星のひとかけ

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ちょうど100年前の7月、不忍池で…

2019-07-30 | 文学にまつわるあれこれ(鴉の破れ窓)



先月 少し書きました(>>) ロバート・ゴダード著 《1919年 三部作》

第二部の『灰色の密命』上下を読み終わり、 第三部『宿命の地』、、 物語は佳境に入りつつあります。。 いまごろあらためて気づくなんて馬鹿みたいですけど、 ちょうど100年前の世界が描かれているのですよね…

第一部 第一次大戦後のパリ講和会議を背景にして始まった物語は、 その後、 スコットランド、 ロンドン、 パリ、 マルセイユ、 スイス を経由して、、 第三部では すべて此処 日本が舞台=《宿命の地》なのです。。

本の裏表紙に書かれている「紹介文」は読まないようにしているので 英国人の元パイロット、 マックスの父親の変死事件に始まった物語が、 英・米・仏・独・日 入り乱れての諜報、暗殺、政治駆け引き、、 そんな大きな歴史の地図へと 物語が発展していくとは思っていませんでした、、 ましてや 日本が最終地点などとは…

でもそこは 歴史学を基盤としたゴダードの物語ですから、、 史実をしっかり踏まえたうえで 架空のスパイたちを 事実と空想のつづれ織りに入り込ませていきます、、。 

日本が舞台の第三部で言えば、、 西郷さんの《西南戦争》1877年(明治10年) まで話がさかのぼって そのころからすべての事件の《芽》が動き出していたことに ちょっと驚き、、 

感想は 読み終えてからまた書きますが、、 きょう読んでいたら ちょうど100年前の1919年の7月、、 七夕の二日後(かな?)、、 上野の西郷隆盛像の前で とある英国人と とある日本人が ひそかに落ち合って 蓮の花が一面に咲いている不忍池のほとりを歩いているのでした。。 そこに…

  「花が開くときにぽんと音がするという人がいます。音などしないという人も。すると信じるのはたやすくありません…… その音を自分が聞かない限りは」

、、というくだりがありました。 《密約》を交わすためには 蓮が開く音を聞こうとしなければ… と。

、、 ゴダードさん、 よくお調べになっていますね。。 一昨年 実際に不忍池で蓮を見た思い出がよみがえってきました(>>) ゴダードさんが この蓮の音について知ったのは、 石川啄木の詩からでしょうか… それとも 南方熊楠の論考からでしょうか… どちらも100年前のこの物語のころに(それ以前に) 生きた人ですね。。

そして、 一昨年の不忍池も暑かったけれど、、 百年前の東京も 西洋人にはとてもとても 蒸し暑い様子が 書かれています、、(苦笑)


 ***

百年前の日本とヨーロッパ、 そして隣の大陸との関係…

それらはもう過去のこと、、 現在生きているわたしたちには関係の無い事、、 時が経つほどにそう思いがち、、 特に私たち日本人は過去を忘れて先へ急ごうとしがちな民族です。。 でも、 100年前の物語と 現在は、、 確かにつながっている、、 今のさまざまな軋轢や感情のもつれは あのころの私たちの国とまっすぐにつながっている…

、、 ゴダードさんの三部作は そのことも考えさせてくれます。。 


物語は残すは 下巻のみ。。 今度の週末くらいには読んでしまうでしょう、、。 ゴダードさんの手腕はいつも、 たくさんの伏せたトランプカードを 最後の最後につぎつぎとめくってあっという間にすべてのカードが開いていく神経衰弱のよう… と前に書いた事がありました。。

どんな 手の内を明かしてくださるのか、、 楽しみです。。

 ***


、、 蝉がいっせいに鳴き始めましたね、、


100年前の上野公園でも それはそれは 蝉が賑やかだったことでしょう…


(ゴダードさん 蝉の声は書いてないみたい、、 英国では蝉時雨ありませんものね・笑)
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