星のひとかけ

文学、音楽、アート、、etc.
好きなもののこと すこしずつ…

マニエリスムだ。。

2010-09-30 | 文学にまつわるあれこれ(ほんの話)
長年探していた(けど忘れていた)、、おおやちきさんの作品集が 3冊揃った~!

10年近く前には、 あれこれ古書を検索してみてもいっこうに見つからなかったのだけど、 2007年に小学館文庫で復活刊行されたらしく(amazon.co.jp>>)、 今 ちきさんを探すと古書を含めわりとあるんだ、、、素晴らしい! 

しかっし! ちきさんの絵を文庫サイズにしてしまうとは、、、(泣) それは余りにも残念でしょ、、、 というわけで、 私はマーガレットレインボーブックス版の古書にしました。 自分で持っていた『雪割草』に加えて、 『キャンディとチョコボンボン』と、『おじゃまさんリュリュ』です。 上のフォトにはもう1冊、 ウチに残っている最も古い『りぼんデラックス』も写ってます。

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今になって、 自分が生まれた年代がとても幸せだったと気づくことがあります。 大矢さんが『りぼん』に作品を書いていたのは、73~75年のほんの3年ほど。 その中で自分が読んだのは、 後半の5,6作品だけ。。 だけどその5,6作品が、 少女漫画史上に残る傑作だったとは。。。

おおやちきさんは、 一条ゆかりさんの漫画も一時期手伝っていて、 名作『デザイナー』のキャラクター 「柾」は、 ちきさんの画だったというのは今では有名な話。。(wiki>>) 
『デザイナー』の掲載は74年でした。 それはもう貪るように読みました。 、、そのおかげで 75年にはすっかりもう漫画への興味は失ってしまい (満足しつくした感?) 、、 クラスのお友だちが『エースをねらえ』や、 単行本化された『ベルサイユのばら』に夢中になっていく時期には 漫画は全くわからないロック少女になってしまいましたが・・・

一条さんの漫画は今見ても、 端正で美しくて、 少ない台詞が文学的で、、 一条さんの漫画からは文学を学んだと思いますし、 ちきさんの漫画は、 小学生には理解不能なほど、 ゴージャスで、 過剰で、 グラマラスで、 緻密で、 一度見たらトラウマになるような場面がいっぱいで、 なんというか芸術を教えてもらったような気がします。 それもそのはず、、 ちき様、 愛知県立芸大の出身で、 その絵には マニエリスム芸術や、 ゴシック絵画や、 アールヌーボーの様式らが いっぱい使われていたのですもの、、、 と 大人になって解るんですが、ね。


↑ちきさんの、 個性的男性キャラのひとり 『雪割草』のグイド。 妖しいロングヘア。 角ばった顎。 『デザイナー』の「柾」もこの系統の人ですね。 

一条ゆかりさんの『デザイナー』の中に、 ちきさんの描く男衆がまじっている場面↓


ちきさんの描く ロックバンドの兄ちゃん達はカッコ良かったです。 、、で、 あのトラウマになりそうな妖しい「グイド」のモデルは、、 なんと T.REXの ミッキー・フィンだったと。。。(作品集第3巻に書かれてます)


グイドの方が、、 怖いと思うが・・・ この顎は 確かにちきさんのアゴだ。。

ついでに、、 「並木通りの乗合バス」というのに出てくる、 マッシュルームヘアのような髪の「エニド」は、 70年代前半当時の イギー・ポップみたいだ、、、 と 私は思う。。

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ちきさんの凄さは、 キャラの作画の個性にもあるけれど、 何と言っても画面構成の凄さ。。 これはほんのほんの一例。



ちき様の芸術性については、 高山宏センセイがそれこそマニエリスティックな文章で説明していらっしゃるので、こちらを>> (高山宏の「読んで生き、書いて死ぬ」 『キャンディとチョコボンボン』収録「いまあじゅ」大矢ちき) 

かつて高山センセの講義を聴いていて、 ちき様の「いまあじゅ」のプリントを見せられた時は、、 (な、、なんで ちき様を知っておるのだ?!)、、すげぇ~、、と思いましたが、、 振り返ると 小学生で「いまあじゅ」を読んでしまった70年代前半の少女は 確かにすげぇ体験をしていたのでした。。 全っっ然 意味わからなかったけど、、 凄いものを読んでしまったという記憶は残りました。。。

、、残念ながら、 今回の3巻に「いまあじゅ」は収録されてなくて、、 また小学館のを 買わなくちゃ。。 

、、 「いまあじゅ」の 左目、、って。。。 もしかして、  David Bowieと関係があるのだろうか、、。。 今読んだらわかるかな、、。。 


〈マーガレットレインボーブックス 収録作品〉
Ⅰ『キャンディとチョコボンボン』--- 「天の神さまのいうとおり(描きおろし)」「キャンディとチョコボンボン」「王子さまがいっぱい」「ひとめで恋におちたなら」「アルフォンスお先にどうぞ」「恋のジュガーワイン」

Ⅱ『おじゃまさんリュリュ』--- 「うそついたら針千本のーます(描きおろし)」「おじゃまさんリュリュ」「白いカーニバル」

Ⅲ『雪割草』--- 「雪割草」「ルージュはさいご」「この娘に愛のおめぐみを」「並木通りの乗合バス」

 

金木犀の季節を前に、、

2010-09-28 | 文学にまつわるあれこれ(林檎の小道)
このところ 急に肌寒い雨がつづいて、、 そのせいばかりではないけれど、 ちょっと体調悪くて、、 お仕事には行けているけど 、、、お休みの日は ダウン。。。

でも 素敵な本の話を。。

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新聞屋さんが月に1度とどけてくれる冊子。 毎月、なんとなく目を通していましたが、、 そういえば 1年ほど前に表紙が変わって、、 その絵がなんか いいなあ、、 と思ってました。

先日、 その表紙のイラストレーターさんの事が書かれていて、、

MICAOさんという、 刺繍イラストレーターさんなのでした。 布に刺繍で 糸の絵を描いて、 染色して仕上げるという手間のかかるイラスト。 (サイトはこちらです↓ ギャラリーにたくさんの作品が載っています)
http://www.e-micao.com/

布と糸でできた絵が 温もりがあって、 それでいて、 その絵はただ可愛らしいだけじゃなくて、 どこかミステリアスな感じもあって、、 思い付いたのが、 トーベ・ヤンソンのムーミンの原画。。 もともと、 ムーミン大好きな私、 それも 不気味さのある原画のムーミン 大好き、、 なものだから、 MICAOさんのイラストにとても惹かれました。

、、で、 絵本とかあるのかしら、、 と探したら、 「安房直子」という童話作家の本の挿絵を描いてらして、 今年 それが出版されたそう。。。 

安房直子さん、、、 全然知らなかったのです。 もしかして、、 作品のどれかは 知っているのかもしれないけど、 タイトルを見る限り 記憶がありません。。 もっとも、 作品の多くは70年代後半以降に発表されているから、 私の幼少期には重なりませんね。
(wiki>>) 50歳にして亡くなってしまわれたのですね、、 存命ならまだきっと作品を書いておられる年齢でしょうに。。。

略歴をみて、、 (山室静さんのお弟子さんだったんだ・・!)。。 山室さんは、 ムーミンやアンデルセンの翻訳で知られる方、 そして 北欧神話や、 ギリシャ神話の世界にも精通された方。。 大好きな、、 というか 尊敬する文学者のおひとり。

MICAOさんの絵に感じた トーベ・ヤンソンの感じと、 ムーミン紹介者の山室先生のお弟子さん、、というのが 頭の中で繋がって、、 (これは読むしかない、、)と。 予感は、 当たりました。

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ひぐれのお客』 (福音館創作童話シリーズ) 安房直子著、 MICAO (イラスト)

安房直子さんの著作では、 『安房直子コレクション 全7巻』(Amazon.co.jp)というのも出ていて、 そちらのレビューなどにも書かれていることですが、 安房さんの作品はどこか 不思議で、 寂しくて、 せつなくて、 そして 怖くて、、。。 童話、 というより、 そう、、 ファンタジー。

ファンタジーとは自分なりに思うと、、 日常と異界を結ぶもの。 異界への旅であったり、 異界からの使者との出会いだったり。。 本来なら 逢うことのかなわない人、 失われてしまったもの、 辿りつけない世界、、、 そういう世界との通路が、 物語の中でふっと生まれる。 それが、 とってもわくわくするような場合もあるし、、 物哀しい場合もあるし、、 さらわれるような怖さの場合も。。。

『赤い蝋燭と人魚』の小川未明のような もの悲しさや怖さも、 『手ぶくろをかいに』の新見南吉のような けなげさやせつなさも、、 

現代にこんな作家さんがいたなんて、、、 出会えて良かったです。 MICAOさんのイラストにも。

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白いおうむが、 亡くなった人の使者となって別の世界へみちびく話。 「白いおうむの森」から、、、 ほんの一節。


 あたしに、 お姉さんがいたなんて・・・
 みずえは、 そのあと、 幾度も、 このことを思いだして、 そのたびに、 暖かいものが、 胸の奥から、 わきあがってくるのを感じました。 それは、 金モクセイの花の匂いににています。

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、、そう、、、 そんな 金木犀の花の匂いに似たものが、 胸の奥から わきあがってくる、、 そんな 物語たちなのです。


ladies and gentlemen

2010-09-23 | LIVEにまつわるあれこれ



ストーンズ 大々好きシスターズのお誘いで武道館いってきました。 武道館ひさしぶりだ。。 武道館への道あるいてるだけでワクワクする。。

http://stones-ladies-and-gentlemen.info/

スクリーンがすっごく大きくて、、 そこに映し出される38年前のミックとキースは、 有り得ない美しさ(!) あのふたりのワンマイクこそ、 ロック史上最高の構図、でしょうね。。。 そして、 キースはやっぱりテレキャスターが似合う! いい音でアルペジオ弾いてたなぁ。。。 

72年、、、 まだ10歳にもなってないワタクシは、、その頃ようやっとラジオで洋楽を聴き始めた頃なので、 このころのストーンズは同時代には分かってませんが、、 本当に最高のLIVEだったのだなぁ、、、と。 凄い、、 とにかく凄いエネルギーに満ちてました。 真っ赤な花びらを抱えるミックは神々しかった。。

楽しかった~~~。

私にとって、 ストーンズに無くてはならない人、 ニッキー・ホプキンスさん。 見えないとわかっていても、 首を伸ばしてステージの端のほうをのぞきこんでしまう。。。 映画全編の中で、 ほんの3秒くらいしか映りませんでしたが、 もの凄いロックンロールを弾きまくっていたなぁ。。。 あの3連符!

そして、、、 激しく動き回るミックを、 何か不思議ないきものでも見るかのように(笑) 少し引き気味に見ながら、、 淡々とレスポールを弾くミック・テイラー。 、、いいブルース、 いいスライドでした。

肝心のミック&キースについては、 LIVEの後のお茶タイムに、 姉妹がいっぱいいっぱい話してくれたから お腹いっぱいだ!! 

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ロックンロールシスターズらは、 来月は楽しい吉井善哉ツアーが待っているんだね。。 いいなぁ、、、 と指をくわえつつ、、 我慢。 

、、 お友だちとの別れ際に、、 「また年末、 武道館でね!」と。。 今年は行けるのかなぁ、、 武道館。 またみんなに会えるといいなぁ。


mojo / Tom Petty and the Heartbreakers

2010-09-21 | MUSICにまつわるあれこれ
Tom Petty and the Heartbreakersのツアー写真

10代から一緒にやってる二人が 60歳になっても こんな笑顔して、 二人でおんなじコード押さえて、、 なんて素敵なことなんだろ。。 

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トムとマイクは、 たぶんずっとこんな感じで仲良かったような気がするけど、 ハートブレイカーズというのは 面白いバンドで、、 (と言っても私、バイオグラフィー的な事は良く知らないのですが、、)

以前、ドキュメンタリー映画 Runnin' Down A Dream の中でも語られていたと思いますが、 「Free Fallin'」の曲だったか、、 レコーディングの時にメンバーが (この曲はやりたくない)って言って、 トムが(やりたくないなら弾かなくてもいいよ)って言ったら 本当に出てっちゃった、、って。 その出て行ったのが、 今は亡きベーシストのハウイーと、 キーボードのベンモントだったとか。。 (記憶違いならゴメンなさい)

やりたくない理由は、、 (ロックじゃない!)から。

、、、でもその気持ちわかる。 、、私もどうも、 ジェフ・リン作のトム・ペティは好きじゃない。 あの小洒落た、というか小綺麗なエフェクトに、 ジェフ・リンの匂いがして、 トム・ペティという人が本来持っている アクというか、 エグ味が無くなっちゃう気がして。。 でも、 それゆえにレコードセールスは良いのだけど。

トムの前作「Highway Companion」も、 Tom Pettyのソロ名義で、 参加してるのはギターのマイクだけ。。。 たぶん、これもジェフ・リン プロデュースで、 ベンモントとかはやりたがらなかったのかも、、と想像する。 、、その癖、 ツアーは「ハイウェイコンパニオンツアー」と銘打って The Heartbreakersでやるんだから、、 ヘンなバンド(笑)

 ***

、、というわけで、 バンド名義では8年ぶりのアルバム「mojo」 (Amazon.com>>)


今年のロックアルバム中の 最高傑作かも。。 ここまで 泥々の南部ブルースをやりながら、 古臭くもなく、 ノスタルジーでもなく、 逆にアグレッシヴでカッコ良く聴こえるのは何故なんでしょう。 、、もしかしたら トム・ペティ特有の、 乾いた砂みたいな、 鉄錆みたいな 〈声〉のせいもあるのかも。 ブルースシンガーには無い金属っぽさ。

そして、 今回の主役はギターの マイク・キャンベル! と断言していいくらい、 バリバリに弾いてます、 レスポールを。。 ライナー見たら、 15曲中13曲を、 59年製Gibson Les Paul Sunburst だけで弾いてる。 まさに弾き倒してますね、、 ラストの曲なんか、 どこまで泣かせるんだ~~ ってくらい。

さらに、 バンド中 おそらく一番ロックな人、 或いはパンキッシュなお方、、 ベンモント・テンチさん。 風貌は学者さんのように穏やかでも、 最もロックの気骨に溢れた人だと。。 ベンモントさんのハモンドも、 ピアノも、 効果絶大です。 ジェフ・リンさんのしょわ~~っとしたシンセとは全然違います(笑)。 ベンモントさん無くしてはThe Heartbreakersの音にはならないです。

かつて、 (ロックじゃない!)と出て行かれたペティさんは 結局ソロで制作したのでしたが、 今度はみんな揃って (ロックだ!)、、と言えるアルバムが出来ましたね。 その証拠が アルバムジャケのおじさんがたの 満足げな、 自慢げな、 このお顔が何をかいわんや、、ですね。



↑こちらは 2008年の「Mudcrutch」 (Amazon.com>>

ハートブレイカーズのコア3人 (トムとマイクとベンモント)が、 The Heartbreakers以前にやっていたバンドの40年ぶりの再結成の、 初めてのアルバム。 これをやったからこそ、 「mojo」に繋がったと解る、、、 とても自由でカッコいい作品。 最初、、 カントリー? とか思っても、、 60年代末あたりのサイケデリックサウンドあり、 ロックンロールあり、 ブルースあり。。 

今、 左サイドバーに載せている 「Lover of the Bayou」は、 The Byrdsの曲なんだね。 後期ザ・バーズって、 初期の頃とはヴォーカルスタイルも全然ちがうんだね。 こんなドスの効いた曲もあるんだ~~、、、 と驚きました。  

The Byrds Untitled  (Amazon.com>>

↑これ、欲しくなった。 Live の演奏もカッコいい! 、、「Jesus Is Just Alright」ってドゥービーの曲じゃないんだ、、(!?)、、 知らなかった。。(wiki>>

The Byrdsも含めて聴くと、 Bob Dylanとの繋がりも、 今ディランがやっている南部ブルースの匂いも、、 それからトム達が辿った Mudcrutch~ mojo という流れも、、見えてくる気がするね。。

、、ディランが来たから、、 ハートブレイカーズも、、 来てくれたらいいのになぁ。。。

   

ダメダメな聖人。: 「沙漠のアントワーヌ」ジュール・シュペルヴィエル

2010-09-14 | 文学にまつわるあれこれ(詩人の海)
前に、 『怪奇幻想の文学 Ⅵ啓示と奇蹟』という本について ちらっと触れましたが(>>)、、 その中の「沙漠のアントワーヌ」という作品について。 作者は ジュール・シュペルヴィエルです。

 *** 以下 内容に触れていますので未読の方はご注意 ***


とても短い作品なので、 お話はどこか唐突にはじまります。。 話の冒頭で、 修行者アントワーヌが死者を葬ろうとすると ライオンが出てきて墓掘りをしてくれます。 ナイルを渡ろうとすると 鰐たちが背を並べて渡るのを助けてくれます(そんな話、 日本にもありましたね、、) 

(なんだかアントワーヌ 立派な人かも?)

、、と思いきや、、 アントワーヌの過去の放蕩の魂だとして 鏡に豚の姿が映るまじないを悪魔がかけると、 アントワーヌは雄豚を友にして 毎日1時間もその身体を洗ってやったりする。。。 さらに、 悪魔がアントワーヌの夢に 誘惑の女たちを送り込むと、 アントワーヌはいたたまれずに寝床から跳ね起きて、 苦し紛れに沙漠の砂を口いっぱいに、、、

(大丈夫? アントワーヌ、、)

で、、 自分の身を殴りつけながら 寝床に戻り、、 雄豚の方を見ると、、、 なんと 雄豚はどこかの雌豚と共寝して 高いびき、、。。 でも、 アントワーヌはこう思うのだ、、 「べつにあいつは誓いを立てたわけじゃないし、、」

(なんだかお人好し過ぎない? アントワーヌ、、)

、、、このあたりで気づきました。 このアントワーヌって、 ヒエロニムス・ボスとかが描いた 『聖アントニウスの誘惑』のことなのね? (←気づくの遅い) 、、、でも、、 聖人にしては このアントワーヌ、、 めっちゃ頼りない。。。

めっちゃ頼りなさそうだものだから、 村人がアントワーヌに意地悪をする。。 悪魔の仕掛けるおねぃちゃんの夢に耐えるため、 自分で自分に噛みつこうと握り拳をくわえて眠るアントワーヌをさらに困らせようと、 村人が等身大のおねぃちゃんの人形を寝床に潜り込ませる。。。 (ひどい~~~) すると・・・

 *** 以下 引用文 ***

・・・ 目をさましてそれを見たアントワーヌは、 人形があどけない顔をしているので、 淫売婦どころか生まれたばかりの赤んぼのように思った。 沙漠の風が贈ってくれたこの砂人形の娘を、 彼はどこまでもいっしょに連れていくことに決めた。 この無垢の娘は、 わたしの心をきよらかに保たせてくれるだろう。 ・・・

    (嶋岡晨 訳)


、、、 そうして 腕におねぃちゃんのお人形を抱えて 沙漠を旅するアントワーヌ、、、 (い、いいの?) 、、、 スミマセン、 読んでて笑ってしまいました。。。 

アントワーヌの苦難(?)はまだまだ続きます。。 友の雄豚が毒蛇に咬まれても、 アントワーヌはちゃんと処置できない。。 雌豚が産気づいても、 アントワーヌは養豚の本を手に うろたえるばかり、、、

(なんかダメダメです、 アントワーヌ)

 ***

結局、、 この聖人未満のアントワーヌは 奇蹟を起こせるのでしょうか。。。

あらすじだけをおかしく書いてしまいましたが、 この作品を貶めるつもりは毛頭ありません。 そうではなくて、 シュペルヴィエルの作品に出てくる聖人や、 聖書の登場人物、 動物たち、、は、 万能なんかではなくて、 可哀相なくらいに困ったり、 自分の無力さに頭を抱えたり、、 それがとてもけなげで。。。

『ノアの方舟』のノアも、 舟が狭いとか文句を言われたり、、 なかなか陸地が見えないのに困り果てて、 神様に烏(カラス)の使いを放ってみたりするけど、 烏はどこかへ行っちゃって、 奥さんに (あんたカラスなんか放したってダメに決まってるでしょ、、) とか怒られたりする、、、(笑)  で、 白い鳩を放すんですが。。。


、、なんか 素敵でしょ?

シュペルヴィエルを読みながら、 いつもおぼろげなイラストが頭に浮かんでいたのですが、、、 さっき、 はた!と それが何のイラストか思い至りました。 『ティム・バートンのコープスブライド』です。 あの気弱で失敗ばかりの、、 でもとってもまっすぐな主人公ヴィクターの絵が、 自然と頭に浮かんでたのでした。。 ダメダメな聖人アントワーヌも、 あのイラストが頭の中でぴったり合うのです。

ティム・バートン監督が シュペルヴィエル作品を映像化したら、 きっと素晴らしいものになると思うな。。


「沙漠のアントワーヌ」という作品は、 上記の『啓示と奇蹟』の本か、 あるいは
『シュペルヴィエル抄』(堀口大學訳 小沢書店)(紀伊国屋書店>>) か、
『書物の王国15 奇跡』(国書刊行会) (Amazon>>) で読めると思いますが、 いずれも入手困難のようです。

 ***

、、、 万能な人なんて そうはいないものだろうし、、 (人なんだから) 、、 それに、 万能な人は じつは奇跡を起こせないものなのかもしれません。。。


ジュール・シュペルヴィエルに関する過去ログ>>

勝手な見方でゴメンなさい。。

2010-09-10 | 映画にまつわるあれこれ
前の日曜日、 心臓外科医の須磨久善先生を描いたドラマを見ていました。 日本初のバチスタ手術を行った先生として著名な方ですね。 

とても良いドラマで、 須磨先生を演じた水谷豊さんが素晴らしくて、、 私は須磨先生を存じませんが、 おそらくこのように誠実で、 患者さんに対して穏やかで、 どんな労苦も厭わない、、 そういう方なのだろうと、、 心からそう思えるドラマでした。 

、、、 と、 ドラマそのものの話からちょっと離れて、、、

日本初のバチスタ手術に挑まれた患者さんが亡くなって、、 須磨先生が浜辺でじっとその苦悩に耐えているシーン、、、 クラプトンさんの「Tears in Heaven」が流れていました。。 クラプトンさんが歌う歌ではなくて、、 浜辺でどこかの男性がギターを弾きつつこの歌を口ずさんでいる、、という、、、

、、、 この状況に この歌、、 という意味はすごくよくわかるのですけど、、、 この瞬間だけ ドラマから意識が離れて、 (なんなんだぁ、、 この演出は・・)とか思ってしまいました。。 ゴメンなさい。 クラプトンさんの「Tears in Heaven」聴くと ぼろぼろ泣いてしまうような 思い入れがあったりするので めったなことではこの曲 聴きたくないのです。 それに、 この歌は クラプトンさん以外では ダメ なんです。。。

、、、 もっとシビアに観ると、、 亡くなった方がせめて天国では、、 という想いは誰しも持っているかもしれないですが、、 おそらく 外科医ならば 天国、 を思う事など出来ないと思う、、、 (勝手な想像ですが、、) 、、自らメスを執った外科医にとって、 その患者さんが生きていない限り 敗北だから。 常に勝ち続けなければならないのが外科医だから。。 天国、、、 を想うことなどたぶん無いんだと 思う。

だからこそ、 それでも挑む先生って、、 もの凄いんだと 思います。

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勝手な物言いで スミマセン。

ついでに また勝手を言えば、、、(笑) 今度、 イーグルスの「Desperado」を主題歌にした時代劇映画がつくられましたよね。。 もちろん、 初めてイーグルスが正式に使用を許可した、、ということなんだから、 いいんです。 いいんですけど、、、 「Desperado」かぁ、、、 あの楽曲の力に頼るなよぉ、、 とか 思ってしまったり、する。。 (すみません)

あ、、 でも カヴァーで使われるよりいいです。 、、、 たぶん私、、 どんなに素敵な男性でも、 もしカラオケでこれ歌われたりしたら、、 好きにはなれん と思う。。。 だって、 普通に考えて こんな歌、 普通のサラリーマンや 普通の大学生が 歌えるわけないじゃないですか、、、 (そんな風に考える方がオカシイかも、、ですけど)

、、、 というわけで、 オリジナル以外 誰が歌っても ダメ! って思う歌が 結構わたしにはあります。。 (狭量なんです)
 
 ***

なんて事 書いていたら、 思い出しました。。。 もうすぐ、 『龍馬伝』では、、 あの奇兵隊の戦闘が放送されるのだろうと思いますが、、 奇兵隊、 高杉晋作、 といえば、、 忘れられないのが 1986年の映画『幕末青春グラフィティ Ronin 坂本竜馬』 (キネマ旬報>>

海援隊の武田鉄矢さん(とうぜん龍馬)よりも、 とにかくインパクトあった高杉晋作の吉田拓郎さん。 拓郎さんの歌(主題歌でしたっけ?)も、 かっこ良かった。。 思わず検索して見ちゃいました。
http://www.youtube.com/watch?v=Xa5sARoJQw0

既成の楽曲に安易に頼ってはいけません。。  ↑拓郎さん、 いい歌です。。

アジアン。

2010-09-05 | …まつわる日もいろいろ
太陽高度が低くなって 朝からお部屋に燦々とお日さまが差し込むのは それは良いことなんですが、、 今年は 暑い!

だから窓のシェードのさらに上に ファブリックを掛けています。 なんだかお部屋が アジアンテイストになってます。 、、、お友だちは 「遮光カーテンにすればいいのに、、」って言うけれど、 光を感じられないのも、、 イヤ。 昼間照明を点けるもの いやだし。。

、、、 きのうの夕方、 エアコンを止めて 窓をいっぱいに開けて、 ベランダに椅子を出して 空を見上げながら 缶ビール(じつはキリンフリーです)を飲んでたら、 風がとても心地良くて 気持ち良かった! 、、(でもきっとまだ32度くらいあったんじゃないかな?) 

まだまだ猛暑日&熱帯夜の日々はつづくようですが、、 空には刷毛でさっと描いたような秋の雲が見られるようになってきましたね。

 ***

きょうは CDが3枚とどく予定! (嬉)

どうぞ よい一日を。。。