川端裕人のブログ

旧・リヴァイアさん日々のわざ

笑って禁煙・まじめに探求

2007-04-12 20:21:21 | きうらきら光ったりするもの
笑って禁煙できる本笑って禁煙できる本
価格:¥ 1,000(税込)
発売日:2007-04-06
大笑いしながら読了。
喫煙をめぐるお笑い本。ノンスモーカーになるための、メンタルトレーニングが笑いとともに満載。

と言うと、間違いなくその通りなのだけれど、実は大間違いでもある。
世界の中でも、シュールなくらいに、喫煙リスクについての情報が歪んでいる国日本において、現実を見るとそれだけで笑えちゃう、ということでもあって、実は笑えない現実をもとにこの本は、笑いを提供しているわけですね。

きわめて良書です。
アレン・カーの禁煙セラピーでも禁煙できなかった人のうちの、何人かは確実にこれで禁煙できるでしょう。いえ、禁煙者ではなく、ノンスモーカーとして、ボーン・アゲインできるでしょう。

ほとんど時を同じくして、川床邦夫さんから、この本をご恵贈いただく。
もとJTの社員で今は、たばこ総合研究センター所属。

世界たばこ紀行
価格:¥ 2,800(税込)
発売日:2007-04-16


タバコ属植物を世界中にもとめて、ありとあらゆる「ニコチアナ」を求めた旅の見聞録。
たばこを文化的な嗜好品として位置づける文脈での本なのだけれど、ぼくはこれを大変楽しく読む。

「ニコチアナ」を書いた時のテーマは、「喫煙者、非喫煙者もたばこに囚われている」というものだった。自分自身が「非」喫煙者として囚われている、タバコをめぐる問題系について、これだけ多くの土地を旅し、探索した記録というのは、やはり胸に響くものがあるのだ。

ぼくが選んでいいなら、喫煙なんてなくなればいい。
それが無理でも、少なくとも、世の中完全に分煙にして欲しい!
それができない時点で、嗜好品だの、文化だのいっても空々しい。
ということを感じつつ、喫煙にしてやられた人類の記録を書きとどめる情熱は、やはり貴い。

ただ……この段落は、川床さんへの公開私信。
ある文化がリスクを伴うことは、よくある話。
にもかかわらず、喫煙は破格、なのです。
そのことをかくも無視できる国は、我が国だけのようです。
どれほど破格かというと、喫煙が発ガンと因果関係がないなら、ダイオキシンも、アスベストも、すべて無害ってことになってしまうほど。
ぼくはそのことをふまえたうえで、川床さんの多くの論考を読み、「ニコチアナ」を書きました。
いつかまた、お話しする機会があればいいなと思っています。
以上、私信モード終了。

ちなみに、最後の方のページで、ぼくの「ニコチアナ」の紹介もあった。
たしかに、ぼくはあの本を書くとき、川床さんの見聞を大いに参考にさせていただいたのだった。あらためて感謝。

今さらながら、リア・ディゾンのプロ魂に感心する

2007-04-11 20:21:39 | ソングライン、ぼくらの音楽のこと
Softly (初回限定盤)(DVD付)Softly (初回限定盤)(DVD付)
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2007-02-14
こいつをぐるぐる聞いていて、本当に感心。
プロ魂というか、プロとしてのプロデュースワークというか。
彼女の立ち位置で、あえてJ-POPを歌う意味やら意義やらがとてもクリアで、それによってJ-POPのワールドミュージックとしての立ち位置がはっきりしてくるおまけ付き。
とりあえず、コトバについてのみ述べると……、彼女は、日本語の音韻のエッセンスに、日本人以上に忠実であろうとすることで、J-POPらしさを、ひょっとしてカリカチュア(?)ってくらいのレベルで実現してしまう。

ひとつ分かりやすいのは、母音。
今時、ここまではっきりアイウエオの母音を発音するシンガーは少ない。
桑田ケイスケやら佐野元春から始まった、英語ぽい歌い方というのは、母音を抑圧して、子音のつらなりが耳に入ってくるようにすることで、それっぽさを演出していると思うのだけれど、リア・ディゾンは見事に、ひとつひとつの母音を、アイウエオ、としっかり発音する。

カップリングの曲で、英語で歌うところではしっかりと英語のリズムで歌っておいて、日本語パートの中に英語がまじっても、しっかり「ラブストーリーィーイー」などと、日本語のカタカナ語としてうたう。

これって、宇多田ヒカルで感じたことと似てるんだな。
Automaticで、「こんぴゅーたあー、すくりいんのなかー」と歌う時、それは英語じゃなくて日本語だったのだ。

だからといってどうだ、というわけじゃないのだが、ネイティヴぽい英語遣いがウリだった宇多田がやったことを、もっと徹底してしちゃっているわけですね。

サウンド面でも、同様の発見があるんじゃないかと思わされる。

もう一枚、もうすぐでるのですね。
って、まだ一ヵ月以上先らしいが。
恋しよう♪(初回限定盤)(DVD付)恋しよう♪(初回限定盤)(DVD付)
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2007-05-30


30000日のうちの1日

2007-04-10 20:44:34 | 日々のわざ
だいたい、自分は30000日くらいの日数を生きるのではないかと思うのです。
ごくごく単純計算で。
きょうは、朝からPTAのミーティングで、それから短時間の仕事の打ち合わせを挟んで、息子が帰ってきて、娘を迎えに行って、娘をバレエに連れて行って、息子をフットサルに連れて行って、あいた時間に「エンディミオン」を読み始めて、迎えに行って、迎えに行って、……という一日。
朝4時くらいから2時間くらいは原稿に集中できたのだけれど、それ以外はだいたい育児系な一日だったわけで、
これが、我が人生における3万分の1日。

もっと考えたいこと、もっと行動したいこと、たくさんありつつ、こういう日が、だらだら続き、3万日が終わる、と。
それはそれで豊かなことなんだなあ、と満ち足りてみたり、焦る気持ちがむくむくとどこかからやってきたり。

でも、焦ってても仕方ないので、じりじりする気分の時は、眠るのです。
というわけで、眠ります。

ペンギンの憂鬱とコレラの時代の愛

2007-04-10 06:49:22 | ひとが書いたもの
ペンギンの憂鬱ペンギンの憂鬱
価格:¥ 2,100(税込)
発売日:2004-09-29
世界文学というと、あまりにも「なんでもあり」な表現になるけれど、しばしば、世界文学をまとめ読みする時期がある。
ダン・シモンズを読んだのもその一環かもしれず(英米SFも立派な世界文学だと思う)、とはいえ、やはり、ウクライナ現代文学というのはかなり肌色が違う。
別の社会には、別の文脈があって、そこで切実なことを書きつづった小説は、しばしば、日本のぼくらには訳がわからない。なのに、おもしろかったり、迫力があったりするので、楽しいのだが、その典型ががこの作品「ペンギンの憂鬱」かもしれない。

まあ、ストーリーはどうでもいいです。
コウテイペンギンのミーシャが、主人公といっしょに暮らしていて、ペンギンのくせにペンギンぽいような、ぽくないような。

冷凍カレイを食べて生きているというのは、いかがなものなのだろう。
おまけに最後には、心臓病にかかって、人間の小児の心臓を移植されてしまったりする。
ブラックだ。

ちなみに、ペンギンのミーシャはけっして、「かわいい」ものではない。むしろ、喪服を着た動物に見立てられて、葬式に引っ張りだこになったりする。

ペンギン愛好家やら、ペンギン研究家は、いずれにしても、避けて通れない一作。
コレラの時代の愛コレラの時代の愛
価格:¥ 3,150(税込)
発売日:2006-10-28
あと、こちらは、なんやかんやいっても「いつもの」ガルシア・マルケスだと思う。
コロンビア固有の事情よりも、そこから普遍的ななにかに触れる。
特に魔術的・スーパーナチュラルな要素はありません。

フロレンティーノ・アリーサに、わりと感情移入して読めました。
コレラの時代の愛。
うん、いいタイトルだ。

さあっ、新学期、そしてL

2007-04-09 10:59:56 | 日々のわざ
息子と娘が二人して登校する姿を見送り、エッセイを仕上げ、ばたばたと事務連絡を終え、山のような資料を整理して、やっと辿り着く。
感染症疫学小説Lをふたたび進める時がやってきたのでした。
さあやるぞっ、と鼻息を荒くして着手。
なんかこういうことを前にも書いたような気がするけれど、着実に進んではいるので……うん、さらにもう一歩前へ。
と思ったら、間違い電話がかかってくる。
これがおもしろくてくすくす笑ってしまう。

たぶん、知っている人だ。あるいは知っている人の知っている人くらいの関係。
それも宇宙関係。

JAXAから出向したのか何かで別のオフィスに移って名刺を旧オフィスにおいたままなので、間接的に誰かから電話番号を聞いてかけてきた、というのだけれど、「例のパンフレットの件を詰めたい」と言われるまで、ずーっと前に会ったことがあるけれど記憶の彼方になってしまった人だと思って、必死に思い出そうとしていた。

例のパンフレット……たぶん、ぼくは請け負っていないので。

ちょっと愉快。
たまたま、宇宙関係のエッセイを書き終えたばかりでもあった。

「南極海で捕鯨をしない未来」に、はっきり意思表示できる

2007-04-09 09:09:00 | ひとが書いたもの
日本はなぜ世界で一番クジラを殺すのか日本はなぜ世界で一番クジラを殺すのか
価格:¥ 819(税込)
発売日:2007-03

やっぱり、ついつい優先順位を上げて読んでしまった。

期待に違わぬ良書。
捕鯨問題に興味があるすべての人たちに。

これは「内部者」でしかかけないものだ。
こと、クジラに関しては、ジャーナリズムが機能しなくなっており、「冷静な内部者」の方がより説得力を持つことがあると感じた。

この本を読むと……

●環境保護団体も一枚岩ではなく、グリーピースやWWFのような穏健な団体は、捕鯨問題を軟着陸させる現実路線を模索しているのが分かる。

●国際団体であるグリーピースの中でも、グリーンピース・ジャパンは独特の立ち位置から、「日本に南極での捕鯨をやめさせたければ、頭ごなしはダメ」などと主張しているのが分かる。

●調査捕鯨が、すでに調査の域を超えて、とんでもない領域に入り込みつつあるのが分かる。なにしろ、ナガスクジラだって捕っているし、今年からはザトウクジラまで捕獲予定に入っている。

●目下、我が国で鯨肉がだぶついているのが分かる。

●南極海での商業捕鯨の再開ガ、さまざまな意味で「ありえない」のがよく分かる。

●日本の水産会社はすべて捕鯨への意欲をうしなっており、今、南極海での商業捕鯨を再開したがっているのは実は誰もいないと分かる(旗を振り続けている水産庁捕鯨班ですら、このまま調査捕鯨を続けられればいいと思っているフシがあるという)。

というかんじか。
注文を言うならば、反捕鯨運動と、日本の国民感情のボタンの掛け違いについて、「日本側」の観点ではどういうふうに反捕鯨運動が見えたのか、検証してみて欲しかったくらい。
マイナーなflawだ。

ぼく自身、「南極海での捕鯨の可能性は理論的にはありえる」と常々表明しているけれど、その「理論的」な部分がかなり先細りしていて(というかあくまで理論的な可能性でしかなくて)、本当にただの理論なのだと理解した。

南極での捕鯨をする未来と、しない未来。
どっちもアリだとぼくは思っているけれど(理屈としては両方とも可能)、自分で選んで良いなら「しない未来」を選ぶ。
そこに加えて、南極での捕鯨を健全に運営するためには、とてもたくさんの制約条件がつき、それをクリアするためのもっとも重要な条件を、我々はまだクリアできていないこともはっきりしたわけで、ここは、「しない未来」にはっきり意思表明しよう。

沿岸の話はまた別のこと。

つまり、星川氏がこの本で表明している範囲において、ぼくはグリーンピース・ジャパンを支持する。
今後に期待します。

あと、ぼくがかつて書いた捕鯨本は、もう古くなった。
寿命は終わったと考えて良い。
ここから先、川端裕人という物書きに関心のある人か、当時の調査捕鯨がどういうものだったのか興味がある人、といったかなりコアな読み手にのみ意味がある作品になるだろう。
ぼくはあの時、「乗船する」ことで、半分内部者になった。
そして、「冷静な内部者」のつもりで原稿を書いた。
しかし、不徹底だ。
星川氏がすっぱり書いてくれたおかげで、ぼくの本の使命は終わった。
たいへんありがたいことだ。
クジラを捕って、考えた
価格:¥ 620(税込)
発売日:2004-10


旭川にいってきたこと

2007-04-08 09:10:46 | 川のこと、水のこと、生き物のこと
R0013991先週の日曜日はインフルエンザからの回復期で、気だるい一日だった。ウイルスをもらってきたのは、たぶんその前に訪ねた旭川か秋田なのだけれど、まず娘が感染しそこからぼくに来たので、「どこで」というのは藪の中。インフルエンザの場合潜伏期間が短いから、後から考えると「あの時」と特定できる瞬間があるものだけれど、そういうのは特になし。
で、旭川では旭山動物園にいっきてた(なんだかとても古い記憶だ)。

1年半前からみても、ずいぶんと様変わりしている。
展望レストランのようなものができており、昼間は大にぎわいだけれど、夜になるととてもすいているのがよかった。

チンパンジーのスカイウォークは冬場は閉鎖。しかしし、屋内展示でもチンプたちは元気いっぱいだった。
ペンギンの散歩はもう終わっていたけれど、トボガン場というのができていて、ジェンツーペンギンが雪の上を滑る。これは北国ならでは。とてもよい。

旭川の観光関係の人たちに、「旭山動物園のすごさ」というテーマで話しをしてきた。
それは、1970年代からの動物園の変革の時代の中で、旭山がどう位置づけられるかという話しでもあって、「動物園世界史の中でもひとつの事件」だと思ってよいことなどを、説明してきた。

国際エンリッチメント会議が旭川で開けないかな、なんて、かなり乱暴なことも言ってきたけれど、その価値あると思うのですけどね。北米メインストリームの人たちにも、旭山はみてほしい。また、北米でお金のない動物園の人にはもっと見てほしい。などと思うがゆえ、です。

午前7時、投票完了

2007-04-08 07:23:52 | 日々のわざ
徒歩一分の投票所にひとっぱしりいってくる。
やたら数が多い都知事候補。ドクター中松なんて、馴染みの名前もあるな。
今回の選挙では、マニフェストの教育についての部分に注目せざるをえない。
今の、「息詰まる」かんじをなんとかしてもらいたいというのがあって、自然と決まってしまうな。

今、「教育をなんとかしなければならない」ということを言うとたいてい、いわゆる「教育再生」の流れを支持すると思われてしまうのだが、ぼくの場合正反対。
世の教育再生議論は、ダメになっているとされる部分をでっちあげて、本当にダメな部分をマスクしているようにしか思えない。少しでも現実認識が近い思える人に知事になってほしいと願うばかり。

PTA連載、はじまります!@婦人公論

2007-04-07 07:51:34 | 保育園、小学校、育児やら教育やら
婦人公論 the 90th anniversary blog - 2007年4月22日号(4月7日発売)
たぶんきょうあたりから書店にならぶ婦人公論の4月22日号にて、「みんなのPTAをさがして」という連載がはじまりす。
隔週の雑誌なので、結構、ポンポンと書き連ねます。
ほんと公私ともPTAな日々になりそう。
がんばります。
お力添えを!
追記
現役のPTA活動をしながらの連載なので、書きにくいことはたくさん。
でも、そのあたりの指針は最初から決まっていて、

これまでPTAにかかわってきた三年間については、一般論的な言及をすることはありますが、「今」の活動については原則書きません。

あるいは、

実話は書かず、実感は書く。

というスタンスでやります。

追記の追記
とても大事なことをひとつ書き忘れてました。
このブログでいただいたコメントを記事に使わせていただいています。
コメントを戴いた方々、御礼申し上げます。



"多変量解析の展開? 隠れた構造と因果を推理する 統計科学のフロンティア 5"

2007-04-06 06:48:00 | ひとが書いたもの
多変量解析の展開―隠れた構造と因果を推理する   統計科学のフロンティア 5多変量解析の展開―隠れた構造と因果を推理する 統計科学のフロンティア 5
価格:¥ 3,780(税込)
発売日:2002-12

こういうシリーズがあって、2002年にこの巻が出ていたのですね。
知らなかったです。
因果グラフのことなどが日本語で解説されているというのは、迷わず買いかな。「隠れた構造」というのが、それにあたるのでしょうね。一ヵ月後、因果パイはもう古い、なんて言ってるかも。
あと著者のひとりは、「しまりす」の佐藤さんです。
宇宙怪人しまりす医療統計を学ぶ宇宙怪人しまりす医療統計を学ぶ
価格:¥ 1,260(税込)
発売日:2005-12


さらに……全然関係ないけど、きのう書いたゲルニカの上野さんって、最近では「たらこー」の作曲で有名(?)だそうな。
元気にしてらっしゃるようでなにより。

椎名林檎からゲルニカへ

2007-04-05 21:15:44 | ソングライン、ぼくらの音楽のこと
改造への躍動(紙ジャケット仕様)改造への躍動(紙ジャケット仕様)
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:2006-02-22
椎名林檎の「平成風俗」を聴いていたら、むしょうに思い出されるのがゲルニカ。そんなに似てるってわけじゃないのだが。創られ、歌われた時と、歌われているものへのベクトルが似ているのかも。
しかし、「改造への躍動」が復刻され、戸川純の「玉姫様」も簡単に手に入る……なんて素敵な世の中。


あした、入学式

2007-04-05 21:11:13 | 保育園、小学校、育児やら教育やら
桜はほとんど散りかけているけれど、入学式。
ひさびさにネクタイをしめようと思ったら、プレインノットやダブルノットはおぼえているものの、ウインザーやセミウインザーを結べなくなっている。もともと得意じゃなかったからなあ……。ディンプルを作るのも下手くそ。フレッシャーな気分。
なにしろ、十年ぶり。
息子の時にはただのジャケットだったので。
娘ははりきり中。
ほんと、上の子もそうだったけれど、ぼくなんかよりも、ずっと学校が好きになりそうな気配がしている。
学校に行きたいと思って通ってくれる子になってくれると、ストレスも少ないし、うれしいのだが……。
よきスクールライフを!
とむすめのことながはら、祈ったりもする。


タミフルまとめ……しかしまとまりきらず

2007-04-05 07:42:54 | 喫煙問題、疫学など……ざっくり医療分野
リヴァイアさん、日々のわざ: 不都合なタバコの真実@週刊東洋経済(読了して追記)
リヴァイアさん、日々のわざ: タミフル対策、あなたの考えは
先週から今週にかけて、この2つのエントリで、延々とタミフルをめぐる議論がなされていて、その間、ぼく自身、B型インフルエンザにやられて(本当にひさしぶりの病気。ここ二年は風邪すらひいていなかった)いるさなか、ずーっと議論は継続していたわけです。
今さらながら、原稿用紙換算160枚以上の分量のコメントを拝読。
「あとから来る人」のために、読みやすくなるようなエントリを残しておこうかな、という気になりました。

まず議論のコアになっているのは、疫学者の津田さんと、きくちさんの往復書簡(?)部分。
津田さんと、きくちさんは、合意できている部分も多くて、それは「タミフルは異常行動との因果関係が示唆されている」(程度はともかく)といったことや、その一方でパンデミック対策としては重要なので、浜六郎氏の認可取り消し要求などは「やりすぎ」であるとか、大枠ではぶつかりあう部分はなく、それは、またぼくも含めて、多くのコメンテイターも同意しているよう。(追記。この点については、津田さん自身のコメントが下にあり。一読を。浜氏の意見のある部分については、むしろ、まだ弱いとおもう部分もあるとのこと。浜氏が血液製剤による薬害エイズについて述べた1980年代に、あそこまで述べたことの方がずっと「やりすぎ」だったかも、ですとか。)


その上で、何が中心的な課題になったかというと、ある特定の不完全な研究から(って、この場合は横田研究から)、どれだけ何を語らせるのか、という問題。
津田さんは、誤分類やら、バイアスやらの補正をするのに抵抗がない。これは疫学をやっているのだから当然のこと。
その一方で、物理学をバックグラウンドにもつきくちさんは、こういった操作をデータのいじりすぎに感じられるとの発言があって興味深かった。
これを両氏のそれぞれの学問分野の文化の問題なのか……タミフルと横田研究を素材にしながら、そのあたりのことが、垣間見えたのかも。
自然科学の人や、医療の方や、ひょっとすると科学史家の方なんぞが読んでいただくと楽しいかもしれません。

ぼくは疫学のこういうやり方というのは、魑魅魍魎の跋扈する「実験室外」において、あるいは社会的生き物としての人間集団を対象にしつつ、できるだけ科学的であろうとする「一般科学」の営みであると考えているのだけれど(社会科学で使う統計とは違う、と思っている)いかがなものか。
どういう研究デザインではどういう誤分類やバイアスがはいりやすいとか、データの取り扱いになれな人がこうするとああなるとか、人間の「間違いやすさ」の中で系統だっている部分について研究が為されてきた。疫学が実験室の外を主たる活動の場としてきたからなのだけれど、通常の自然科学ではそんな努力をする必要はなく、むしろ、そうしなければならないことにうさんくささを感じてしまうのかも。

いずれにせよ、横田研究は、深読みしなくても、それ自体、「不完全な研究とはいえ、因果関係を示唆しているようなので、とりあえず、因果関係アリと仮定したうえで諸々の対策をとり、さらなる研究を」というのがいいのかなあ(あ、これは川端の意見)。
横田研究の中に出ている表の中で、ちゃんとそれだけで有意になっているのは「うわごと」の1.43というやつだけのはずなのだけれど、ほかにもかなり数字の高いものもあるわけだし、

と、つらつら書いていていて、とうてい「まとめ」なんて不可能だと気づいた。
というわけで、以後、コメントを読んでいていおもしろかったこと、メモしておきいたいこと。

まず、

●津田さんに取材したらいかがですか、記者さんたち! ある意味、極論を展開するようになってしまった浜六郎さんよりずっと現実的なところでの議論を期待できると思うのですが。

って、ここで小さく書いても仕方がないか。

●製薬会社で研究をささているというtygrysojciecさんのコメントに「制度上の副作用は因果関係:有+因果関係:不明ですので、説明書き(添付文書)に記載されていても、因果関係不明のケースもあります」とのこと。なるほど、いちいちお金をかけて副作用の因果関係を追究するメリットは製薬会社にはないもの。勉強になりました。

●インフルエンザ脳症の症例対照研究、やはり必要でしょう。ライ症候群とアスピリンの関係も症例対照研究で示された(教科書的な「成功した」研究)。解熱剤、タミフル、予防接種といったことと、脳症がどう関係するか。ちなみに、ぼくはこの件についてこれまでに二回、国立感染症研究所の人に言ったことがあるのだけれど、ピンときてませんでしたね。

●もちろん、タミフルと異常行動の研究も。症例対象研究、後ろ向きコホート。

●Pearlによる、必要確率と十分確率という考え方。

●発症時期を早める高価(触媒効果)は、「原因」といえるのか。喫煙と発ガンの場合は、「イエス」といえる。しかし、インフルエンザにかかっている時のタミフルと異常行動のように、発症までの期間が短いものの場合は……?

●4倍ものオッズ比をたたき出すような相関を、交絡で説明できることは滅多にない。のだそうです。

●製薬会社から研究費をもらっていた研究者を外すのはまずい、こと。システム上「もっとも詳しい人をはずす」ことになってしまう。大学の臨床教授で、製薬会社から研究費をもらっていない人など、事実上いない、とのこと。過熱したタミフル報道のために、またも研究が変なことになってしまってはたまらない。

いやー、なんだか、議論を矮小化し、やけにトリビアなことばっかりピックアップしている気分になってきたので、この程度で……。

結局、「あとから来た人」のためというよりも、自分用のメモになっちゃいました。

B型も耐性ウイルス!

2007-04-04 12:21:10 | 喫煙問題、疫学など……ざっくり医療分野
「タミフル:耐性ウイルスが出現 人から人へ感染」という記事があって、よくよく読んでみたら、これまで観察されていなかったB型インフルエンザのタミフル耐性株が見つかったというもの。それも、タミフルを服用していない個人から。
こういうのを読んでると心配になるなあ。
ぼくは今、B型インフルエンザから快復して、5日目の最終セットのタミフルを飲んでいるところだけれど、解熱してから3日も飲み続けるのって、たしかにモチベーションが著しく下がるわけです。
とくに、こういう、ちょっとメンタルな影響もあるクスリの場合。

とりあえず、自分の分はしっかり飲むこととして、とはいえ、たくさん使えばそれだけ耐性株が出てくるのは確実でもあって……やはり、10代は禁忌だけでは、いかんのかもしれないです。

もっとも、パンデミック対策としては、パンデミックのA型インフルエンザがいきなり、耐性株というのも想定しがたいのが、救いなのですが……。

いや、今の市中のインフルエンザでA型のタミフル耐性が一般化すると、新型があらわれた時などにも簡単に交差して、耐性ウイルスになったりできるんでしょうかね。だとしたら、嫌ですね。

だらだらといやな妄想。クソ分厚い、インフルエンザ対策ガイドラインを必要に迫られて読み込みつつ……。

追記
とはいえ、B型に耐性株が確認されたことと、タミフルについて今、もっと言わなければならないことは、密接にリンクしつつも、別の話だなあ。
時間がない。

「てのひらの中の宇宙」が課題図書に

2007-04-03 21:15:16 | 自分の書いたもの
てのひらの中の宇宙てのひらの中の宇宙
価格:¥ 1,470(税込)
発売日:2006-09
第53回青少年読書感想文全国コンクール課題図書


拙著「てのひらの中の宇宙」が、読書感想文コンクールの高校生部門で課題図書に。
たしかに、高校生なら十全に内容を理解して、読みこなしてくれると思います。これを機に、多くの出会いがありますように。

ちなみに、小学生低学年の部の「ぼくのパパはおおおとこ:せかいいちのパパがいるひとみんなに」の訳者、いずみちほこさんは、大学時代の教養学科の同期。まさに畏友。
ずいぶん会っていませんが、元気に活躍中なんだなあと、こんなところで再会して愉快です。
彼女の訳文は、平易で、やさしくて、リズムがあって、繊細で、よいですよ。

ぼくのパパはおおおとこぼくのパパはおおおとこ
価格:¥ 1,575(税込)
発売日:2006-12