星のひとかけ

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Winterreise『冬の旅』:第六章「あふれ流れる水」Wasserflut

2018-12-10 | 文学にまつわるあれこれ(詩人の海)
前章、、 菩提樹の葉のそよぎは 夏の思い出… 旅人が眼を閉じ そこに一瞬見た優しい記憶の風でした。。

でも今は冬。 旅人が辿るのは氷の道… ひととき夢を見せた瞼からは《涙》があふれ落ちます。。




第6章のほとんどを ボストリッジさんは楽譜と音符の説明に費やしています、、 シューベルトの自筆譜を示し、 この歌で反復されるピアノのリズムについてと 歌唱の関係について…

私は楽譜はたいして読めませんけれど、 音符の拍くらいは分かるので ボストリッジさんの説明を読みながら何度も繰り返してこの歌とピアノを聴きました、、、 

、、 すごい……


、、 ボストリッジさんの仰っている事がよく分かります。。 と共に、 歌う人 そして伴奏者は そのような綿密なことを考えていらっしゃるのか、、と。

 ***

楽譜のことはネタバレになるので省略して、、 リサイタルで歌う時のお話のことで、、
リート(歌曲)のリサイタルでは照明を落とさないという事を初めて知った無知な私でした。。 観客が歌詞やその翻訳を参照しながら 歌曲の詞を理解しながら聴くことができるように、、なのですね。

、、だから ステージからもまた お客さんの様子がよく見えるのだと…  そのお話のつづきも興味深いものでした。。

でも、 そういう意味では リートのリサイタルに行くのはちょっと緊張しちゃうな、、(笑) 普通は前の方にいる人しかステージからは見えないものだと思ってましたから、、。 ボストリッジさんが歌いながらどのようなことを(目で客席を見ながら)考えていらっしゃるかということも、、 とても面白かったです。。

 ***




旅人は雪と氷の道を 重い足取りで進んでいきます、、 うつむいた彼の顔から零れ落ちる涙…

、、《涙》、、 (氵戻)

、、「人が海に戻ろうと流すのが涙なら…」 と THE YELLOW MONKEY の吉井さんは名詩を創られましたが、、 (聖なる海とサンシャイン>>official video


… この旅人は 涙が雪を溶かして流れをつくり… そして 自分の涙をたどっていけば、、 小川はやがて愛する人のいる場所へと、、 (引きずるような歩みは雪を踏んで進んでも、想いは再び振り返ります)

、、 という事は 旅人は低い処から高いところへと、、 山へと向かって歩を進めているのですね。。 街から遠ざかり、 山のほうへ。。 山脈のような所かどうかは判りませんけれど、、 雪に閉ざされた峠に向かって 重く脚を進めているのですね。。 
楽曲の中にそのすべての景色があります……


今朝は冷えました。 大雪の便りもきかれました。


、、厳しい旅をする人を暖めることはできませんけれど、、 その姿に想いを寄せます。。