全部。ちびたちの分もね……」

      「ローエングリーンの死」 『ハインリヒ・ベル短篇集』岩波文庫より