日本はなぜ世界で一番クジラを殺すのか 価格:¥ 819(税込) 発売日:2007-03 |
前書きを読んだだけで、すごい本だというのは分かるし、今、目の前にとんでもない厚さの資料やら本やらがあって、それを読んだ後でないと取りかかれないのも目に見えているので、紹介。
すごい本です。
捕鯨対反捕鯨の枠組みを変えてくれるし、反捕鯨の代表と思われているグリーンピースのイメージも変わるだろう。なにしろ、「グリーンピースは捕鯨を卒業すべし」と、グリーンピース・ジャパンの現事務局長が言ってしまうのだ。
以前、ぼくはグリーンピースジャパンで、各国の海洋生態系問題担当(つまり、捕鯨問題担当でもある)を前にして講演をしことがあって、それを強烈に思い出した。
その時、何を話したか、論理構成やら、枝葉末節やら、つまり、あらかた忘れてしまったのだけれど、伝えたかったコアなことは、「もしも日本に捕鯨をやめさせたいなら、頭ごなしな日本批判はむしろ逆効果だ。グリーンピースが特に初期のキャンペーンで植え付けた、日本国民へのトラウマをなんとかしてくれないと、このまま意固地になっていつまでも捕鯨をしてしまうかも。今、世界中で、日本人はことクジラをめぐっては、残酷で血も涙もなく、それこそ、すべてのクジラの絶滅の危機は、日本人が招いたとまで思われているけれど、それは事実誤認。日本も悪いけど、ほかの国も悪い。一時、ナショナルアイデンティティですらあった捕鯨が、1972年を境にくるりと世界での評価がかわり、一転して非難されるようになった驚きになんとか逃げ道を与えて欲しい。ぶっちゃけ、過去のキャンペーンで行きすぎた部分、ミスリーディングだった部分を分析して、それについては、あやまってよ。どっちかが先に謝罪しなければ始まらないとしたら、グリーンピースの方がよりプラクティカルな判断ができる団体だと信じている」みたいな主旨のことを力説した。
実はこのレクチャーは、ぼくがいきなりその場で爆弾を落としたものではなく、当時のグリーンピース・ジャパンのスタッフが望んでくれて、ぼくも大いにその気になって、述べたもの。
その頃から、グリーピース・ジャパンは、ほかの国のグリーンピースと、捕鯨問題について微妙な緊張関係にあったのだろう。
現事務局長の星川氏が、たぶん十年くらい前のその講演をふまえているはずもないのだけれど、見事にその回答を下さった気がする。
I love Japan, but whaling breaks my heart.
日本が大好きなのに、南極での捕鯨にはがっかりしちゃう!
というバレンタインのキャンペーンには、喝采。本当に拍手。
ぼくが提案した「謝罪」ってわけではないけれど、完璧な回答になっている。
一点のみ、注文があるとしたら??
初期のグリーンピースのキャンベーンが、文化への敬意を欠いていた(とぼくは感じている)ことについての分析や、批判について、章立ての中には見あたらないことか。
なぜ、今に至る「ボタンの掛け違い」が起こったのか、必ずしも、「日本側」だけではない部分を、今や反捕鯨の「内部者」である星川氏にぜひ考えてほしかった。