川端裕人のブログ

旧・リヴァイアさん日々のわざ

赤ちゃんが来た日

2007-09-30 18:49:59 | ひとが書いたもの
義理の従姉から、無事出産の連絡。
親類の中でも久々の出産で、朝から良い気分。いつ会いに行こうか。
わりと年齢がいくまで子どもを作らなかった従姉で、この子が初産だ。きっと、生活は劇的に変わって、なんとなく「こっち側」の話題が増えるだろう。それもうれしいことのひとつ。
そんな勢いで、恵贈をいただいていたこの本を読んだ。
家族ってなんだろう (子どもだって哲学 (3))家族ってなんだろう (子どもだって哲学 (3))
価格:¥ 1,260(税込)
発売日:2007-08

インタビュー形式で、家族について、それぞれの思いを丁寧に掘り起こしてくれる。
母性が炸裂!系のアグネス・チャンさんは、おもに子どもについて。
立松さんは、父母のことから説き起こす。
星野さんの話には孫が出てくるし、三宮さんは子どもの立場からのべる。
こうやって並べてみると、それぞれのテーマについて、自分はどうよって問い直す気分になってくる。
たぶん、子ども向けに書かれた本で、子どもが読みやすいように配慮してあるのだけれど、ぼくには「子どもがいる前と後」の断層を思い出す刺激があった。
子を得たばかりの従姉はどう思うかな。その断層のまっただなかにいる彼女にはどう響くのか。
良いタイミングで会えたら、読んでもらおう。

旅する名前

2007-09-29 17:49:52 | ひとが書いたもの
旅する名前―私のハンメは海を渡ってやってきた旅する名前―私のハンメは海を渡ってやってきた
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2007-08
紹介したい本がたくさんある。ゆえあって、たくさん読んでいるからなのだけれど……。さっき読み終わった、車育子(ちゃ・ゆっちゃ)さんの本。
ゆっちゃさんは、ゆーさんこと岸裕司さんの「ワイフ」で、何度もお会いしたことがある。その縁でご恵贈いただいた。


ゆっちゃさんのハンメ(おばあちゃん)についての記述から始まって、みずからハンメになった「今」まで、内省的な文章で綴られている。
それが、響く。
ゆっちゃさんは、「名前」を旅し、また、「国籍」を旅する。
それにしても、「国籍」の違いというのは、日本という国において社会において、かくも重たくことあるごとに、不自由・不都合を生じるのものか。
そのことを訴えるのを主眼とした記述ではないだけに、しんしんしみてくる。
そりゃあ知識としては知っているのだ。けれど、生きられた体験として語ってもらったことはないなあ、と気づいた。


後半、ゆーさんが登場して、秋津コミュニティのことも出てくるので、「学校を基地に」を裏から読むというのも可能。和田中の藤原校長にいわせると、岸裕司はジョン・レノンなので、その背後には、こういうヨーコがいたのだな、と。
ちなみに、ゆっちゃさんに言わせると、秋津コミュニティのキモは、「地域の生涯学習と学校教育を、学校開放でマッチングさせると、地域も学校も家庭も豊かになる」だ。
おっしゃる通り。
でも、この本の価値はそういう部分じゃないな。


子育てについて述べているあたりで、息子さんが機関車トーマスが好きだった話が出てくる。
その瞬間に、ぼくの子育て体験にもつながって、ぴしっと一本の線がつながった。


人に勇気を与えてくれる本だと思う。
癒やすわけでも鼓舞するわけでもなく、このような人(たち)と肩を並べ同じ時代を生きているのだということを、あらためて感じさせてくれる。



Farewell Summer

2007-09-29 11:33:00 | ひとが書いたもの
たんぽぽのお酒 (ベスト版文学のおくりもの)たんぽぽのお酒 (ベスト版文学のおくりもの)
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:1997-08

もうすぐ、続編の「さよなら僕の夏」が同じ訳者・同じ出版社から出ます。これはちょっとした「事件」。
老境の作家があらためて描くダグラス・スポールディングに乞うご期待。
ゆえあってゲラを読んだので、ここで注意を喚起しておきますね。
「たんぽぽのお酒」を未読の方は、この機会に(今のうちに)ぜひ。


リアルタイムのライヴ感(公立校の逆襲!)

2007-09-28 18:34:13 | ひとが書いたもの
公立校の逆襲 いい学校を作る!公立校の逆襲 いい学校を作る!
価格:¥ 1,470(税込)
発売日:2004-09-17
最近、よく読んでいる藤原和博さんの著作の中でも、重要なものとされている単行本。彼が校長1年生だった時から、1年半にわたってほぼ毎週書いていた新聞コラムと、雑誌記事を構成してある。なかなかうまい構成で、「ひとつながり」のものして興味深く読める。
よりがっつりした内容を望むなら、近刊である
校長先生になろう! (BP Online book)校長先生になろう! (BP Online book)
価格:¥ 1,575(税込)
発売日:2007-03-21

こちらの方がおすすめなのだけれど、やはり、現在進行形の改革を書いたことに意義がある。ほんとうにすごい迫力を感じるのは、ぼくが多少とも勉強してしまって行間がよめてしまうからかもしれないのだけれど。
いずもにしても、ぼくが婦人公論での連載を実際に活動しながら書こうとしたことの、先輩にあたるような本だ。
おもしろいと思ったところをメモしておとく、
○まずは、学校評議員を会社に対する株主のような立場になってくれと説得するところ。和田コミュニティ教育基金なるものも、積み立ててしまう。校長自らがテレビ出演費などを入れるところから始まる。日本では一度、教育予算はすべての公費で、というのが根付いたけれど、今、ふたたび地域がおらが学校のために労力だけでなく、カネも使うというのは、おもしろかった。でも、考えてみれば、アメリカやイギリスではごく当たり前のことなんですね。
○学校の安全をまもるためには、校門を閉じてがちっとやるのと、校門を開けて地域の人がどんどん入ってきて目を増やすやり方がある、と。藤原さんは後者の支持者。心強い。
○メールによるミーティング前の事前意見交換は、今や企業では常識。それが学校では実現しないのを嘆き、実行する。これ、PTAでもおんなじ。
これはぼくのメモです。それも、「校長先生になろう」でぐっときた地域本部のことなどいくつかの「大ネタ」は省略してある。
この本が初藤原である読者にはきっともっとほかのところがアピールするでしょう。
それだけ間口が広い。

エゾサンショウウオ、ネオテニー?

2007-09-26 21:08:08 | 川のこと、水のこと、生き物のこと
R0014923南富良野で見つけたエゾサンショウウオ。9月のはじめでまだ成熟する気配はなし。
ひょっとするとネオテニー? エゾサンショウウオって、国内のもので、唯一ネオテニーが確認されているそうなので、可能性はある。とはいえ、ネオテニーの個体は、このところずっと見つかっていないそうだから、本当にそうならニュースかも。なにはともあれ、このモヤモヤした鰓を子どもに見せたくて、キャッチアンドリリース。
R0014943これはエゾサンショウウオをみつけた近くの林道。


業務連絡、トラックバックなど

2007-09-25 19:27:55 | 日々のわざ
ここ2ヵ月以上、トラックバックスパムしか来なかったので、トラックバックを受け付けない設定に変更。
承認制にしていたのですが、日々、裏でトラバを削除するのに疲れまして……。
トピック関連事項で、こいつに読ませたいというエントリを書いたブロガーさん、コメント欄に張って下さって結構です。
ついでに、web2.0なるものの、ちょっとばかり試してみたところ。右下に川端シジミエキス(?)なんてものが出てます。
変です。
すぐにやめると思いますが、ちょっと体験、ということで。



ウミウシの写真集になんとなく宇宙を感じる

2007-09-24 11:35:26 | ひとが書いたもの
ウミウシ―不思議ないきものウミウシ―不思議ないきもの
価格:¥ 1,470(税込)
発売日:2007-07-15
これはすばらしい。思わず、人にプレゼントしちゃいたくなる写真集だ。
海の生き物だけれど、なぜか「宇宙」を感じさせる。うまいぐあいに散ったライティングで「無影」に近いからかもしれない。
とにかく、色遣いといい、造形といい本当に美しい。
それを見事に、捉えてくれている。

あと、新種がどんどん発見されているとのことで、ネーミングなどにも、即物的脱力系が多いのはひょっとして現代的センスってやつなのかと勘ぐったりもする。
だって、シモフリカメサンウミウシの背中には本当に「亀さん」の絵のごときものが浮かび上がっているし、モンジャウミウシの背中には、もんじゃ焼き様の飾りがある。そのまんまなネーミングに、とりあえずのところ、くすっと笑う。

自作のデジカメ水中撮影機材も惜しげもなく公開してくれているのも楽しい。
ほんと、撮りたいものがあったら、機材ごとつくんなきゃという世界で勝負する人って、ぼくは好きだ。

婦人公論連載、芹沢一也さんとの対談

2007-09-23 21:31:58 | 保育園、小学校、育児やら教育やら
20070922今回は、社会学者の芹沢一也さんとの対談。芹沢さんは、「犯罪不安社会」の中で、PTAが「親睦団体から危機管理団体へと変貌しつつある」と看破した人。
何度でも紹介するけれど、この本はすごいです。メディアの論調を確実に変えたと思う。ただ、そろそろ、次のステージに進まなきゃ、というのが、記事には出ていない、ぼくと芹沢さんのローカルな合意。メディアがちょっと論調かえたとして、じゃあ、社会の認識そのもがひっりかえるには、どうすりゃいいのか、というのはほんと大きな問題。
PTAの防犯問題は、その裾野のかなり重要な部分を占めているわけですね。
犯罪不安社会 誰もが「不審者」? (光文社新書)犯罪不安社会 誰もが「不審者」? (光文社新書)
価格:¥ 777(税込)
発売日:2006-12-13



エンリッチメント大賞2007

2007-09-21 09:43:00 | 川のこと、水のこと、生き物のこと
エンリッチメント大賞2007
動物園ネタが続きます。
今年のエンリッチメント大賞が発表されました。
最優秀賞・動物園人賞・奨励賞の三つ。
これまでよりも、エンリッチメントの「原義」に近いものに立ち返って、授賞しようという意図があり、それにそぐうものになっていると思います。

え? エンリッチメントって何って?
そういう人は、手前味噌ながら、こちらを。今なお、入門書としての意義は失っていないと思いますので。
動物園にできること (文春文庫)動物園にできること (文春文庫)
価格:¥ 690(税込)
発売日:2006-03-10



キーパーはローカルスターになってよいと思う

2007-09-19 16:46:22 | ひとが書いたもの
今日も動物園日和―飼育係がガイドする上野動物園今日も動物園日和―飼育係がガイドする上野動物園
価格:¥ 1,260(税込)
発売日:2007-03

上野動物園のガイド本だけれど、飼育係が「立って」いる。
こういうのは、とても意味があると思う。動物園の飼育係は、ローカルヒーロー&ヒロインになってよい。
だから、上野じゃなくても、すべての動物園についてこういう本があってもいい。
そして、お気に入りの動物の担当者の名前をおぼえて、「○○さんですか?」と話しかけてみる、と。
上野動物園にちょくちょく行く人には、とてもお勧めです。
中身で、ちょっとおもしろいなあと思ったのは、ゾウ。
ゾウの飼育のところでのみ、「調教」という言葉が使われている。
これって、ほかの動物ではあまり使わなくなっていると認識しているのだけれど、ゾウでは普通に使うのだろうか。
まあ、素朴な疑問ですが、なんとなく時代にそぐわない語感とあまっちょろい言い換えが許されないような「現場」の緊張感とが、ミックスして、不思議な感覚を抱いた次第。

フキバッタという驚き

2007-09-17 20:52:25 | 川のこと、水のこと、生き物のこと
R0014726南富良野シリーズです。再開。
で、フキバッタ。
コロボックルが雨宿りしてそうなくらい大きなフキの葉を食べる。
飛ぶ必要がないのか、羽はなし。
こんなんでいいのか。
でも、飛べないイナゴというのは、平和でいい。
なんか、歴史を変えちゃうくらいの大仕事は、たぶんしないんじゃないか、と安心できる。


R0014790で、交尾シーン。
かなり、無理してます。
ねじれの体勢です。
こういうもんなんですかね。
よくわからないです。
びっくりします。


良い疫学と悪い疫学

2007-09-17 04:59:06 | 喫煙問題、疫学など……ざっくり医療分野
今書店に並んでいる、文芸春秋2007年10月号 「変な国・日本の禁煙原理主義」 というタイトルの対談で、養老孟司氏・山崎正和氏が、いろいろ述べているらしい。禁煙学会が公開質問状(http://www.nosmoke55.jp/action/0709bungeisyunju.pdf)を出している。
対談の内容はだいたい想像つくのだけれど、公開質問状をみていて、ふと意を得たりと思ったところ。
3. 疫学に信用はおけないとおっしゃっておられますか?、対談中に2件の疫学テ?ータ をもとに、こ?自分の主張を補強されておられる箇所か?あります。疫学には良い疫学 とタ?メな疫学の二種類か?あるのて?しょうか。そうなら、それはと?こて?見分けるのて?しょ うか。お教えくた?さい。


これは、まさにその通り。
疫学批判をする人が、タバコの害について印象を弱めるような疫学研究については大喜びでとりあげる。たとえば、パーキンソン病やアルツハイマーを抑えるのに効果がある、とか。でも、たいていそういうのは喫煙の害についてよりも、ずっと証拠の薄い疫学研究であって、場合によっては、もう否定されてしまっているものもある。でも、とてもうれしそうに、「タバコが健康によい!」と言いたがるのだよなあ。

疫学の土俵に乗るなら、こういうわずかな「効用」をのべるとどうじに、疫学があきからにした喫煙の諸々の害についても、ちゃんと受け止めて議論すべき、というのが、ぼくがいつも思っていることで、そのあたりが意を得たり、だったわけです。

ちなみに、アルツハイマーについては、今は、たぶん「関係ない」という結論だし、パーキンソンも喫煙が予防しているのではなくて、喫煙が交絡要因(真の原因ではない)というのが、一般的なとらえ方だと認識しているのですが、とすると、こ文藝春秋の対談は、正統な疫学研究をインチキといい、確立していない疫学研究をさも真実のようにのべる、うさんくさい議論ってことになりますね。

残り物、花火大会

2007-09-16 21:11:14 | 日々のわざ
Hanabigakudo学童のサマーキャンプが台風のせいで中止になったので、お土産に配るはずだった花火の大蕩尽大会。
ここって、学生時代ぼくが、アルトサックスの練習をしていたところだ。使っていた駅は違うのだけれど、今住んでいるところと近所。
それはそれとして、いっせいに各所で花火をがーっとやっていると、独特の光景。
なんともいえず。
ちなみに、上は中央高速。



ペンギンのABC

2007-09-16 08:08:11 | ひとが書いたもの
ペンギンのABCペンギンのABC
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2007-07-14
ペンギン基金の20周年企画、ディクショナリーブック。
たいへんよくできています。今、書店に並んでいるBePalに書評を書いたので、ここでは詳しくはいいませんが、硬軟とりあわせた話題がたくさんの良い本です。鎌倉文也さんの写真、坂崎千春さんのイラスト(スイカ・ペンギンの人ですね)も満載。ペンギンファンは必読。
もう2刷りが出たそうです。


90年代SF傑作選

2007-09-14 19:57:24 | ひとが書いたもの
90年代SF傑作選〈上〉90年代SF傑作選〈上〉
価格:¥ 987(税込)
発売日:2002-03
小粒だとか、迷走しているだとか、いろいろ言われるみたいだけれど、90年代SFには、非常にシンパシーを抱く。スティーヴン・バクスターの「コロンビヤード」、マイク・レズニックの「オルウドヴァイ渓谷七景」が印象的。前者は、本歌取り系(?)の作品なのだけれど、ぼくも別の本歌取りをしたくなるし、後者はやはり同時代人が思い描く未来が詰まっている。七つのエピソードのうち、渓谷エコツアーのくだりは、非常に刺激された。あれは、今、書かれそうで書かれないなにかを示している気がする。ちょっと備忘も兼ねて、したためておくとする。