星のひとかけ

文学、音楽、アート、、etc.
好きなもののこと すこしずつ…

この街は、解放されたよ…

2024-04-30 | …まつわる日もいろいろ
前回のフォト、 自分で見てもホラーなので m(_ _)m 消そうかと思って、、、


でも 今朝、 なぜか(何故かは自分ではわかっているけど…)ものすごく、 どうしても、 このMVが見たくなって…
 Phosphorescent - Song For Zula

、、 そしたら Phosphorescent の新しいアルバムが今月出たのだと知りました。 嬉しい! また妖精さんが知らせてくれました… ありがと。
 Phosphorescent - Revelator (Official Music Video)

いまの自分にも なにか感じるところのある曲のように思う… 



今日はこれから病院。 お薬もらいに行くの 先延ばしにしてたので残りがヤバい。。 Phosphorescent の他の楽曲たちは 帰ってきてから聴こう… ゆっくり珈琲のみながら…


ゴールデンウィークの残り



愉しんでくださいね。



またね


愛の底地から

2024-04-28 | …まつわる日もいろいろ
4年前のこれよりも…






こっちのほうが ずっといいよね…








夢の実現には 時間がかかるけど…




愛のそこぢから ♡



バルコニーから 空見上げて…

2024-04-19 | 文学にまつわるあれこれ(ほんの話)
雲ひとつない青空。。 良いお天気です。

2月に、 エルザ・トリオレの小説『ルナ=パーク』については またの機会に… と書いてからそのままになってしまっています。。 今日も『ルナ=パーク』の読書記とは言えないのですが、、 少しだけ…




『ルナ=パーク』の内容をごく簡単に紹介すると、、 
映画監督ジュスタンは作品を撮り終えて 次回作までのあいだの休養のつもりで空き家になっている館を借りる。 以前そこに住んでいた人の生活のあとがそのまま残っている館。 ジュスタンはその家のもと主の読書室の本を開いたり、 書き物机のなかを覗いたりしているうちに、 もと主への関心が芽生えてくる。 そしてある日、 この館の主への沢山のラブレターを見つける。 ジュスタンは誘惑にさからえず 手紙を少しずつ紐解いていき、 ラブレターを盗み読むことによって この館の主だった女性ブランシュに次第に魅了されていく・・・

小説は べつべつの7人の男たちからのラブレターと、 ジュスタンがこの館の周辺で出会う奇妙な人物らの描写などで進んでいくのですが、 なかなかわかりにくい小説です。 エルザ・トリオレがこの小説によって何を書こうとしたのか、、 その辺りを考えていくととってもいろいろな読みが出来そうな、、 物語も謎めいていて、 ときにシュールで、、

なので そのへんのことは置いて、 ブランシュへのラブレターから判って来るのは(以下ネタバレになってしまいますが)、、 彼女は女性パイロットであり、 さらに宇宙飛行士も目指しているらしい、、 ということ。 

『ルナ=パーク』は1959年の作品。 ブランシュが宇宙飛行士として月を目指している、、 というのは ソ連の《スプートニク計画》が進められていたまさにその時代、、 米ソの有人月旅行計画が進められていくのは60年代に入ってからなので、 エルザ・トリオレが『ルナ=パーク』で月をめざす女性宇宙飛行士を登場させるというのは、 とっても先進的な視点だったのかもしれません。

そんな読書をしたのち、、 また? と言われてしまうかもしれないのですが、 前にもたびたび書きました片山廣子さんの随筆集『ともしい日の記念』が発売されたのが2月。。 それを読んでいてそのなかに、、

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 「飛行機がまゐりました。」
  茶の間から若い女中が教へに来てくれた。



これは 『ともしい日の記念』の四月の章、 「かなしみの後に」という随筆の後半に出てくる文章。。 「かなしみの後に」は青空文庫でも公開されていないので内容は控えますが、 1920年の3月から5月までの思い出がつづられています。

その片山さんの「かなしみの後に」、、 「飛行機がまゐりました。」

読んだとき、 いったい何のことだろう… と思いました。 若い女中さんのこの言葉はまるで 「タクシーがまいりました」と呼びに来ているみたいで、、 飛行機に乗るの…? どこから…? なんて、 一瞬考えてしまったのでした。 大正9年のことなのに、、

それは 続きを読むとわかるのですが、 片山さんは女中さんに呼ばれて、 庭へ降り立ち 東京上空を飛んでくる飛行機を見上げたのでした。。

 ***

かなしみの後で見上げた飛行機。。 この随筆の印象があまりに鮮烈だったもので、 このとき片山さんの空を飛んでいた飛行機はどんなだったのだろう… と検索しました(本文の注釈も参考にして…)

それは 1920年5月末日、 ローマから東京へ飛んできたアルトゥーロ・フェラーリンの飛行機でした(>>wiki アルトゥーロ・フェラーリン)

wikipedia の記述からわかりますが、 きっと大々的に新聞に載ったりして、 その日 東京へ飛行機が飛んでくることは大きな話題になっていたのでしょうね。 それで若い女中さんは 今か今かと気にかけていて、 それでエンジン音がきっと聞こえてきて 「飛行機がまゐりました。」 とあわてて奥様を呼びに行ったのでしょうね。

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エルザ・トリオレの『ルナ=パーク』の女性飛行士ブランシュは、、(これもネタバレごめんなさい…) 長距離飛行に出たのち消息を絶ちます。 おそらく砂漠のどこかで…

上記の片山さんの随筆に出てくる長距離飛行のことなど検索しているうちに、 アメリア・イアハートという女性パイロットの記述に辿り着きました… この方のことは全然存じませんでした。。 女性として初の大西洋単独横断飛行をした人。 そして 赤道上世界一周飛行の挑戦中に消息を絶った人…

ウィキに載っていたポートレートにも魅了されました。 かっこいい美しい人(>>アメリア・イアハート

エルザ・トリオレが『ルナ=パーク』の女性飛行士ブランシュを創造した背景には  アメリア・イアハートの存在などもきっとあったのでしょう。 

アメリア・イアハートについては いろんな本も出ていて、 その謎の失踪についても日本軍に捕らえられただとかいろいろな憶測などもあったのだそうです。 『アメリア 永遠の翼』という映画にもなっていて、 出演がヒラリー・スワンクとリチャード・ギアですって。。 想像できそう、、 ヒラリ・スワンクはそっくりな気がします。

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片山廣子さんのかなしみの空を飛んだ飛行機…

第二次大戦前夜の南太平洋に消えたアメリア・イヤーハート…

そして、 月を夢見つつ、 現実世界の《戦争》という渦中に消えていった『ルナ=パーク』のブランシュ…


現代、、
ふたたび人類は月をめざすのだそうですね。。 2026年には 日本人初の月面着陸も計画されているのだとか… 夢のような、、 その一方で、 月の資源獲得競争みたいな覇権争いも見え隠れしますが。。


GWにかけてのいくつかのイベントを無事に乗り切ったら(これも私にとってはおおきな冒険のようなもの)、、 アメリア・イヤーハートに関する本をいくつか読んでみたいと思っています。 先日、 エスクァイアのサイトにこんな記事も載っていたようです⤵
  アメリア・イアハート失踪の謎、ついに終止符か|無人潜水機の画像が話題に>>.esquire.com


失踪の謎にも興味はないわけではないけれど、、 彼女がどんなことを考えて、 感じて、 空を飛んでいたのかを読んでみたいです。




青空 見上げて…



きょうも あしたも




元気でありますように…

若葉のころ

2024-04-15 | 文学にまつわるあれこれ(林檎の小道)
週末、 先週行った桜の下を歩いてみましたら 薄紅の花びらたちは すっかり若葉に変わっていました。

街は色とりどりのツツジやサツキの季節になりつつあります。 きょうはいずこも夏日になるとか… 

 ***

みずみずしい新緑と木洩れ日のもとを歩いていたら、、 遠い日のことを想い出しました。 …というか、 このところ たびたび思い出していた、、 あなたのこと。。

新緑のもとを歩いていて 脳裡にきこえてきたのは 「若葉のころ」という歌。 ビージーズが歌って 映画『小さな恋のメロディ』の挿入歌になった歌ですね。 原題が 「First of May」というのだと それはさっき検索して知りました… 笑

この歌を思い出すとき、、 でも思い浮かべるのは『小さな恋のメロディ』ではなくて、 フランコ・ゼフィレッリ監督の映画『ロミオとジュリエット』なのです、、 1968年の映画。 「小さな恋~」のほうは1971年のようですね。

小学生のとき、 田舎の映画館でこのふたつの映画が一緒にリバイバル上映されることになって、 たしか高校生以上の付き添いがあれば観に行って良い、という学校の許可があって、、 それで親友のお姉さんが連れていってくれることに…

記憶がとても鮮明なのは、 その日の、、 まさにその日の写真が残っているから。。 映画に出かける時の バス停で親友と並んで撮った写真。 高校生のお姉さんが撮影してくれた写真。

明るい陽射しの下で 彼女は淡いピンク色の木綿のワンピース、 私はレモンイエローのワンピースに 同じ色のつば広の帽子をかぶって。 、、彼女はちょっとむつかしい顔をしてカメラを見つめている。 私はお姉さんに撮ってもらうので精いっぱいのすまし顔。

彼女は私なぞよりとびきり賢くて 文学少女で たくさんの本を読んでいて、、 お姉さまも学校で有名なくらい優秀で そのうえ美しかった…(撮影してくれたお姉さんの写真が無いのが残念)

映画のことを教えてくれたのも彼女。 観に行く前から『ロミオとジュリエット』の悲恋の物語を話してくれて、 ふたりが仮面舞踏会で出会うことや 眠り薬をつかって恋を成就させようとはかること。。 小学生の自分には彼女のすべてが大人びていて、 彼女が目を輝かせて話してくれるこの映画のすべてが未知の、 初めて知る世界だった…

夢を語り、 夢のような世界を思い描く楽しさを語り、、 小学校の中庭に寝転がっては青空を見上げた。 四つ葉のクローバーを探し、 花冠をつくり、、 スミレの押し花をノートに挟んでくれた…

 ***

小学校卒業と同時に転校して行ってしまった彼女とは 大人になるまでずっと文通をつづけて。。 彼女はとてもとても堅実に、 地元の大学を出て 国家公務員になって、、
いっぽうの私が バンドだのパンクロックだの、、 と(なにを手紙に書いたのか覚えてはいないけど…) そういう私を心配して、、 「お願いだから、 なにかの活動家とかにはならないでね…」なんて手紙で言われたこともあったっけ…

『ロミオとジュリエット』に憧れて、 たくさんの外国文学のファンタジーをじぶんの言葉で私に語ってくれていた彼女が そんな風に生真面目な大人に成長したことを、 すれっからしの私のほうは ほんの少しだけ残念に思ったこともあったけれど、、 それから何十年、、 そして ほとんど半世紀が経つ今、、 


あなたのすべてに感謝しています…




今朝、、 「若葉のころ」を聴きながら、 歌詞をずっと読んでいました。 子供のころに耳で聞いたきり、 ちゃんと歌詞を読んだ事もなかったから。。

歌詞の一行一行 ぜんぶがあの頃の私たちにあてはまる。。



あなたが逝って もう十何度目かの春がきて…




The apple tree that grew for you and me…



あの日 バス停で撮った写真



ふたりの後ろには ちいさな姫りんごの樹があったよね…




きっと今頃は  若葉のころ…





わたしはもう少しここにいるね…


耳と心にもたくさんの花を…

2024-04-08 | MUSICにまつわるあれこれ
先週 左サイドバーの音楽を替えました(PC用) 4月限定で賑やかに♪

週末 ニコ響のタイムシフト見れました。 新年から東響さんロスがつづいていたので嬉しく視聴しました。 藤倉さんの現代音楽も楽しかったです。 オルガ・カーンさんのラフマニノフは情感たっぷり。。 アンコールも素晴らしかった… 慶太楼さんファンタスティックでした。

ノット監督、 12年目終了とともに退任なさるのですね… 名誉指揮者としてずっとまた振っていただきたいなぁ、、 サマーミューザにもいらして欲しいなぁ。。

ここのところ らじるらじるでの聞き逃し放送で音楽プログラムをずっと読書のお供に聴いているのです(たっくさんあって一日中聴いていられるくらい…) それで しばらく忘れていると ARTE CONCERT の新しい映像などUPされてて知らなかったりします…

今、 アラン・ギルバートさん指揮のNDR Elbphilharmonie Orchester の映像が載っています。 イゴール・レヴィットさんがバルトークのピアノ協奏曲を弾いています。 このお二人の組み合わせはなんだかめずらしい気が、、 観てみないと…
Alan Gilbert and Igor LeviKosmos Bartók Festival 2024


それから クシシュトフ・ウルバンスキさんの振る hr交響楽団の新しい動画、、 この曲目は以前 べつの指揮者さんのものをARTE CONCERTで見て とってもびっくりしました、、 ビニール袋とか撒き散らして… ペットボトルを打楽器にして、、 リサイクリング・コンチェルトというのですって。。 演奏技術のすごさには圧倒されましたが 音楽の美にどこまでそのメッセージ性が生かされるのか… 耳と心にたずねてみることにします…
Mayrhofer: Recycling Concerto ∙ hr-Sinfonieorchester ∙ Vivi Vassileva ∙ Krzysztof Urbański

もうひとつ、 東響さんでもコンビで演奏してくださった ヤン・リシエツキさんのピアノで ダラス交響楽団とのコンサート。 ショパンとタコ10です。 ウルバンスキ氏はもちろんですが、 リシエツキ君もまた日本に来て下さらないかしら… 
Chopin & Shostakovich Krzysztof Urbański conducts Jan Lisiecki, piano

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桜が満開ですね。





染井吉野も ほかの桜も まだ少し蕾のものもあって、、 うまくしたら次の週末にも楽しめるかもしれません




野の花も好き…










幻想的な 花の DOME…




なにが 待っているかな…




さあ…



行こう…






The Rolling Stones - Shine A Light - With Bonnie Rait - Live OFFICIAL

Bon Jovi - Legendary (Official Music Video)

Guns N' Roses - Perhaps (Official Music Video)

James Bay - All My Broken Pieces

Bruce Springsteen - Badlands (The Legendary 1979 No Nukes Concerts)

Jackson Browne - The Load-Out / Stay (Live on 2 Meter Sessions)

THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2017

THE YELLOW MONKEY 2024.5.29 10TH ALBUM Sparkle X Release!!!!

読みにくさも味わいのうち…:『壊れた海辺』『シューティング・スター』 ピーター・テンプル著

2024-04-02 | 文学にまつわるあれこれ(鴉の破れ窓)
4月になりました。 桜、咲きました。

予想に反して開花は遅くなりましたが、 冬枯れの色彩だった街に、ふわっと淡く桜色が浮かびあがるのはうれしいものです。 

・・・ ちょっと個人的なことで…。。 先月病院に行ったところ 心臓の検査結果がとっても悪くて、、すこ~し落ち込みました。 これまでじりじりと悪くはなっていたものの 境界領域にとどまっていたのが とうとう悪い領域にはいりこんでしまって、、

そんなに苦しい想いはしてないんだけどな…。。 でも避けられない道のり。。 決してよくはならないから。 これからは毎日が終活の日々… どこまでつづくかは身体次第ね。。 長い長いながーい終活になればいい、、 その日々をちゃんと生きてく。 思い患うことなかれ… 

 ***

春はミステリーの季節。 と勝手に決めているのはワタシです。 目まぐるしい変化の春、 これから毎月コンサートのお出かけもあるし、、 今しばらくは純文学を離れ ミステリー読書の季節がつづきます。

これまでにも沢山書いてきたラーシュ・ケプレル夫妻のヨーナ・リンナ警部シリーズ 第9作が3月に出版されたことも存じております。 でも読みませ~ん、まだ。。
、、前作が肩透かしだったとはいえ、 今度の新刊はサーガが主役になりそうな気配はわかっているので もしももしも余りに恐怖な展開になって最終作へ、、 なんてことになったら、 最終作までまともな気持ちで生きていけ無さそう…(そこまでのこと?) 、、そんな不安(ファンでもある…) 、、なもので、 最終作の出版が決まる頃に満を持して読みたいと思ってます。。

、、 勝手な、ほんとに勝手な願望としては、 ヨーナはサーガに斃されて欲しい… 或はその逆か…(悲痛だけど)。。 お互い以外の、どうでもいいような(←語弊)殺人鬼の手にかかって終える最期なんて許せない… ヨーナも。 サーガも。。
 (…と、 サーガのこと考えるとおかしくなるのでここでやめます…)

 ***

ところで、、
いつから読書の評価に、 「読みやすい」という基準が出てきたんでしょう…

しばしば目にするようになった 「とっても読みやすかったです」 「これは読みやすい本ですか?」 という言葉。。 「読みやすい」って何… ストーリーが単純? 登場人物が少ない? 漢字が少ない? すいすいあっという間に読めるのが良い本? 、、最近よく悩まされています。。

、、まぁ 忙しい時代、 読書などにかける時間も限られ、 読んでみて失敗だったとがっかりするようなムダは極力避けたい気持ちも解らなくは無いですが… 読みやすい、読みにくい、って感想がよくわからない……(ほかに、音楽が 聴きやすい、とか言われるともっと理解不能…) 

、、今回の本は おそらく「読みにくい」本、と見なされるのかな。。 ですが 私には楽しめた読書でした。 構成も、文体も、とても面白いと思って読んだし、 友人にも勧めたら、 やはり 「面白かった」と返って来ました。

作者はオーストラリアの作家、 ピーター・テンプル。 残念ながら2018年にすでに他界されています。

『壊れた海辺』 ピーター・テンプル著  土屋晃・訳  ランダムハウス講談社文庫 2008年 原著は2005年



 舞台はオーストラリア 南端のヴィクトリア州マンローという、海辺のとても小さな町。 主人公は、署員が3人くらいの警察署の署長キャシン。
・・・と、 簡単に紹介文を書いてしまってはこの小説の良さが損なわれてしまいます。 この小説の好いところは なんにも説明がないところ。

キャシンは身体に過去の大きな怪我の後遺症を抱えている刑事。 生まれ故郷に帰り、 廃屋みたいなかつての我が家に暮らしている。 でもその過去がどんなだったのか殆んど説明がない。 登場人物たちも、 いきなり固有名詞が会話に出てくるのだけれど、 それが人の名前なのか 村の名前なのか、 なにか先住民の~~族などの名称なのか、なかなかわからない。 訳注でもあれば、、と思うのだけど、 その説明のなさが作者の個性だろうから注も無い。

読者にとってはまったく不親切な書き方ですすめられる物語ではあるけれども、 読んでいくうちに キャシンの持つ心の寂寞さや、 その土地に住む人々の 何世代にもわたる込み入った人間関係などが見えてくる。

そして ひょんなことからキャシンの家に泊めることになった渡り職人の男と、 なんだかよくわからないけれども キャシンとの間に誠にぶっきらぼうな、でもどこか人間味のある関係が育ってくる。

事件の謎とともに、 この土地の(この土地にあらわれる)人々の謎も一緒に味わいつつ (少しだけロマンスもあり)、、 ラストは少し意外な事件の急展開があって、、 と、 読みにくい割には読後感は 正統派なハードボイルドとして楽しめました。 孤独なもの同士のそっけない会話も時に胸に刺さるものあり…

あとから思うと、 脇役のひとびとの描写はほんの少しずつなのに、 それぞれで別の物語が作れそうな余韻のある背景を備えている、、 そういう描き方ができるところがこの作家さんの力量なのだと思います。

この作品は 2007年の英国推理作家協会賞や 2008年のネッドケリー賞などを受賞しています。


 ***

『シューティング・スター』 ピーター・テンプル著  圭初幸恵・訳  ‎ 柏艪舎 2012年 原著は1999年



 先に『壊れた海辺』を読み、 同じ作家さんのものを、と探したらこちらが見つかりました。 札幌にある出版社さんからの本。

こちらの主人公フランクは (こちらも)過去に何らかのいきさつがあって警察を追われた元刑事で、 その前には軍人としてアフガニスタンにいたという経歴の男。 現在は「交渉人」という問題解決の仕事をなりわいとしている。(が、なぜか園芸コースの学校にも行っている…)

今回の仕事は、 ある巨大同族企業の15歳の孫娘が誘拐され、 その身代金の受け渡しをするためにフランクが雇われたというもの。 一族の長老は、今回の事件を警察にゆだねる気はなく、 身代金とひきかえに孫娘の解放だけを望んでいる。 それだけなら 指定場所へ身代金をはこんで行くだけでフランクの仕事は終わる、、 のだったが…

『壊れた海辺』と比べると、 『シューティング・スター』のほうがスリリングな冒頭に感じられます。 とうぜんのこと、身代金を渡してそれで解決、、 にはならないのですが、、 そこさから先がまた別の意味で読みにくい小説で、、

この巨大同族企業の家族たちがいろいろ登場してくるのですが、 名前がトムとかマークとかパットとか、、 その妻がクリスティーンとかステファニーとか、、 誰が誰やら。。 長男とか、次男とか、、 ん~~ どうでもいいや、と思って読み進めていくと後でまったくわからなくなります。。

今回、 主人公の交渉人フランクの相棒に、 軍人時代の友が出てくるのですが、 二人のやさぐれた会話が面白くてそちらに気を取られてしまい、 (一族の名前のことも作者の企みに違いないと思うのですが)  最後のほんの数ページで急展開、急直下の結末に 眼がテン。。
え…? どういうことだったの…? ほんとうに悪いのは誰…? と、、 すべての伏線を拾っておかないと結局おいてきぼりになります。。(私、いまだにわかっていない部分が…)

願わくば、、 本の作りを一考していただけるともうちょっと読みやすくなると思うのですが、、 頁が開きにくかったり、 何度も前を読んだりいったりきたりしたいのに、それをすると本がバラバラになりそう。。 (できれば一族の家系図もあったらいいな) 

でも、こちらも面白いハードボイルド小説でした。 フランクとその相棒のコンビで続編も出来そうなそんな終わり方だったし、 今回のちょっとしたロマンスのお相手も別の物語が書けそうななかなか魅力的なひとだったし、、 でも、すぱっと今作だけ、という潔い作家さんなのですね。 書かれていない余白は読者のイマジネーションに。。

今作も2000年のネッドケリー賞受賞作です。 

 ***

きょうの2作品は昨年末と年初に読んでいた本。。 いまはまたべつのミステリを読んでいます。 



、、 読みやすい 、、 わかりやすい



、、 聴きやすい



、、 生きやすい




べつにそうでなくても いい…  と思うよ