「うつろ庵」の葡萄が葉を茂らせ、葡萄棚の雰囲気を備え始めた。
庭の隅に設えた「虚庵居士の棺桶ベンチ」の日除け簾に代えて、葡萄の枝葉に
日除けを委ねたことは、「葡萄の若葉」でご紹介した。
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「棺桶ベンチ」に腰を下ろせば、眼の前に紅ばらが咲き乱れ、日除けが欲しい午後になれば、葡萄棚の木蔭を吹き抜ける涼風が、誠に快適だ。グラスを手に酩酊気分を堪能し、時には虚庵夫人の「お薄」サービスもこのベンチで頂けるとあって、虚庵居士のお尻にはこの「棺桶ベンチ」に根が生えた様に、座り続けることになる。
朦朧と「棺桶ベンチ」に坐して、あの世とこの世を往き来する虚庵居士だが、ふと見上げれば葡萄の房々は、小粒ではあるがかなり大きく成長した。
カナブンの猛攻撃に備えて、新聞紙と糊で紙袋を作った。一坪にも満たない葡萄棚ではあるが、袋の数はなんと250枚を超えた。本来であれば、葡萄の房は適宜数を減らして、房の成長を促すのがプロ流であろうが、虚庵居士は葡萄の意思を尊重し、総ての房々に袋を掛けた。 秋の収穫が愉しみだ。
板二枚の簡素な手作りベンチなれど
ここが虚庵の 竟の座所かな
いと狭き庭の片隅 ベンチに坐し
來住(きし)かた行く末思ひを重ねつ
眼の前に滾り咲くかな紅ばらは
いまだに熱き 爺の思ひを
朦朧と酔いにけらしもベンチにて
坐せば癒しぬ葡萄の木陰は
見上げれば葡萄の房々垂れ下がり
いとしかりけり まもるは爺ぞも