星のひとかけ

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遠き日のシバの想いに…

2024-03-15 | 文学にまつわるあれこれ(妖精の島)
前回書きました 「幻影の盾」の片山廣子さんによる現代語訳がおさめられた本はもう手元に届きました。 が、なかなか本が読めません…

先週からのはげしい寒暖差のせいなのか せっかくお天気の良い日がつづいているのに、 今週は眩暈におそわれたり 閃輝暗点の発作が起こったり、、 自分のからだがままなりません。。

加えて あちらこちら痛いところも一杯…(泣) 古傷が痛む、とよく言いますけれど、 ほんとうにそういう事なのね… と。 あちこち昔に痛めたところが沢山あるから…


2日の日記に don't waste... という言葉を書いたけれども、 それは 時間を無駄にしないで という意味ではなく、、 自分を摺り減らさないで ということ。 これからは、、 限られた時間のなかで その時間の流れを超えようと頑張るというより、 心も 肉体も、、 これ以上 擦り切れてしまわないように…(でも年々、加速度的に擦り減っていくのです せつないことにね…) 


 ***


フィオナ・マクラオド 著 松村 みね子(片山廣子)・翻訳の『かなしき女王』という本もここのところよく参照しているのですが、 巻末に アイルランド幻想文学・妖精物語の大家でいらっしゃる井村君江先生の詳しい解説があって、 それによって翻訳者としての 松村みね子さんのことをずいぶんと知る事ができました。

「松村みね子翻訳年譜一覧」というものも載っていて、 イェイツの詩「ソロモン王からシバの女王へ(Solomon To Sheba)」を片山さんが翻訳し「三田文学」に発表されていたことも知りました。

それで、 芥川龍之介が書いた「三つのなぜ 二 なぜソロモンはシバの女王とたった一度しか会わなかったか?」 についてと、

片山さんがのちに『燈火節』に載せた 「乾あんず」という随筆のなかで語っているイェイツの詩、 それからソロモンとシバの「恋」の記述について、

それぞれが書かれていった順序もわかりました(青空文庫で読むこともできます)。 いろいろと二人の間柄を詮索する気持で読んだわけではないけれども、 両者のこころの「ずれ」といったものも感じて…

イェイツが詩に込めた想い(当然 モード・ゴンというイェイツが何度も求愛しつづけては拒否された年上の女性への暗示や)、、 片山さんは当初からモード・ゴンについての知識もあったのではと想像されるけれど、

芥川の文章にはただ己の苦しい想いが吐露され、 ここではイェイツが詩に込めた想いとは違った方向に熱情がうごいている。。 それには片山さんとの微妙な相違があるような気がする。 もっと堅実な、 知的な、 純粋に文学的な、 ただし心のなかでのみ通じうる神秘的な交流を、、 片山さんはイェイツの詩に感じていたのでは と想像されるから…

それが晩年に書かれた 「乾あんず」という 少しさみしく、 遠く、 しかし決して消えない香気に満ちた回想へと繋がっている…


Said Solomon to Sheba,
And kissed her Arab eyes,
'There's not a man or woman
Born under the skies…


男もなく 女もなく…




『かなしき女王: ケルト幻想作品集』フィオナ・マクラオド著 松村みね子・訳 沖積舎 2002年
『片山廣子幻想翻訳集 ケルティック・ファンタジー』未谷おと・編 幻戯書房 2020年



 ***


ようやくすこし 体調ももどってきたかしら…



来週には 桜の花もほころびそうですね…




良い週末になりますように
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