星のひとかけ

文学、音楽、アート、、etc.
好きなもののこと すこしずつ…

Will You Still Love Me Tomorrow?

2022-04-22 | MUSICにまつわるあれこれ
来週はもうGW。。 桜前線、 もうすぐ北海道までとどくそうです。

、、 あの日以来、 朝の日常になってしまったBBCニュースを聴きながらのニュースチェック。。 先日、「…何千本もの桜が一斉に咲くとどうなるかをお見せしましょう…」とロンドンのキャスターさんが言うので、 きっとワシントンのポトマック川沿いの桜祭りのことだろうと思ったら、、 「高遠の…」と聞こえてきてびっくりしました。。 長野県高遠町の桜でした。

、、その数日後、、 同じく朝のBBCニュースで 破壊された灰色のウクライナの街で 小さな桜が咲いている映像が流れていました。 「…見る人はいません…」とキャスターは言っていたと思います…

 ***

ニュースの後でこのところ聴いているのは BBC2。 (日本の)朝の時間帯には 新曲と古いポップスをごちゃまぜでかけてくれる。 
いま毎日かならず流れているのが James Bay さんの Give Me The Reason 、、 あの声だから何をしていてもすぐ耳が持っていかれる。。 あまりにもベタな曲と詞で、 巧いギターもあんまり弾いてくれないのでつまんないのだけど、、 でも聴いてしまう。。 得な声ね…


この前まで読んでいた本から、、

  自宅に戻り、レコード棚の現代音楽のセクションにしまってある盤のスリーブをぱらぱらと指で弾いた。 今の俺に必要なのは? レッド・ツェッペリン、 アンダートーンズ、 ザ・クラッシュ、 ローリング・ストーンズ、 ディープ・パープル、 AC/DC、 モーターヘッド? いや、気分じゃない。 キャロル・キング、 ジョーン・バエズ、 ジョーン・アーマトレイディング、 ボウイ? スリーブを指で弾きながら、 キャロル・キングのアルバム《タペストリー/つづれおり》なんていいかもしれないと考えた。 それをかけ、ウォッカ・ギムレットをつくり、窓をあけてソファの上で横になった。
  (『コールド・コールド・グラウンド』 エイドリアン マッキンティ・著 武藤 陽生・訳)


、、 本についてはまた書きます。。 1981年のアルスター、、 暴動とテロの街。。 そんなに昔のことじゃない、、 同じ時におなじ音楽も聴いていたかもしれない、、

警察小説なのだけど、 主人公のレコードマニアぶりが随所に。。 オペラからザ・クラッシュまで。。 上のシーンで主人公が聴くのは 「Will You Love Me Tomorrow?」 、、そういう気分でウォッカ・ギムレットを独り飲んでいるんです ハードボイルドな刑事さん。。 毎晩パイントグラスで飲んでいるのでここではシェイクしたウォッカ・ギムレットではないと思われますが…

引用のなかで唯一知らなかった名前が、、 Joan Armatrading さん。 UKのソウル・フォークのシンガーだそうです。 一番有名なアルバムの中から、、 たぶん、、 上記の主人公さんの気分なら きっとこれも聴いたのではないかしら? という曲を左に挙げてみました。 「Love And Affection」 原曲の1976年のものも良いんですが、 検索したら レイター出演時のものがあって、 この歌もバックの演奏も素晴らしかったのでこちらを。 2007年、 57歳の歌声。 

現在でもアルバムを出されているようで、 そのなかからものすごく感動した曲を。。 素晴らしいお声です。

Already There 、、素敵な歌だなぁ… 素敵な歌詞だなぁ…  ミュージックヴィデオも素敵。
現在71歳とのこと、、 わたしももう少し もっと長く生きたら、 こんな 大きな、 信念のある愛が語れるようになるのかしら… 

 ***


こんな時代だから、、  こんな毎日だから、、

愛でいっぱいの歌、、 いまの気持ちの歌を左サイドバーに選んでみました。 

Stereophonics の When You See It も、 朝のBBCで流れて知った曲。。 ケリー・ジョーンズの歌声は たくさん聴くと飽きるけど(ゴメンなさい・笑) 青い空が似合う歌声、、 夏フェスが似合う声です。。

Pink Floyd の Hey Hey Rise Up も 毎朝かならずかかってます。。 ウクライナの為の歌、 というばかりではなく、、 ニック・メイスンのひきずるようなドラムスも、 ギルモアのソロも、、 流石だなぁ…と唸ってしまう、、 やっぱり凄いなと聴き入ってしまう。。

Benedetta Caretta & Riccardo Bertuzzi のお二人によるカヴァーは関連でみつけました。 イタリアのミュージシャン。 ハスキーヴォイスが美しいです。 (ギターもすごく巧い…)

Doyle Bramhall II と Susan Tedeschi and Derek Trucks によるジョージのカヴァーは ドイルのオフィシャルに載っていたので。。 ドイルの歌声もとても聴きたくなる時があります。 

ドイルは、 エドガー・ウィンターさんによる ジョニー・ウィンター・トリビュートアルバムにも 歌とギターで参加してます。 「When You Got a Good Friend」という曲です(youtube で聴けます)


あとは 前にあげていた曲、、 ジュリアン・レノンさんの「イマジン」は ニュースで映像が流れて… そしたら ジュリアンよりも隣のギタリストに眼がいってしまって、、 あ! ヌーノ!! というわけで。。 ジュリアンの歌声にヌーノの声が重なるのも素敵。 

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青い空と まぶしい緑と あたたかな風と・・・



よい週末を ♡

生きるために…

2022-04-11 | …まつわる日もいろいろ
ほんとうに必要なものは もう


とても少ないのだと思う…










青い空と


歩いていける足












花と平和…









きょうも元気で




元気でね…

エンターテインメントなスパイ小説と思わずに…:『追跡不能』セルゲイ・レベジェフ

2022-04-06 | 文学にまつわるあれこれ(鴉の破れ窓)

『追跡不能』セルゲイ・レベジェフ著 渡辺義久・訳 ハヤカワ文庫 2021年


物語は、 とあるヨーロッパのレストランで 亡命者である元ソ連工作員が何者かに毒物によって暗殺されるシーンから始まります。

、、 この本を手に取ったときは、 手に汗握るスパイ小説を読むつもりでいたのです。。 でも実際は 期待したようなエンターテインメント小説ではありませんでした。 だから最初にそう書いておきます。 でも、 ドキドキハラハラとは異なる《リアルな》読みごたえある小説でした。

作者のセルゲイ・レベジェフはモスクワ生まれのロシア人作家で、 現在はベルリンに住んでいるそうです。 この名前で検索すると ウィキでは同名のロシアの高官、 最近話題のシロヴィキの人物が出てきますが別人です。 

毒物を盛る暗殺、 化学物資や生物兵器の研究所、 チェチェンに送り込まれた工作員、、など 現実に即したテーマが描かれているので、 ロシア人でこんなこと書いて大丈夫なのかしら… この作家さんの背景は…? などと思って、 少し調べようとしたところ 昨年のガーディアン紙の記事に辿り着きました。

調べようと思ったのは(調べたのは読後ですが)、、 ストーリーが《わかりにくい》からでもあるのです。。 最初のシーンの暗殺も、 どこの国なのかわからない。。 その後で、 その毒物を開発したと思われる研究者カリチンと、 カリチンを追うために送り込まれるシェルシュネフという工作員との、 ふたりの物語が交互に続いていくのですが、 彼らの過去の部分が いつの時代のどの国のどういう場所の、という事があやふやに書かれているので(私のような無知には)とても理解しづらかったのでした。

解りにくく書かれてはいるものの、 毒物研究者になるカリチンの幼少時の物語、、 選別された者だけか住む閉ざされた環境、、 研究施設での暮らし、、 体制崩壊による変貌、、など、 「わたしはいかにして最強の毒物ニーオファイトの開発者となったのか」というカリチンの告白の物語はとてもリアリティがあり、 きっとそれなりの裏付けのあるものなのだろうな と想像されました。

情報を持たずに読むのもよし、、 現実の世界と照らし合わせて理解したいと思われるかたには、 ガーディアン紙の著者インタビューの記事がとても参考になると思います⤵
https://www.theguardian.com/books/2021/feb/13

カリチンのいた研究施設、 作中では《アイランド》と表記されていたので 私は此処のことかなぁ…と考えたのでしたが(wiki→ヴォズロジデニヤ島 生物兵器実験場のあった所) 、、著者インタビューでは Shikhany という場所が言及されていますね。 日本語のwiki がないので英語のほうへ(→https://en.wikipedia.org/wiki/Shikhany

物語の冒頭で 亡命した元スパイが暗殺される場面は、 2018年に毒殺されそうになったセルゲイ・スクリパリの事件にインスパイアされたそうです。 このスパイ暗殺のことは全然知りませんでした(wiki →セルゲイ・スクリパリ

そのほか ナワリヌイ氏のこと、、 プーチンのこと、、 なども。

こうして ガーディアン紙の著者インタビューを参考にしてみると(と言っても 私の英語力ではおぼろげにしか理解してないですけれど)、、 ソ連時代の研究施設や毒物開発の背景は かなりリアリティのあるものとして書かれているのだとわかります。 
、、ではその後のカリチンと 工作員シェルシュネフの物語は…?

 ***

最初にこの小説がエンターテインメントのスパイ小説ではない、、と書いたとおり、、 物語の後半は 追いつ追われつのスリリングな展開というより、 なんと言ったら良いか、、 いろいろ《うまくいかない》展開に……。。 お粗末、、 と言っては語弊がありますけど、、 いろいろな部分でお粗末なのです、、 でもそれがかえって《リアル》なのかもしれないし、、 人間とはお粗末なものであるというか、、 だからこそ恐ろしいのだとも言えるし…

ソ連崩壊によって 《放棄された》研究施設の怖ろしさ…(ヴォズロジデニヤ島のウィキのところにも書かれていますが、 もし毒物がそのまま放り出されていたとしたら… 或いは 体制崩壊によってうやむやになって手から手へ闇取引されていったのだとしたら…)

毒ガスや毒物の実験のずさんさ、、(それは作中をお読みください、、 あの猿の処理はあれで良いの…??)


ところで、、 途中から登場する 聖職者トラヴニチェク という人物が物語に大きな役割をするのですが、、 この人物の過去と、 心のうちを描いた部分がなかなか私には理解できなかったのですが、、 これを書きながら本をもう一度ぱらぱらとめくり、 「2」の章をよく読んだら 少し背景がわかってきました。 「2」の章がすべての鍵ですね。 何度もここを読まないといけません。。

ソ連と旧東ドイツ、 体制崩壊後のそれぞれの国、、 それも関わる物語です。

 ***

この本を読み終えたのは先週だったのですが、、 その後には 本の内容の怖ろしさも霞んでしまうような 現実とは思いたくないような現実が待っていました。

閉鎖された環境の中で 偉い研究者になって誰にもまねできない物凄いものを発明することを夢見たカリチン、、 すべてを《主観》によって判断し 主観の正しさを疑わない盲目性の怖さ。


これだけSNSが進化して 世界の情報を遮断することなど不可能な世の中になって、、 そうしたら事実はかならず事実として 世界のなかで隠しとおすことなどできなくなるはず… そんなふうに思っていたのだけれど、、

そうしたら 世界中で事実は事実として ただしく共有されるものかと思ってしまったけれど、、 


自分はこのような世界に生きているのだ と認識することが こんなにも悲しいこととは。。



セルゲイ・レベジェフ氏の著書の邦訳は 今のところこの本しか無いですが、 この本が分かりにくいからと敬遠されずに、 ほかの作品も翻訳されたらいいな、、と思っています。