「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「月桂樹の雄花」

2014-05-14 11:40:54 | 和歌

 散歩の途上で、月桂樹の雄花に出会った。

 固い葉には些かそぐわない、繊細な表情をした雄花だ。
葉を摘まみ折って嗅げば、素晴らしく爽やかな香りが鼻をくすぐるので、月桂樹に出会えば毎回その香りを楽しむ虚庵夫妻だが、花に出会えたのは何年か振りの僥倖であった。

 元来がギリシャなどでこよなく愛された樹木で、小枝を編んだオリムピックの栄冠は、全世界の衆望の的だが、一方では月桂樹の葉は西洋料理には欠かせない貴重な香辛料だ。葉を乾燥させたローリエは、シチューやカレーなどの調理の際に、肉の臭みを解消するハーブとしても重用されている。また、乾燥した小枝は部屋の空気を綺麗にして呉れる効果もあって、広くリースとしても利用されて来た優れものだ。

 日本の気候風土が月桂樹と合わないとは思えないが、我々の日常生活の中では、目にする機会が少ない花木ではある。日本食が世界文化遺産にも登録され、世界的にも注目を集めているが、味と香りの繊細さを尊重する日本食の味覚には、月桂樹のローリエは優れた援軍だ。洋の東西を結ぶ貴重な架け橋を、大切にしたいものだ。




           見上げればしべ華やかに月桂樹の

           雄花咲くかな気品を湛えて


           手を伸ばし葉のひとひらを摘まみとり

           香りを愉しむじじとばばかな


           月桂樹の冠頂き誇らしく

           手を振る選手の笑顔を偲びぬ


           ひとしきり調理の話に花咲きぬ

           ローリエ使った微妙な味をも


           今頃は花散り若葉も萌えいでて

           衣替えなむ月桂樹の君は