星のひとかけ

文学、音楽、アート、、etc.
好きなもののこと すこしずつ…

2022ありがとう 素敵な年末年始をお過ごし下さい。

2022-12-30 | …まつわる日もいろいろ
お掃除 おわりました。

春色のお花 飾りました。

お昼ごはんもまだこれからなのですけど、 ようやく青空見上げてほっとひと息ついています。。

 ***

振り返れば 2022 おだやかな年でした。 夏のあいだの医療関係の手続きしてた時の果てしなさは いったいいつ終わるんだろう、、というくらい大変だったのですけど、 やるべきことをやって 結果が出て、 これからの日々を生きていく心づもりが整った、 という事かな。。

今の気持ちはとても穏やか…


ちょうど今知りましたが ジョナサン・ノットさん指揮 東京交響楽団の第九、 ニコ生で明日まで視られるのですって♪ カメラ40台って、、すごい!!

これからお台所の準備が待っていますが、 なんとか観てみたいと思います。。 美味しいものいっぱい用意して(それまでが腕の見せどころ~~ がんばる) 
年末年始の歓喜の演奏会のかずかず 楽しみたいな。






今年もありがとうございました


、、感染者 けっして減ってないのでくれぐれもお気をつけてね



たくさんの愛をおくります ♡


… よいお年を 

Changes Far Away...

2022-12-28 | MUSICにまつわるあれこれ
今年も残すは今日ふくめて4日…

、、毎朝のBBC radio からは昨日までクリスマスソングをずっと流してくれていましたが、 今朝はすっかり通常運転にもどったようです、、 日本の迎春のあわただしさとはこのあたりは違いますね。。 でもお正月をむかえるこの時期のばたばた感もなんだか好きです…


昨年のコロナからの閉塞感から 今年は終わらない戦争へ… radio を聴く気持ちもいろいろ変化がありましたけど、、 それでも折につけ 音楽には元気をたくさん貰いました♪ 感謝をこめて、 今年わたしに元気をくれた曲 愛してやまない人たちの曲を 年末の左サイドバーにあげてみました。

Suede - She Still Leads Me On (Live - Virgin Radio Sunset Sessions)
今年の私の1曲、、 を選べば まちがいなくこの曲になるでしょう。。 ほんとよく聴きました。 よくライヴ映像も沢山見ました。。 見るたびに笑いだしてしまうのは何故だろう… 笑
ブレットが一生懸命に歌う姿があまりにも愛しくて 素敵で… そしてこのギターリフ。
でも いちばんに心に触れるのはこの歌の歌詞です。 今年は女王さまも天に召されましたが 偉大な女性でしたね。 

、、今年は私も あるたいせつな女性のかたと同じ年齢になりました。。 高校の大先輩でもあり、 かつて沢山の助言を与えてくださった 厳しくも愛ある女性でした。。 今も空から私を導いていてくれるような気がする、、 力を与えてくれるような気がする、、 そういう想いも抱く曲です。

The 1975 - Oh Caroline (Official Video)
今年は彼らの曲もずっと聴いていました。 ライブの映像なども見ても マシュー・ヒーリーの歌の巧さに驚きました。 前にあげていたテイクザットのカヴァーも、 本家よりも素敵に聞こえた。。 この新しいMV、 こんな風に老人になっても素敵に歌っているんじゃないかと思わせてくれます、、 なんかチェット・ベイカーみたい…。 良いバンドになりました。。

Steve Winwood - The Low Spark Of High Heeled Boys (Live Performance 2022)
老人になっても… というわけではありませんが、、(失礼…) スティーヴ・ウィンウッドさんとジャクソン・ブラウンさんは永遠に年をとらないのではないかと思っていましたが、、 ウィンウッドさん すっかり英国の田園地域に住むおじぃちゃんみたいです… 笑 なのに歌声は完璧♪ まだまだずーーっと ずっと 聴いていたい歌声です。

Willie Nelson - Angel Flying Too Close to the Ground (Live at Budokan, Tokyo 2/23/1984)
今年の映像ではありませんが、、 今年公開された武道館でのライヴ映像。
この曲はチャーリーと パティ・グリフィンさんが教えてくれた曲です。 傷ついた天使のあなたへ…。。 聴くたびに胸がいっぱいになる歌。 ウィリー・ネルソンさんのギターさばきも素晴らしいです。

Doyle Bramhall II & Charlie Sexton (Arc Angels) San Antonio TX
そのチャーリー・セクストンさんとドイル・ブラムホール II からなる Arc Angels は、 今年ちゃっかりリユニオンライヴをやっていました。。 オフィシャル映像ではありませんが、、お許しを。。
チャーリーのこの嬉しそうな顔!! ドイルも来春、 またクラプトンさんのツアーで日本に来ますが(武道館で6公演くらいするのね…) クラプトンさんの横ではこんな演奏は見ることができません。。 これこそ永遠のバンドメイト、 永遠の友同士のギタープレイ。

吉井和哉 My Foolish Heart (Remastered 2013)
吉井さんの曲ではこれの前に「SNOW」という曲を載せていましたが SNOWで聴けるギターの音色もすごく好きだったんですよね、、 あれはジュリアン・コリエルさん。 
この「My Foolish Heart」のスライドギターも大好きです。 これもジュリアンかな? 、、ギターばかりではなくて この歌は永遠に私を元気づけてくれる歌、、 怯えないで生きること。。 決して逃げ出さず投げ出さず、、 自分の身体と生きること。

THE YELLOW MONKEY – Changes Far Away -2022 Remaster- (Official Audio)
きょうはイエローモンキーのお誕生日(と言ってもいいのかな?) 再集結後に彼らが創った楽曲をもっともっと聴く機会が欲しかったなぁ。。。 
でも (自分自身にとって)これからは《変わる》ことも前向きに受け入れようと 最近思っているのです、、 断捨離をしているのもその気持ちと一緒。 理想の老女(←また言ってる…)になって美しく生きるために。。 なにかが出来なくなっていく事も受け入れよう。 どこかへ行けなくなるかもしれない事も受け入れよう、、 それは仕方ないこと。 一昨年入院した後、 そのとき再手術もあるかも…と言われていたから、 パジャマや着替えを何セットも袋に詰めて、 入院したら家族に持ってきて貰えるようにダンボールに用意して、 それをずっとソファの隣に置いたままで生活していました。 リスクはまだいつでもあるにはあるけど、、(断捨離のおかげでクローゼットが少し空いたので) 入院セットをそろそろ仕舞ってソファ周りを広くして新年を迎えようと昨日お掃除したところ… あ! 自分の話になってしまった…
、、 この曲のエマちゃんの翔け上るギターを はじめて聴いた時、溢れた涙はずっと忘れてません ♡

Joan Armatrading & BBC Concert Orchestra - Already There (Radio 2 House Music)
ジョーン・アーマトレイディングさんの事を知ったのは 今年の4月ごろでしたね。 この素晴らしい歌、、 オフィシャルMVのダンサーさん達の姿もとても素敵で感激しましたが、 このオーケストラとの映像はさっき見つけました。 集まることが出来なくても、 顔を合わせることが出来なくても、 共に… 
ほんとうに勇気をあたえてくれる歌。 すばらしい歌詞。


いろんな力をもらってこれからも…




Do you know you're amazing?




お召し替え…

2022-12-26 | …まつわる日もいろいろ
クリスマスから一夜あけると…

頭のなかは お掃除とお料理とお買い物とお片づけとで大混乱になります、、 



ツリーを仕舞おうと… ふと見れば…


いとしいきみのドレスが 陽に褪せて、、 ピンクの小花模様がなんだかかすんでる、、

なので

ちょっと30分ほどでちくちく縫ってあげました。。 抽斗に眠ってた〇〇とかで…



(ほぼ40年くらい一緒にいる子です
 縫い目が見えてるあたりが 雑ぅ… 笑)




もうすぐ きみの年がくるよ ♡



Sweet & Sweet Christmas Time ...

2022-12-24 | …まつわる日もいろいろ
きのうは今年最後の通院日

師走の街は電車のなかも駅も通りも いつもよりとても混雑していました。。

病院からの帰り、 お買い物がしたくてタクシーに乗り、、 暖かい車内にほっとひと心地… 
大寒波が来ているという事でしたが 車のなかから見る街は 陽射しがキラキラ輝いていて 空が青くて、、 さっきまで沢山の人と擦れ違って ぶつかりそうになって歩いていたのが嘘みたいに、、 高層ビルを見上げて 走る 走る…

このままずっと車に乗って 三浦半島あたりまで行ってしまいたい気持ちでした… 

 ***

この12月は 毎日のようにお菓子をいただくのです、、 
ずっと前になにかのポイント交換で注文しておいたお菓子が届いたり、 職場でたくさん頂いたのを持ち帰ったり、、 コロナの行動制限がなくなって、 出張や来客が増えたってことなんですね。。 それと 今まで旅行を我慢していた若い子たちが どこかへお出かけしてはお土産をくださる、、 

食べきれないくらい… 笑

スイーツは 朝の珈琲タイムだけ、 という習慣なので 日々溜まってしまったお菓子がこんなに。。 加えて昨日 私がどうしても食べたかったのを買って来て、、 さらに職場からマカロンのお持ち帰りもあり、、 




Sweet & Sweet ... ♡



おいしいものをいただいて笑顔になれる


それは簡単なことのようで ほんとは簡単じゃない…


今年も奇跡をありがとう…



Wish you a Merry Christmas ...☆彡

ミステリと純文学をつなぐ 土地と家族の物語:今年読んだ本の中から

2022-12-14 | 文学にまつわるあれこれ(鴉の破れ窓)
今年も残りあと半月ですね。 
去年から今年にかけて わりと沢山の読書ができたと思います。 そのわりには日々の読書記はあんまり多く書けていなかったみたい…

一冊を読み終えるとつい次の本を、と気持ちがそっちに向かってしまい… 読書記を書く時間がとれなくなってしまって。。
今年読んだ本のなかから、(新作ばかりではありませんが) 読んで良かったといま思い返せる本を、 フォトと一緒に挙げてみますね。。

つねづね、、 読書をするとき私は、 その土地 その国 その時代に生きる人間の背景がきちんと描かれているかどうか、というのが読みたい選択の基準になったりします。 以前、ヨハン・テオリンさんの四部作について書いたときに(>>)、 「人間はその個人が生まれた限られた時間の中だけで生きているのではなくて、 その土地の長い歴史、 地域性、 自然環境、 そういうものの中で 人と人との関係性がつくられていって、 怖ろしい事件もそうした固有の歴史の中で起こるのだ」 と書きましたが、そのようなこと。。
犯人への謎解きの面白さやどんでん返し、というのは読書の興味の一側面であって、 やっぱり人間の物語が読みたいと思っているのです。


近年、純文学とミステリの垣根はあいまいになってきている気がします。 人間の行為はつねにミステリアスなものだし、 謎や罪を持たない人などいないですものね。 だからここに挙げるのも ジャンルには縛られない作品です。

 ***


『川は静かに流れ』ジョン・ハート著 東野さやか・訳 2009年 ハヤカワミステリ文庫

ジョン・ハート作品は初めてです。 ノースカロライナの農場を舞台にした家族の物語。過去の犯罪の嫌疑で故郷を去った青年、農場主の父と義理の母や義理の兄弟との複雑な感情のやりとり。 美しく成長した農場の使用人の娘との再会。。 家族への想い、家族との亀裂、その感情はとても丁寧に描かれています。 
青年の帰還のうわさが地域にひろまる間もなく、新たな殺人事件が・・・

家族を守る、 家族の結束、 《父》という存在の大きさ、、 などアメリカ人がもっとも重視するテーマなのだろうな、と思いつつ読みました。 ほのかな恋の波乱も注目されました。 が、〈男のなかの男〉のように描かれている農場主と、彼に義理を尽くす使用人の想いなどが、なぜそこまで… とよく実感できない部分もあり、 それが古き西部劇的な土壌も感じさせ。。 
謎解き的にはラストはすこし無理やり感もあったかな…



『鉄の絆』ロバート・ゴダード著 越前敏弥・訳 1999年 創元推理文庫

名匠ロバート・ゴダードが描くのは、高名な詩人を祖父に持つ英国の一家の物語。 1930年代のスペイン内戦に義勇兵として身を投じて命を落とした詩人、という設定は、時代が百年違うけれども まるでバイロン卿を想わせる設定で、 バイロン好きには興味津々。
その若く死んだ詩人の遺したものや、前世代が築いた財産で一家の生計が維持できるというのだから、 それなりの階級の暮らしが描かれます。

スペイン内戦時代のその祖父(詩人)の手紙や、当時の義勇兵仲間の生き残りなども登場して、 物語の鍵は 金なのか 名誉なのか 欲望か 正義か、、 歴史学者でもあるゴダードゆえ 話のスケールが大きいです。 過去の出来事が現代の犯罪の謎と結びつく経緯も、ゴダードならでは手腕、、

唯一もったいないのは、、現代に生きる末裔たちの行動がなんだか情けないところがいっぱいあって(タイトルが「鉄の絆」なんだよ、一族のきみたち…)、、 読み進むほどに、物語冒頭で殺されてしまうおばあ様の死が気の毒に思えてしまったのでした。。



『われら闇より天を見る』クリス・ウィタカー著 鈴木恵・訳 2022年 早川書房

この作品、、今こんなに大絶賛されているとは知りませんでした。 最近の書評や本の広告などに必ず取り上げられていて驚いています。

舞台はカリフォルニアの断崖沿いの町。 30年前にひとりの少女が事故死し、少女を轢いた同級生の少年が刑務所へ送られた。その事件が仲間を引き裂き、その後の人生を狂わせた。
30年後、少年のひとりは警察官になり、、 事故死した少女の姉はアルコール依存と貧しさの中、ふたりの子供を育てている、、

貧困、アルコール、家族の死、ヤングケアラー、偏見、孤独に孤立、、 これでもかと押し寄せてくる困難のなかで必死に母と弟を守ろうとする13歳の少女の健気さ、、折れまいとするプライドが痛ましいほど際立って描かれています。 たしかに感動的な物語です。 救われて欲しいと願わずにいられない… けれども 家族を守るのは自分しかいない…その思いの強さが思い込みの強さとなって 物語をゆがめている、と私には思えて、、

過去に縛られている警官も、 友への想いの強さ、生まれ育った土地への思い入れの強さ… それが警官として見なければならない部分を見えなくし、 事件をさらに困難なものにしている。。 その歪みを人間の悲しさと言えばそうではあるけれどもなんだか痛ましい… 小説としてのカタルシスを強めようという著者の思いの強さに思えてしまうのは 私の読みが穿ったものだからでしょうか…

著者さんの影響を受けた作家に コーマック・マッカシーやジョン・ハートの名前があとがきに挙げられていましたが、、 舞台設定や登場人物の会話など、、影響は強く感じました。    



『漆黒の森』 ペトラ・ブッシュ著 酒寄進一・訳 2015年 創元推理文庫

舞台はドイツ、黒い森に隣する小村。 取材のためその森をトレッキングし、遺体を発見してしまったジャーナリストの女性。 彼女は、(半ば仕事のネタとして)捜査担当刑事に強引につきまとう形で真相究明にかかわっていく。

よそ者に対する住民の閉鎖的な反応や、村の隣人同士の濃密なつながりゆえのねじれた憶測や、 被害女性の一家の なにかしら闇を秘めた家族ひとりひとりの描写や、、たいへん筆力のある書き手だと思います。 過去に起こった事件の真相もふくめて、謎は最後のさいごまでわからないし、ミステリーの構成としては十分に読み応えあるダークミステリー。

ただ、、 登場人物のある精神的な特殊性をクローズアップして それに対する刑事の認識や言葉の使い方が(それが事件に必要とはいえ) 違和感をおぼえました。 
最近のミステリ小説で、 コミュニケーションに障害のある人などを事件のキーパーソンとして、、その人の特殊性や人と違うことへの偏見を 犯人さがしの目くらましとして設定することがわりとみられます。 物語上、有効な効果をもたらす場合もあるけれど、 精神や身体の特殊性に余りにも頼ったミステリには配慮が必要かと…



『忘れたとは言わせない』 トーヴェ・アルステルダール著 染田屋茂・訳 2022年 角川書店

スウェーデンのちいさな町、、湖や森の美しい自然はあるけれども産業はさびれてしまった感じのする町が舞台。 23年前に起きたふたりの少女の失踪事件。 犯人として当時まだ14歳だった少年に容疑がかけられ、 彼は少女の殺害を自白する、、 しかし遺体は見つからなかった。
それから23年、、 あらたに起きた殺人事件を捜査する途上で、 過去の事件のまだ解けていない謎が次第に浮かび上がってくる…

事件を担当する新米の警察官補(そういう職種があるんですね…)の女性エイラのキャラクターが良いです。 認知症の母と社会性のない兄を持つしんどさの一方で、ひたむきに捜査にあたる姿、 ひとりの若き女性としての心情、、 ぜんぜんエキセントリックなところのない自然さがかえってリアリティを感じます。 

事件に関係するのがみな同郷の幼なじみや顔見知りや、、 それゆえの感情の深さや難しさも丁寧に描き込んでいて、 ささいな登場人物でもその人の背景を感じさせるような書き方です。 先の『漆黒の森』で、人間の特殊性への偏見について挙げましたが、、この作品にもそういった問題は描かれていて、、 けれどもこの作品では、人間の偏見・先入観がものを見えなくしてしまっていることに重点をおき、問題視しています。 

この作家さんについては、 以前に『海岸の女たち』という作品の読書記を書きました(>>) あの作品も人物造形や人となりを表す描写にとても優れていました。 また、人間の偏見、読者である私の偏見へメスを突きつける作品でもありました。 どちらの作品が、と言われたら私は『海岸の女たち』のほうに当初は強烈なインパクトを感じたのですが、 どちらもぜひ読んでみて欲しいです。
『忘れたとは言わせない』の主人公の女性やその家族の人生、これからの行く末、、それでよかったのだろうかという未解決の部分もふくめて、余韻も残す良い作品だと思います。 

この本はシリーズ化されるそうで、、 中央から応援に派遣された(ワケありの感のある)ベテラン刑事も(次回も登場する…?)、、 次作の展開が楽しみです。



『光を灯す男たち』 エマ・ストーネクス著 小川高義・訳 2022年 新潮クレストブックス

推理小説ではありませんが…
英国 孤島の灯台に駐在する3人の灯台守が一夜にして姿を消した。 灯台は施錠され、船が近づいた形跡もなかった。。 本当にあったというこの未解決の事件を下敷きにして書かれたフィクション。

物語は 3人の灯台守失踪から20年が経ち、 その遺された妻たちへ事件の真相を聞こうとジャーナリストが訪れる、、 という設定で始まります。 妻たちひとりひとりの証言と、 当時の灯台守の男たちの描写が交互にあらわれ、、 なにが起こっていたのかが次第に見えてくる、という書き方になっています。

私は、この小説のタイトルから 灯台守の男たちの物語であると思って読んだのですが、 じつはこれは女たちの物語でした。 灯台守が灯台に駐在している期間、 残された妻たちは近くの海岸の社宅で暮らすのですが、 そのような離ればなれの家族の心に生まれてくる感情の齟齬、、 空白の時間がもたらすさまざまな想像、 それが確信へ、、 やがて起こる悲劇…
(事実をもとにして)よくこれだけのドラマを創り上げたなぁ… と最後まで引き込まれました、、

、、私が勝手に 灯台守という職業をする人は 宇宙飛行士とおなじくらい精神的に強い人たちだろうと思い込んでいるせいかもしれませんが、、 灯台守の男たち相互、 そして妻たちの関係が、 どんどん複雑にもつれていき、 疑心暗鬼になっていく様子が (そういうものだろうか…)と 心苦しく悩ましく、、

灯台に閉じ籠って働くこと、 海に閉ざされていることの魔力のようなものが、 もう少し迫ってくれば… 、、そこが鍵になったはず…



『マリアが語り遺したこと』コルム・トビーン著  栩木伸明・訳 2014年 新潮クレストブックス

この本を家族のミステリ、 家族の物語、という中に加えて良いかどうかわかりませんが…
イエスの存在、イエスのなされた奇蹟や復活、、 それは永遠のミステリでもありますし、、 何よりこの物語は、 聖母マリア様としてではなく、ただひとりの母マリアという立場から息子を語った 〈家族の物語〉なのです。

この本もタイトルと美しい表紙を見て選んだ本です。 そのために読んでいる間は、聖母マリアの言葉とはぜんぜん思えない内容に (いったいこれは何なのだろう…)とはじめは理解不能、、感情移入もできない状態でした。 、、でも、 時間が経ってからだんだん だんだん、、 考えてみれば母マリアは初めから宗教画に描かれたような聖人だったのだろうか… 奇跡を起こすような子を産むと自覚していたのだろうか… (天使のお告げなどの絵画もありますけれど)、、 ひとりの母というマリアを考えてみるのもありかもしれないと思い始めました。

ひとりの子供を育てた母親、、 子供の頃はすなおで良く父の仕事を手伝った孝行息子だったのに、 いつの頃からか母にはよくわからない思想をもち、 家を出ていき、 人々を集めて教えをひろめて歩く。 その集団は民衆を危険な考えに導くとして役人から睨まれるようになっていく、、 そのように変貌していく息子を理解できず、 ともに暮らすことのできない苦しみを語る母の物語。 ここではすでにイエスは処刑されていて、老いたマリアから信徒たちがイエスの話を聞こうとしています。

「カナの婚礼」や「ラザロの復活」などの場面も、それを母の立場で見た記憶として語られ、 それは奇跡とはまったく異なっています。。 キリスト教圏の読者からしたら衝撃的でしょうし、このようなマリア像は受け入れ難いだろうと思います。 でも、自分の育てた息子がいつのまにか家を棄て、 人々を導く教祖になっていたとしたら… とマリアの複雑な心情と 現代のさまざまなことに想いを巡らせてしまいました。 いつかまた読み返したい本です。

 ***

以上7作のなかで、 どれかをお薦めするとしたら… 

ん~~、、難しいですね、、 それぞれ国も 地域性も いろいろ異なった作品が読めて 選ぶのは難しい それぞれが力作。 でも、 トーヴェ・アルステルダールさんの『忘れたとは言わせない』 の今後の展開への期待もこめて、 こちらとしましょうか。


今年の読書の最大の収穫は…

(新作ではないけれど) 2月に読書記を載せた マイケル・オンダーチェ著『アニルの亡霊』です(>>)。 時間が経っても、、 時間が経つほどに、、 深く 美しく 彼らのことが想い出されます… アニルのこと、 サラスとガミニの兄弟のこと、 妻を喪ったアーナンダのこと、、 サラスとガミニが愛したひとのこと、、 そういえばアニルの家族のことも書かれていました、、 
『アニルの亡霊』も内戦下の政府による虐殺の真相を探るミステリー要素のある作品でしたし、 『戦下の淡き光』や『ディビザデロ通り』など、 マイケル・オンダーチェさんの作品にはみな 謎を秘めたミステリ要素がかならずありますね。 ほんとうに純文学作品とエンターテインメントのミステリー小説の境界は狭まってきている気がします。。

『アニルの亡霊』、、(読んでいた間はつらく悲しかったけれど) 思い返すほどに、 これは愛するひとへの想い、 自分たちが生きているこの土地と暮らしへの想い、、 その美しさが描かれた物語だったことを感じます。

今年のブッカー賞は マイケル・オンダーチェと同じ スリランカ内戦を描いた シェハン・カルナティラカさんの小説が選ばれたそうです。 『アニルの亡霊』の時代の内戦は終わりましたが、スリランカの国内はいまも混乱したままです。 そして世界の戦争は終わりが見えない…

『アニルの亡霊』がいま絶版なんてとても残念。。 もっともっと多くの人に読まれて欲しい、、 私が今年この小説に出会えたように。。


最後に、、 今年もたくさんの国の本を翻訳してくださった訳者さんたちに 心からの感謝を届けたいです。 訳者さん ありがとうございます‼  来年もまた 新しい翻訳作品と出会えることを楽しみにしています。


ロバート・ゴダード 読書記録 『謀略の都、灰色の密命、宿命の地 1919年三部作』>>
  (↑これに続く 1924年作品は書かれたのかしら… 翻訳されるといいなぁ)
ロバート・ゴダード 『リオノーラの肖像』>>
ロバート・ゴダード 『一瞬の光のなかで』>>

マイケル・オンダーチェ 読書記録 『ディビザデロ通り』>>
マイケル・オンダーチェ 『イギリス人の患者』と『ライオンの皮をまとって』>>
マイケル・オンダーチェ 『戦下の淡き光』>>

明日のために…

2022-12-12 | …まつわる日もいろいろ
今日はワクチン接種に行って来ました。 何回目? … 5回目か、、

前回、大きく内出血してしまったので(血液サラサラお薬のんでるからかな…) 今度は右肩に打ちました。 明日になったらだんだん痛くなってくるのかな…

 ***

今年の漢字、、 私の漢字、、 今年は「整」です。 おととしは「在」、、 去年は「鍛」 でした。
、、ことしも身体に関係する漢字です。

毎日のトレーニングで身体を整える。 去年は筋肉をつけて出来るだけ体重も元にもどそうと 「鍛」、、 そのおかげで仕事をしていた頃の体重にほぼ戻り、、

今年は維持するために毎日のトレーニング。 それでも軟弱なこの身体、、 あっちこっち なにかと不調なところが出てくるので ととのえる。。 骨格の位置も、内臓の位置も、、 ととのえる。 時にはそれでやっと動ける日もある。。

そして今年は、 これからの人生のために 生活を整える。 身体がもっとキツくなったらそれこそ片付けなど出来なくなるから、 断捨離を始めて、 溜まったものも、集めたものも、学んだものも、、 思い出も、、 整理整頓。。 これはまだまだ まだまだ終わらないけど…

「整」の字の意味は 「正しく 束ねて まとめること」のようです。。 身体も 暮らしも 正しく束ねて、 明日を 美しく生きるために… 

(理想はまだまだ遠いけれど…)

明日の微笑みの為に…

明日も 

そのまたつぎの明日のために…


 ***

今年の漢字は 「戦」でしたね。 、、ほんと みんな戦ってる、、 願いのために、、 理想のために、、 明日を笑うために、、 明日を 生きるために。。


たたかうことは消耗します

くじけそうになります

苦しさもせつなさも 心に 積もっていきます


そんなときは 息ととのえて



心の位置を正しく、、ね


そしてまた歩きだす。  





副反応が出るかもしれないから 今、ビーフシチュー煮込んでいます。。


明日のために…


美味しくなあれ

 

書店とカフェは街の必需品…出会いにも、、:『赤いモレスキンの女』アントワーヌ・ローラン著

2022-12-06 | 文学にまつわるあれこれ(ほんの話)
パトリック・モディアノとアントニオ・タブッキの本をまとめて読んでいたのは、 昨年の夏から今年の夏のこと、、 失われた過去、 消えた女、、 追憶の物語。。

そんな私が この本に行き着いたのは必然、と言えます…ね

前々回 精霊たちに《忘却》を求めて拒否されたバイロンの詩劇のこと、 ちょっと書きましたが、 忘却がかなわないからこそノスタルジーに身を焦がし 想い続ける、、 そのことで生まれるポエジー、、 まさにそんな物語。



『赤いモレスキンの女』アントワーヌ・ローラン著 吉田洋之・訳 新潮クレストブックス 2020年 (原題は La femme au carnet rouge 2014年)

とてもお洒落な素敵な物語です。 そして 狡い物語です 笑。 ずるい、というのはタイトルもそう、、 原題どおりなら 赤いノートの女。。 クレストブックスの中から私がこの本を《読んでみたいリスト》に当時加えたのも、 タイトルのモレスキンがぱっと心に引っ掛かったから。。 赤いノートと 赤いモレスキンでは すでにそこからして《物語》が付加されています、よね。。

そんな意地悪な指摘はどうでも良いです。。 どうでも良いついでに、 この本の《訳者あとがき》は、 あまりにも多く本文の情報を含んでいるので、 読む前にあとがきを読むのはやめましょう。 蛇足ながら。


物語の舞台はパリ。 男が赤いモレスキンの手帳を拾う… だったか、 赤いモレスキンの入ったカバンを拾う… だったかな。。 読む前の情報はこれくらいで良いのです。 さて男はそのあとどうするのでしょう…? モレスキンの手帳は開かずにはいられないでしょうね、、 そのあとは…? 

 ***

この物語はパリの街でこそイメージが拡がり、 とても映像的でだれもが憧れるような、、 読んでいる間じゅう まるで映画を観ているような気分が味わえます。 

パリの街には行ったこともありませんけれど とてもたくさんの個性的な書店が街区ごとに存在しているのでしょうね。。 それと同時に 通りにテーブルを並べたカフェも あちこちにあるのでしょうね。 それらの様子は パトリック・モディアノさんの読書でもたくさん心に刻まれました。

最初に 《狡い》と書いてしまいましたが、、 この《失われたもの》と《もとめる者》とを結びつける素敵にノスタルジックな物語は、 ほんとうに良く出来ているし、 予測できないワクワクやフェイントもじょうずに仕掛けられた上質な作品だけれど、、 あまりにパトリック・モディアノ(やアントニオ・タブッキ)という作家の持つ《物語性》に頼ってしまっている、 ということ かな…

読みながら、 (すてきにこじゃれた大人のおとぎ話では認めてあげませんわよ…)と 意地悪に思っていました。。 だって、 パトリック・モディアノやアントニオ・タブッキは、 決して(すてきにこじゃれた物語)なんかではありませんもの。。 彼らの本が読後に残す《洞穴》のような、、 胸をえぐるもの、、 偉大な作家になり得るか否かは そこの辺りにあるんじゃないかな… なんて、、 これもこの物語には関係のない事デス。。

この本は現代フランス小説の良い読書案内にもなってくれて、、 この本のおかげで何人かの新しい作家さんの名を知りました(フランス文学あまり知らないので…) そうやって読書のあらたな出会いを与えて下さること、、 それは著者アントワーヌ・ローランさんの意図にもきっと適っているいることでしょう。。

本文で言及されている パトリック・モディアノさんの『夜半の事故』という作品や、 アントニオ・タブッキの『可能性のノスタルジー』が、 ぜひとも邦訳されることも期待しています。 

 ***

1月のパリって寒いですよね…  寒いなかでも 通りに出したテーブルで食事したり お茶を飲んたりするのでしょうね。。

東京の街にもたくさんカフェはありますが、 カウンターでメニューから注文して受け取るというスタイルは 私にとってのカフェじゃないんです。 やっぱりパリのようにウェイターが注文を聞きに来て、 それで珈琲を運んできて欲しい。。 でも ナポリタンやハンバーグのあるいわゆる純喫茶も それもカフェじゃないんです、、 なかなかむずかしい。。

この本には書店の風景も登場しますが、、 コロナ禍になって 日本の本屋さんもどんどん厳しい状況になってしまっていますね、、 私も(疾患があるゆえ)すっかり足が遠のいてしまい、 申し訳ない限りなのですが…

味わいのある書店とカフェは その街の文化です。 音楽や芸術と同じように、 無くてはならないもの。。


街の書店に立ち寄って、、 近くのカフェに腰をおろして、、 


かすかなざわめきと 通りを行き交うひとの姿にときおり目をやりながら、、



(夏からすーっと こんなカフェへの憧れを綴ってますね…)



師走のひとときにも 良い読書と くつろぎを。。



パトリック・モディアノに関する過去ログ>>
アントニオ・タブッキに関する過去ログ>>

美味しい12月へ…

2022-12-02 | …まつわる日もいろいろ
12月になりました。 というか、、 なっていました。

今週の月曜日にコンサートの記憶をしたためて、、 そのあとから急に具合が悪くなり、、 すわ 感染か? と簡易キットで検査したものの反応は出ず、、 でも丸々二昼夜うごけませんでした。。。 

なんだったんだろ… 頭痛がひどくて胃腸が働かないのでほとんど何も食べられず、、

そうこうしているうちに12月になっていました。 昨日あたりから大丈夫になってきました。

 ***


 六番地に着くと、目を上げて、常連客のメルリエ婦人が窓を開けているかどうか確認した。 婦人は今は亡き女優マルグリット・モレノに驚くほどよく似た年配の大読書家でいつも夜明け方に起きていた。 ルテリエさん、もし私が窓を開けていなかったら、死んでいるか、死につつあるっていうことなんですよ、婦人はある日そう言った…(略)
 …六番地は問題なし。 よろい戸はちゃんと開いていた。


つい今しがた読んでいた箇所にこんな一文があって、、 あぁこういうの理想なんだけどな、、と思っていました。 パリのアパルトマンの上階に住んでいる老女。 いきつけの書店員さんやカフェの主人とかが 窓を見上げて生存確認をしてくれる… 元気なら窓辺で珈琲のみながらそっと手を振りかえす…  

こういう老女をめざすには、 東京ならたぶん神楽坂あたりのあの坂道沿いのアパートなんかで暮らしているのが良いだろうな、、 なんて空想したこともありました。。 笑 なかなか神楽坂には住めませんけどね…

、、 なんてしょうもないことを言ってないで、 ちょっと減ってしまった体重をもとに戻すべく、 12月はしっかり美味しいものを食べて 健康的に暮らしましょう。 11月は予定通りに音楽の月を愉しめましたから。。


引用の物語については 読み終わったらまた…



どうぞ よい週末を



ボナペティ…